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鬼頭4日目・No.1

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私のやんごとなき王子様












4日目






「着替えに洗顔、歯磨きに充電器それから~」


 旅行鞄を開いて荷物の最終チェック。忘れ物があったら厄介だもの。


「うん、バッチリ!」


 重たい旅行鞄を持ち上げると私は玄関へと向かった。


 玄関ではママが私の出発を見送る為に立っていてくれた。


「気を付けてね。頑張るのよ」

「うん、有難う」


 ママともしばしのお別れ。パパは早朝から仕事に出かけてしまったけど、昨晩はたっぷり話をした。高校生活最後の演劇祭、二人とも見に行くのが楽しみだって言ってくれて、それが素直に嬉しかった。


「それじゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい!」


 ママに見送られて、私はさなぎと待ち合わせをしている駅へと向かった。


















「ごめ~ん! 待った?」

「ううん、今来たとこだよー」


 駅に着くと、さなぎの姿は既にあった。


「楽しみだね~!」


 さなぎが本当に嬉しそうに言うから、私もますます楽しみになってくる。


 合宿が行われるリゾート島へは、理事長がチャーターした大型客船で行く。船の用意された港に現地集合なのだが、私やさなぎのような庶民代表はそこまで電車で行くのだ。

 亜里沙様や風名君なんかは高級車で横付けなんだろうな、なんて重たい荷物に早くも痺れかけてきた右腕が、そんな二人を羨ましく思ってしまうのに拍車をかけている。


「にしてもさぁ、ホントにリッチだよねぇ」


 電車に揺られながらさなぎがこぼす。


「そうだねー。だって理事長が自ら船をチャーターだもん。私、あんな豪華な船に乗れるのって、多分これが最後だと思う」

「あはは! 言えてる~」


 理事長は本当に素晴らしい方だと思う。とはいっても私達のような一般の生徒では中々会う事すら難しいので、よくは知らないのだけれど。それでも私達がこうして伸び伸びと過ごせるのは、全て理事長の教育方針の賜物だと思うのだ。


「それにさー、理事長ってちょーカッコイイよね~!」

「さなぎは利根君のファンなんじゃなかったの?」

「利根君は利根君、理事長は理事長! はぁ~、今回の合宿にも途中から様子を見に来て下さるらしいけど……あ~、是非ともお目通りしたい!」


 まったくもう、ゲンキンなんだから! なんて思いつつも、さなぎの気持ちも十分すぎる程に分かる。

 とんでもないお金持ちで、物腰が柔らかで、おまけに美形。理事長とは言ってもまだ若く、確か36歳だったかな? 十分すぎるほどの魅力を兼ね添えた大人の男性に憧れを抱かない女子の方が少ないだろう。

 さなぎと一緒になって理事長の噂話なんかを、あれやこれやと話している内にあっという間に目的の駅に着いた。



 電車を降りると、すぐに潮の匂いが鼻腔をくすぐった。なんだかいよいよ始まるぞー! っていう感じでワクワクしてしまう。


「さ、それじゃあ重い荷物と共に、我ら庶民団参りますか~!」


 さなぎが元気よく改札口へと向かい、私もそれを追う。


 駅を出ると港は目の前で、ここからでも私達の乗る大型客船が目に留まる。

 そしてその前にはメルセデスやフェラーリ、ジャガーといった高級車がズラズラと並び、見送りの挨拶を受ける生徒達でごった返していた。

 やっぱりこの学園において、私達みたいな庶民は本当に少数派なんだな――なんて少しだけ後ろめたさを感じる。なんだかこんな所にいるのが場違いにすら思えて来るのだ。


「行こっ、美羽」


 そんな私の心を察したかのように、さなぎが私の手を引いた。

 うん、そうだよね。私にはさなぎがいるし、それに――



 私を待っててくれる人もいる。



 改札を抜けた先に見つけたその姿に、私の心は一気に軽やか弾みはじめた。












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