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第七話「人が生み出した業」前編

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 バイラム、全長:おおよそ二十三メートル。重量:不明。
 動力:胸部にあるものの動力原は不明。パイロット、及びAIナンバー:不明
 所属部隊:不明。武装類:右手に備え付けられたロングソードと左腕部に備え付けられたビームガンのみ。
 最高速度:不明。現段階でマッハ1以上と想定、旋回能力、不明。空中戦で遅れを取った例無し。
 最大出力:不明。しかしナイツが振り回されたことから出力はナイツ以上と想定される。
 装甲:不明。 ありとあらゆる攻撃を無効化するため今のところ新種の装甲板だと想定される。

 バイラムの考察。
 バイラムの戦闘力は一個連隊に相当する物と考えられる。
 その根拠はステイツのノースカロライナ基地襲撃事件を元に考えたものである。
 あの日、基地司令はバイラム一機に対し第一から第十二PM小隊を投入。各小隊はポーン四機で構成されて
おり標準装備で出撃した。整備は全て不手際は無かったと整備員は証言しているが戦闘結果は全小隊の全滅を
いう結果に終わった。
 戦闘データをみても各小隊に不手際はあまり見られず、外部的影響もほとんど見受けられない。
 その後、シルバーナイツと交戦。一機のナイツを中破するまでに至らしめている。
 通常兵器、すなわちミサイルやマシンガンと言った実弾兵器や、ステイツが誇るビーム兵器すらバイラムに
は効果が無かった。
 提出されたユニオン、アジア統連のデータも考察に入れたとするならば、バイラムの異常さがよく理解できる。
 バイラムの異常さは実に様々である。 ある者はその戦闘力の高さに、ある者は圧倒的な機動性に。
 しかし、私が危険視しているのはバイラムの防御力である。たとえバイラムの剣が敵機を難なく真っ二つに
出来たとしても、ビームガンで一撃で破壊されたとしてもあまり問題にはしない。
 だが、こちらの攻撃が一切通用しないというのは危惧すべきことではないだろうか?
 現に高度な攻撃手段は全くといって良いほど通用してないのだ。
 そして攻撃が通用しないとなればより強い兵器を行使しなくてはならない。
 そう、核兵器のような強力な兵器を……。

 次にバイラムの目的を考察してみようと思う。
 初めてバイラムが現れたのはフランスにあるユニオンの軍事基地である。
 彼は自身のビームガンで演習用のネルソンを破壊、そしてビスマルクと交戦するが止めを刺さず撤退した。
 そしてアジア統連での交戦では青龍二機を撃破すると隊長機である玄武と交戦、しかし、ここでもまたと
止めを刺さずに撤退をした。
 この事からバイラムは意図的に殺人を避けようとしているように感じる。
 しかし、この考えはステイツでの行いにより却下されてしまった。
 ステイツでのバイラムは前回、前々回の戦いとは違い容赦なくパイロットを殺しているのだ。
 これはステイツに対して憎しみを抱いていると思われるのだがビスマルクとの戦闘では容赦なくコックピッ
トを狙っている部分がある。
 私はさらに調べを進めるために小国で起こった戦闘データを調べてみた。
 するとバイラムの戦い方は決して一定ではないことが明らかとなった。
 これはいったいどう言うことなのだろうか? 謎は深まるばかりである。
 だが、私は一つだけ理解していることがある。それはバイラムは決して”民間人を襲わない”ということだ。
 データを調べて見るとバイラムが戦闘を仕掛けた場所は無人地帯、もしくは軍事地基地が多かった。
 これは意図的に市街地での先頭を避けていると考える方が納得がいく。
 それによりバイラムの目的はおのずと絞れてきた。

 バイラムの目的、それは軍事施設の破壊である。

 これを強者を求める狂戦士とみるか、平和を求める破壊者と見るのは人それぞれだろう。
 しかし、これだけは言わせて貰いたい。
 意思疎通が出来てない以上彼は危険な存在なのだ、と。
 USER NAME:ハワード・マッケンバウアー




