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機甲闘神Gドラスター 第三話(前)

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 地上より遥か上空、二体の巨人が激闘を繰り広げている。
 Gドラスターと剣を交えるのは、今までとはやや趣の違うプレネガス。今までのように歪なものではなく均整の取れた人型をした剣戟特化型。
 主兵装である光剣、強固ながら可動範囲を制限しないシンプルな外装、そしてさらに防御力を高めるビームシールド。プロポーションの良い機体が初めてなら、内蔵型以外の兵装を所持する機体も初めてだった。
 体系的には節操のない連中だが、いよいよ本腰を入れてきたのか、はたまたノウハウの蓄積ができてきたのか。
 日々手強くなってゆくエンドア――その奥に潜むモノを相手に、壮馬は言い知れぬ何かを受け取った。
 実態は全くと言っていいほど掴めていない。本当にさらなる黒幕がいるかどうかも定かではない。だが確信めいた予感はある。
 それでも、今相手をすべきは、この目の前のプレネガス。
 プレネガスの振り下ろしをドラスティックブレードで受け流し、GドラスターはGEMで輝く左腕を発射する。
 身体ごと弾き飛ばし二者の距離は開いたものの、決定打には至らない。見た目以上に、本体の防御力も高い。さらなる攻撃力が必要だ。
 すかさずシャイイング・アローは軌道を変え、Gドラスターに迫るプレネガスの腕を取る。
 掴まれた右腕を振り回され、プレネガスは僅かながらに動きを止めた。
 一撃で破壊しきれないのならば、攻撃力を奪えばいい。
 一撃で破壊しきれないのならば、より強力な一撃で仕留めればいい。
 ブレードを納め、パワーを高める。吹き出した炎のようなGEMが、Gドラスターの全身を包んだ。
 その頃、プレネガスがシャイニング・アローを振りほどくことに成功した。
 ほぼ同時に、
「GEMスピリット・クラスター!」
 燃え盛る光球が放たれた。
 シャイニング・アローに気を取られていた分、プレネガスの反応がワンテンポ遅れた。
 避けきれないと判断したプレネガスは、完全な防備体制をとる。ビームシールドの出力を最大にし、身体をシールドの陰に隠した。

 だが――

 それも空しく、GEMスピリット・クラスターは、プレネガスをシールドごと瞬く間に消滅させた。

 射出した左腕が帰還し、肘先に装着される。
「よっしゃあ! 大勝利!」
 コックピットで、パイロットスーツに身を包んだ隆斗が、力強くガッツポーズをした。
 スカウトして約一週間。出来る限りの訓練はしてみたが、期待以上によくやってくれた。満足するレベルには未だ程遠いが、それは完成度についての話。実質初実戦としては上出来だろう。むしろ成長度に関しては破格と言っていい。
 壮馬とて、それには少々驚かされた。これは本当に拾い物だ。思いの外早く物になるかもしれない。
 当の隆斗は物事を気軽に捉えて、さっそく緊張感のない一面を顕にしている。
「ねぇねぇ。ミツキちゃん、見ててくれた?」
『はい。ちゃんと見ていましたよ。とても素人とは思えません』
 その折、不意に違和感が襲った。
「でしょでしょ。もっと褒めて。俺って褒めて伸びるタイプだしさ
 それはさながら嵐の前の静けさ。
『でしたら、わ――』
 中途半端なところで、通信が途絶えた。
 不自然な静寂が、コックピットを支配する。
 本来は常に響いているはずの微弱な音や振動もない。
「ん?」
「へ?」
 一瞬の間を置いたと思った途端、一斉にシステムダウンし始める。
 バタバタと計器が死んでいき、咄嗟の状況把握もままならない。
 次々にモニターが真っ黒になってゆくのを止められず、見る間に視界が闇に染まってゆく。
「――うおっ!?」
 場所は高度数千メートル。
 ついに機体が完全に脱力した時、鋼鉄の巨人は自由落下を開始した。


