チェンジ・ザ・ワールド☆
雨の日に〜3−6
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3-6
外はすっかり夕方になっていた。スーパーの買い物袋を下げた主婦達が、競う様に加藤達の前を通り過ぎて行く。
アーケードの天井を叩く雨は増々激しくなり、加藤達の心を見透かして笑っている様に見えた。
「寺……か」
ぽつりと加藤が呟くと、津田は急に声を上げた。
「先輩、どうします? これから寺に向かったとして、夜になりますよ? 今日中に秋杜の足取りなんて掴めますかねえ。お寺を飛び出したのは今から三十七年も前ですし……」
ふんと加藤は鼻を鳴らした。
「分ってるよ、さすがに今日は無理だな……一度帰って明日出直そう。その間に熊本県警に連絡を入れて、秋杜の事を調べてもらえ、少しでも情報が欲しい……」
「はい、分りました!」
「加藤さん……」
加藤はすぐ後ろから声を掛けて来た成川を振り返った。
「どうした?」
「あの……私調べたい事があるんで、明日は別行動させてもらいます」
今まで何かと加藤達と共に行動したがっていた成川が、急に別行動を取ると言い出したので、加藤は面食らった。
「ああ……何を調べるんだ?」
「聖パトリキウス女学院」
予想だにしなかった名前が出て来て、加藤と津田は驚いた。
「何で急に? そこは本村さんと坂井さんの母校ですよ?」
津田の言葉に成川は微笑んだ。
「ええ、何か引っかかるんですよ、仁美さんの様子が……」
「引っかかるって……何が?」
「何と言ったらいいか……仁美さんは何か隠してる。そんな気がして」
高いアーケードの天井を見つめて、何か考える成川の横顔に、加藤は少しほっとした。
「まあ、成川さんが気になるって言うのなら、何かあるかも知れませんね」
津田は残念そうに言った。明日一緒に出かけられないのが寂しいのだ。
「本村理恵さんや坂井春香さん、古井仁美……旧姓松元仁美さん。この三人が同級生であるという偶然が、どうも引っかかるんです。何か見えない力が引き合っている様な……ですから彼女達が学生時代に、どんな事が学校であったか……それが知りたいんです」
それが事件と何か関係があるというのだろうか。加藤は不思議に思った。
この事件はそんなに複雑なものなのか? もっと単純なものではないのか?
おそらく犯人は古井家の次男、牧夫の双子の兄の秋杜であることは十中八九間違い無い。秋杜が近くの山寺に預けられ、そこを飛び出してからの足取りをしっかりと掴めば現在の状況も分るし、共犯者も分るのではないのか。
「阿曾山、一度行ってみたかったんですけどねえ」
成川が独り言を呟くと、津田が直ぐさま食いついて来た。
「だったら一緒に行きませんか? 高校は秋杜の足取りを調べた後に、一緒に調べに行きますから!」
「……いいえ、大丈夫です。事件が全て片付いたら、ゆっくりと見に行きますから」
津田の提案はあっさりと却下された。
帰りの電車の中、加藤は車窓に激しくぶつかる雨を眺めていた。
落ちてはぶつかり、ぶつかっては弾け飛び、弾け飛んでは地面に落ちる事を繰り返す雨に、いい加減ストレスを感じ始めた頃。ふと向かい側に座る津田が、すやすやと気持ち良さそうに眠っている事に気付いた。
「このやろう、気持ち良さそうに寝やがって」
「ふふ、本当ですね」
加藤は自分の隣りに成川が座っている事をすっかり忘れていた。誰もいないと思って言った言葉に、まさか返事が返って来るなどとは思っていなくて、驚いて成川の顔を見た。
「どうしました?」
成川は微笑みながら加藤を見た。
「あ……いや……」
やはり苦手だ。
そう加藤が思っていると、成川に話しかけられた。
「あのお……加藤さんって、独身なんですか?」
「は?」
成川の質問の意味がよく分らず、加藤は間の抜けた声を上げた。
「あ……いえ、すみません……」
顔を赤くして俯く成川に、加藤は首を捻る。
「ーーーひとり者だよ」
吐き捨てる様に答えた加藤の言葉に、成川は再び顔を上げた。
「あの、じゃあ。恋人はいらっしゃるんですか?」
「はあ? いないよ、いるように見えるか? こんな犯罪者みたいな顔してて、女が寄って来たためしがない……」
いかにもくだらないと言った感じで、窓枠に肘を置いて外を見ながら答える加藤に、成川は激しく首を横に振った。
「そ、そんな事ないです、加藤さんはとても素敵だと思います!」
「はあ?」
加藤は目を丸くして成川を見つめた。
目が合った瞬間、加藤と成川は顔を赤くし、すぐに目を反らした。
「おっ……おだてても何にも出ないぞ!」
窓を打ち付ける雨と同じくらいに激しく鳴る心臓に、落ち着けと何度も言い聞かせながら、加藤は自分の異変に戸惑った。
一体何だってんだ……
続く…
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