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Diver's shell another 『primal Diver's』 第五話

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irisjoker

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 Diver's shell another 『Primal Diver's』
 第五回:【怪物】


 第二地球歴五十五年。
 ネオアース。アルバトロス墜落現場。遺跡、最深部――


 それは眠っていた。一時の休息が必要だったのだ。
 目覚めてからまだ僅かな時間しか経っていない。だが、既にそれは成すべき目的を明確に理解していた。
 そしてその為に、一度眠る必要があった。

 そこはそれと同様、目覚めてからほんの僅かしか経っていないが、昔のようにそれを出迎えてくれた。入口こそ長い年月を経てくたびれてはいたが、中はまるで建造された当初のように調っていた。
 それにはおよそ『心』という物は無かったが、その光景は満足が行く物であった。

 それは昔から決められていた場所に落ち着き、そこにあった無数の『医師』が作業を開始した。
 それの傷は深かった。また、長い時間眠っていた為か所々治療が必要な場所もあった。それにとっては一か八かではあったが、その状態でもなお行かざるを得なかったのだ。
 だが、ここにくれば全て解決すると、それは解っていた。

 最初に『敵』から受けた攻撃は強力であった。
 それは甚大なダメージを受けたが、そのまま眠っている訳には行かなかった。なぜなら、すぐ近くに別の『敵』が迫っていたからだ。

 それはダメージを受けたまま戦わざるを得なかった。
 幸いにもその『敵』は脆弱な攻撃力しかなかったので、手負いのそれでも十分に撃退する事が可能だった。
 運動エネルギーを与えた金属片や科学エネルギーを用いた攻撃を仕掛けてはきたが、十分に観察した結果、それは脅威となりえるほどでは無かったのだ。
 万が一に備え、また手負いだったそれは念の為に盾を用いた。一種の電磁シールドと呼べる物だったが、それは使い方は解るが詳しい原理は知らなかった。

 幾つかの武器の試し撃ちも行った。
 それは『敵』が放つ電磁波を感知し、そこにエネルギーを集中させ瞬時にプラズマ化させた。もうひとつの武器も試した。あまりに強力な武器なのでかなり手加減はしたが、それでも『敵』を焼き払うには十分だった。
 そのビームは本来ならば、星を貫く程の威力があるのだ。

 それは満足した。
 自分はまだ成すべき事が出来ると理解した。およそ『心』と呼べる物は無かったが、歓喜したと言えるだろう。

 そしてそれは、『大いなる存在』に確認を取った。最初の一撃を放った『敵』がいかなる物か、知る必要があったのだ。そして、それが何処に居るかを知った。
 それはその準備の為に、遺跡の奥へと潜ったのだ。

 それの姿は悪意に満ちていた。なぜならばその為に造られたからだ。
 準備には多少時間がかかりそうだった。長い時間放置されていたので、作動の確認をしなければならなかった。また、『治療』も行わなければならなかった。
 最初の一撃を放った『敵』は推測するに強力である。故に、準備を怠る訳には行かなかった。

 やがて、それの背中に翼が取り付けられた。
 青白い発光を伴うそれは周囲の風景を歪ませていたが、それの指示で発光は偏向され、そして自由自在にその方向を変えた。
 光り輝く翼は、科学的に言えばイオンクラフトの一種であった。そして、それをMDHによってコントロールしていた。
 星の上ならば必要が無かったが、これから行こうとする場所へ到達するにはどうしても必要だった。

 それにおよそ『心』という物はなかったが、もしあれば凄まじい敵愾心に満ちていたはずだ。そして、それを造った者達はその感情に満ちていただろう。
 遺跡は求める者には様々な物を与えるが、『敵』にはそこまで寛容では無かったのだ。
 再び目覚めを待つそれは、彼等のルールに則りつつ、他とは明確に違う設計思想を有していた。

 やられたら、やり返す――

 その為に、それは眠っていた。全ては、『敵』を撃退する為に。
 目覚めた時、ネオアースに潜む怪物の一つはその能力を解き放つであろう。
 可能であれば、『戦士』の力も借りたかったのだが、それを操れる者が居ないと知り、それは一人で戦う為のプランを立てざるを得なかった。

 イオンクラフトの翼は出力を上げ、その発光をさらに強烈にしていった。テストは満足の行く結果だった。
 それが目指す場所、それは、宇宙だった。

※ ※ ※


「あれ?」

 第二地球歴五十五年。八月二十四日。
 ネオアース海上。マーレの船、船長室――

「う~ん……。やっぱりこりゃ……?」

 マーレは何やら困惑していた。目の前に広げた海図には、無数の赤い点が打たれていた。
 それらは全て、マーレや他の海賊達が発見した遺跡の場所を指し示す物だった。

「やっぱりおかしいなぁ~。うん」
「何がっすか?」
「遺跡の位置関係よ。ホラ、いままで発見された遺跡って結構まばらにいろんなトコにあるじゃない?」

 マーレと共に海図を見ていた大男、サシャは促されて海図を覗き込む。マーレの言うとおり、遺跡の位置はランダムに配置されていた。
 赤い点は海図の至る所へ散乱し、さながら赤いインクを上から振り撒いたような印象だった。
 ただし、その中のいくつかに法則性がある事を、マーレは発見したのだ。

