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GEARS外伝 Berserker第十章 後

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ParaBellum

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だれでも歓迎! 編集
「思惑通りに事が運ばないから世界を滅ぼすか。戦争によって産み出された技術の革新が、後の未来の発展に大きく貢献してきた事実は否定しない。
だがな、闘争を管理したところで、人間同士の戦いが無くなるだけで、望まない者にまで戦う事を強要し、多くの者の命を奪い、痛みと悲しみを振り撒くという事実は覆らない。
「一部の傲慢な連中の短絡的な発想で多くの人間の犠牲にしなければ、発展することも秩序を築く事の出来ない世界なら、いっそ衰退してしまえば良い」

輝槍を握る右腕を矢をつがえる様に引き、伸ばした左腕の甲に乗せて腰を落とし、翼を大きく広げ、両の脚に力を込める。

≪我を生み出し役目も果たさせぬ内から打ち棄てた挙句、漸く、見出した役割さえも奪い取るか≫

≪私もこの世界が好きなんですよ。誰だって大切な物を壊されたら怒って当然……それにさっきのセクハラですよね?≫

ゲルヴィナードの両腕がくの字に曲がり、両の掌が火球に包まれ背中から炎の帯が吹き上がる。

≪ノヴァ!≫

背中から生える炎の帯が孔雀の羽の様に広がり、床や天井、壁を砕きながらナグルファルを呑み込み、炸裂した魔力の衝動で壁に叩き付ける。
その衝撃で破壊された天井がナグルファルの上に降り注ぎ、瓦礫の山と成し、トドメの一撃と言わんばかりに巨大な柱が墓標の様に突き立つ。

≪あらあら、運が悪いと言うか間抜けと言うか……≫

「嘉穂、気を抜くな!」

ナグルファルの醜態に嘉穂が嘲笑混じりに呟くが、奴の甲冑はヘブンランサーすらも受け止める程の頑強さを誇る。この程度、ダメージの内にもなっていない筈。
それを証明するかのように突き立った柱を片腕で持ち上げ、悠然とした足取りで立ち上がった。純白の甲冑には傷どころか汚れの一つさえも付いていない。
そして、ナグルファルは柱をゲルヴィナード目掛けて投擲する。

≪魔力の篭らない単純な物理攻撃なんて通用しませんよ≫

ゲルヴィナードの掌から獄炎が迸り、音速を超えて飛来する柱を融解する。

≪温い炎だ≫

融解した柱の影から、翼を広げたナグルファルが炎を纏った長剣を右腕に携え、ゲルヴィナードに肉迫し、技も何も無い無造作な……しかし、力強く、俊敏な剣戟を振り落とした。
ゲルヴィナードは頭部を庇うように両腕を交差させ黒炎を防いだ炎の結界を構築するが、ゲルヴィナードの炎がナグルファルの炎に焼き尽くされ、その両腕を焼かれていく。

≪クッ……炎の刻印装甲が炎に焼かれるなんて……≫

まるで悪い夢を見ているようだ――そして、がら空きになった腹部にナグルファルの脚部が突き刺さり、壁の向こう側へと吹き飛ばされた。

≪チッ……下がっていろ! 貴様等の属性では太刀打ち出来ん!≫

シェイサイドがメギドクレイモアを振るうと影が津波の様に飛沫を上げながら、シェイサイドの足元で円を描きながら走る。
放たれる三つの剣閃と三条の影の刃がナグルファルを捉えるが、影の刃はナグルファルの結界に相殺され、メギドクレイモアの剣戟は炎の長剣に全て受け止められる。

≪相克属性だぞ……!?≫

ナグルファルは力任せにシェイサイドを弾き飛ばし、炎の長剣を振り落とすが、シェイサイドは球状結界を前面に押し出し、魔力の反発力で更に後方へと飛び距離を離し、地面に降り立った。

「奴は貴様の攻撃だけに対して防御行動を行った。シェイサイドなら、貴様になら奴にダメージを与える事が出来る筈だ。
俺が奴の意識を逸らす。貴様は奴の隙を突いて叩き斬れ……エンディングまで後少し、今回もアテにさせてもらう」

シェイサイドを置き去りに輝槍の間合いに踏み込むと、ナグルファルの翼が火花を散らし、翼膜となっている銀剣が機関銃の様に。そして、無差別に全周囲に撃ち出される。
シルヴァールの片翼を前面に展開し、放たれる銀剣を受け止め、あるいは弾き返すが、銀剣の勢いは衰えるどころか増すばかりで、翼膜に亀裂が走る。

