アットウィキロゴ

創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

機神幻想Endless 第一話 エーテル能力者 前編

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
語り部:閼伽王

西暦の某日。ある預言者が世界の崩壊を予言した。
そいつは余りにも荒唐無稽で、現実味が無く、馬鹿馬鹿しくて、アホな予言としか言い様が無かった。
それを真に受けて本気で怯えるアホもいれば、鼻でせせら笑って何事も無かったかの様に日常に戻る面白味の無い奴もいる。
ここぞとばかりに商売に繋げる商魂逞しく、薄汚い金の亡者もいた。

とは言え、世の中って奴は思いの外、常識的に出来ていやがる。
大多数を占める面白味の無い連中はアホな予言スルーして、繰り返される面白味の無い日常を謳歌していた。

そして、ついにやって参りました、予言の日!
そこにあるのは世界の崩壊。破壊された日常。消滅した文明――なーんてこたぁ無い。
普段通りの日常が始まるだけだ。そして、誰も彼もが口々に言うのさ。

――馬鹿馬鹿しい

ってな。まあ、ハナっから眼中にねぇ連中達はそんな予言があった事すら忘れていたんだろうけどよ。
だが、ソイツは滅ばなかった世界の連中の現実であって、世界の崩壊を目の当たりにした連中にとっての現実じゃあない。

海は枯れ、大地は腐り、天は裂け、生物は毒を産む。
世界、文明、秩序の崩壊。涙の雨が降り、血の海が流れ、死人の大地が広がる。
それが滅んだ世界の連中にとっての現実であり、日常ってわけだな。

けど、そいつは俺やお前等の日常じゃねぇし。どうでも良いと言えば、どうでも良い。要は他人事って奴さ。
そんなこんなで崩壊の日を迎えた世界はさぞかし、クソみたいな歴史を刻むことになっただろうよ。
だが、人間って奴ぁ存外にしぶとい。もうどうしようもないってところまで行っても、男と女。取り合えず一人ずついれば何とかなる。

本当かよと突っ込みたくもなるかも知れねぇが、実際にどうにかなっちまったんだから仕方がねぇよな。
だが、星その物をミキサーとかで、ぐっちゃぐちゃにかき混ぜて、床の上にぶちまけた様な状態にまで落ち込んだ筈なのに
必死こいて生き抜いて、気が付けば星を再生する奴が現れる始末なのだから、本当に人間って奴はしぶといモンだ。
ひっくり返っても抗えないような、どうしようもないものに踏み躙られても、立ち上がる。
それどころか、踏み躙られる前よりも、遥かその上を行くんだから、どうしようも無い。

――ゴキブリですら道を空けるってもんさ。

我等が人間の母星。偉大なる地球の再生を終えて、一段落――
そう思っている矢先に倭国人達が大挙して、月へと飛び立ち、第二の地球を生み出した。
何っつー、滅茶苦茶をしやがると驚いているのも束の間。
倭国人共が月なら俺達は火星だ。じゃあ、俺は水星だ。私は金星ねと地球を飛び出し新たな大地を作りに出た。
次々に成功する惑星開拓。西暦――A.Cが示す意味を理解している奴が、ただの一人もいなくなった頃になって、新たな暦を作り出そうという話が上がった。

そこで名付けられたのが統合暦だ。ざっくばらんに説明すると人類一丸となって未来を切り開きましょうねーって意味で付けられたらしい。
だが、人間ってのは叩き潰されると必死になって立ち上がるが、余裕が産まれると、どうしても阿呆な事をやりたがっちまう。

――戦争

そりゃあなぁ、人間の歴史は戦いの歴史さ。態々、歴史を紐解くまでも無いし、否定出来る要素なんぞ欠片もありやしねぇ。
なんで、人類一丸となって頑張りましょーねーって言った矢先に戦争が起きたのか? 今となっちゃあ、理由なんぞ分からん。
何でかって? 暦が西暦から統合暦に変わって早百年。戦争をやり始めた連中なんて、とっくにくたばっているのにも関わらず、戦争は止まりゃしねぇ。

戦争は人間の文化なんですーってか? それは良い。傑作だ。何とも高尚な文化だ。文化万歳。
そんなわけで、今を輝く統合暦もついに今年で百周年。人類発祥の地、地球では本日も休まず、一心不乱の大戦争! アホか。
アホくせーし、バカみてーだけどよ、これが俺の日常、これが俺の現実、これが俺の世界。

