チェンジ・ザ・ワールド☆
散る〜.8
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散るは花
操は広い病院の清潔な廊下を急いで歩いていた。
パタパタと間の抜けた音が廊下に響く。
何故、操がこの大きな病院に来ているかというと、江戸に出て来たミツバの状態が悪くなり、入院することになったからだ。
結婚が決まり、こちらでの生活を始めることとなったミツバは、先日真選組に顔を出した。
操の所にも挨拶に来てくれて、その時付き添って来た沖田のしおらしい様子が随分と可愛くて、思い出す度に笑みがこぼれた。
あの時はまだ顔色も多少良かったのだが、慣れない土地と都会の濁った空気の所為か、ミツバの発作の感覚が短くなったのだ。
江戸でも最新の医療が受けられる大きな病院に入院したミツバを操は見舞いに来たのだが、ミツバに会う前に主治医に会って病状を詳しく教えてもらった。そして、出来る限り治療に携わりたいと伝えると、快く承諾してくれた。
快諾をもらったはいいもののミツバの症状は思った以上に悪く、操は心持ち緊張していた。
コンコン
目の前のドアをノックすると、ミツバの優しい声で返事が聞こえ、次にドアが開いた。
「あれ、銀時?」
「操? お前何やってんの?」
ドアを開けた人物は銀時だった。
驚く操に、ミツバがあの美しい顔で微笑む。
「操先生、坂田さんとお知り合いなんですか?」
「え? ええ。そうなんです」
操の笑顔に、ミツバは嬉しそうに言う。
「あの総ちゃんがお友達だって紹介してくれたんです。とっても優しくて面白い方で、こんな年上のお友達がいるなんてすごく意外で」
「いやあ、まあ、あいつもあいつなりに背伸びしたいお年頃っつーか、色気付いて来て最近困ってんだよ。なあ、みさうをっ!?」
ドスンと銀時の脇腹に肘鉄を食らわし、操は銀時の耳を掴んで病室を出る事にした。
「ミツバさん、ちょっと銀時と話ししてきますから。ゆっくり休んでてくださいね」
廊下に出て待合室の椅子に座ると、銀時がふんぞり返りながら天井を見上げた。
「お前、ちょっと前から休みの日に泊まりで出かけてたのって、もしかしてあいつの所に行ってたのか?」
「うん」
「なんでまた」
銀時の問いに操はどう答えて良いやら困った。
沖田が悲しそうだったから?
土方が言った言葉が気になったから?
近藤を始めミツバを知る連中が心配していたから?
考え出すと、決め手になる理由が見つからない。
そのどれもが理由と言えばそうだし、違うと言えば違うのだ。
「ーーー分からない」
操の答えに、銀時はふんぞり返った格好のままチラリと操の横顔を伺った。
恐らく、操は身近な人間が気にかける人を助けたいと思ったのだろう。
長い時間一緒にいる銀時には分かる。
操は損得なしに、相手が極悪人だろうと貧乏人だろうと金持ちだろうと、分け隔てなく接する。
それは銀時達汚れた世界に生きて来た人間にとって時に眩しく、身を切られるような惨めな思いを奮い起こさせるものだったが、幼い頃からどんなに朱に交わろうとも頑として白く居続ける操は、やはり自分達の憧れであった。
親の顔などろくに知らずに育った銀時にとって、唯一の肉親のような存在。
操もまた、親の顔を知らずに育った。
苦しい時も、嬉しい時も、必ず隣りには操がいた。
そう、自ら朱に交わる銀時と共に、地獄に身を浸してまで。
そして自分の身を呈してでも守り抜きたい、銀時の大切な人の一人……
でも、それは操を縛り付けているだけなのかもしれない。
「……お前ってホント、損な性格だよな」
「どういうことよ」
「器用貧乏ってことだ」
「銀時に言われたくない」
怒った振りをしてそう言う操は、今、真選組という新しい仲間の輪の中にいる。
それを踏み壊すことは銀時には出来ない。
出来れば二度と起き上がれないほど壊滅させて操を自分の手元に置いておきたいが、操は物ではない。
大切な存在である真選組の仲間の家族までも助けてやりたいと思う操の心まで、縛り付ける訳にはいかないのだ。
「ーーーミツバさんは、もう長くないかもしれない」
「ーーーそうかい」
沈黙。
二人の間は、ひどくゆっくりと流れた。
ふと操は立ち上がった。
「ミツバさんのとこにお菓子とかばっかり買って行って、看護士さんに見つからないようにしなさいよ」
そう言って廊下の奥へと消えて行った。
「……へいへ~い」
続く…
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