≪調子に乗るな……ファントムムーブ≫

両の翼でシルヴァールの全身を包み込み、超神速の飛翔で銀剣の弾幕を強制的に潜り抜ける。
五~六本程の銀剣がシルヴァールの翼を貫き、手足を貫いているが、精々、全身に激痛が走る程度。何ほどの事も無い。

≪ウイングスライサー!≫

羽の一枚一枚に魔力を流し込み、剣化と共に射出。ナグルファルに斬撃の集中豪雨を降らすが、その大半は奴の銀剣に粉砕されてしまった。
そして、僅かに到達した緑剣はナグルファルの白銀の甲冑に弾かれる……事無く、深々と突き刺さり、床に縫い付ける。

「攻撃が……通った?」

ナグルファルは何の感情も痛痒も見せずに突き刺さった緑剣を抜き取り、シルヴァールの背後を捉える。
早い……シルヴァールのファントムムーブと同様の超加速能力か? いや、魔力の残滓が完全に途切れ、移動の形跡は無い。
床の上に脚を付け、棒立ちで銀剣を放っていたナグルファルの頭上を捉えていたシルヴァールの、その更に背後を捉えられていた。

超加速では無く、まるで最初から其処にいたかのように……いや、今のナグルファルはオルベリオンをベースに稼動している。
そして、オルベリオンには他の刻印装甲には無い、最強の刻印装甲たる能力を持っている。俺が地球に帰還するための可能性を見出した能力。

「瞬間移動能力か!?」

だが、転移完了後のタイムラグが長過ぎる上、魔力と殺気が膨大過ぎる。目で追えずとも、直感だけで動きを追える。
閃光を放ちながら振り落とされるナグルファルの左腕を真空を纏った左腕で受け流し、右の掌でナグルファルの頭部を刎ね飛ばす。
ウイングスライサーやハイソニックインパクトが通用して、何故、ヘブンランサーや、ゲルヴィナードのノヴァが通用しない?

「いや……攻撃が通じるようになった……?」

頭部を失い床に向かって投げ出されたナグルファルの身体が掻き消え、背後から銀剣の弾幕が展開される。
失敗作風情が――突如として背後に回った強大な魔力を頼りに錐揉みしながら銀剣の弾幕を裂け、再生されたナグルファルの頭部を掴み魔力を開放する。
風がうねり、戦慄き声を上げるが、それがナグルファルを襲うよりも早く、白銀の体躯が掻き消える。

「どうせ背後にいるのだろうが!」

瞬時に構築した黒槍を背後の空間に向かって放ち、ナグルファルが姿を現すと同時にグラビトンランサーを開放。重力の結界で挟み潰し、奴の上半身を消滅させる。
床に落下したナグルファルの下半身に亀裂が走り破砕音と共に粉々に砕け散り、その破片は銀剣の荒波となってシルヴァールに押し寄せる。

「フェイク……何処へ消えた!?」

翼に流す魔力の指向性を変更。スラッシュゲイザーを発動し、白銀の津波を深緑の津波で相殺する。
沈静化した斬撃の荒波の中で膨大な魔力が急速に膨張し銀剣と緑剣を押し退けながら、飛び出すは巨大な猟犬の牙。
その口腔に飲み込まれ、シルヴァールの全長程もある巨大な牙が上下から断続的に襲い掛かる――咀嚼しているのか!?

≪ふざけるなよ……ライオットスクリーマー!≫

五条の雷光で口腔を焼き尽くし、一迅の閃光で猟犬を内側から破砕し、砕けた西瓜の様な肉片を周囲に撒き散らす。
窮地を脱したが、気を抜く余裕は何処にも無い。既に展開されている銀剣の弾幕を、緑剣の弾幕で迎え撃つ。

「威力でも物量でも劣るか……!」

シルヴァールの放つ緑剣の弾丸を遥かに上回る銀剣の弾幕が、次から次に緑剣を撃ち落し、シルヴァールの対魔術結界を突き破り、盾となっていた翼を弾き飛ばし、シルヴァールを壁に縫い止める。
だが、それも一瞬。シルヴァールを縫い止めたところで銀剣の弾幕が止むはずも無く、瞬時に壁を破壊し瓦礫の山と化した。それでも、銀剣の弾幕は止まない。
視界に銀剣以外の物が映らなくなり、最早、剣の形を認識する事さえ出来ない。ただ視界全体に広がる白銀の閃光にしか見る事が出来ていない。