ようこそ、地球へ。本日も地球では全土で銃弾と血肉が飛び交う、戦争パレードを実施中で御座います。
なんて事が無いのはせめての救いなのかね? それとも、五十歩百歩かね? どっちにしてもクソッタレだけどな。
もう統合暦の理念なんて諦めて、其々に好き勝手やっていれば良いんじゃないのかね? 俺の迷惑にならないようにな。

大体、惑星規模の戦争なんて、エーテルの無駄遣い以外の何物でも無いって事に気付かないのかね? 気付いてねーんだろうなぁ……
そりゃあ、他の星の連中から地球人は愚か者だって言われるのも無理ねーよなぁ。ドイツもコイツもアホばかりだ。

機神幻想Endless 第一話 エーテル能力者

太陽系内の惑星開拓は順調に進められ、地球からの援助も必要としない独立国としての体を生しており、それは一つの惑星が一つの国として考え方が浸透しつつあった。
そして、地球も宇宙に浮かぶ新興国に倣い、一つの国に纏まろうとしていたが、其処で一つの問題が発生した。

――誰が地球の指導者になるのか?

全人類が一丸となって未来へと道を切り開くという願いを込めて名付けられ、希望に満ちた新たな歴史は皮肉にも新たな戦乱の呼び水となって塗り潰された。

潤沢な資源と圧倒的な物量で地球全土の掌握を目論む、西方大陸のヴィルゲスト共和国。
革新的な最新技術を次から次へと実用化へと進め共和国を阻む、東方大陸のスクレイル帝国。
そして、両国に対し主権放棄と、国家の解体を呼びかける声明を出したまま、動きを見せない神聖国家連合。

地球の覇権獲得競争は、その三つの大国によって繰り広げられていた。
その中でも帝国と、共和国はその領土を着実に拡大させつつあり、事実上の一騎討ち状態となっていた。
そして、スクレイル帝国は地球の覇権を握る次なる一手として、エーテル能力者専用人型機動兵器エーテルナイトの実用化に踏み出した。
新たな戦争の忌み子の影が、地球を覆い尽くそうとしている中、そんな事など露知らず、戦争どころか文明からさえも縁遠き辺境の地で、穏やかな日々を謳歌している男がいた。

男の名は閼伽王(アカオウ)、王の名を冠しているが国を追われた亡国の王子でも無ければ、土地を奪われた没落貴族でも無い。
無造作に跳ね上がった金髪に鋭い切れ目の碧眼、身の丈は百八十程と長身ではあるが、その上半身には纏うべき衣類は何も無く、ぼろきれ同然の黒ずんだハーフパンツが一枚だけ。
みすぼらしく風采の上がらない姿だが、若さゆえの精悍な顔立ち、露になった上半身は鍛え抜かれた筋肉で盛り上がっており、鎖骨から肩と腰にかけて刻まれた片翼の様な模様のタトゥが辛うじて、貧相な出で立ちを打ち消していた。

さて、閼伽王の素性だが、それは当の本人にも分かっていない。
彼が物心付いた時には実の親は命を落とし、その幼い手を握っていた大人は血の繋がりの無い、善良な他人で己の出自を知る者は誰一人としていなかった。
だが、実の親兄弟の顔や名前、出身地、自分の名前を知らない者など今の時代、掃いて棄てる程で何も珍しい事では無い。
そして、気付いた時には、周囲にいる人間達は皆、彼の事を閼伽王と呼び、彼はその呼び声に応えるようになっていた。
親代わりになっていた大人達曰く、その名付け親がどういう意味で、彼に閼伽王という大仰な名を付けたのか、聞く前にくたばったとの事である。
そして、今となっては、その親代わりを買って出てくれた善良な大人達も、一人残らず、戦争に巻き込まれ、灰になってしまった。
年が、十になるかならない頃になると、嫌でも自覚するようになった。