 巨大な白熱球を思わせる太陽が雲を一つも許さずにその大地を焼いている。
 たまに吹く乾燥地帯特有の風は大地の水気を少しずつ奪い砂の山を走っていく。
 ここは西アジアにあるサウジアラビアの南部のとある町、かつて中東戦争の傷跡が未だに消えない国である。
「オーライ! オーライ!」
 ユニオンの兵士がトラックに向かって大声をあげる。トラックの中には数多くの弾薬が積まれているようだ。
 そしてトラックの周りには無数のネルソンと砲戦型PMクレマンソーが配備されている。
 人々が軍人に物を買わせようとしたり、子供たちが食料を求める光景がどこもかしこも見られる。

 共同声明文が発表されて既に2ヶ月経とうとしていた。

 この軍事演習に参加する国は何もユニオンやステイツ、AUAだけではない。
 オーストラリアやインド、南アフリカといった小国もまたこの国に参加している。
 バイラムの脅威が国家レベルにまで引き上がっている証であった。
 だがそれだけではないのもまた”国”という物なのだろうが……。

 ユニオンが駐留している場所からさらに百キロほど東に離れた場所に小さな村があった。
 村というにはあまりにも人がいない、むしろ廃墟といったほうが正しい。
 その閑散とした村の大通りを北に真っ直ぐ行くと大きな豪邸がぽつんと立っていた。
 豪邸はとても大きく玉ねぎの様な屋根がいたるところに見受けられるがその周りは現代建築を髣髴させる石
壁が周りを囲っていた。
 その豪邸の中では一人の女性が鍬を手に畑を耕していた。
 この大地では耕したとしてもすぐ砂によって埋もれてしまう難しい土地なのに彼女はただ無心で鍬を振るう。
 女性はとても美しく気品と不思議な魅力に包まれてとても畑仕事をするようには見えず、どちらかと言えば
部屋の中で読書を勤しみながらお茶を飲む。そんな印象を与えるな女性だった。
 しかし着ている服はあまりにも質素で白を基調とした服と青いスカートを身につけていた。
 だがそれさえも長い髪やシミやソバカスといった物が何一つ無い肌がその美しさを損なわずに際立たさせている。
 女性が手を休めると一人の男がやってきた。
 男はアラブ系後を引いているのか肌は少し黒く、剃ってはいないせいかヒゲが無造作に伸びている。 
 服は砂漠戦仕様の迷彩服を着ておりその姿からすぐに傭兵であることが理解できた。
「よう、久しぶりだな」
 アラブ系の男は目の前の美女に向かって手を上げて挨拶をする。
「アジャム……」
 美女は男を見ると目を細めそう呟いた。

 男の名前はアジャム。バイラムと同じように全てが謎に包まれている男である。
 分かっているのは名前と彼の職業が傭兵であり探偵であること、それだけだった。
 ラストネームも分からなければどこで生まれたかも分からない。
 自由気ままに仕事をこなし、そしてまたどこかに旅立つ。
 アジャムを雇いたいと思う人間は多いが雇った人間をも滅ぼす”毒”でもあった。
 なぜなら彼を雇うという事は自らの暗部をも晒すという事なのだ。正に危険な男である。

「何をしにここへ?」
 女性はここへ来た事を嫌悪するかのような目でアジャムを見る。
 言葉の節々には所々に棘があり皮肉さを含ませていた。
「そんなの決まってるだろ? 俺は酒を飲みに来たんだよ」
 そう言って手に持っている酒瓶を彼女に見せると彼女は眉間に皺を寄せて口を曲げた。
 どうやら冗談が通じなかったようだ。
「と言うのは冗談でな、あんたにここを立ち退いでもらいたい」
 そんな彼女を見ながら冗談めいた顔から真剣な眼差しをぶつける。
「何故です?」
 彼の言葉に思わず首をかしげる。いきなりここを出て行けと言われれば誰もが反発するだろう。
「テレビや新聞ぐらい見ろよ……。ここを軍の訓練地にするんだよ」
「軍の訓練地に……?」
 呆れるアジャムに対し彼女は目を見開く。どうやら本当に知らなかったようだ。




