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土屋6日目・No.2

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私のやんごとなき王子様












 昼食の後、少し食休みを取ってから私達大道具担当は全員で海に来ていた。

 さすがプライベートビーチ。私達以外には誰もいない! なんて気持ちがいいんだろう!
 

「う~~~~ん、気持ちいい!」

 
 太陽の光を全身に浴びながら、私は大きく伸びをした。

 水着は新調出来なかったから去年と同じものだけど、気に入ってるから良しとしよう。

 辺りを見回すと、皆それぞれビーチバレーを楽しんだり、海に入って泳いだり思い思いに楽しみ始めている。

 土屋君は何をしているんだろう? あたりをキョロキョロと探してみる。

 フェリーから飛び込もうとした程の海なんだから、楽しんでいるとは思うのだけど……。
 
 くるりと周囲を見渡して――あ、いた!
 
 土屋君は早くも海に入って、何やらバシャバシャと顔を水面から出したり入れたりしていた。……何をやってるんだろう?

 私は少しワクワクしながら土屋君へと近付いた。

 あんなに意味の分からない人だとばかり思っていたのに、今は何だか土屋君の取る行動に興味が湧いて仕方がないのだ。
 

「土屋君、何してるのー?」

 
 海へと足を踏み入れながら、土屋君へと声をかける。

 私の声に気づいた土屋君はくるりと振り返った。思わずその顔を見て私は吹き出してしまった。


「あははは! つっ、土屋君っ、なにそのゴーグルっ!」


 だって振り返った土屋君の顔には、どこで見つけてきたの? っていう位に大きな水中メガネが張り付いていたから。

 私の笑いを特に気にするでも無く、無表情のまま土屋君はゴーグルを外す。バカっぽいそれの下から現れた、水に塗れた端正な顔立ちに今度は急速に鼓動が早まった。これじゃあバカは私だ。顔がものすごい勢いで赤面していくのが自分でも分かる。恥ずかしいっ!


「ヨツメウオって知ってる?」

「へ?」


 そんな私の表情など気にも留めない土屋君から放たれた言葉は、またも意味不明のものだった。毎度の事ながら本当に唐突な人だなぁ。


「えっと……知らないけど……」


 私がそう答えると、土屋君はつまらなそうに鼻で笑った。

 な、なんなのよー!


「はいはーい! 私、知ってます~!」


 背後から突然かけられた元気な声に思わず振り向くと、そこには1年の女子がいた。


「えっと……君は」

「1年の水原です! 森の絵を描いてる者です!」


 水原さんはポニーテールの長い髪をゆらしながら、元気に答えた。


「ヨツメウオって、水面上も水面下も同時に見られる魚ですよねっ」

「そうなんだよ!」


 それまで特に興味のなさそうだった土屋君が、彼女のその言葉を聞くと一気に顔が華やいだ。


「土屋先輩、ヨツメウオになりたいんですかー?」

「なりたいね!」


 な……なんなのーっ。


「だからそんな大きな水中メガネしてるんですねーっ! 見れそうですか? 水中と水上を同時に」

「なかなか難しいよ」

「私も挑戦して良いですか?」

「ああ、勿論! 一緒に最適な角度を見つけようじゃないか!」


 そう言うと二人はゴーグルを装着し、水面付近でバシャバシャとやり始めた。

 
 な、なんだろう。この疎外感……。

 何とも言えない寂しさが襲いかかってくる。


「小日向せんぱーい! 一緒にビーチバレーしませんかー?」


 ビーチの方から私を呼ぶ2年の声に振り向くと、数人の後輩がこちらに向って手を振ってくれていた。


「うん! 今行くーーーーっ」


 私も元気に返事をして、後輩の元へと向かった。

 ちらりと後ろを振り返ると、土屋君は水原さんと楽しそうに笑いあっていた。

 ――いいのいいの!

 私には関係のないことじゃない!
 
 気持ちを切り替えようと、私は大きく頭を振った。













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