 数時間後、Gドラスターは超動技研の格納庫にいた。
 そこかしこには、修理と整備でわたわたと忙しなく動く無数の職員たち。
 人と機械の発する音と熱。喧騒と熱気に満ち満ちた空間。
 Gドラスターの足元には、パイロットスーツを半分脱いで肌着姿の上半身を晒している二人と、計測されたデータに顔をしかめる十字がいた。
 この異常事態をどう話したものか。
 問題が複雑に絡み合っているため、一から十まで説明してては、時間がいくらあっても足りない。頭を掻きむしりながら、十字は端的に結論を述べてみる。
「参ったな、こりゃ想定外だ。クラスターの使用時にパワーが上がり過ぎてる」
「おいおい。幾ら何でも、機能停止までいくモンなのかよ」
「いかないモンなんだがなあ……」
 不思議そうにボヤくマッチョサイエンティスト。
 十字ほど科学に明るいわけではないが、壮馬もちょっとした知識くらいは持っている。興味本位に横から覗き込めば、十字の態度にも合点がいった。軽く流し見した程度でも異常な結果なのは明白。十字同様に顔をしかめることになる。
 一方で、まるで知識のない隆斗は蚊帳の外に放置されることになる。
 だが二人の様子が気にならないわけではない。知識がないなりに、制作者様に質問を投げかけてみた。
「えーっと……よくわかんないケド、ひょっとしてドラちゃんは未完成ってことスかね?」
「いんや。お前のせいだ」
「俺ェ!?」
 思いもよらぬ返答に、思わず声が裏返る。
「要するに、機体は完成してる。まあ、細かいとこはちょこちょこ改良してるけどな。ただGEMは知性体……この場合、俺らパイロットだな。その精神に反応する性質がある」
 わけもわからず犯人扱いされた隆斗に、壮馬が補足説明をする。
「で、二人で乗り込んだら、当初は上昇値も加算になると思われてたんだが、実際には乗算されたってわけさ。んで、過負荷がかかってあの有様と。だろ、十字?」
「データ見る限り、基本的にはそれでいいんだが、細かいブレがあるんだよなァ。下手すっと何かの拍子に累乗になったり、あるいは計算自体無視して急上昇する可能性もあるな。今後も考えたら、大幅な手直しが必要かもしれん」
 話を解りやすくするため、数値を単純化して考えてみよう。
 例えば現時点のGドラスターのGEM限界値を10、壮馬に反応するGEMを4、隆斗は3とする。
 初めは足し算されて7になると想定されていたものの、先程GEMスピリット・クラスターを使用した際には、掛け算されて12まで達していた。
 もしまた明日も戦闘があり、その時も使用した際には、64まで上昇するかもしれない。あるいは100の大台に乗ることになるかもしれない。
 勿論、正確にはこのように簡単な話ではない。だが異常の度合いはわかるだろう。
「ったく、次から次へと問題が出てくる」
「研究途上だから仕方ねえだろが」
 そんなことは百も承知だと、辟易しながら十字は言う。
 そこでふと、隆斗の頭に素朴な疑問が浮かんだ。
「でも十字サン。俺の初陣や、実機を使った訓練中は、何事もなかったっしょ」
 訓練中の機体の調子は、むしろ絶好調といった様子のはずだった。
 事実、問題がなかったからこそ、何の説明もなくいつもの調子で出撃したのだ。
 それが何故、ここにきて急に不具合が発生することになったのか。
「そこはまあ、訓練と実戦の違い。あとお前の慣れで上昇値も変わったんだろ」
「わけわかんないエネルギーだなあ」
「ぶっちゃけオレもよくわからん」
「ぅおい!?」
 今、何か凄いことを聞いた。
「アンタ、GEMの権威で第一人者のハズじゃあ……」
「だから研究途上なんだって」
 悪びれもせずに軽くあしらわれた。どうやらこの点に関しては、これ以上の問答は無用のようだ。
 そして壮馬が提起する別の問題。
「しかしどうする。エンドアが動き出してる以上、悠長に全面改修とはいかんだろ」
「ですねえ。奴らもどんどんプレネガスの強化してるって話でしょ。アローやブレードの通常使用はできても、必殺技が使えないのは、やっぱ厳しいスよ」
 今は壮馬の腕でカバーしている状態だが、決定打の選択肢が限られているのは痛い。
「どうにかして炉の負担を減らさないと、同じことの繰り返しってことスよね」
 特に今回の敵などは、必殺技の圧倒的な威力で押し切った形になる。
 もしも複数の強固な敵が出てきた場合などはどうするか、いやそれ以前に、一撃で倒しきれない敵が現れた場合はどうするのか。
 果たしてその状況を打開する手段はあるのだろうか。