「と、いうわけさ」
 アジャムを部屋の中に招き入れると彼女はベランダに立ちながら話を聞き終えた。
 合同演習の事、この地が演習の地に選ばれたこと、そして……バイラムの事。
 一つ聞き終えるたびに諦めたかのような少し疲れた顔を少しする。
「バイラム……」
 彼女は人通りの無い街路を見つめながら手すりにそっと手を置いた。
 穏やかな風が部屋を駆け抜ける。彼女の髪が風とともに流れた。
「また戦争が起きるのね」
 彼女は顔を上げ流れ行く白い雲を見つめた。その瞳には悲しみが含まれている。
「ああ、そうだ。 俺も稼ぎ時って訳だ」
 それに対しアジャムは喜ばしいのか、笑顔を作る。戦争が起これば自分に仕事が舞い込みかなり儲けることになる。
 正に忙しい時期なのだ。
「何故、人は争うのでしょうか?」
「そんなの決まってんだろ、人間が高慢ちきで馬鹿ばっかだから」
 アジャムはソファーにドカッと座ると足を組み、彼女の質問に答えた。
「傲慢じゃなかったら話は聞くだろ? 先入観はあってもおかしな誤解はあっさりとなくならぁ。馬鹿じゃ
なかったらやっちまった事をちゃんと反省する。だけどそれが出来てねぇって言う事は何にも学んでねぇって
いう証拠じゃねぇか?」
 大き目の氷をグラスの中に放り込みながら自論を彼女に向けて言い放つ。
「何も学んでいない……」
 アジャムの言葉に思わず口を閉ざす。そんな彼女を見ながら彼はグラスに酒を注ぐ。
「ああ、そうさ。何にも考えてねぇ、何も感じねぇ。考えれば罪の意識で押しつぶされちまうからな」
 アジャムは酒を煽るように一気に飲み干す。
「くぅぅぅ!この一杯に生きてるようなもんだぜ!」
 中の氷が音が空気を吐き出す音とともに亀裂が走る。
 満足そうな、いや満足しているのだろう、この男は。
「おい、こっち来て酒注いでくれよ。一人で飲むのはつまんねぇからよ」
 彼女に向かって手招きをするが彼女は眉間に皺を寄せたままだった。
「そんな顔すんなよ、酒がまずくならぁ」
 マイペースなアジャムに対し軽くため息を付くと彼女は奥の部屋へと引っ込もうとする。
「おい! 酒注いでくれないのか?」
「お酒だけでは身体を壊します」
 彼女の言葉にますます顔がほころぶ。
「じゃあアレ作ってくれよ! アレを肴に酒飲むと美味いんだよ!」
 彼女がいった奥の部屋に向かって大声で注文した。

 翌日、雲と言う言葉をどこかにおいてきてしまったかのような蒼天が広がっていた。
 ステージの周りにはユニオンから始まり、ステイツ、AUA、オーストラリアやインドといった様々な軍が
綺麗に整列している。
 さらにその周りには戦車、航空機、そしてパンツァーモービルがずらりと並んでおり物々しい雰囲気を醸し
出していた。
 ついに各国合同演習が始まろうとしている。
 ステージに紺のスーツを着た中年男性が立ち軍人達に頭を下げるとマイクに向かって口を開いた。
「これより国連統合軍事演習を行う、まず初めにこの軍事演習を立ち上げた国連のジョーン・ゲルダー議長の
ご挨拶から」
 男性がステージから降りると初老の男性がに上ってきた。
「えー、この度は――」




 議長の挨拶が続く中、ステイツの航空巡洋艦内ではナイツの最終チェックがようやく終わろうとしていた。
「どうだい、ナイツの調子は?」
 ケントはコックピットの中にいるボルスにナイツの調子を聞く。
「問題ない、だが以前より軽い感じがするな。何か変えたのか?」
 ボルスの質問にケントはいやらしい笑みを浮かべる。どうやら何かを変えたらしい。
「ほほう、流石だね。すぐナイツの変化に気が付くなんて」
「馬鹿な事を言うな、何年これに乗っていると思っている」
 ケントのわざとらしい声に少し呆れつつ音声の設定をする。
「そりゃそうだ」
「それで何か変わったのか?」
「一応オーバーホールと新型部品との交換、それにギアのオイルを新作のに変えたよ」
「なるほど、通りでのこの軽さだ」
 ボルスはこの軽さが少し嫌いらしく少し不機嫌な声を出す。
 卸したての服は気持ち良いが慣らし運転をしていないからいつ何があるのか分からないな。
「整備の人たちが言ってたよ、何をどうしたらここまで酷使できるのか、って」
「それは仕方ないだろう、ナイツの変形構造とバイラムとの戦いがそもそもの原因だ」
「それだけかい? 確かにボルスの言う通り、変形構造の多用は機体の寿命を縮めるけどたまにしかオーバー
ホールをしない君の大雑把さが――」
「止めてくれ、これから出撃だというのに説教は喰らいたくない」
 親友の説教に対し思わず耳を塞ぐ。
 こういう神経質なところが無ければいいんだがな。
「分かった、でもくれぐれも各国に後れを取るような真似はしないでくれよ。恥かくのは君だけじゃないんだから」
「了解だ、少なくともエース級は撃墜してみせる」
 ボルスの自信にケントは思わず噴出してしまう。相変わらず大した自信だ。
「頼んだよ、親友」
「任されたぞ、相棒」