白銀の斬撃に飲み込まれ、一瞬ばかり意識を飛ばされ、再び、背後に回ったナグルファルに左の片翼を鷲掴みにされ、そのまま、引き千切られる。
左の肩甲骨をもぎ取られたような激痛が走り、意識を失いかけると同時に右腕を引き千切られ、激痛のあまりに意識を無理矢理、覚醒させられ、壁際に叩き付けられる。

失った器官を再構築……して、またあの痛みを味わうのか? 意識の沈下と浮上を同時に受けなければならないのか?
痛い――痛い痛い痛いいたいたいたいイタイイタイイタイ怖い――怖いコワイ? ナニガ? ダレガ? ナンデ?
たかが痛みごときに恐れた挙句に、こんな暴走した失敗作のガラクタの力に震え――

「これ程の屈辱があるかあああああああああああああああああああああ!!」

強大な力に屈しようとする醜い己を殺せ! 障害に抗って、障害を蹴散らして、望む結末を掴み取るためだけに今日まで戦い続けて来た、この力で――

失われた器官から溢れ出す魔力を再収束し、輝槍を再構築し投槍の要領でナグルファルに投擲。
だが、ナグルファルは容易く、弾き返して両の腕で輝槍を投げ返し、シルヴァールの胸部を貫く。

「クッ……だが、これで良い!」

魔術兵装の外観など所詮は術者の力が視覚化した姿に過ぎない。自身の輝槍で心臓を貫かれたとしても、それは己の身を傷つけた事にはならない。

寧ろ、刻印装甲の心臓を貫くイメージを我が身で以って、経験する事が出来た。
想起。俺自身の心臓を貫くと同時に、俺と奴とで魔力の指向性を入れ替え、対象の生命を破壊する!

≪ヘブン……ランサァァァァァァァァァァッ!!≫

シルヴールの心臓を貫く輝槍を起動。自分自身の心臓を粉砕するイメージでオルベリオンの中にいる、ナグルファルの心臓を粉砕する。
ナグルファルの全身を覆う白銀の甲冑が弾け飛び、心臓部から真っ赤な鮮血の様に高密度の魔力が噴出し、大広間の中が真っ赤な魔力の霧に覆われた。

「この程度の力でしかない貴様が俺を計画に利用する? 俺を侵す? 欠陥品風情が身の程を弁えろ!!」

≪認識対象変換能力≫

ナグルファルの掌が閃光を放つ。その視線が向いた先には倒れ伏すゲルヴィナードの姿があった。そして、未だに嘉穂の意識は戻っておらず、魔術防御などあってないようなものだ。
奴は掌を自身の胸部に当て、躊躇うそぶり一つ見せずに己の心臓を貫いた。自爆などでは無い。認識対象変換能力――俺が土壇場でやってのけた事を再現しようとしている。

「それを嘉穂の身体で試すつもりか!?」

――もう一度、上手くいけ!

ナグルファルが自身の心臓に向けた魔力の指向性がゲルヴィナードの心臓に入れ替わり、真紅の甲冑が閃光を放った。
そして、ゲルヴィナードの巨躯が跳ね上がり、胸部の甲冑が二つに裂け、中から赤い鮮血の様な液体が噴水の様に吹き上がった。

「……糞ッ!」

魔力の収束が出来ない。目の前が真っ白に明滅する。翼を広げる事が出来ない。脚に力が入らない。シルヴァールの制御が出来ず、膝から崩れ落ちた。

「嘉穂……」

≪ぅ……≫

≪ゲルヴィナードの心臓ではない!?≫

ナグルファルが初めて感情的な声色を上げた。奴の魔術兵装がゲルヴィナードの中で発動した瞬間、エネルギーの指向性をシルヴァールの心臓に入れ替えた。
半ば、強引な形で指向性を入れ替えたというよりも、奪い取る形になったせいで多少、ゲルヴィナードに損傷を負わせてしまったが嘉穂自身が傷付いたわけでは無い。
だが、流石のシルヴァールも心臓を焼かれては四肢と翼、五感の制御が満足に出来ず、俺自身も不慣れな魔術の行使に身体と意識が噛み合わない状態に陥ってしまった。