「あ! 別のエネルギー積んでハイブリッドにするってのは?」
 良いこと考えたとばかりに、隆斗は十字に提案するが……、
「却下。つーか、既にサブとして通常動力は積んでる。おかげで一度はシステムダウンしても、何とか地面とのキスは免れたろ」
「すぐに最低限の操作は受け付けるようになりましたもんね……。んじゃ、GEMの余剰生成分をコンデンサに蓄えて――」
「おいたもんも使うのが、必殺技な」
「おぉぅ……」
 下手の考え休むに似たり。隆斗の浅はかな思いつきは、先回りで潰されていた。
「いっそ完全に別の動力に……は、無理か。GEM研究の一貫らしいし」
 いよいよ思いつきも尽き果て、がっくりと肩を落とす。
「予算も国からの研究費が絡んできたりするしな」
「うっわぁ、世知辛ぇ」
 あまりそういう話は聞きたくなかった。やはり人の世も地獄の沙汰も、何はなくとも金がなくては回らないのか。
 やはり世の中、もっとシンプルに、悪を倒すの一言ではいかないらしい。誰かが裏で面倒事を引き受けてくれることで、スムーズに事が運ぶようできているようだ。
 わかっていなかったワケではないが、いざ言葉にされると、不思議とやるせない気分になってくる。
 隆斗の内心を知ってか知らずか、十字が隆斗の嫌いな世知辛い一言でもって追い打ちをかける。
「……給料はちゃんと出してやるから安心しろよ?」
 いつの世も、正当な対価は、労働者の長期的なモチベーション維持に重要な役割を果たす。
 そして対価は、社会的な価値尺度として流通しているもの、すなわち貨幣の形で支給されることが多い。
「俺が気にしてるのは、そこではなくて。いや、もちろん給料も大事スけどね」
「税金、保険なんかもバッチリサポート! 遺族年金だってちゃんと支払われるから、安心して戦いに挑め」
「死ぬこと前提かよ! 爽やかにサムズアップして言うこっちゃねぇ!」
「いやいや。こういうのは生死の如何に関わらずやっておくべき手続きであってだな」
「あーはいそーですねー。世の中甘く見たガキでスンマセンでしたー」
 何やら不貞腐れて、身体をブラブラ揺らす隆斗。
 このまま放っておくと果てしなく脱線しそうなので、一つ壮馬が咳払いをして自分に意識を向けさせた。
 適当に話を纏め上げる。
「まあとりあえずだ。通常戦闘は可能なんだ。とりあえずは、騙し騙しやっていくしかねぇな」
「外したら後が無いあたり、文字通り一発勝負の必殺技かぁ」
「隆斗、お前と一緒にすんな。外しゃしねぇよ」
「ひ、酷ぇ……」
 素人に毛の生えた程度と言い切られ、隆斗も一瞬は落ち込んだ。訓練期間的にはその通りだが、元の身体能力も、クリアした課題の難度も、隆斗本人はそれなり以上のものだと自負していたのに。
 確かにそれは事実。飲み込みの速さや元のスペックの高さを考えれば、常人視点では既に一流に片足を突っ込む程度に達してはいる。だが壮馬から見れば、やはりまだまだ未熟者に他ならない。何より能力以上に、経験値に不安が残る。
 さすがにこの言い様は悔しかったらしく、すぐに気を取り直してこのままシミュレーターに向かおうとする隆斗。しかし壮馬に止められる。
 とりあえず休養は大事だと言い聞かせられ、渋々ながら自室に戻っていった。
 隆斗の姿が廊下に消えたのを確認した後、壮馬は本題に入る。
「だが十字よ。隆斗の言う通り、いざとなったら、GEMの研究がどうとか言ってられないことになりかねないのも事実だぜ」
 今後も動作不良が確実視される以上、場合によってはエンドアへの対抗手段を変える必要も出てくることになるだろう。
 その時には……。
 壮馬の言いたいことを察し、今度は十字が自分の考えを告げる。誇りにかけて、手をこまねいているつもりなど毛頭ない。
「何、実は腹案はあるんだよ。そうならないよう手は打ちゃあいいだけさ。それまで戦闘はお前らが頑張れ」
「せいぜい期待させてもらうよ。だからお前も頭脳労働で頑張れ」
「おうさ」
 と、十字は言うものの……。
「しかし本当、どうしたモンかねぇ」
 独りごち、整備中のGドラスターを見上げる。
 自信満々に十字は答えた。だがそれが言い知れぬ不安を呼び寄せる。
 いつまでも消えぬ不安に、壮馬は苦笑いを浮かべるのだった。




