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  • 守りたいもの(前編)

守りたいもの(前編)

最終更新:2011年05月25日 19:12

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守りたいもの(前編)  ◆AJINORI1nM



 深夜、植物園。
 照明は点いておらず、ガラス張りの天井から月明かりが差し込んでいる。

 植物達に囲まれた芝生の上。
 支給品の確認を終えたレイラがそこに居た。

 小学校低学年だろうか。
 美しい青紫色の髪を持つ、幼い少女だ。
 髪の毛と同じ色の服を着ており、胸には月の模様が描かれている。
 奇妙なことに、彼女の頭からは二本の小さな角が生えていた。


(どうして私はまだ人間界に居るのかしら……)


 彼女は、千年に一度行われる、魔界の王を決める戦いに参加する魔物の子の一人だ。
 と言っても、彼女の戦いは千年前に終わっている。
 千年前の戦いで、ゴーゴンという魔物の子に敗北してしまったからだ。
 敗北の原因はゴーゴンの放った術、『ディオガ・ゴルゴジオ』。
 この術は魔物の子を魔本に閉じ込め、石板に変えてしまう恐ろしい術だったのだ。
 ディオガ・ゴルゴジオをその身に受けたレイラの体は、魔本と共に石板に変わる。
 魔本が燃えて魔界に帰る事もできず、彼女は冷たい体のまま、永い時を人間界で過ごす事となった。

 しかし、彼女の戦いから千年後。
 再び行われた魔界の王を決める戦いの参加者、ゾフィスによって、彼女にかけられていた石化の呪いは解かれる事になる。
 自由を取り戻した彼女は、人の心を操るゾフィスのやり方が間違っている事に気付いていた。
 そのため、心を操られている人間達、そしてゾフィスに脅され、戦わされている千年前の魔物達を解放するためにやって来たガッシュ達に彼女は協力し、
 見事ゾフィスの悪行を打ち砕く事に成功したのだった。

 その後、今の戦いに千年前の戦いの参加者である自分が関わるべきではない、
 パートナーとして力を貸してくれたアルベールを戦いに巻き込みたくないという気持ちから、
 清麿に自分の魔本を燃やしてもらい、魔界へと帰ったのだ。

 ……そのはずだったのだが、何故かまだ自分は人間界に居る。
 千年もの時が経っているとはいえ、魔界と人間界を間違えるはずがない。
 今自分が居る場所は間違いなく人間界だ。

 それに、とレイラは自分の右腕に目を向ける。
 手首に付けているブレスレットは月明かりを反射しており、腕の中には一冊の本が抱えられていた。
 青紫色をした、燃やされたはずのレイラの魔本だった。
 確認してみると、説明書にある通り自分で本が読め、威力は下がっているが呪文も発動した。

 これはどういうことだろうか。
 魔界の王を決める戦いに参加する魔物の子は、自分の魔本を人間のパートナーに託し、術を唱えてもらわなければ術が発動しない。
 自分で術を唱えたとしても、本来ならば何も起こらないはずなのだ。
 そもそも、レイラの魔本は燃えたはずである。
 一度燃え始めた魔本の火を消すことはできない。
 レイラの魔本は、灰も残さず確かに消滅した。

 もしや自由に術を発動できないように、制限として新たに魔本を用意したのだろうか。
 だとしたら、敵は相当な力を持っていることになる。
 魔物の術を制限する魔本は、『神』と呼ばれる正体不明の存在が作ったもので、王を決める戦いもその『神』が主催するのだという。
 故に、『王を決める戦い』は『神の試練』と呼ばれる事がある。
 参加する魔物の子は魔界の魔物達が決めることができるが、『神の試練』自体のルールを変える事は不可能と言って良い。
 例え魔界の王であっても、『神の試練』を受けない事を決定できても魔本等の仕組みを改定する事はできないのだ。
 ましてや新しく作るとなれば、それこそ『神』の如き力が必要となる。


(まずいわね……。これほどの力を持つ者が相手となると、この殺し合いに参加しているやつらもかなりの力を持っていると見て間違いないわ。
ガッシュや清麿達が無事でいられるかどうか……)


 ガッシュ・ベル。高嶺清麿。ナゾナゾ博士。パルコ・フォルゴレ。
 彼女を石化の恐怖から、ゾフィスの呪縛から救い出してくれた恩人達。
 共にデモルトと戦った仲間達である。

 今度は私が彼等を救う番だ。
 この殺し合いは魔界の王を決める戦いとは関係ないものだろう。
 現に、魔本を燃やされ敗退した自分が、パートナーもなく人間界に存在しているのだ。
 これが王を決める戦いとは無関係となれば、自分が手を貸すことになんの問題もない。
 必ず、ガッシュ達をこのふざけた場所から救い出して見せる。