「だがな――貴様が呆けていられる程、俺は容易く無い! 滅べ、欠陥品!!」

左の拳で床を叩き付け、その反動で無理矢理、シルヴァールを飛ばし、心臓を貫く輝槍を引き抜き、ナグルファルに衝き付けるが、奴の構築した結界に受け止められる。

「どうした!? 認識対象の指向性を変換し、俺の心臓を焼いてみせろ!!」

出来る筈が無い。高い集中力によって魔力の指向性に介入し、具体的な空想力で目に見えない変換対象を指定し、妄信的なまでの妄想力で力を無力化する。その三つが成り立って初めて成立する能力だからだ。
防御結界の展開と同時に発動出来る術では無く、何よりも今のナグルファルには攻撃を完全に防ぐ以外の行動を取る事は出来ない。
魔力の使い方が極端過ぎる。一度、防御に転じればヘブンランサーやノヴァを完全に無力化。攻撃に転じればゲルヴィナードを一撃で戦闘不能に追い込むだけの威力を誇る。
だが、攻撃中はウイングスライサーや、ハイソニックインパクトの様な手数に頼った威力の低い攻撃でも十分に通用し、防御中は発動時間が終了するまで攻撃に転じる事が出来ない。

「はっははははは!! はははははははははは!! 無様だな戦争管理者!!」

≪ヘブンランサーの発動時間よりも結界の発動時間の方が長い。貴様に勝ち目など無い≫

「それがどうした? 何故、俺が狂戦士と呼ばれているのか教えてやる……」

今の俺に残された魔力量ではヘブンランサーを発動していられるのも後僅か――そう、今の魔力量ではな。
残った敵は後一人。大円団まで後僅か。最早、後先を考えて温存する必要も無い。懐に仕舞ったシガレットケースの中に入った霊薬を全て胃の中に流し込む。

≪魔力量が増大……!?≫

「ははははははは!! はーはっはっはっはっはっはっは!! 貴様一人を滅ぼすためだけに温存していた霊薬全部だ! 欠陥品風情が俺を測れると思うな!!」

結界と衝突し、眩い閃光を放つ輝槍の刃が肥大化し、結界に深く突き刺さり、輝槍の柄から新たに四枚の刃が形成され翼状に展開し、天を照らし尽くす程の閃光を放ちながら、結界の中を深く押し進む。
結界の表面に硬い音と共に亀裂が走り、連鎖的な結界の崩壊が始まる。

「結界は崩壊寸前。どうする? 再び、結界を構築するか? 攻撃に転じるか? 指向性を反転するか? さあ、どうする!?」

結界が粉々に砕け散り、輝槍がナグルファルの心臓を捉えるが炎の長剣に阻まれる。

「結界で阻めぬなら、魔術兵装で魔力を相殺か……」

ナグルファルは一つの行動に対し、極端なまでに膨大な魔力を注ぎ込み、複数の行動を同時に行う事が出来ない。
炎の長剣を展開した今のナグルファルに防御力は無いも同然。その上、輝槍を阻む事に全ての意識を注力している。

――そして、俺の役割はナグルファルを撃破する事では無い。

≪相変わらず、堂に入った芝居だな≫

冗談交じりの声と共に漆黒の巨大剣がナグルファルを一刀両断にする。
ナグルファルの気をアディンから逸らし俺に注力させる。奴は、その隙を突いてナグルファルを叩き斬る。

「役割を果たしただけだ」

輝槍で分断されたナグルファルの体躯を串刺しにして繋ぎ止める。

「人類闘争管理計画は管理者となる人間によって実行され、管理者の命によって魔獣を統括する事が貴様の役割だった。
貴様に宿る膨大な魔力は魔獣を産み出すためだけに与えられた力だ。貴様には戦争を管理する能力も戦う力も役割も与えられてなどいない」

≪我は役割を果たす事が出来ない……≫

「だが、俺が今から貴様に新たな役割を与えてやる」

茫然自失の体で愕然とした様子のナグルファルに声をかけると、オルベリオンの双眸が縋る様に赤い閃光を放ち、シルヴァールを見上げた。

「貴様の新たな役割。それは――」

指を弾き、ナグルファルを貫いた輝槍に残った魔力の全てを流し込み、ナグルファルの全身を閃光で包み込み、天へと撃ち放つ。
広間の天井を貫き、穿たれた大穴から雄大な天で体組織の全てが粉々に砕け散り、霧散するナグルファルの姿が映った。
そして、オルベリオンを始めとする刻印装甲の指輪が広間に降り注いだ。