「しかし本当、どうしたモノか」
 この世のどこか。エンドアの秘密基地、その居間にあたる部屋で、がっしりとした体格をした長髪の男がいた。
 黙っていれば理知的に見えなくもない男だが、今の彼は怒りに任せて机を叩く。
 部屋にはもう一人。
 勢い余って机が破壊されないかと心配しながら、近くで黙々と読書をしていた女が、読んでいる雑誌のページを捲った。
「これだけ負けが込むのは只事ではないぞ」
 怒りながらも、男はわざとらしく言う。無視を決め込んでいる女から、何か声をかけて欲しいらしい。
「そ」
 女がまたページを捲った。
 返ってきたのは素っ気ない一文字のみ。男はますます声を荒げる。
「悔しくないのか、セイナ!」
「今は暑苦しい」
「そういう問題では――」
 バンッ、と大きな音を立てて、セイナの読んでいた本が閉じられた。
 ラインは気圧され、思わずたじろぐ。
「唾を飛ばさない」
「む……!」
 鋭い眼光に背筋が凍る。
 顔を寄せるな、と冷たくあしらわれた。ああ言い切られては、これ以上この場で二人の会話が発展することはあるまい。
 気まずい空気に、ラインは部屋の隅で巨躯を縮こませる。
「ハイハイ。セイナもラインも喧嘩しない」
 諌めるかのように手を叩きながら、中肉中背の優男が部屋に入ってきた。
「さあお立会い。リオルフ先生のGドラスター対策講座始まるよ」
 二人を呼び寄せた張本人。
 現れるなり、マイペースに話を進めていく。
 手にした伸縮式指示棒を伸ばして壁に向けると、照明が落ち、空間投影式スクリーンが起動した。
 ちなみに、壁を指したことに意味はない。ただの雰囲気作りである。
 それが分かっている二人は、あえてそれには触れず、黙って話の続きを待つ。
「まず最初に問題だ。僕らは何故、彼らに負け続けていると思う?」
「ワタシもそれは不思議に思っていた。勝てない相手ではない、なのに何故いいようにやられるのかと」
 一も二もなく飛びつく男、ライン。
「少なくとも、一方的な展開に陥りがちという現状は、明らかにおかしい。そもそも――」
 拳を握り力説する。
 疑問を持つのは結構だが、そこから先に進まないのがラインという男。思うままに喋らせていても、それが有意義な結果に辿り着くのは非常に稀だ。
 勝手気ままにひたすら疑問を語り続ける――ある意味では頭の回転が速い気もする――ラインを横目に、リオルフがチラチラとセイナに視線を送る。
 セイナが呆れたように溜息をつく。こうやって誘導するのが楽しいのだろう。
 この男たちに任せていても仕方ないので、セイナが事実上の進行役を引き受け、リオルフの望む答えを口にする。
「機体というより、中身の差でしょ。パイロットと……」
「と?」
 他には?
 底意地の悪さを、あえて見せ付けるかのようなリオルフの様子には気づかぬふり。
「……使用しているエネルギー。GEM、だったかしら」
「そう。莫大な出力と多様な効果を見せる特殊エネルギー。これがGドラスターをSTRたらしめているものだ。それ以外は大したことないと、僕は見るね」
 少なくとも、現時点では。
「とはいえ、GEMが厄介なのは事実だけどね。けれどSTRっていうのは、特殊なだけに弱点もある」
「弱点!?」
 またラインが飛びついた。
「代表的なところで、安定性に欠けるとかかな。そこで、まずこれを見てほしい」