 そう固く決意したレイラはリュックを背負い、仲間達を探すために行動しようとした。
 その時である。
 突然、植物園の照明が一斉に点いたのだ。
 いきなりの強い光に、レイラは一瞬目を覆った。
 そんなレイラに向かって、入口の方から声がかけられる。


「近くで魔力を感じたから来てみれば……。あなた、魔族ね?」


 レイラは声のした方を見る。
 入口に居るのは女性だ。
 見た目は人間だが、人間ではないとレイラは判断した。
 女性の頭から、昆虫のような触覚が二本伸びているからだ。
 人間に触覚は存在しない。


「魔物!?」


 レイラはと咄嗟に身構える。
 敵か味方かはまだわからない。
 もし敵であれば、今ここで倒さなければならない。
 ここで逃がせばガッシュ達を危険な目に遭わせることになるからだ。
 それだけはさせてはならない。

 女性はゆっくりとレイラに近づいてくる。
 手には魔本を持っていないため、術を発動させる心配はないだろう。
 しかし、魔物はその身体能力の高さも脅威になりえる。
 油断はできない。


「そう身構えなくてもいいじゃない。ちょっと訊きたいことがあるだけよ」

「……訊きたいこと?」

「ええ、アシュタロスって名前のお方をしらないかしら?」

「……知らないわ。ここで誰かと出会ったのはあなたが最初よ」

「そう……」


 と、呟くと同時に女性の手がこちらを向く。
 その手から腕の太さはある光線が放たれ、レイラに向かって一直線に伸びる。
 いきなりの攻撃ではあったが、警戒していたレイラはなんとか避けることができた。
 光線はさっきまでレイラが居た場所へ直撃し、地面を大きく吹き飛ばす。
 爆発した地面は土の塊を弾丸のような速さで四方八方へ撒き散らし、その一つがレイラの体に激突してしまう。


「ぐっ……!」


 土の塊が激突した箇所が痛む。
 人間の体ならば内臓破裂か、そうでなくても骨を砕いていたかもしれない。
 だが、魔物の体は頑丈だ。
 これくらいの衝撃で動けなくなるほど、レイラの体は柔(やわ)ではない。

 レイラは体制を建て直しながら、服に描いてある月の模様に手をかざす。
 すると、月の模様が立体的に浮き出て小さな杖へと変わり、レイラの手の中に収まった。
 杖の先端には、顔の描かれた三日月が付いている。
 この、一見するとおもちゃに見えてしまう小さな杖がレイラの武器だ。
 この武器はレイラの術を発動させるための起点となり、術を制御するための重要な役割を持っている。
 例え壊れたとしても、体の一部のようなものなので、しばらく休めば再生する。


 レイラは眼前の敵を鋭く見据える。
 やはり、女性の手に魔本は見当たらない。
 魔本の発光現象も確認できなかった。
 魔物であるならば、魔本がなければ術を発動させる事はできないはずである。
 遠くで呪文を唱えるパートナーの存在も否定できないが、術の狙いと発動のタイミングが絶妙だった。
 詠唱の声が聞こえない距離から、ここまで動きを合わせることが可能だろうか。
 もしかしたら、とレイラは一つの結論に至る。


「まさか、大人の魔物も居るっていうの!?」

「あら、じゃああなたは子供なのかしら?」


 そう言うや否や、女性は再び光線を放ってきた。


「くっ!」


 レイラは横に跳んで光線を避ける。
 防御の術もあるが、パートナー無しの術では威力が低下する。それは確認済みだ。
 さっき見たこの光線はギガノ級の威力を持っていた。
 防御力の低下した防御呪文でギガノ級の術を防げるとは思っていない。

 レイラは植物の生い茂る中へと突っ込んでいく。
 それと同時に、後ろから地面が爆ぜる爆音が聞こえた。

 レイラは植物に身を隠して走りながら、相手の姿を確認する。
 相手がこちらを見失っている今がチャンスだ。
 レイラは植物の合間から、敵を狙って呪文を唱える。
 青紫色の魔本が輝きを放った。


「ミグロン!」


 レイラの持つ杖の先端から、鞭のような光が伸びる。
 レイラの術の中でも最弱の術だが、最速の攻撃呪文でもある。


「えっ?」


 女性がレイラの攻撃に気付いた時にはもう遅かった。
 最速の攻撃を避けることも防御することも出来ず、まともに食らってしまう。
 ミグロンは最弱の術ではあるが、人間を倒すには十分な威力を持っている。
 例え相手が魔物であっても、少しは痛手を負わせることができるだろう。
 しかし──



「……何よこれ。弱過ぎて話にならないじゃない」


 女性の体には傷一つ付いてはいなかった。
 それどころか、痛みすら感じていないらしい。
 レイラの攻撃が、まるでそよ風であるかのように通用していない。


「ミグロン!」


 植物群の中を移動しながら、レイラは再び呪文を唱える。
 光の鞭が再度女性に突撃した。


「こんなものが効くわけないでしょう」


 女性は攻撃を避けようともしない。
 そもそも、避ける必要がないのだ。
 女性の体にミグロンがぶつかるが、女性は痛くも痒くもなかった。

 それでもなお、茂みの中を走りながらレイラは術を唱え続ける。


「ミグロン!」

「そこね!」


 女性は声のした方へ向けて光線を放つ。
 ミグロンを消し飛ばしながら、光線はレイラへと迫っていった。


(今よ!)


