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雨の日に〜5−9

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5-9
















 岡部の話しによれば、最初の被害者である女子大生は駅で彼女が落とした携帯を拾って、慌てて追いかけて携帯を渡した時に一言二言話したらしい。次の被害者のキャバクラ嬢は、たまたま出かけた福岡市内の道端で道を尋ねられて教えた。そして次の被害者のOLは、たまに行くバーで一人で飲んでいる時にカウンターで隣同士になり、ほんの少し会話をしたというのだ。


「そして本村理恵は一緒に夕飯を食った。と言う事か?」


 ずっと繋がらなかった被害者の共通点が、奇しくも犯人と疑われて拘置所に入れられていた岡部で繋がった。


「これじゃあまるで岡部が犯人だともう一度宣伝してるみたいじゃないか」

「でも俺は違う、人を殺したりなんかしてない……」


 岡部は苦しそうな表情で加藤を見上げる。加藤もそんなことは百も承知だ、しかし岡部とほんの一瞬とは言え会話をした女性が殺されているのだ、無関係とは思えない。


「お前、誰かに嵌められてるんじゃないか?」


 加藤の言葉に、岡部は驚いた。

 嵌める? 一体誰が、何の為に?

 人に恨みを買う様な生き方をしてきたつもりはない。だがそれは自分がそう思っているだけであって、周りから見れば堪え難い苦痛や屈辱を受けたと思われても仕方ない事が無かったとは言い切れない。


「ーーーー」


 無言で考え込んだ友人の肩を叩き、加藤はニヤリと笑った。


「冗談だよ、お前は俺と違って人に嫌われたり恨まれたりするようなヤツじゃない。被害者がお前と話したなんて、単なる偶然に過ぎないさ……事実は小説よりも奇なりってな。心配すんな、桂元秋杜を取っ捕まえて、全て白状させてやるから」


 加藤が言うと、津田の携帯が鳴った。


「ちょっと失礼します」


 慌てて突き当たりの非常階段へ飛び出して行った。


「すみません、加藤さんという刑事さんはいらっしゃいますか?」


 廊下の曲がり角から顔を出した一人の看護士が、こちらに向かってそう尋ねて来た。


「はい、俺が加藤です……」


 加藤が顔を上げると、看護士が手招きをした。加藤は岡部と顔を見合わせ、すぐに看護士の方へ近付いた。

 ふと非常階段へと出て行った津田が慌てて戻って来て、廊下の角で看護士に小さなメモ紙を受け取り、何やら話す加藤を見て言った。


「先輩、どうかしたんですか?」

「いえ、分りません。急に呼ばれて……」


 すると加藤は話しが終わったらしく、こちらへ戻って来た。


「津田、電話は何だった?」

「あ、はい! 桂元秋杜に良く似た男が住んでいるアパートが分ったそうです! 俺は今から白川先輩達とそこへ向かいますけど……先輩はどうしますか?」

「何!? そうか……いや、ここはお前に任せる、俺は他にやらなきゃいけない事があるんだ」


 一も無く一緒に行くと言うに違いないと思っていた津田は、加藤からの返事に目を見開いた。


「先輩……他にやらなきゃいけない事って、一体……?」

「まだそれは分からない……だから今は桂元秋杜の身柄を押さえる事にお前は集中してくれ」

「は、はい……」


 加藤のよく分からない説明に、津田は微妙に頷いた。いまいちはっきりしないが、犯人である可能性の高い桂元秋杜の身柄を確保する事が、最優先事項である事は間違いない。津田はぺこりと頭を下げると走り出した。


「それでは行ってきます!」

「加藤……」


 津田が走り去ると、岡部が心配そうな顔で加藤を見上げた。

 加藤は岡部を見て、力強く頷いた。















                                  続く…














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