 ここでようやくスクリーンが役に立つ。
 流される映像記録は、セイナが痛手を負った時のもの。
「ああ、二機で負けた時の戦いね。例の鋼闘士のテストを“押し付けられた”時の」
 無意識に、既に完治した左腕をさする。
 セイナがラインに皮肉を込めた視線を流せば、ラインは気まずそうに逸らした。
「もう許してくれないか」
 止めどなく冷や汗が流れ落ちてくる。
 あの後のセイナからの仕返しは、思い出したくもない苦い記憶だ。割と切実に、死んだほうがマシという経験をしたと自負している。
 いっそ非道な行為で責めてくれたならば気も楽だったのだが、延々と生殺しのような責め苦は、金輪際勘弁願いたい。
「で、その次の戦闘終了後。ここで初めて異常が見られた」
 そしてマイペースに進めるリオルフ先生。
 次に表示されたのは、Gドラスターと剣戟特化型中級プレネガスとの戦闘。
 この機体が破壊された直後、Gドラスターは突然の機能停止に陥ることとなった。約一ヶ月前のことである。
 あいにく、そのまま墜落し労せずして排除完了とはいかなかったものの、何がしかのトラブルがあったことは間違いない。
「最初は整備不良か何かによる、一時的な不具合あたりかと思っていたんだけど。ただどうも不自然さが気になってね。その後もチェックしていた」
 次いで、防壁型中級プレネガスとの戦闘記録。次いで、火力重視の砲撃戦闘型。最後に、つい先日破壊された汎用型。
「二度なら偶然、三度目からは必然だ」
 そのどれもが、プレネガス撃破後の機能停止を免れていない。
 都合四回。平均週一ペースで敗北している計算になるが、おかげで確かなことが一つだけわかった。
「通常戦闘は問題ないようだけど、大技を使うと確実に機能停止に陥るらしい」
 中級以上ともなると、一箇所に対し一度に動かせる戦力にも限度があるため、即座に追撃してGドラスターを破壊するというのは叶わなかったが。
「おそらくオーバーロードの一種だとは思うけど、断定はできない。ただ付け入る隙があるのは確かだよ」
「無い無い尽くしで、あるのは事実だけね」
 拍子抜けの結論に呆れ果て、セイナは半眼になる。
「ねぇリオルフ。こうも露骨な弱点よ。ラインはともかく、気付いてないとでも思った?」
「何気に酷いこと言ってないか、セイナ?」
 露骨に言っている。
「別に思ってなかったよ、セイナ。まあだからこそ、攻めるのは早い方がいいだろ。超動技研も、今後何の対策もしないとは、到底思えないし」
「で? それを言いたかっただけだったりする? それとも、これからみんなで対策にかかるつもりかしら?」
「まさか。独自に進めてた作戦を実行する目処が立ったから、報告しとこうと思っただけだよ」
「しかし回りくどい奴だな。最初からそう言えば話は早いじゃないか」
「あぁ、うん、そうだね」
 セイナとラインの落差に、思わず気のない棒読み気味の返事になる。
 ラインさんは、もう少し回りくどいくらいで丁度いいとリオルフ先生は思います。
 気を取り直して、説明続行。
「とはいえ正直しくじったよ。対応が遅れてしまったのは否めないね。早目に動いていれば、勝てたかもしれない……最悪でも、有用なデータは取れたはずなのにね」
「仕方ないわ。まさか後から弱点が発生するとは思わなかったから」
 あのキツいセイナでさえ、リオルフに同意した。それはつまり、彼女も同様の事情に苦戦しているということだ。
 そして全く苦戦していない男も一人。
「ところで、その作戦はお前じゃないと実行できない特殊なものなのか?」
「いや。別にそんなことはないけど」
「そうかそうか!」
「…………」
「…………」
「……やる? ライン」
「やる!」


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