 時間を置いてユニオンの航空駆逐艦内のブリッジではファルが暇をもてましていた。
 この手の話は長いから好きじゃないのよね。何で偉い人ってみんな議場に立つとベラベラベラベラと長話す
るんだろ?
 うんざりした顔で隣を見るとマールが椅子を倒して寝息を立てていた。
「ZZZ・・・」
 夢の中でいい事があったのか彼女はとても幸せそうな顔で眠っている。
 ファルはマールの右耳を摘まむと思いっきり息を吸う。
「おきろぉぉぉぉ!」
 凄まじい声がマールの耳を貫く。
「うにゃぁぁ!?」
 突然の事に椅子から転げ落ちてしまう。その拍子に彼女の大き目なお尻が揺れた。
「もう、ひどいじゃない!」
 立ち上がりながらファルのやり方を非難する。
「寝るならここじゃなくて自分の部屋に行きなさいよ」
 一方のファルは頭を抱えながら呆れた顔を見せている。 
「ぶぅ! あれ?」
 突然ファルは何かに気が付いた、そして食いつくかのように一点をじっと見る
「どうしたのよ?」
「ファルちゃん。あのオールバックのかっこいい人、誰?」
 マールが指した男性をファルはまじまじと見る。指した先には一人の男性がいた。
 男性はこの暑い中、黒のスーツをきちんと着こなしており足を組むことも無くじっと議長の話を聞いていた。
 顔は悪人顔と言って良いほど人相が悪く、特に鋭くつり上がった細目と嫌味しか出てきそうな口。そしてマ
ールが言ったとおり茶色の髪をオールバックにしていた
「え? ええっと、あれは確かハワード・マッケンバウアー国連大使よ。正直キザったらしくて好きじゃないのよね」
 ファルはかつてハワードと一度であったことがある。その時、彼はユニオンの防衛事務次官だった。
 経った数十秒間の会話でだったがファルにはどうも受け付けない人間であることが理解できた。
「ハワード様…」
 潤んだ瞳でハワードを見つめる。
「……やっぱり幼なじみっていうのは嫌ね」
 ファルはハワードに熱視線を送っているマールに対しうんざりした顔を見せる。
 マールの趣味に全く付いていけないファルであった。