≪新たな役割は死ぬ事……か。貴様に慈悲の心は無いのか?≫

「そんな物、身内用にしか持ち合わせていない。第一、俺がやらなければ貴様がやっただろう?」

≪同情出来なくは無いが所詮は物だからな。跡形も無く粉砕するさ。世界を守るなどと大それた事を考えるつもりは無いが、この程度の事で守れるものなら安いものだろう?≫

「分かっているなら、最初から下らん皮肉を吐くな阿呆が」

≪それでは貴様も張り合いが無かろうよ≫

「チッ……ああ言えば……! 起きろ、嘉穂。片付いたぞ」

結局、蹴り飛ばされたまま最後まで意識を失ったままだった嘉穂を起こそうとするが、呼びかけに対する返事が届かない。
ゲルヴィナードの視覚化が維持されているのであれば死んだという事もあるまいが……少々、荷物になるが、このまま外に運び出すかと思案していると巨大戦艦内の証明が赤く明滅を始め、警報を鳴り響かせた。

「何事だ……?」

≪管理システムだったナグルファルが消滅した。そして、この魔獣製造プラントは地球製。その二つから導き出される答えはただ一つ≫

「……自爆か!? 何分後に……いや、そもそも、爆発の規模は!?」

≪映画であれば、何もかもが都合良く分かる所だが……まずは脱出するべきだな≫

「チッ……! ゲルヴィナード! 視覚化を解除し、貴様のマスターをシルヴァールの玉座に転移させろ!
一刀! アラン! イリア! ラウバルド! プラント……ナグルファルが自爆する! 結界塔を集結させ中に避難し、結界魔術師達に死んでも防げと伝えろ!」

外で戦う戦士達の念話を完全に掻き消す程の大声を奴等の頭に直接叩き付けるとゲルヴィナードが姿を消し、玉座の中に転移した嘉穂を抱き止める。外傷は無く吐かれる吐息は一定のペースが保たれている。

「暢気な……! ええい! 飛べ、シルヴァール! 此処まで来て死んでなどいられるか!」

脚部の鉤爪でシェイサイドの肩を掴み、ナグルファルを天へと撃ち飛ばした際に穿たれた大穴を通り抜けて大空へと飛び出し、弧を描きながら翼を翻し、密集陣形を取る結界塔の中心へと降り立つと同時にプラントが大爆発と共に消滅した。

≪慌てて逃げ出して来た割には大した爆発では無かったな?≫

爆発の範囲は非常に狭く、綺麗にプラントを呑み込める程度の範囲に収まっていた。

≪人類闘争管理計画。その性質から察するに秘匿しなければならない計画である事は明白だ。アレだけを消滅させる様な仕組みになっている事くらい冷静に考えれば分かる事だろう?≫

「貴様……分かっているなら最初から言え!!」

≪貴様の取り乱す姿は中々の見物だったからな……流石に爆発の早さは肝を舐めたがな≫

「私も見たかったです……涼夜さんの取り乱す姿……」

腕の中で嘉穂が身をよじりながら、俺の両肩を掴み顔を上げた。意識がはっきりしているのか、していないのか……馬鹿げた事を口走る余裕があるくらいだ。何も問題はあるまい。

「嘉穂……気が付いたのか」

「ええ。どんな状況なのかよく分かりませんけど……」

「下を見れば分かるだろう?」

嘉穂と共にシルヴァールの足元に視線を移すと戦士達が勝利の大歓声を上げながら、肩を抱き合い、祝砲と言わんばかりに空に向かって焔砲を放っている。
アランと、レイスヴォルグから降りたイリアが人類勝利の演説を声高に叫び、その背後にはゴルトゲイザーを始めとする装甲騎士団の刻印装甲が整列していた。
アディンは空渡りで、一刀は光学迷彩を纏って姿を消している。まあ、勝利の雄叫びを上げるような連中では無いし、上げられても反応に困る。

「後はこうすれば映画のエンディングですね」

嘉穂は俺の方へと振り返り、上体を持ち上げながら、俺の首に両腕を巻き付け、瞳を伏せ、俺の唇を塞ぎ、鼻腔に甘い香りを残して顔を離した。

「ね? エンディングっぽいでしょう?」

そう言って彼女は悪戯っぽく笑った。そのあどけない無垢な笑顔に俺は――

「そう言えば素面でするのは初めてですね」

――悪夢の長期休暇の記憶を呼び覚まされ、二日酔いにも似た激痛が頭に走り心底辟易した。

「何にせよ、この世界での役割は全て終えた……帰るぞ。俺達の居場所にな」

「はい……最後にこの世界のお酒を堪能したら帰りましょう!」

――本当に勘弁してくれ


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