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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

1日目・No.1

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私のやんごとなき王子様












1日目





 私立星越学園―――


 その歴史は古く、学園の理事長は元華族の家柄という名門校。

 当然のようにここに通う生徒達もまた社会的地位の高い者の令息や令嬢ばかり。

 またそれだけではない。この学園は容姿の美しい者も多く、芸能活動をしている生徒も数多存在する。

 そんな星越学園で最も盛り上がるのが年に一度、8月の初旬に行われる演劇祭だ。

 この演劇祭は芸能各方面からのバックアップの元、大々的に行われる為に舞台も随分と本格的で各種取材が押し寄せる目玉イベントとなっている。


 物語はこの演劇祭の準備期間から始まる―――
















 「美羽ーーーっ」


 背後から呼び止められて、私はくるりと振り向いた。


「おっはよー!」


 こちらに向かって元気に手を振りながら走ってくるのは、私の親友の佐波山渚(さわやま なぎさ)ーー通称さなぎだ。


「おはよう」


 私も右手を上げて挨拶を交わす。

 さなぎのショートカットの髪がふわりと風に揺れた。


「はーっ。朝から走ったぁ」

「そんなに慌てなくても良かったのに」


 息を整えながら私の横を歩くさなぎに、微笑みながら言葉をかける。


「だって明後日の終業式が終わったら、いよいよ夏合宿じゃん! なんかわくわくしちゃって体に元気が溢れてるんだもん!」


 さなぎは本当に嬉しそうだ。

 夏合宿というのは、毎年演劇祭の準備期間中に理事長が所有するりぞーと島で行われる集中合宿の事だ。

 けれどそこはこの名門校所有の島。それはもうすばらしくゴージャスなので、さなぎのテンションが上がってしまうのも分かるのだけれど……


「ねぇねぇ、美羽は演劇祭なにを担当するか、いーかげん決めたよね?」

「う……実はまだ……」

「えー! おっそ! 明後日だよ? 締切ー」

「うん」


 そうーー私はこの学園一大イベントの演劇祭で自分が何を担当するかを、いまだ決めかねている。だから当然テンションだって沈みっぱなし。

 私たちが今回披露する演目は『白鳥の湖』。終業式翌日から始まる一週間の集中合宿で一気に形にしていく。

 学園一大イベントの割に準備期間が短いとも思うが、そこは著名な芸能人も多く輩出している星越学園風の流儀で、時間をかけて良い物を作れるのは当たり前、短時間で成果をあげられる非凡な才能を持つもの達の結晶、それこそがこの演劇祭最大のアピールポイントなのだ。


「なにかしたい事とかないの?」

「うーん……」


 したい事……。

 そして出来る事……。

 そのどちらも私にとってもは重要で、どうするべきなのかを考えると悩みの泥の中へと捉えられてしまう。

 私は自分が何をすれば一番みんなの為になるか、成功につながるかが掴めずにいた。



 ワァァァァァッーー


 不意に校門のほうから歓声が上がった。


「あ、亜里沙様だ」


 さなぎの声が耳に届くと同時に、私の視線はとびきりの美少女を捕らえていた。

 黒塗りのリムジンから品良く降りてきた、その見目麗しい少女こそ『桜亜里沙(さくらありさ)』。

 この星越学園一の美少女であると同時に、芸能界で今もっとも注目を集めているアイドルだ。今度の演劇祭でもヒロインのオデット役を務めるのは、おそらく彼女だろう。


「ごきげんよう」


 我先にと校門に集まったとりまき達に、長く美しい髪を揺らしながら艶然と微笑むその姿は、まさに天使だった。

 彼女はそのまま歩みを進め、私の目の前までやってくると綺麗に微笑んだ。


「ごきげんよう、小日向さん」

「おっ、おはようございます! 亜里沙様っ」


 突然に学園のアイドルに声をかけられ、私は上ずってしまった。

 私なんかの苗字を覚えてくれていた事に、心臓がばくばくと早鐘を打っている。

 彼女のとりまきたちは私の顔を恨めしそうにねめつけている。正直コワイ。


「あなたの事は玲君から聞きますのよ、ごく稀に……ですけれど」

「え! 風名君から!?」


 私が驚いて声を上げると、彼女の綺麗な眉が一瞬ひそんだ……ような気がした。


「ええ。今、ドラマの現場でご一緒しているのですけれど、その合間にたまにお話してくださりますの、あなたの事」

「は……はぁ」


 はぁとしか言いようが無い。風名玲(かぜなれい)君というのは、この学園の生徒で私や亜里沙様と同じ高校3年生。

 ただ普通の生徒と違うのは亜里沙様と同じく芸能界にいて、しかもやはり彼もトップアイドルという事だ。

 この星越学園の姫が亜里沙様なら、風名君はまさに王子様。女生徒の憧れの的なのだ。

 今は亜里沙様と連続ドラマのダブル主演を務めていて、亜里沙様はその合間に風名君が私の話をしてるっていうけど……。

 私からしたら理由もさっぱり分からない。確かに私と風名君は3年間同じクラスで、男女関係無く誰にでも優しい風名君とは少なからず接点はあった。けれどそれだけ。本当にただのクラスメイトの一員で、しかも私のような何の取り柄も無い人間の事を風名君が話題に出す理由が見つからないのだけれど……。


「小日向さんは演劇祭、何を担当なさるの?」

「ええっと……演劇祭は……まだ……決めれてなくて」

「そう。演劇祭にはわたくしも玲君も参加致します。メディアの方も多く取材に来られますわ。あなたも、悔いのないよう精進遊ばせ」


 そう言うと亜里沙様は綺麗に微笑んで、私を横切り校舎へと向かった。

 その後をインプリンティングされた雛のように、とりまき達が追っていく。とりまき達は私の横を通る時に、悪態をついたり睨みつけたりしてきた。


「感じ悪ぅ~~」


 その様子を見て、さなぎが口を尖らせながら呟いた。


「いいよ、さなぎ。私だってびっくりしてるもん」


 そう、本当に驚いていた。

 だって‘あの’亜里沙様に声をかけて頂くなんて。しかも風名君が私の話をしてる? 私のいない所で? どうして?

 その事実がとても意外だっただって風名君は私にとっても雲の上の人っていうか……。

 そんなことを考えている私は、さなぎとの会話にもすっかり上の空で、気づけば下駄箱、無意識のうちに右手には上履きを持っていた。












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