 さらに時間を置いてAUA戦闘空母『伏儀』ではを黄龍タイプのテスト機を搬入し終えていた。
「マグナモーターチェック……問題無し、次は各ギアと伝達路をチェックして……うん、完璧!」
 奈央は検査機とにらめっこしながらPMの整備を行う。
「水原伍長、機体のチェックは終わったか」
 コックピット付近で作業をしている奈央にナタリアが声をかける。
「問題ありません。 麒麟、鳳凰。ともにオールグリーン」
 麒麟とは白虎と玄武の特徴を、鳳凰は青龍と朱雀の特徴を組み合わせた機体である。
 麒麟は名前とはほど遠くその外見からかなりの重装備である。重さも玄武以上の重量を持つことになり機動
性は従来の玄武より遅く、小回りも聞かなくなってしまった。しかし電子戦装備は白虎を超え、最大で半径十
数キロのジャミングやチャフ。対センサー武器を無効化、コンピューターのハッキングなど出来る様になった。
また玄武の特徴らしくかなりの重装甲でありよっぽどなことが無い限り攻撃が貫通するという事が無くなった
のだがバイラムに対しどれくらい効果があるのかは不明である。
 一方の鳳凰はその名に相応しく高機動と高い攻撃力の両立に成功したPMであった。
 装甲は従来の物より軽く、薄くしその間に多数の武器を搭載できるようにした。
 また機動性は朱雀と同じマッハ2クラスでありながら旋回能力を上げ、小回りがかなり聞くようになった。
しかし装甲を犠牲にし過ぎたため、無茶な急停止、急発進をすれば機体が壊れてしまうだろう。だがこの機体
の圧倒的火力、及び機動性はとても魅力的である。だがやはりバイラムに対し未だに不安が残る内容になっている。
「よし、ではパイロットを呼んでおこう」
 ナタリアが備え付けの通信機に手を伸ばし待機室にいるパーチャイとリーシェンを呼び出そうとする。
 数秒ほど呼び出し音が鳴り響く。
「こちらハヤイ、ヤスイ、ウマイをモットーに――」
「パーチャイ少尉、それ以上話せば貴様の給料査定が一気に下がるぞ」
「……ごめんなさい……」
 ナタリアのドスの聞いた声に思わず謝ってしまうパーチャイ。そんなパーチャイに苦笑をしながら用件を言う。
「リーシェン軍曹もいるな? それなら今すぐ格納庫に来い。鳳凰と麒麟、無事に仕上がったそうだ」
「了解しました、大尉殿」
「搭乗次第、艦の外へ出しておけ。くれぐれも我々に恥をかかせるなよ!」
「了解」
 ナタリアが通信機の電源を落すと奈央が首をかしげていた。
「どうした?」
「いえ、何で今回の演習にコウシュン中佐は参加しないんだろうって思いまして」
 奈央の疑問は最もだ、あの男がこの演習に参加しないのはおかしいだろう。
 今回の演習には軍の顔とも言えるエースが多数参加しているがコウシュンは別任務を与えられた。
 その意味は……。
「それなら簡単だ。中佐は裏の仕事に回った。それだけのことだ」
「裏?」
 奈央はますます首をかしげるがナタリアはしたり顔でそんな奈央を見つめていた。
「まあ、あえて言えばうちの司令官は食わせ物、とでも言っておこう」

「――である事を心より願います」
 そういって国連議長は一歩下がり頭を下げた。それと同時にその場にいた全員が敬礼をする。
 議長が降り立った後再び紺のスーツの男性がステージに上り口を開く。
「これより訓練の内容を発表する。まずPM部隊による――」
 司会の男性が演習要綱を説明している最中の基地司令室では多くのオペレーターが画面を見つめていた。
 レーダーにはこれといった反応は無く、外部からの侵入者もいない。
「ふああぁぁぁ…」
 一人の男性があくびをする。無理もないだろう、長い話の次は長い説明。休む暇も無くこんな話を聞かされ
たら誰たって気を抜きたくなる。やることもなければ暇を潰せる物も無い。
「主任、不真面目ですよ」
 一人のオペレーターが文句を言う。仕事の最中なのになんて不謹慎なと言わんばかりの目で司令官席に座る
男性を見つめた。
「いや、しかし……やることが無いのは辛いぞ」
 主任と呼ばれた男が目を擦りながらだるそうに基地のモニターを見つめる。
「それならこの書類に目を通しておいて下さい」
 そう言って書類を彼に渡す。ページで言えば数十ページに及びそうな量だった。
「これは?」
「警備員の報告書です、読み終わったらサインを書いて部長に提出してください」
「わかった」
 主任はそういってページをめくった。


