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スーパーロボスレ大戦の一部 その2

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 人間いつどこで死ぬか分からない。
 では同じような事を機械に言えるか?
 答えはYESでありNOである。

「ふぁぁぁぁぁ」
 俺は大きなあくびをした。
 目の前にはめちゃくちゃひれぇ海が広がっていやがる。波が飽きもせずに砂浜を行ったり来たりしていた。
 地平線には太陽はない。なぜなら俺の真上にあるからだ。
 真っ白な光を俺を照らしているがいい加減雲に隠れてくれねえかな。
 隣にいる”大男”は微動だにせずずっと海を見ている。
 いや、俺も”大男”も男には違いないが”人間”ではない。俺たちは”機械”だった。
 一応ちゃんとした分別があるんだろうけど俺にしてみればどうでもいい。今は隣にいる奴の事に集中しよう。
 俺が再び海の方へと視線を向ける、そんな時だった。
「!? 来た……」
 手元にピクンと反応がある。感触からしてかなりデカイ。
 今、俺の指先には細い糸が飛び出している。糸の先には釣り針が付いておりこの海にいる”鬼”を誘い出そうとしている。
 さぁ、来やがれ。俺はいつでもお前の相手をしてやる。
 俺の意志を汲んだのか、それとも餌が気に入ったのか反応がどんどんでかくなる。
 そして、針の先に何かが食いついた。
「おっし! ヒットォォォォ!」
 俺は手を左右に動かしながら一気に糸を巻き上げる。
 だが奴とて一筋縄ではいかない。俺の手から逃れようと右に左に、前に後ろに、深く浅く。激しく動き回る。
 なかなか手ごわい、こいつはもしかしたら鬼かもしれない。
「うおおおおお!」
 俺はスパートをかける。モーターの高い音と共に糸が一気に巻き上がる。
 向こうも最後の抵抗なのか凄まじい力で俺を引っ張る。
 持ってくれよ、俺の身体!
 モーターから火花が走り、糸が軋んだ音を立てて中で暴れまわる。
 そして大きな水音と共に俺の勝ちが決まった。
 だが、俺が手にしたのは鬼ではなかった。
「ちぃ、カジキマグロかよ」
 そう、長いトンガリが先端についている魚、カジキマグロだった。
 俺の探しているのは鬼だ、こいつじゃない。
 俺がガッカリした顔をすると隣の奴は不敵な笑みを浮かべた。
「フン、ジョーヨ。コノショウブハオレノカチダナ」
 大男の後ろには自分より1メートルほどでかいミナミマグロが横たわっている。
「何いってやがる、勝負はここからだぜ! おい、おっちゃん、こいつは持ってってくれ!」
「はいよー!」
 俺の声を聞いたおっちゃんは俺のカジキマグロとミナミマグロをトラックに載せて市場へと向かった。

 結局、俺たちは鬼、通称ギンマグロを取れずに終わった。
 ネオアースの在来種であるギンマグロはなかなか美味で取れれば数百万で取引される金の卵だった。
 その中でも最強と言われる鬼、一度で良いから釣ってみたかったが今日は現れずに終わったみてぇだ。
「フフフ、ジョーヨ。コノショウブハヒキワケトシヨウ」
 そう言ってあの大男、ツリアゲルンは海の底へと帰っていった。
 アレならいっそのこと海に潜って捕まえればいいんじゃねぇか?
 だがこの突っ込みは使うことなく俺の頭の中にしまわれた。

「今帰ったぞ」
 研究所の扉を開けながらどこぞの父親のような事を言ってしまう。
「おお、ジョーか。お帰り、今日の仕事はどうだった?」
 博士が資料を手に俺のほうを見る。
 正直な話、俺は博士の名前も仕事も知らない。博士が俺を作った。博士が俺を働かせた。博士はなにやら金がいる。
 この三つしか知らない。でも不満な点は何一つない。
 俺がドライなのか、博士がそういったものに興味を持たせなかったのか分からないが……。
「どうだったもねぇよ、あのツリアゲルンとかいう奴のせいで散々だったぜ」
 俺はぶつくさ言いながら奥の部屋へ向かおうとする。
「おや、ジョーじゃないか」
 奥の部屋には助手とマックことマキ・シゲルが居た。
 助手の方はどうでもいいがマックには正直頭が未だに上がらない。
 昔の話で悪いのだが今から二年ほど前のことだ。

 当時、俺はリックととんでもない賭けをした。賭けの内容はモダン峠の走破だった。
 モダン峠は岩が多く、路面らしい路面が何一つ無い悪路で一つ間違えれば金属で出来た身体もペシャンコになりかねない。
 だが俺たちはレースを決行。お互いに命を賭けあった。機械だから命じゃねぇんだろうけど。
 今思い出しても身が凍る想いだ。
 ギリギリの風、数センチで激突しそうな岩肌をアミダクジのように沿っていく。危険と紙一重の世界だった。
 こんな場所を時速八十キロで走行すれば当然間違いも起こる。そう、クラッシュだ。
 人間ならあの世って奴が見えるんだろうけど俺には見えなかった。足はひしゃげ、腕は遠くに飛び、エネルギータンクにひびが入った。
 死なねぇのは良いがリックの奴に負けるほうが癪だった。無い手足を動かしマシンを動かそうとするがマシンも俺も動かなかった。
 万策尽きたことに俺は諦めかかったその時だった。
「おい、大丈夫か?」
 一人の男が俺に声をかけてきた。正に奇跡だった。こんな人が通らねぇ場所に人が来たんだぜ?
 俺はすぐさま修理を頼んだ。嫌、修理じゃねぇな、あの時は男、マックが修理士だってことに気が付かなかったから腕を見てくれって言ったんだ。
 マックは俺の身体を見て少しためらったみたいだった。無理もねぇ、あの後精密検査したら一歩間違えば機能停止するかもしれなかったんだからな。
 すぐさま修理工場に運ぶべきだとマックは言った。だが俺は修理よりもリックとのレースを優先した。あんな馬鹿に負けるなんて俺のプライドが許さない。
 無茶だとマック言うが俺とて意地がある。身体が使い物にならねぇんなら”俺が車になればいい”。
 マックは顔を少ししかめると俺の電子脳を車にくっ付けた。ほとんど突貫作業だったから細かいぶぶんがおざなりになっちまったけどな。
 レースの結果はもちろん俺の勝ち、あのときのリックの顔は面白かったぜ。
「ジョー! 貴様にまた負けるとは! ええい、覚えていろ!」
 まあ、あの後タガヤスンとか言うおかしな奴とコンビを組んだのはなぁ……。
「どうした、ジョー」
 マックが俺に話しかけ――。

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