――何処に居ても、誰と居ても長くは生きられない。

そして、いつ死んでもおかしくない時代ならば、いつ死んでも後悔しないように面白可笑しく、好き勝手に生きようと考えた。
幸いにもと言うべきだろうか、面白可笑しいか如何かは別として、閼伽王には好き勝手に生きてくだけの力が宿っている。
だが、好き勝手に生きる力はあれど、何をすれば面白くて、可笑しいのかが分からない。
当時の閼伽王の日常は死からの逃避と、死から逃げ遅れた者を看取る。
たった二つだが、その二つで彼の人生を語るに足りるほど、何も無い人生だったからだ。
だが、それも昔の話で、今は安住の地を見つけ出し、それなりに面白おかしい人生を送っている。

スクレイル帝国本土から遥か南方、面積十キロ平方メートル程の小島が七つに連なる群島。通称、セブンス。
その真ん中にある無人島に閼伽王が居を構えて三年、今となっては総人口約二千人のセブンスの島民にとって無くてはならない存在になっていた。

閼伽王の朝は早い。何せ島民にとって、無くてはならない存在になっているのを自覚出来るくらいだ。お天道様が天辺に登るまで寝ている暇など無い。
だが、それでも眠いものは眠い。前日に少しばかり無理をしたのだから仕方が無いが、此処で寝過ごしては無理をした意味が無くなる。
必死の思いで、風采通りのあばら家を出て、海を一望出来る岬の上まで身体を引き摺り、夢見心地の足取りと、寝ぼけ眼のまま海へと向かって転がり落ちた。
腹から落ち、海面に叩き付けられた痛みで目を覚まし、冷たい海水に揉まれながら、寝汗と目脂を洗い流し、口をゆすぐ。
毎朝恒例、みすぼらしい王様の大雑把で、適当で、いい加減な朝の身支度タイムである。
セブンスでは蛇口を捻れば真水が出るという環境では無く、命を奪い合う程貴重では無いにせよ、手にするには少々の手間と時間を要する程度には貴重な代物だった。
この男に限れば、面倒臭いから何もかも海中で済ませてしまえば早い。そんな大雑把な考えが占めており、このまま髪や身体が乾いた後に髪がバサ付き、身体が潮でベタ付き磯臭くなっても全く気にしない。

それどころか――

「海ってのは風呂、便所、食料庫で兼用出来るから便利なもんだぜ!」

――などと意気揚々とのたまいながら、砂浜に這い上がってくる始末である。

そして、得意気な表情のまま指を弾き、その指先から焔を迸らせ、身支度ついでに捕まえてきた魚を焙る。
炎に包まれ、良い塩梅にその身を焦がし、脂が溢れ、漂う香ばしい匂りに早く食い物を寄越せと閼伽王の腹がけたたましく、がなり声を上げた。
閼伽王は腹を撫でながら、先程と同様に指を弾くとたちまちの内に、魚を炙っていた焔は脂の焼ける音だけを残して消えた。

「いただきます」

――俺等は他の生きモンから命を頂いて生きてるからな。感謝の気持ちと、自然に生かされているって事を忘れんじゃねぇ。
感謝する事に善も偽善もねぇ。他の生きモンどころか、人様の命奪ってシノギ削っている人間だからこそ尚更、忘れんな――

親代わりとなった大人達の教育方針の賜物で、閼伽王は目を伏せ、一礼をしてから魚に齧り付いた。
勿論、面倒臭いので、エラも、ウロコも、骨も取り除かない。全部、まとめて胃の中に納めて、腹の虫を黙らせた。

「味付けが潮水の塩分だけじゃ物足りねぇなぁ……」

骨、エラ、ウロコが気にならないのだから、味も……と言うわけでにはいかなかったらしく、少しばかり不満気な表情を浮かべた。
とは言え、腹の虫を黙らせた今となっては、どうだって良い事で閼伽王は気を取り直して、元来た道を引き返す。

閼伽王のあばら家の前。其処には昨晩、彼が無理をした成果が芽吹こうとしている。
面積十アール程の深緑の絨毯、立派に育った植物の青葉。それを一気に引き抜くと見事に肥え太ったサツマイモが地中から顔を出す。
満足の行く仕上がりだったようで嬉しそうに目を細め、口元を緩めた。

