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瞬転のスプリガン 第6話

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sousakurobo

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「あれは……」
 成層圏の果てから徐々に高度を下げ、地上からも視認できるようになった浮遊物がある。
 半天の水色を塗り変える、ぞっとするような白。不可思議なことに、地上側を向いた底面には薄っすらとも陰
が生じていない。光を透く幽霊のようだった。
 一体の生物としては到底信じられない巨大さ。それが歴とした鳥影だということにも、ことねはしばらく気づ
けなかった。
 羽毛は群雲、炯眼は肥えた月。
 先に目撃した甲属魔族達はまだしも分かり易い怪物だったが、これはもはやその存在じたいが一種の異常気象
に等しい。
 岩から削り出したような手でひさしを作り、延加拳の天農は空を仰いだ。遮光器を常用する彼には意味がない
はずだったが、遠くを見渡す仕草として体が覚えていたのだろう。
「禽属の魔族か。それも大物だ」
「とりぞく」
 ことねは意味を察しながらも、何とはなしに鸚鵡返しに呟いた。強力なエーテルブラストの影響で鳥肌が浮い
ていたが、今度は気にするようすはない。
 魔族を大別する四大属の一、禽属の「禽」の正確な読みは「キン」である。天農がここで敢えて「トリ」とい
う言い回しをしたのは、先刻の反省がまだ辛うじて心に残っていたからだった。
「魔界の生き物である魔族には、ケモノ、トリ、ウロコ、コウラの四つのグループがある。このうち鳥の仲間に
似た姿をしているのが、禽属だ」
 そこで自分自身を納得させるように、「中身は全くの別物だがな」と付け加えた。
「数が少ないが一体一体が恐ろしく強力で、音速の数倍から十数倍というスピードで空を飛ぶ、敵に回すと一番
厄介なグループでもある」
 説明に不安を煽られ、ことねは不安げに視線を遠くへやった。
 昆虫の魔族らが激戦の末に総崩れになったらしいことは、天農から聞いていた。そこに出現したのが、恐らく
は彼らよりも強いという、あの鳥の魔族である。
 連戦にでもなればと思うと、気が気ではない。
「スプリガンさん、だいじょうぶでしょうか」
「今のスプリガンでは勝てない」
 天農はきっぱりと断じた。
「互いに攻撃が当たらず引き分けか、やられるだけのワンサイドゲームになるだろうな。だいたい、禽属とは相
性が悪すぎる」
 禽属魔族の攻撃は、もっぱら超高空もしくは高空からの広域エーテルブラストに限られる。戦闘中において降
下するという状況が有り得ないため、徒手空拳では攻撃が届かない。
 流派超重延加拳としては、極超音速という速さを乗せた機体そのものを砲弾と化して射ち出す対空の技“昇車
(のぼりぐるま)”が考案されてはいる。
 しかし、地形に恵まれなければ照準合わせすら困難を極め、発動できたとしても足場のない空中では直線的な
動きにならざるを得ない。同等以上の速度で自在に空を舞うことのできる禽属魔族にはまず命中しないだろう。
実戦で使用するには、大幅な改良が必要だった。
(エーテルドライブの出力がもう少し上がれば、あるいは空を飛ぶこともできるだろうが……)
 銃火器もなく飛行能力もない現状のスプリガンには、最初から勝ちの目がないのだ。
「そんな……」
 ことねは胸の奥から漏れそうになる絶望を閉じ込めようというのか、小さな手で口許を覆った。この世の終わ
りのような顔だった。
(果報者だな、スプリガンさん)
 自分がひとまずの安全圏にいることは彼女も分かっているはずで、気にしているのはむしろスプリガンの安否
なのだろう。それが天農には微笑ましい。
(さぁて。それで、どうするかね?)
 雲行きの怪しさを肌に感じながらも、天農はにやにやと締まりなく笑うばかりだった。

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  • ことねちゃんが可愛くて好きです、続き待ってます! - 名無しさん 2009-12-10 17:36:25

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