 この基地にいる人間は軍人ではない、軍需産業に雇われただけの民間人なのだ。中東戦争以降、西アジアの
軍事基地は全て民間に払い下げとなり、巨額の資産を持った軍需産業に買い取られ現在に至った。
 この土地は砂と岩しかないので兵器のテスト向上としては最適だった。そして作られた兵器はそれぞれの国
に売れられていくと言う構図だ。 
 主任が全てのページを読み終えた時、突如けたたましいサイレンの音が響き渡った。
「どうした!」
「ポイント167にアンノウン出現! データを照合します!」
 基地のオペレーターがキーボードを素早く叩く。ぼやけた輪郭からゆっくりとその正体が明かされる。
 黒のPM、右手の剣、左手にはビームガン、そしてあのおぞましい顔。その正体は――。
「アンノウンの正体はバイラムです!」
「何だと! 映像は?」
「メインモニターに移します」
 オペレーターがキーを叩くと基地の大型画面にバイラムの姿が映し出された。
 バイラムは土煙を上げて地面スレスレを滑空している。そのスピードは音速と同じ速度であった。
 進行方向は当然このサウジアラビア基地。後数分もすればバイラムはここへ到着するだろう。
「どうします?」
「各国の総司令官にこの事を伝えろ。我々は撤収する」
 そう、彼らは雇われただけに過ぎないのだ。命をかける必要性は何一つ無い。
 ここに愛着も無ければ残しておく物もない。居るだけ無駄だ。
「分かりました」
 オペレーターがそう言うと別のオペレーターが別の報告を入れてきた。
「主任、アジャムさんがグライドアの発進許可を求めています」
「何? モニターに出せ」
 メインモニターにアジャムの顔が出る。
「どういうつもりだ? それは非合法の機体だぞ」
 非合法、つまり正規の手順を踏まずに作られた気体のようだ。このグライドアという機体は。
「知っていますよ。しかし、こいつの戦闘データは欲しいはずだと私は思いますが?」
「ふざけるな! それが世に出ると言う事は我々の名誉と信頼に傷が付く!」
「名誉? 信頼? なかなか面白い話ですね。今回の演習はバイラムを利用した裏金工作だと聞いていましたけど?」
 アジャムの言葉にオペレーターは言葉を失う。一方の主任は気が付いていたのか顔が真っ青だ。
「ど、どこにそんな証拠が……」
「良いんですか? 公表しちゃって? 最近、会社の噂で良いものを聞かないんですよ?」
 アジャムはそう言いながらおもむろにデジタルカメラを取り出す。中は見せないがおそらく裏金工作の証拠
が入っているのだろう。
 それに彼が言ったとおりここ最近の”上層部”からいい話を全く聞いていない。もしも今回の件が外部に漏
れたら自身は路頭に迷うことになりかねないだろう。首も危ういだけでなく犯罪の片棒を担いだとして世間か
ら厳しく見られるのも確実だ。
「き、貴様……」
 主任のこめかみに欠陥が浮き上がる。一方のアジャムは飄々とした口調で言葉を続けた。
「まあ、私はこいつを使わせてもらえれば良いんですよ。あなたの首や雇い主の裏金なんて興味ありませんから」
「……その言葉、嘘はないな?」
 主任はアジャムを槍で射抜くかのように睨みつける。一方のアジャムは不敵な笑みを浮かべ、軽く鼻で笑った。
「ええ、もちろん」
「許可する。ただし、こいつは後で破壊しておけ。いいな?」
「了解しました、では……」
 そう言うとアジャムは一方的に通信機のスイッチを一方的に切ってしまった。
「主任、よろしいのですか?」
 オペレーターが主任を見る。その瞳には恐れと困惑が見え隠れしていた。
「データは全てグライドアが持っている。破壊されれば良し、そうでなくともあの男のせいにすれば良い」
 主任はため息を付くと席を立つ。
「さて、撤収の準備をしておけ。くれぐれも忘れ物をするなよ」
「はい」
 主任が部屋を出て行くとオペレーターたちも次々と部屋を出て行った。


「ポイント167にバイラム出現! 各戦闘員は戦闘準備に入れ! 繰り返す、ポイント167に――」
「17番戦車隊!搭乗!」
「ファルコンを7番滑走路に運べ! イーグルは3番滑走路があいたぞ!」
「ネルソンの弾薬は満タンだな!? ミサイルは単弾式の奴にしろ!」
 スピーカーから戦闘準備の声が一斉に響き渡る。声を聞いた軍人達が慌しく動き回る。
 戦車に乗り込む者もいれば航空機にを滑走路へ持って行く者もいる。そしてPMを起動させ飛び立つ物もいた。
「議長、こちらへどうぞ」
 戸惑う議長をSP達があっという間取り囲むと政治家達はすばやく動き始めた。ただ一人だけを除いて。
「やはり来たか、バイラム」
 ハワードは空を仰ぎ見ながらゆっくりとその足を進めると自分の直感が当ったことに複雑な思いを感じていた。

 後編に続く

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