「ヘッ……ヘヘヘ……栽培開始から収穫期まで二十時間ジャスト……質も量も文句無し! 流石、俺! 今回も絶好調だな!」

閼伽王は自画自賛しながら慣れた手付きで、次から次へと、サツマイモを引き抜いていく。
彼の里親の中に農民が居たわけでも無ければ、実は農家の生まれで農耕の超能力があると言うわけでも無い。
ついでに言えば、農業に対して強い思い入れがあるわけでも無い。
ただ安定して食糧を生産する事が出来れば、取り合えず、食うには困らないだろうなという思い付きだけで始めただけだ。

「今日は三番島の日か……しっかし、こんな未開の島じゃ贅沢も言ってられねぇが、軽トラくらいは欲しいよなぁ」

閼伽王は愚痴をこぼしながら、掘り起こしたサツマイモを島の漁師から譲り受けた魚網の中へと放り込んで一纏めに縛り上げた。
そして、指の骨を鳴らし、舌なめずりをしながら長身の閼伽王を軽々と覆い隠す程のサツマイモの山に手を当て、目を瞑った。

「構成干渉開始……強度変換並びに……構成対象の重量変質……」

大雑把で、適当で、いい加減な閼伽王が一言一言を確認するように緊張した面持ちで呟き始める。
体内に内包されたエーテルを体外へと排出し、掌へと収束し、呼吸と共に球状に収束したエーテルを撃ち飛ばしサツマイモの山を呑み込む。
ゆっくりと目を開けた閼伽王は溜息を一つ吐いて、両手に力を込め、魚網で纏められたサツマイモの山を持ち上げて、サツマイモの重さを確かめるように揺すった。

「おっし! 軽い軽い! ここまでは成功だな!」

明らかにキロ単位どころかトン単位はある筈のサツマイモの山を悠々と持ち上げた閼伽王は愉快そうに笑って、頭の上に乗せた。

「よーし……さっさと行くかぁ!」

閼伽王は南方に百五十メートル程の距離にある人口三百人程の島。通称、三番島へと足を向けた。

「さて、今日こそ成功すると良いんだが……今日の俺は絶好調だからな!」

砂浜に立ち、三番島を親の敵でも見るような目で睨み付け、目を閉じ、サツマイモの重量を変化させた時と同様に体内のエーテルの操作を開始する。
だが、今度は体外に排出するのでは無く、体内で血液の様に循環するエーテルの流れを変え、身体の構造を変質させる。

イメージ――沈む事無く海面を踏破する浮力を持つ脚

左上半身を覆う翼のタトゥが仄かな光を放ち、自身の両足を包んだのを目視で確認した閼伽王は意を決した様に海面に向かって第一歩を踏み出す。
そして、閼伽王の右足は海面の上に降り立ち――そのまま、海中へと埋もれた。

「絶好調でも、これは無理か……別に良いけどよ」

閼伽王は不服そうな表情を隠そうともせず、百五十メートルの距離を立ち泳ぎで踏破し、島の中心にある集落へと向かった。
其処には閼伽王と似たり寄ったりの格好をした男連中がパイプを吹かし、それよりも多少、マシな格好をした女達が雑談に興じている。
月に一度、閼伽王が出鱈目な量の野菜や果物を頭の上に乗せて、セブンスの島々を巡っているのは周知の事で今更、驚く者など一人も居ない。
尤も、何かしらの用件が無い限り、閼伽王が中央の無人島、通称四番島の外に出る事は無いという事もあり
純粋に閼伽王の来訪を喜ぶ者ならごまんと居るようで、閼伽王に気付いた若い女達が黄色い声を上げながら手を振り
その声に気付いた子供たちが集落の其処彼処から集まり、閼伽王を取り囲む。

「これはこれは……今月はサツマイモですか!」

好々爺といった風体の三番島の島長が子供たちの波をかき分け、閼伽王の前に歩み出た。

「ああ! サイツマイモって奴はよ、元々の繁殖能力が高いだろ? かなりの量を作れるんじゃないのかと思ってな!
ちぃとばっかり作り過ぎた気がしなくもないが……まあ、一ヶ月もありゃ、食い切れるだろ?
食いきれない分は砂糖にするなり酒にするなりして処分してくれや!」