「よ~く見てよ? ココがこれから行く例の墜落現場にあった遺跡。で、そこから南にまっすぐ進むと……」
「別の遺跡っすね」
「ここまで行った事は無いけど、聞いた話じゃほとんどの連中がガードロボの返り討ちに合ってる遺跡よ。他のより明らかに強力なのが居る。
 で、逆に北に進むと……。ほら、またぴったり別の遺跡と出くわす」
「偶然じゃない……っすよねコレ」
「うん。ここも返り討ちだらけの遺跡よ。まさかと思って東西調べたら、やっぱり同じだった。これらを結ぶラインの重なる地点に、これから行く遺跡があるって訳」
「なんか重要そうな場所っすね」
「問題はまだあるわ」

 マーレは別の海図を広げた。それは、陸地を中心とした海図。ちょうどマーレ達とは反対側の地表を表す物だ。

「これが何か?」
「まさかと思ったんだけど……。この陸地を中心にしたライン上にも、遺跡があるのよ。これは海軍だらけの場所で命懸けで調べたバカ共の功績ね。
 政府側はあんまり調査に積極的じゃないみたいだし」
「つまりこれから行く遺跡ってのは……」
「極めて重大な、陸地と同等の価値がある遺跡の可能性がある」
「ホントっすかぁ~?」

「何よその怪訝そうな顔は」
「だってそうとは限らんでしょ。造ったのは明らかに高い技術の異星人っすよ。なら最初からそんな風に造ったっておかしくないでしょ」
「ふふ~ん。まだあるのよ。なんと陸地からまっすぐネオアースを刺し貫くと……。じゃーん。なんとこれから行く遺跡です」
「で?」
「で? ってお前……。いい? つまり、法則性のある遺跡が惑星規模であるって事なの。
 何かしらの意味を持って位置を決められた遺跡がね」

 マーレは海図にラインを引いた。
 そして、それの上にある遺跡の場所をより大きく赤い点で印を付ける。次にトレードで手に入れた地球儀を持ってきた。
 ネオアースの地球儀は真っ青な表面に僅かな陸地があるだけの、一見すると地味な球体に過ぎない。
 しかし、マーレの手によってそれは赤いラインが引かれたビーチボールのような姿へと生まれ変わって行った。

「私の予想じゃ……」

 マーレはさらに点を足して行った。そして、それは完成する。
 赤いラインの上に、規則正しく打たれた点は、まさにネオアースを取り囲むように配置されていた。

「これが一体何なのか……。フフ。こりゃ楽しみだぜ」
「でも予想でしょ?」
「全ては推論から始まるのよボーヤ? それを証明していくのが楽しいんじゃない。それにコレ、アレに似てない?」
「アレ?」
「わかんないの? 宿題よ。明日までに答持ってきなさい」
「さいですか」

 マーレは地球儀を見ながら考えを馳せていた。もしかしたら、自分はとんでもない遺跡に行く事になるかも知れないと考えていたのだ。
 そして、その配置はマーレの考えた通りならば……。

「あ、そうだ」
「どうしたんすか?」
「私のハニーはどこ?」
「は?」
「フランよフラン。どこ?」
「ハニーってアンタね」
「あの娘お堅いくせに無邪気なんだもん。可愛くてね」
「アンタはバカなのか頭いいのかわかんないっすけどね」

 フランは用意された客室で寝ているらしい。それを聞いたマーレは不穏な笑みを浮かべた。即座にサシャが釘を刺し、制止しようと試みた。

「向こうは客人なんすから……」
「何よつまんねー男。それに多分あの娘なら……。アンタに出した宿題を一発で解くわ」
「なんで?」
「それは教えられないわねぇ。ヒントになっちゃうから。自分で考えなさい」
「めんどくさ」

 サシャは船長室から出て行った。なんだかんだで考えてはみるらしい。
 マーレは一人、海図と地球儀を眺める。そして、本棚から一冊の本を取り出した。失われた母星、地球の伝説や神話を纏めた物だ。
 マーレはその中のあるページを開いた。そして、それと海図を見比べた。

 頭の中にあったのは、人類の感覚では決して同時に存在しえない事である。彼等には恐らくそれがあったのだ。
 まったく推測の範囲を出ない事ではある。だが、もしその通りならば遺跡や彼等についての研究は大きく前進するだろう。
 そして、彼等がそれを現実にする力を持っていたら。

 マーレは震えた。武者震いだ。彼女の知識欲は今、極限の空腹を訴えている。
 早く知りたい。早く……! 早く!! この二つの推測が正しければ、彼等はとてつもない物を遺した事になる。その推測一つは、彼等の精霊信仰。
 もう一つは、フランの発言によって信憑性を得るであろう、ある推測。

「フフ。ヘタすりゃ死ぬかもね……」

 マーレは本を見た。
 それには地球の、そして人類の伝説しか記載されていない。彼等の信じた伝説や神話とは一致しないはずである。だが、マーレはそのページから目が離せなかった。
 そこに書かれていたのは、地球で語られた恐るべき海の怪物。

「……リバイアサン」

 描かれていたのは、巨大な身体を持つ怪物の姿だった。


続く――

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