統合暦331年12月24日
雪の降る聖誕祭前夜の昼下がりの事だった。
守屋一刀は町内会の要請で、愛機、アイリス・ジョーカーを伴い、町内のパトロールへ駆り出されていた。
恋人の霧坂茜華は不満気だったが、一刀はスランプから脱するために、二つ返事で引き受けていたのだった。
選手として復帰した彼の公式戦の戦績は、全戦全勝と八坂最強の地位を不動の物にしていた。
守屋一刀は町内会の要請で、愛機、アイリス・ジョーカーを伴い、町内のパトロールへ駆り出されていた。
恋人の霧坂茜華は不満気だったが、一刀はスランプから脱するために、二つ返事で引き受けていたのだった。
選手として復帰した彼の公式戦の戦績は、全戦全勝と八坂最強の地位を不動の物にしていた。
だが、矢張り、守屋一刀という男は競い合う者なのだろう。
全戦全勝で州大会を制した事に、何の喜びも感じられないでいた。
対戦相手の中に嘗ての強敵達、またはそれに匹敵する強者でも居れば、話も違っていたのかも知れない。
無い者強請りでしかないのは事実だが、好敵手や目標としていた先達の卒業は、彼の選手生活を退屈な物へと変えていた。
全戦全勝で州大会を制した事に、何の喜びも感じられないでいた。
対戦相手の中に嘗ての強敵達、またはそれに匹敵する強者でも居れば、話も違っていたのかも知れない。
無い者強請りでしかないのは事実だが、好敵手や目標としていた先達の卒業は、彼の選手生活を退屈な物へと変えていた。
それでも、まだ見ぬ強敵が何処かに潜んでいるかも知れない。そう期待を寄せていたのも束の間。
高校生活も残り僅かとなってしまい、聖誕祭を余所に彼の中にある妙な焦燥感と、欲求不満は加速する一方であった。
そんな経緯もあってか、一刀は町内会の要請等、機会さえあればアイリス・ジョーカーに触れるようにしていた。
愛機と共に違った環境に身を置けば、何か違った物が掴めるかも知れないと。
高校生活も残り僅かとなってしまい、聖誕祭を余所に彼の中にある妙な焦燥感と、欲求不満は加速する一方であった。
そんな経緯もあってか、一刀は町内会の要請等、機会さえあればアイリス・ジョーカーに触れるようにしていた。
愛機と共に違った環境に身を置けば、何か違った物が掴めるかも知れないと。
(一年の時は面白かったんだけどな……)
内心で吐露した矢先、アイリス・ジョーカーのサブパネルに事件発生の報が届けられた。
国民行事がある度、盗んだスポーツギアで走り出す――所謂、違法ギアが暴れ出すのは珍しい事ではない。
そういう時は、警察が到着するよりも早く一刀が現場に急行し、瞬く間に騒動を治めてしまうのが常だった。
国民行事がある度、盗んだスポーツギアで走り出す――所謂、違法ギアが暴れ出すのは珍しい事ではない。
そういう時は、警察が到着するよりも早く一刀が現場に急行し、瞬く間に騒動を治めてしまうのが常だった。
「分別の無い馬鹿共が……往くぞ、ジョーカー!」
この日も接敵と共に騒ぎが治まる。本人を含む、全ての人間の確信が、意外にも裏切られる形となり、一刀は思わぬ苦戦を強いられていた。
戦いの舞台は、私立八坂高校に隣接する大通り。本来ならば今頃、盛大なパレードが行進している筈だった。
パレードの代わりに、二体の鉄巨人が右腕に携えた無骨なブレードから、無数の剣閃を飛び交わしながら、縦横無尽に飛び回っている。
戦いの舞台は、私立八坂高校に隣接する大通り。本来ならば今頃、盛大なパレードが行進している筈だった。
パレードの代わりに、二体の鉄巨人が右腕に携えた無骨なブレードから、無数の剣閃を飛び交わしながら、縦横無尽に飛び回っている。
「メルィィィィィィイ!! クリィィィィィスマァァァァァス!! ホーホーホーホー!!」
「チッ……あのアイリスタイプ! 違法ギアの割に良い動きをする!」
『検索完了――アイリス・ジョーカー。カラーバリエーション、アンリミテッド・オブ・ヴァーミリオン』
「ただの赤の癖に仰々しい名前を付けたもんだ……」
苦々しい表情で舌打ちしながら地を蹴り、地雷が破裂したかの様に爆散した土塊を背に紅のアイリスを猛追。
地を滑り、風を切り裂き、すれ違い様に斬撃を走らせるも、絶妙なタイミングで重ねられた刃に受け流される。
更に背中合わせで放ったチャクラムも、振り向き様の裏拳で弾かれた。
紅のアイリスは積極的に攻撃を仕掛けようとしない為、一方的に一刀が攻撃を仕掛ける形となっている。
八坂最強が一方的に仕掛けている。だと言うのにも関わらず、ただの一撃すら決定打を与えられない。
地を滑り、風を切り裂き、すれ違い様に斬撃を走らせるも、絶妙なタイミングで重ねられた刃に受け流される。
更に背中合わせで放ったチャクラムも、振り向き様の裏拳で弾かれた。
紅のアイリスは積極的に攻撃を仕掛けようとしない為、一方的に一刀が攻撃を仕掛ける形となっている。
八坂最強が一方的に仕掛けている。だと言うのにも関わらず、ただの一撃すら決定打を与えられない。
「ホーホーホーホー!!」
「聖誕祭に浮かれてトチ狂った阿呆が……!」
苛立ち混じりに叫ぶ一刀の心の奥底で、錆付いていた闘志に再び、火が付き、炎が燃え滾った。
そして、一刀の思考が騒動を治めるというものから、目の前の敵を徹底的に叩き潰すというものに切り替わる。
幾度と無く攻撃を避けられた事が、充実していた日々に繰り広げられていた戦いの記憶が呼び覚まされたのである。
そして、一刀の思考が騒動を治めるというものから、目の前の敵を徹底的に叩き潰すというものに切り替わる。
幾度と無く攻撃を避けられた事が、充実していた日々に繰り広げられていた戦いの記憶が呼び覚まされたのである。
「違法ギアだろうが、プロ崩れだろうが関係無い……立ち塞がるなら撃ち砕くまでだッ!」
踏み出した利き足を軸に機体を急反転させ、舗装された道路を踏み砕き、雷光の如く勢いで地を飛翔する。
瞬時に背後を取られた紅のアイリスは距離を離そうとするも、一刀は離された分だけ距離を詰め、その後退を許さない。
逃げ切れないと悟り、右腕に装備された円形の盾から伸びる幅広の長剣を水平に構え、独楽の様に高速回転しながら迎撃に転じる。
一刀は動じない。寧ろ、敵が後退を中断した今が好機。竜巻の如く繰り出される斬撃に真正面から飛び込む。
遠心力の加わった激しい斬撃の津波にシールドを重ね、その動きに乗る。
瞬時に背後を取られた紅のアイリスは距離を離そうとするも、一刀は離された分だけ距離を詰め、その後退を許さない。
逃げ切れないと悟り、右腕に装備された円形の盾から伸びる幅広の長剣を水平に構え、独楽の様に高速回転しながら迎撃に転じる。
一刀は動じない。寧ろ、敵が後退を中断した今が好機。竜巻の如く繰り出される斬撃に真正面から飛び込む。
遠心力の加わった激しい斬撃の津波にシールドを重ね、その動きに乗る。
「打撃や斬撃は避けられても……コイツならどうだッ!」
円運動の流れに沿い、斬撃を繰り出す真紅の豪腕を掴み取り、側面から懐へと飛び込み、爪先を蹴り払う。
体勢を崩した紅のアイリスを背に乗せ、片腕で掴み取った右腕を、両腕で掴み直し、自身も前転しつつ、地面へと引き落とす。
紅のアイリスは、一刀の背中を支点に宙で一回転、無防備を晒した背中から、舗装された地面に落雷の如く、叩き落とされる。
アイリス・タイプの本体重量は約三十トン。交通用に舗装された地面を易々と突き破り、大震災もかくやと言わんばかりの巨大な亀裂、そして、地割れを走らせる。
体勢を崩した紅のアイリスを背に乗せ、片腕で掴み取った右腕を、両腕で掴み直し、自身も前転しつつ、地面へと引き落とす。
紅のアイリスは、一刀の背中を支点に宙で一回転、無防備を晒した背中から、舗装された地面に落雷の如く、叩き落とされる。
アイリス・タイプの本体重量は約三十トン。交通用に舗装された地面を易々と突き破り、大震災もかくやと言わんばかりの巨大な亀裂、そして、地割れを走らせる。
「まだまだァッ!!」
「ホウッ!?」
追撃。前転しながら投げ飛ばした際に得た運動エネルギーに身を任せ、機体を一回転。踵を振り落としながら紅の胴体に降り立つ。
鋼と、鋼が激しくぶつかり合い、見ている者全ての鼓膜を突き破りかねない程の爆音が八坂の街に轟き、両者の間で火花が雨霰の様に降り注がれた。
鋼と、鋼が激しくぶつかり合い、見ている者全ての鼓膜を突き破りかねない程の爆音が八坂の街に轟き、両者の間で火花が雨霰の様に降り注がれた。
「メルィィィィィィイ! クリィィィィィスマァァァァァス!! ホーホーホーホー!!」
「チィ……!」
両者の戦いを見物していた野次馬達の誰もが、一刀のアイリスが紅のアイリスの胴を貫き、地中へと叩き落す様を確信していた。
少なくとも、白銀のアイリスの胸部装甲が袈裟懸けに切り裂かれ、地面に弾き飛ばされるなど、当の本人にすら予想だにしない出来事だった。
一刀のアイリスを切り裂いた犯人は、紅のアイリスでは無い。白と、紅の間に音も無く現れた漆黒のギア。
少なくとも、白銀のアイリスの胸部装甲が袈裟懸けに切り裂かれ、地面に弾き飛ばされるなど、当の本人にすら予想だにしない出来事だった。
一刀のアイリスを切り裂いた犯人は、紅のアイリスでは無い。白と、紅の間に音も無く現れた漆黒のギア。
「ヴァイゼスト……! ジョーカー、何をやっていた!?」
全身を黒と、灰色の分厚い装甲で包み、御伽噺に出て来る死神を彷彿とさせるような禍々しい大鎌。
一刀は反射的に責めるような口調でアイリスのAIを怒鳴りつけるが、直感的に異様な気配を感じていた。
アイリス・ジョーカーに搭載されているレーダー等、電子機器の性能は決して高性能とは言えない。
それでも、半径百メートル圏内のスポーツギアの動きを捕捉する程度の精度はある。
それなのにも関わらず、アイリスのレーダーがヴァイゼストの姿を捕捉したのは、斬り飛ばされた直後。
一刀は反射的に責めるような口調でアイリスのAIを怒鳴りつけるが、直感的に異様な気配を感じていた。
アイリス・ジョーカーに搭載されているレーダー等、電子機器の性能は決して高性能とは言えない。
それでも、半径百メートル圏内のスポーツギアの動きを捕捉する程度の精度はある。
それなのにも関わらず、アイリスのレーダーがヴァイゼストの姿を捕捉したのは、斬り飛ばされた直後。
『原因不明』
「だろうな……」
守屋一刀自身、人、機、怪。その一切合財を問わず、自らに向けられる敵意や、悪意、殺気を気取れぬ程、愚鈍では無い。
だが、アイリス同様、ヴァイゼストの存在に気付いた時には、既に斬られた後だった。
電子の精密な目と、耳の網を掻い潜り、守屋一刀に認識される事無く、真正面から軽傷とは言い難い損傷を与えた、ヴァイゼストの乱入。
此処まで一方的にやられたのは、何時ぶりの事だろうか?
だが、アイリス同様、ヴァイゼストの存在に気付いた時には、既に斬られた後だった。
電子の精密な目と、耳の網を掻い潜り、守屋一刀に認識される事無く、真正面から軽傷とは言い難い損傷を与えた、ヴァイゼストの乱入。
此処まで一方的にやられたのは、何時ぶりの事だろうか?
「だが、その機体には嫌という程に鍛えられているッ!!」
ヴァイゼストは、嘗ての守屋一刀の教育係、小野寺織の愛機でもある。
その性質上、彼にとって最も、交戦回数の多い機体であり、手練の動きは嫌という程に叩き込まれている。
気勢を上げると共に胸部装甲から紫電を走らせながら、両の足で力強く立ち上がり、バックラーブレードの切っ先をヴァイゼストに差し向ける。
その性質上、彼にとって最も、交戦回数の多い機体であり、手練の動きは嫌という程に叩き込まれている。
気勢を上げると共に胸部装甲から紫電を走らせながら、両の足で力強く立ち上がり、バックラーブレードの切っ先をヴァイゼストに差し向ける。
『損傷状況確認。三次装甲突破。伝送系、駆動系、反応速度異常無し』
「薄皮一枚持っていかれただけか」
同じ場所にもう一撃受ければ、機体性能の激減は避けられないが、一刀は動じる事も恐れる事も無く地を滑走し、ヴァイゼストに肉薄する。
「この感覚だ」
その表情に悲壮の欠片も無く、不敵な笑みを漏らす。
自らの身を傷付けようとも、ただ相手だけを打倒する事に専心する。其処に恐れは無く、敵意も悪意も無い。
其処にあるのは、身を削いでも勝ちたいという願望と、それを叶える他の誰でも無い自分自身の力だけだ。
自らの身を傷付けようとも、ただ相手だけを打倒する事に専心する。其処に恐れは無く、敵意も悪意も無い。
其処にあるのは、身を削いでも勝ちたいという願望と、それを叶える他の誰でも無い自分自身の力だけだ。
「ジョーカー、正面から行く。緩衝材、ケチるなよ」
『了解』
AIの静かで無感情な声とは対照的に、機体の各所のノズルから排気音と、ジェネレーターの駆動音が喧しい唸り声を上げた。
それを合図にヴァイゼストは大鎌を振るい、白煙化した衝撃緩和剤を紅蓮の剣閃で切り裂きながら、一刀に向かって猛然と迫る。
俊敏な動きが望める筈も無い構成だが、ヴァイゼストを象徴する大鎌こそが、その重量の楔を解放つ要因となっている。
大鎌――ブーストサイズの各所に接続されたブースターにより、生み出される斬撃は圧倒的な速度と、変則的な軌道を生み出す事を容易にし、機体の推進装置としての役割までも果たす。
ただ直進するだけならば、ヴァイゼストの最大移動速度はアイリス・ジョーカーさえも凌駕する。
俊敏な動きが望める筈も無い構成だが、ヴァイゼストを象徴する大鎌こそが、その重量の楔を解放つ要因となっている。
大鎌――ブーストサイズの各所に接続されたブースターにより、生み出される斬撃は圧倒的な速度と、変則的な軌道を生み出す事を容易にし、機体の推進装置としての役割までも果たす。
ただ直進するだけならば、ヴァイゼストの最大移動速度はアイリス・ジョーカーさえも凌駕する。
「長期戦は不利――久々に試してみるか」
重装甲のギアを一撃の名の下に両断するのは勿論の事、高機動のギアさえも容易く捕捉し得る剛と、瞬を兼ね備えた一撃。
回避、防御、その何れを選んでも、リスクが大き過ぎる。相手が手練であればこそ尚の事。故に完全無欠の斬撃を前に、一刀が見出す活路は真正面。
視界を紅蓮に埋め尽くされた瞬間、身体を落として剣閃をやり過ごすも、その凄まじい剣圧に煽られコクピットブロックが激しい震動に晒される。
噛締めた奥歯に力が篭る。水平に振り抜かれたブーストサイズの軌道が変わり、大鎌が縦一文字に紅蓮の剣閃を描き落とす。
回避、防御、その何れを選んでも、リスクが大き過ぎる。相手が手練であればこそ尚の事。故に完全無欠の斬撃を前に、一刀が見出す活路は真正面。
視界を紅蓮に埋め尽くされた瞬間、身体を落として剣閃をやり過ごすも、その凄まじい剣圧に煽られコクピットブロックが激しい震動に晒される。
噛締めた奥歯に力が篭る。水平に振り抜かれたブーストサイズの軌道が変わり、大鎌が縦一文字に紅蓮の剣閃を描き落とす。
「読み通りだ……ッ!」
振り落とされた大鎌の鋭い刃がアイリスの頭部に吸い込まれる――その瞬間、一刀の右腕が閃き、地に向けられていたバックラーブレードが飛び跳ねた。
アイリスのブレードがヴァイゼストから逸れ、ブーストサイズの刃の内を沿う様に空を斬る。
アイリスのブレードがヴァイゼストから逸れ、ブーストサイズの刃の内を沿う様に空を斬る。
狙うは一点。ブーストサイズの柄と刃を繋ぐ連結点に、アイリス・ジョーカーの首に、閃光が走り、鈍い音と共に首が一つ、宙を舞った。
「チッ……」
忌々しげに舌打ちすると共にアイリス・ジョーカーの背後に高々と放り上げられた首が落ちた。
頭部を飛ばされ、機体全体を駆け巡るエネルギーの循環が中断。力を失ったかの様にだらりと両腕を下ろした。
頭部を飛ばされ、機体全体を駆け巡るエネルギーの循環が中断。力を失ったかの様にだらりと両腕を下ろした。
「小野寺先輩なら此処からが正念場なんだがな……違法ギアでは、この程度か」
一刀の背後に落ちる首は、黒塗りにされたヴァイゼストの首――
水平に放たれた斬撃を潜り抜け、ヴァイゼストの眼前で低姿勢な状態で無防備を晒す。
その瞬間、振り抜かれた大鎌に接続されたブースターによって強制的に横薙ぎの切り払いからから、縦一文字の振り落としに軌道が変更される。
ブースターによって得られた推力、ヴァイゼスト自身の出力によって凄まじい力で下方へと振り落とされるも、武器その物に加わる負担も半端な物では無い。
限定された条件が揃えば、最も負担がかかり、最も脆く、最も設置面積の広い箇所、刃と、柄の連結部に刃を走らせる事が出来れば――
その瞬間、振り抜かれた大鎌に接続されたブースターによって強制的に横薙ぎの切り払いからから、縦一文字の振り落としに軌道が変更される。
ブースターによって得られた推力、ヴァイゼスト自身の出力によって凄まじい力で下方へと振り落とされるも、武器その物に加わる負担も半端な物では無い。
限定された条件が揃えば、最も負担がかかり、最も脆く、最も設置面積の広い箇所、刃と、柄の連結部に刃を走らせる事が出来れば――
両断し、奪い取った大鎌の刃で、ヴァイゼストの重装甲諸共、その首を切断する事も不可能では無い。
「メルィィィィィィイ! クリィィィィィスマァァァァァス!! ィィィィヤッフウウウウウウ!!」
膝から崩れ落ちる、ヴァイゼストの胸部装甲が裂け、中から巨大な倭刀――斬馬刀が突き出され、密着状態にあったアイリスを急襲する。
「ハッ……奇声と共に、レーダーにも察知されず、気配も無く奇襲。二度も同じ手を喰うと思ったかッ!」
後方に飛び退きながら、斬馬刀を丸みを帯びた円形の盾で、その刺突をやり過ごし、地面に手を付き、更に後方へと跳躍。
スポーツギア業界広しと言えど、何の推進装置も無く単純な出力のみで巨大な斬馬刀を自在に扱える機体など、一機しか存在していない。
スポーツギア業界広しと言えど、何の推進装置も無く単純な出力のみで巨大な斬馬刀を自在に扱える機体など、一機しか存在していない。
「存在しない筈のギアが何故、貴様等の手元にあるのか……この際、そんな事は如何でも良い」
一刀は自らの歯を噛み砕き兼ねない程、顎に力を込め、握り締めた拳からは力を込めすぎる余り、自らの皮膚を裂き、掌から血液を垂れ流す。
「だがな……その機体で……リヴァーツで卑劣な真似をするなァッ!!」
守屋一刀の嘗ての好敵手、矢神玲の愛機、リヴァーツ。
スポーツギア用に開発された多重間接機構のモニター機として建造され、実戦テストの名目で宋銭高校へと届けられたワンオフ機だ。
そして、矢神玲と共に数々の激戦を潜り抜けたリヴァーツも、主の卒業に伴い、今は宋銭高校の象徴として厳重に保管されている。
強奪されたと考えるのが順当なのだが、アイリスのAIが今、こうしている間も宋銭高校にリヴァーツが存在している事を示していた。
実際には複数機建造されていたのかも知れないが、守屋一刀にとってはどうでも良い事だ。
スポーツギア用に開発された多重間接機構のモニター機として建造され、実戦テストの名目で宋銭高校へと届けられたワンオフ機だ。
そして、矢神玲と共に数々の激戦を潜り抜けたリヴァーツも、主の卒業に伴い、今は宋銭高校の象徴として厳重に保管されている。
強奪されたと考えるのが順当なのだが、アイリスのAIが今、こうしている間も宋銭高校にリヴァーツが存在している事を示していた。
実際には複数機建造されていたのかも知れないが、守屋一刀にとってはどうでも良い事だ。
「俺に奇襲を仕掛けるためにヴァイゼストを……仲間を攻撃するとは何事だ、貴様ッ!!」
外部スピーカーにスイッチを入れ、音量を最大にして、一刀もまた腹の底から怒声を張り上げる。
リヴァーツは、一刀を嘲笑うかの様にヴァイゼストを串刺しにした斬馬刀を空高く掲げ、一気に振り払った。
真っ二つに切り裂かれ、ヴァイゼストの上半身が一刀の足元へと落下し、もがき苦しむかの様に紫電を走らせながら両腕を動かした。
真っ二つに切り裂かれ、ヴァイゼストの上半身が一刀の足元へと落下し、もがき苦しむかの様に紫電を走らせながら両腕を動かした。
「もう一度、確認する。アレは矢神さんが乗っていたリヴァーツじゃないんだな?」
『イエス。以前に交戦したリヴァーツは宋銭高校に保管されています』
「了解。ブレードクローズ……首だけでは済むと思うなよ、貴様ァッ!!」
バックラーブレードを円形の盾に収納し、アイリスは荒れ狂った竜巻の様に地面を抉り、砂煙を巻き上げながら、リヴァーツ目掛けて一気に駆け抜ける。
地面を削岩しながら爆進するアイリスにリヴァーツは悠々と斬馬刀を両腕で握り締め、両足を広げ、緩慢な動きで水平に構えて、激突の瞬間を待つ。
アイリス・ジョーカーの全長をも越える刃渡り八メートルの斬馬刀の間合いは広く、格闘戦仕様のギアを相手にした時、待ちに入れば敗北は有り得ない。
地面を削岩しながら爆進するアイリスにリヴァーツは悠々と斬馬刀を両腕で握り締め、両足を広げ、緩慢な動きで水平に構えて、激突の瞬間を待つ。
アイリス・ジョーカーの全長をも越える刃渡り八メートルの斬馬刀の間合いは広く、格闘戦仕様のギアを相手にした時、待ちに入れば敗北は有り得ない。
「思い上がるなッ!!」
地面を踏み砕く破砕音の中に金属と金属とが擦れ合う、甲高い擦過音が混ざり、火花が飛び散ったその瞬間。
立ち上る砂煙を切り裂き、超硬度ワイヤーに繋がれた二枚刃のチャクラムが、リヴァーツの足首を捕らえる。
抵抗されるよりも早く、力任せに引っ張り上げ、リヴァーツの脚部を引き千切り、地に叩き落す。
瞬間、リヴァーツに異変が起きる。全身から紫電が走り、人間の拳大程度の小さな爆発が断続的に発生する。
立ち上る砂煙を切り裂き、超硬度ワイヤーに繋がれた二枚刃のチャクラムが、リヴァーツの足首を捕らえる。
抵抗されるよりも早く、力任せに引っ張り上げ、リヴァーツの脚部を引き千切り、地に叩き落す。
瞬間、リヴァーツに異変が起きる。全身から紫電が走り、人間の拳大程度の小さな爆発が断続的に発生する。
「立てないだろ? よく勘違いしている奴が居るんだがな、矢神さんが強いのはリヴァーツを使っていたからじゃない。矢神さんが使っていたから、リヴァーツが強かったんだ」
矢神玲の愛機としてよく知られるリヴァーツだが、専用装備の斬馬刀のインパクトと、ワンオフ機という性質、矢神玲の戦績のせいで、その性能は誤解されがちだ。
軽量を維持しつつ、如何に巨大な獲物を力強く、鋭敏に自在に操って尚、機体の負担を最低限に出来るかという事を実験するためだけに作られた機体だ。
レギュレーションを辛うじて守る程度の性能は軽量高機動ギアよりも脆く、長距離砲撃支援用の超重装ギアよりも鈍く、雨曝しになった型落ちバッテリーよりも長持ちしない。
更に全身に張り巡らされた間接の数は通常のギアの倍以上。小さな損傷さえも、他の部分へと伝播、連鎖反応を起こし、猛毒が回るかの如く、損傷箇所を広げていく。
軽量を維持しつつ、如何に巨大な獲物を力強く、鋭敏に自在に操って尚、機体の負担を最低限に出来るかという事を実験するためだけに作られた機体だ。
レギュレーションを辛うじて守る程度の性能は軽量高機動ギアよりも脆く、長距離砲撃支援用の超重装ギアよりも鈍く、雨曝しになった型落ちバッテリーよりも長持ちしない。
更に全身に張り巡らされた間接の数は通常のギアの倍以上。小さな損傷さえも、他の部分へと伝播、連鎖反応を起こし、猛毒が回るかの如く、損傷箇所を広げていく。
「当てても、当たっても一撃必殺。その機体を使いこなせるのは世界で、ただ一人。
貴様の様な卑劣漢が、臆面も無く醜態を晒しながら乗り回して良い機体では無い!」
貴様の様な卑劣漢が、臆面も無く醜態を晒しながら乗り回して良い機体では無い!」
両肩に手刀を叩き込み、斬馬刀を握る両腕を切り落とし、左腕で頭部を鷲掴みにして持ち上げ、右の拳を握り締める。
「首だけでは済まさんと言ったッ! 病院のベッドで死ぬほど反省しろッ!!」
咆哮と共に放たれる鋼の剛拳がコクピット部を打ち据え、リヴァーツの全身を粉々に粉砕し、地に落ちた球状コクピットを踏み付け、地面に埋没させる。
「メルィィィィィィイ! クリィィィィィスマァァァァァス!! ホッホオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
紅のアイリス・ジョーカーが大の字になって三度目の奇声を発し、その背後から一振りの斧、二振りの短剣、二振りの手槍が放たれ、一刀に襲い掛かる。
その全てをリヴァーツの残骸から奪い取ったクナイで弾き返し、バックラーブレードを展開し、背後に剣閃を飛ばす。
其処には両腕で構えた槌を交差させ、アイリスの剣戟を受け止める、鋭角な装甲に包まれた深緑の悪魔の姿があった。
その全てをリヴァーツの残骸から奪い取ったクナイで弾き返し、バックラーブレードを展開し、背後に剣閃を飛ばす。
其処には両腕で構えた槌を交差させ、アイリスの剣戟を受け止める、鋭角な装甲に包まれた深緑の悪魔の姿があった。
「ヴァイゼスト、リヴァーツの次は、ティアマットか……聖誕祭の日に随分と因縁深い機体ばかり集めて来たものだな!」
今から二年前、守屋一刀がスポーツギアの選手としての第一歩を踏み出したばかりの頃、正しく文字通りに一騎当千の猛者揃いだったスポーツギア高校大会。
その中でも万人から八坂最強と呼ばれていた男、月島静丸の愛機ティアマット。
あまりにも作為的な違法ギアの陣容に鼻を鳴らすと、その背後を激しい衝撃に晒され、ステータスパネルが損傷状況を更新していく。
その中でも万人から八坂最強と呼ばれていた男、月島静丸の愛機ティアマット。
あまりにも作為的な違法ギアの陣容に鼻を鳴らすと、その背後を激しい衝撃に晒され、ステータスパネルが損傷状況を更新していく。
「ああ……そうだったな。ティアマットにはそういう能力があったんだったな……!」
アイリス・ジョーカーの背中に墓標の様に突き立つ、武器の数々に忌々しげな表情を浮かべていると、何者かが肩に降り立った。
一刀が視線を上げると、其処には――
一刀が視線を上げると、其処には――
「ハッ……最強に囲まれては絶体絶命だな」
もう一人の八坂最強、加賀谷望の愛機、スカーレット。その専用ソードライフルをアイリスの頭部に突き付けられ、一刀は皮肉気に笑った。
当代最強すら手足の出せなかった先々代最強。確かに絶体絶命も良いところである。
「乗っている人間が最強<ホンモノ>ならなッ!!」
一刀が吼え、スカーレットのソードライフルが火を吹き、アイリスが密着状態にあったティアマットを蹴り飛ばす。
「クッ……ははは……あはははは!! はっはっはっはっはっはっは!!
上等だ! 騙まし討ちでも、不意討ちでも、二対一でも好きにすれば良いさ! それで、勝てるつもりならなッ!」
上等だ! 騙まし討ちでも、不意討ちでも、二対一でも好きにすれば良いさ! それで、勝てるつもりならなッ!」
スカーレットから放たれたライフル弾はアイリスの頭部を半分程焦がして、左肩を穿つも、まだまだだ。まだまだ、この程度では損傷した内には入らない。
『左腕伝送系統損傷、反応速度三十パーセント低下。背部損傷、出力十パーセント低下』
「ハンデ代わりにくれてやる!!」
咆哮と共に跳躍。よろめくティアマットの頭部を両の掌で挟み、膝を砲弾の如く撃ち飛ばし粉砕。
頭部を失い、内部機構が剥き出しになった断面に鉄槌の如く、肘鉄を叩き込み、内部機構を完全に破壊する。
弾丸を穿たれたアイリスの左肩にソードライフルが突き刺さり、零距離からライフル弾が三つ突き刺さる。
頭部を失い、内部機構が剥き出しになった断面に鉄槌の如く、肘鉄を叩き込み、内部機構を完全に破壊する。
弾丸を穿たれたアイリスの左肩にソードライフルが突き刺さり、零距離からライフル弾が三つ突き刺さる。
『左腕沈黙。オートリペア開始』
「狙うべきは左腕じゃ無かった筈だ。そんな余裕があるなら、此処を狙うべきだったな」
そう言って、左腕に突き刺さったソードライフルを引き抜き、その切っ先と銃口をヴァイゼストに切り裂かれた胸部に向ける。
弾かれたようにスカーレットが動き、背中のブースターから翼の様な焔を吐き出し、トリガーに指をかけ、アイリスが掴んだソードライフルを握り潰す。
銃剣のマガジンに火が付き、両者の間で爆炎が炸裂しアイリスと、スカーレットを弾き飛ばした。
弾かれたようにスカーレットが動き、背中のブースターから翼の様な焔を吐き出し、トリガーに指をかけ、アイリスが掴んだソードライフルを握り潰す。
銃剣のマガジンに火が付き、両者の間で爆炎が炸裂しアイリスと、スカーレットを弾き飛ばした。
「月島さんの真似をしたつもりだったが、中々、上手くいかないものだな」
一刀は自嘲気味呟くも、肩から上が消炭になり沈黙するスカーレットの姿に満足気な笑みを浮かべた。
「ホーホーホーホー!!」
背後に迫るアイリス・ジョーカー、アンリミテッド・オブ・ヴァーミリオン。無論、警戒していなかったわけでは無い。
そして、次に取る行動が攻撃か、撤退。恐らく、新手の介入は無い。
そして、次に取る行動が攻撃か、撤退。恐らく、新手の介入は無い。
「俺と因縁のある……いや、俺が目標にしている連中のギアを持ち出して、何がしたかったのかは知らんが……」
放たれた鋼拳を右腕で受け止めて、顎を周囲に向ける。
「貴様のせいで、ご覧の有様だ」
人的な被害は奇跡的にゼロだが、八坂の大通りは、この戦いの影響で至る所に大穴を穿たれ、爆撃跡の様な有様になっていた。
リヴァーツの斬馬刀によって切り裂かれ、陥没した地面。ヴァイゼストが四散した際に砕かれた地面。
一刀によって踏み砕かれた地面、一刀によって抉り抜かれた地面、一刀によって穿たれた地面、一刀によって削岩された地面、一刀によって……
被害の大半は一刀自身の手……基、足から生み出された物なのだが、それはこの際、目を瞑る事にした。
リヴァーツの斬馬刀によって切り裂かれ、陥没した地面。ヴァイゼストが四散した際に砕かれた地面。
一刀によって踏み砕かれた地面、一刀によって抉り抜かれた地面、一刀によって穿たれた地面、一刀によって削岩された地面、一刀によって……
被害の大半は一刀自身の手……基、足から生み出された物なのだが、それはこの際、目を瞑る事にした。
「それなりに楽しませてもらったが、これ以上、被害を広げられても迷惑だ」
首ごと上半身を捻り、紅のアイリスの側頭部に回し蹴りを放ち、その頭部を叩き飛ばす。
頭部を失った事により、一時的に動力が止まり、紅のアイリスが膝を付き、地面を砕きながら膝から飛び跳ねる。
機能停止からの即座の復帰。不意討ちざまに放たれた膝蹴りが、一刀のアイリスの腹部を貫き、動かなくなった左肩を握り潰す。
頭部を失った事により、一時的に動力が止まり、紅のアイリスが膝を付き、地面を砕きながら膝から飛び跳ねる。
機能停止からの即座の復帰。不意討ちざまに放たれた膝蹴りが、一刀のアイリスの腹部を貫き、動かなくなった左肩を握り潰す。
『左腕欠落、腹部中破、プラズマジェネレーター出力低下、インターフェース異常発生』
ついに連戦続きの悪影響が如実に現れ始め、極端にアイリス・ジョーカーの動きが鈍くなる。
それとは正反対にエマージェンシーモードが起動した紅のアイリスは動きが力強く、機敏になる。
それとは正反対にエマージェンシーモードが起動した紅のアイリスは動きが力強く、機敏になる。
「強制リペアと、フルドライブ。やれるな?」
『肯定。但し、稼働時間六秒』
――迫り来る鋼の剛拳。決着の時は近い。
「メルィィィィィィイ! クリィィィィィスマァァァァァス!!」
奇声と共に放たれる紅の鋼拳を正面に見据え、腰溜めに構え、拳を握り直す。
「頼りにしている……アイリス・ジョーカー、フルドライブッ!!」
『フルドライブ――起動』
機体各所の装甲が展開。排熱用のノズルが外部に晒され、背中からマント状の放熱布が広がり、機能低下を始めていた息を吹き返す。
機械の咆哮にも似た異音と共に、太陽の様な熱気を放ち、焼き尽くされた周囲の塵や埃が、白銀のアイリス・ジョーカーを黄金色に染め上げる。
機械の咆哮にも似た異音と共に、太陽の様な熱気を放ち、焼き尽くされた周囲の塵や埃が、白銀のアイリス・ジョーカーを黄金色に染め上げる。
「砕け散れッ!!」
肩を引き、上半身を弓形に逸らし、弦から放たれた矢の如く、黄金の拳を撃ち飛ばす。
迫る紅の拳と正面から衝突。拮抗する事無く、紅の拳を粉砕し、肘、上腕、肩と順に抉り取る様に貫き上半身を爆砕する。
そして、その拳の中で紅のアイリス・ジョーカーのコクピットブロックが鷲掴みにされている。
迫る紅の拳と正面から衝突。拮抗する事無く、紅の拳を粉砕し、肘、上腕、肩と順に抉り取る様に貫き上半身を爆砕する。
そして、その拳の中で紅のアイリス・ジョーカーのコクピットブロックが鷲掴みにされている。
「今度こそ勝負あったな」
「メルィィィィィィイ! クリィィィィィスマァァァァァス!!
懲りずに発せられる奇声。コクピットから周囲に放たれる色鮮やかな紙吹雪と紙テープ。
「な……何だ、これは……」
「メリークリースマース! ホーホーホーホー!」
一刀のアイリスの手の中には紅のアイリスのコクピットブロックは無く、声のする方へと目を向けると
百メートル程の離れた地点で、一刀にVサインを送る『無傷』のアイリス・ジョーカー、アンリミテッド・オブ・ヴァーミリオンの姿があった。
百メートル程の離れた地点で、一刀にVサインを送る『無傷』のアイリス・ジョーカー、アンリミテッド・オブ・ヴァーミリオンの姿があった。
「貴様ッ……!!」
『システムダウン』
身を乗り出すと共に最悪のタイミングで機能が停止し、地面に転倒する。
ギアが駄目ならばと直接対決でケリを付けてやると、手動でコクピットハッチを開き、外に飛び出すが時既に遅し。
例の奇声と共に跳躍。推進機能を持たない筈のアイリス・ジョーカーは、そのまま、空の彼方へと飛び去っていった。
ギアが駄目ならばと直接対決でケリを付けてやると、手動でコクピットハッチを開き、外に飛び出すが時既に遅し。
例の奇声と共に跳躍。推進機能を持たない筈のアイリス・ジョーカーは、そのまま、空の彼方へと飛び去っていった。
「本当に……何なんだ、これは……」
彼の疑問に答える者はいない。この場にいるのは、その答えを知りたい者しかいないのだから。
その直後の調べで、リヴァーツ、ヴァイゼスト、ティアマット、スカーレットのコクピットブロックには人の姿どころか、人が居た形跡すら無く
何処ぞの犯罪組織によって生み出された無人制御機かと思いきや、OSすら搭載されておらず、稼動出来ない状態だという事が判明。
それだけでは無く、内部機構に使用されているパーツは何処のメーカーにも採用されていない物のみで構成され
プロダクトコードの刻印さえ無く、完全に出所不明の機体であると判断された。
そして、空の彼方へと飛び去った、アイリス・ジョーカーのパイロットの声は地球上の全てのデータバンクと照らし合わせても
一致する声紋が無く、分かった事といえば、機体の出所と合わせて、完全に正体不明の犯人であるという事だけ。
何処ぞの犯罪組織によって生み出された無人制御機かと思いきや、OSすら搭載されておらず、稼動出来ない状態だという事が判明。
それだけでは無く、内部機構に使用されているパーツは何処のメーカーにも採用されていない物のみで構成され
プロダクトコードの刻印さえ無く、完全に出所不明の機体であると判断された。
そして、空の彼方へと飛び去った、アイリス・ジョーカーのパイロットの声は地球上の全てのデータバンクと照らし合わせても
一致する声紋が無く、分かった事といえば、機体の出所と合わせて、完全に正体不明の犯人であるという事だけ。
事後処理を終えた一刀は、交際前と同様、八坂の並木通りを茜華と肩を並べて帰路についていた。
交際前と違う事と言えば、一刀の手には茜華の白く柔らかな手が握られている事くらいである。
交際前と違う事と言えば、一刀の手には茜華の白く柔らかな手が握られている事くらいである。
「本当に得体の知れん連中だったな……」
「最近、何かと燻ってたし久々に燃えたんじゃないの?」
茜華は、ぼやく一刀の顔を覗き込んで、悪戯っぽい笑みを浮かべると一刀は呆れた様に視線を外して、ぶっきらぼうに答えた。
「あの程度の実力の相手に燃えるか」
「だったら、もう少しスマートに片付けなさいよ。当たり前の様に左腕吹っ飛ばすし、右腕のマニピュレーターは滅茶苦茶だし
装甲の殆どが三次装甲まで持っていかれてるから、全交換しなきゃだし、ジェネレーターと、インターフェースも本格的な修理が必要だし
バックラーブレードは刀身の交換と、装甲の張り直し、ほんっとーに一年の時から、なーんにも進歩してないんだから!」
装甲の殆どが三次装甲まで持っていかれてるから、全交換しなきゃだし、ジェネレーターと、インターフェースも本格的な修理が必要だし
バックラーブレードは刀身の交換と、装甲の張り直し、ほんっとーに一年の時から、なーんにも進歩してないんだから!」
どんなに一刀が強気な言動をしても、損害報告書を誤魔化す事は出来ない。
茜華は呆れた様に肩を竦め、まるで手のかかる息子に困らされている母親の様な苦笑を浮かべた。
茜華は呆れた様に肩を竦め、まるで手のかかる息子に困らされている母親の様な苦笑を浮かべた。
「まあ……何だ?」
「上手い言い訳が見つからないんだったら素直になりなね? まあ、得体の知れないのは事実だけど……
でも、敵の構成からして案外、強敵不足に悩む一刀へのプレゼントだったのかもね」
でも、敵の構成からして案外、強敵不足に悩む一刀へのプレゼントだったのかもね」
尤も、プレゼントついでに街中で暴れられては近隣住民にとっては堪ったものでは無いが。
あれだけの大立ち回りをしておきながら、人的被害がゼロな辺り、彼女の言う事もあながち間違いでは無いのかも知れない。
あれだけの大立ち回りをしておきながら、人的被害がゼロな辺り、彼女の言う事もあながち間違いでは無いのかも知れない。
「ハッ! 外側だけじゃなくて中身も同じなら最高のプレゼントだったんだがな」
「一人でも手に負えないのに?」
「五月蝿いな……」
身も蓋も無いが事実だ。今年度の無敗の王者とは言え、彼の先達はその二歩も三歩も先を行く様な連中だ。
一対四で戦っても、まともな勝負にすらならないし、そもそも、彼等が一対四で一刀と戦う事を良しとする筈も無いが。
一対四で戦っても、まともな勝負にすらならないし、そもそも、彼等が一対四で一刀と戦う事を良しとする筈も無いが。
「まあまあ、そう不貞腐れないの! この後は二人きりのクリスマスパーティなんだし、テンション上げて行こう!」
「え?」
「え? って何を呆けてんのよ?」
「涼夜さんは?」
「兄さんなら今朝、彼女さんと一緒に旅行に行ったけど?」
厳密にはアルコール漬けにされて何処かへと拉致された。
何処でナニをされているか、一刀は知らない方が身のためかも知れない。
何処でナニをされているか、一刀は知らない方が身のためかも知れない。
「孤立無援……か……」
何はともあれ、義兄弟揃ってそういう事である。
「何か不満なわけ?」
「何の不満も無いが、変な事するなよ?」
「普通、逆じゃね? そういえば、義父様から連絡があって今年のクリスマスは夫婦水入らずで過ごすからってさ。後、義母様からグッドラック!!って言われちゃった」
「息子の彼女に何を吹き込んでるんだ、あの親は……そして、女の子が道端で、そういうサインを出すんじゃない」
一刀は辟易しながら、茜華の白い手で出されたそういうサインを止めさせ、夕焼けに染まる空を遠い目で見つめた。
聖誕祭。一刀の戦いは、まだまだ始まったばかりである。
聖誕祭。一刀の戦いは、まだまだ始まったばかりである。