三国の戦争が激化してから、特に此処十年。海域が封鎖された影響で商船団がセブンスに訪れる事も無くなり
完全な自給自足を強いられたセブンスの住人には食料を得るには近海で漁をする以外の手段が無い。
選ばなければ、飢えない程度に食っている環境ではあるが、それを不憫に思った閼伽王はこうして作物を配り歩いているというわけだ。
尤も、魚介類ばかりでは自分が飽きるからという理由も多分に含まれているが。

「いつもいつも、ありがとう御座います」

「気にすんなよ、爺さん! ここの島は育ち盛りのガキが多いからな、俺も作り甲斐があるってもんだぜ!
来月は南瓜を持ってきてやっからよ、女共と相談して美味いモンでも食わせてやってくれや!」

穏やかな笑みを浮かべる島長に対し、閼伽王も快活な笑顔で返していると、周囲に集まった子供たちが興味深そうに閼伽王の頭の上を指差して声を上げた。

「ねー! 王様ー! 今日のお土産は何ー!?」

「よお、悪餓鬼共! スゲーだろ? これな、サツマイモって言うんだぜ? 知ってたか?」

そんな子供達の様子に気を良くした閼伽王は得意気な表情で指を差した。
因みに王様という呼び名は子供達が自発的に呼ぶ様になったのでは無く、閼伽王がそう呼ばせている。理由は気持ちが良いから。その一言に尽きる。
実に馬鹿らしい理由だが、基本的に無償でやっているのだから、実にささやか過ぎる報酬とも言えた。馬鹿らしいが。

「すげー! で、何なのコレ?」

「このガキ、適当に話し合わせやがって……」

閼伽王は憮然とした表情をするが子供たちが知らないのも無理は無い。
大人なら話は別だが、子供達にとって、この島が全世界であり、この島に無い物は何一つとして知らず、唯一の例外が閼伽王なのだから。

「甘くてうめぇモンだよ――Moi ke Yha n tos」

だから、すぐさま自慢げな笑みを浮かべて、頭に乗せた魚網を地面に下ろし、サツマイモを一つ取り出して、短い呪文を唱えて指を弾く。
すると彼の手に握られたサツマイモから湯気が立ち上り、それを真っ二つにすると焼けた黄金色が顔を覗かせ、甘い香りが漂った。
余談だが、呪文は適当に言葉を並べただけだ。小規模の干渉なら浜辺で火を起こした時同様に指を鳴らすだけで事足りる。
娯楽の乏しい子供達のために、ちょっとしたパフォーマンスをしているだけだ。実は大してウケていない。

「ほれ、食ってみな。熱いから気を付けて食えよ?」

所謂、焼き芋だが、文明から置き去りにされたセブンスに住む子供達にとっては非常に珍しく、甘い香りのナニカに子供達は群がり、我先にと頬張り、その甘さを堪能した。


「まあ、ナマで食っても美味くはねぇんだが、加熱処理する事によって酵素がデンプンを糖化……」

「まっじぃぃぃぃ!! 味しねぇぇよぉぉぉ!!」

「言ってる矢先に生で食ってんじゃねぇ糞餓鬼! コイツは火を通さないと甘くなんねぇって言ってんだろうが!」

得意気な表情で講釈を垂れている最中に一人の子供が魚網からサツマイモを取り出し、噛り付くが加熱した時の甘さなど微塵にも無く
悲鳴混じりの絶叫を上げ、閼伽王は額に青筋を立て、子供からサツマイモを奪い取り、サツマイモの構成情報を書き換える。

――対象物質を十分間、七十度で加熱

閼伽王はそのプロセスを瞬時に行い、子供に投げ返して踵を返した。

「王様、もう行っちゃうのー!?」

到着早々に帰ろうとする閼伽王に子供達が口々に不満を漏らし、今し方焼き芋を受け取った子供は自分が怒らせたからではと不安げな表情を浮かべた。
子供を相手にそんな事で一々、腹を立てていては子供の面倒など見ていられない事くらい、閼伽王とて重々に承知している。

「ちぃと丘の上に住んでる変人と話があるんでな。それが終わったら遊んでやんよ!」

ニッと笑って不安げな表情をしている子供の頭を乱暴に撫でながら、丘の上にポツンと立つ小屋を顎で指し
島長からザルを無断で拝借し、サツマイモを適当に積み上げ、子供達に後ろ手で振って丘の上へと足を伸ばした。


 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます)
+ ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー