禁忌と衝動 ◆imaTwclStk
―ここは何処だ?
見知らぬ風景。
もう、この感覚にも慣れてきた。
でも、今回のはちょっと今までと違う感じだな。
おぼろげな視界がハッキリして、見えてきた光景は…
―愚か者どもめ! 何故、私に従わん!何故、私に逆らうのだ!
あれは誰だったかな?
あぁ、そうだ。
何でこんな単純な事に気がつかなかったんだろう。
あれも僕じゃないか。
僕は『誰か』と戦って負けた。
力が失われていく、現界したばかりだぞ!
嫌だ、これで終わりだなんて、僕は…
僕はまだ誰の血肉をも得ていない。
僕に逆らった愚かなる弟の始末以外何一つ!
視界が遠のいていく、又、あの忌々しい石の中で待ち続けるのか?
最後にあいつの姿を…
―ベオルブ家も、もうおしまいだ…
あれは!
そうだ、あいつはあいつこそが!
ベオルブ家がお終い?
終わらせた者こそ、おまえだろうが!
愚かだ、愚かな弟達だ。
何故、何一つ理解しようとしないんだ。
あの時こそ私達がイヴァリースを手に入れる機会だったのだ。
その為に邪魔な父を殺し、私が家を継いだのだぞ!?
ラムザ、貴様はその全てをぶち壊したのだ。
ただ、父に可愛がられていただけの妾の子が…そのおまえが私を手に掛けたのだ。
―許せん『せない』!
―おまえだけは、私『僕』に逆らった事を後悔させてやる!!
「痛ッ!」
あれは…夢?
夢にしてはあまりにもハッキリとしすぎていた。
そういえば、僕は誰の手を掴んでいるんだ?
今、聞こえた声は?
僕は柔らかな感触を後頭部に感じながら視界を声の方に向ける。
視線の先に姉さんが不安と苦痛が入り混じった表情でこちらを覗いている。
「ご、ごめん、姉さん」
僕は慌てて手を離す。
さっきの夢の所為だろうか、よほど強く姉さんの腕を掴んでしまっていたみたいだ。
気がついてみれば先ほどから感じている柔らかな感触は姉さんの太腿の感触だ。
要するに僕は姉さんに膝枕されていたってことか?
…情けない。
起きよう。
そう思い、身体を起こそうとする。
「ごめん、姉さん。重かっただろう?今、起き…ウグッ!?」
姉さんの唇が僕の唇に重なる。
柔らかな感触に一瞬浸ってしまったけど、すぐに姉さんの肩を掴み引き剥がす。
絡み合った唾液が糸を引いてぷつりと切れ落ち、甘い吐息が漏れる。
改めてみた姉さんの目から涙が頬を伝い落ち、僕の顔をうつ。
「ね、姉さん?」
肩を掴んでから気が付いた。
姉さんの身体は震えている。
「…ねぇ、デニム。あなたに何があったの?
私は…私はあの時、確かにあの剣士に斬られて、もう駄目だって思ってた。
身体が冷たくなってきて、助からないって分かってたから
デニムにあんなお願いまでしたのよ?
でも、気が付いたら、傷なんて何一つ負ってなかった。
…違うわね。あなたが何とかしてくれたんでしょ?
なのに…なのに、何で?何で一人で何処かに行ってしまうのよ!」
姉さんが泣きながら僕に真剣に訴えている。
姉さんを僕が置いていった?
「姉さ…」
いつの間にか姉さんの手が僕の後頭部に回り、無理やり引き寄せられ、
再び重なる姉さんとの唇の感触。
感情が高ぶっているのか、今の姉さんは自制が効いていないのだろうか?
僕たちはその…こういう関係では、ない…と思う。
「姉さん、その意味が良く分からない」
如何しても離れてくれる気のない姉さんを無理に離しても同じことの繰り返し、
若しくは状況が悪化するだけ。
あくまで今の段階だけでも許容しないと今の姉さんなら一線を越えかねない。
唇は重ねたまま、口を割って入って来ようとする舌を舌で押し返し、姉さんに尋ねる。
「意味?意味って何!?」
少しだけ口を離して姉さんが僕に聞き返してくる。
質問が抽象的過ぎた。
「その…何も覚えてないんだ、姉さんの為に『何か』をした覚えはあるんだけど…」
僕が打ち明けた途端、姉さんはやっと僕から離れ驚愕の表情を浮かべている。
「覚えていないって、デニムあなた平気なの?」
姉さんがぐっと顔を寄せて、僕の顔を窺っている。
心配してくれているんだろう。
関心がずれた所為か、いつの間にか泣き止み、おろおろと僕の身体に異常が無いか
確認しようとする姉さんを今度こそきちんと離し、
少し大げさに自分の身体が無傷な事をアピールしようと思ったのだが、
「グッ!」
気が付かなかったが身体のところどころに打撲を負ってしまっている。
しまった、と僕が思うよりも早く姉さんが動いていた。
「やっぱり、何処か怪我してるんじゃない!?動かないで、今、私が…」
無理やり押し倒され、又、最初の状態に戻ってしまった。
それで更に気が付いた事なんだが、
「姉さん…あの…こんな事言うのも如何かと思うんだけど…その…見えてる…」
自分でも一気に顔面が紅潮していくのがハッキリと分かる。
さっきまで慌てていたのと姉さんとの距離が近かった所為で気が付かなかったのだが、
姉さんの上着は袈裟懸けにスッパリと斬れており、
その隙間から姉さんの素肌が垣間見えるのだ。
黒い衣類の隙間から見えるふっくらと整った白い肌と淡い桃色のそれは姉さんに対してだけは
本来感じる事はないと思っていた、自分の中の情欲を煽るものが出てきてしまう。
僕の視線と言葉から回復呪文のために集中していた姉さんが視線を落とし、
そこで初めて自分の状態に気が付いたのだろう、慌てて胸元を隠す。
「…見た?」
姉さんも僕と同じように顔を紅潮させて尋ねてくる。
「…ごめん」
こんな言葉しか返せないのだけど。
だけど少しほっとする。
姉さんの素肌が垣間見えたときに襲ってきた衝動。
姉さんの事を押し倒し、その柔らかい素肌を思うままに蹂躙し、自分の肉欲のままに姉さんを汚す。
そしてその腕に、乳房に、首に喰らいつき嬌声と悲鳴の入り混じった叫びを響き渡らせる。
自分の中に此処まで猟奇的な衝動があること自体に正直驚いている。
まるで何かに急かされる様な感じで襲ってきた衝動は何とか押さえ込む事ができたけど、
姉さんには僕がこんな葛藤を抱いていたなんて気づかれるわけにはいかない。
いつ、又、同じ衝動に襲われるかも分からない。
取りあえず状況を変えなくては。
「姉さん、僕は本当に大丈夫だから…それに姉さんこそ、あまり顔色が良くないよ。
取りあえず此処を離れて何処かで休憩しよう。
…それと、姉さんの着れる服を探さないと」
姉さんも黙って頷いている。
今の状態が恥ずかしいのは姉さんの方だから当然かもしれないけど。
「取りあえずはさっきの城まで戻ろう。
日の傾き具合から観ても、多分あそこには誰も残ってはいないだろうし、
何よりあそこなら色々と手に入れることができそうだから。
少し歩く事になるだろうけど…姉さん、いけるね?」
「え?えぇ、それで問題ないわ…」
胸元を隠しながらもじもじとした仕草で姉が同意する。
同意が得られた事だけを確認し、すぐに姉さんから視界を離す。
じゃなければ、姉さんの女性としての仕草を見ているだけで衝動に襲われそうになる。
すぐにでも出立できるように自分の荷物を拾い上げ、
そのまま此処を離れようとして、気が付けば僕はいつの間にか荷物の中から名簿を取り出し握っていた。
(あれ?僕はこれを取り出した覚えは無いけど…)
取り出したものはしょうがない、移動しながら名簿の再確認でもしよう。
やはり見覚えの無い名前を目で追っていると、ふと一人の人物で目が止まった。
―ラムザ・ベオルブ
「どうしたのデニム?ずいぶん、嬉しそうだけど?」
姉さんが不思議そうにこちらを見ている。
「えっ?」
自分の顔に手を当てる。
僕の顔はいつの間にか笑っていたようだ。
この名前を見たとき、ただ『見つけた』。
そう感じただけだったのに。
【C-5/森の手前/夕方】
【デニム=モウン@タクティクスオウガ】
[状態]:プロテス(セイブザクィーンの効果)、全身に打撲(軽症)、
全身が血塗れ、気絶中。
[装備]:セイブザクィーン@FFT 炎竜の剣@タクティクスオウガ、ゾディアックストーン・カプリコーン@FFT
[所持品]:支給品一式×3、壊れた槍、鋼の槍、
シノンの首輪、スカルマスク@タクティクスオウガ
[思考]:1:姉と共にC-6の城まで移動
2:衝動を抑える
3:…ラムザ・ベオルブ?
【
カチュア@タクティクスオウガ】
[状態]:全身が血塗れ、失血による貧血。左腰から右胸に掛けて衣装に裂け目。
[装備]:魔月の短剣@サモンナイト3
[道具]:支給品一式、ガラスのカボチャ@タクティクスオウガ
[思考]:1:デニムと共にC-6の城まで移動
2:衣類の探索
3:デニムの様子がおかしい?
[備考] ・デニムはアドラメルク時の記憶を部分的に喪失しています。
又、デニムが襲われる衝動は全てアドラメルクが介入しています。
徐々にダイスダーグ(前の契約者)の記憶の混同が始まっています。
最終更新:2011年01月28日 16:03