 この瞬間をレイラは待っていた。
 光線が到達する前に大きく上方へと飛び上がる。
 光線は草木を吹き飛ばしながら、レイラがさっきまで居た空間を通り過ぎて行った。
 上空から、レイラは敵へと杖の照準を合わせる。

 女性は攻撃を放った直後で隙ができている。
 今まで放った術には心の力をそれほど込めてはいない。
 この最大のチャンスを勝利へと変えるために温存してある。
 今出せる最大攻撃呪文にありったけの心の力を込め、レイラは呪文を叫んだ。


「ラージア・ミグセン!!」


 レイラの叫びと同時に、レイラの持つ杖の先端の三日月が巨大化する。
 巨大化した三日月は杖から離れ、敵へ向かってその巨体を突撃させた。


「なっ!?」


 今まで避ける必要のない攻撃ばかりで油断していた。
 今から動いたところでもう間に合わない。


「このっ!!」


 女性──ルシオラは、迫りくる三日月に向けて自分の腕を叩き付けてその身を守ろうとする。
 上空から放たれたことにより、三日月には重力の加速まで付いている。
 質量と速度を持った、これまで受けたものよりも桁違いの攻撃だった。
 三日月がルシオラに激突すると、大きな衝突音が園内に響いた。

 地面に降り立ったレイラは、三日月が敵に激突したのを見届ける。
 魔本もなくあれだけの術を放つ魔物だ。
 大人の魔物と見てまず間違いない。
 一体どうやって魔界から人間界に魔物を呼び寄せたのか。

 そういえば、とレイラは敵が呪文の詠唱をせずに術を発動させていた事を思い出す。
 例え魔本に縛られなくとも、魔物の術の発動には呪文を叫ぶことが必要不可欠なはずだ。
 この千年でそういうことはなくなったのだろうか。

 そう思った矢先の事だ。
 ラージア・ミグセンの衝突で立ち込めていた土煙りの中から、一条の光が放たれた。

 ギガノ級の威力を持った光線がレイラに直撃し、その小さな体は茂みの奥にまで吹き飛ばされてしまった。
 ラージア・ミグセンの直撃を受けたにもかかわらず、土煙りの中から出てきたルシオラからはダメージを受けている気配が全くない。


「びっくりしたけど、あんな攻撃で私を倒せると思ったの?」

(そん…な……。ラージア・ミグセンが……効いてないなんて……)


 弱体化しているとはいえ、レイラの持つ術の中でも高威力を誇る攻撃だ。
 それなのに傷一つつけられないとは。
 レイラはぎり、と歯噛みする。

 茂みが自分の姿を隠しているが、この場所に次の攻撃がくるのは時間の問題だ。
 今の自分の力ではこの敵の力に遠く及ばない。

 だが、ここで諦めるわけにはいかない。
 私は仲間達を救うと決めた。
 目前の敵は殺し合いに乗っている。
 この敵を放っておけば、仲間達に必ず襲いかかるだろう。
 それだけはさせてはならない。
 自分がここで倒して見せる。
 仲間達は、私が守る!

 傷ついた体で、レイラは自分の右腕、その手首に目を向けた。
 そこにあるのは金属製のブレスレット。
 名を、『輪廻』という。

 この支給品は、使用者の肉体年齢を操作する効果があると説明書には記されていた。
 これを使って成長すれば、自分の術は今より強い威力を発揮できるかもしれない。
 だが、この『輪廻』を使うことには多少の躊躇い(ためらい)があった。
 使用した際に副作用があるのだ。
 輪廻は使用者の実年齢に関する記憶を奪い、操作された年齢を本当の自分の年齢と確信させてしまう。
 知識までは奪われないため、ガッシュ達の顔と名前は覚えていられるかもしれない。
 しかし、それも教科書に載っている偉人程度の記憶になってしまうだろう。
 それは知り合いではなく、ただ知っているというだけのもの。
 輪廻を使えば自分の姿は変わってしまう。
 その上ガッシュ達との関係性を忘れてしまえば、敵対してしまう可能性が出てくる。

 レイラは仲間達を、自分を救ってくれた恩人達を守りたいのだ。
 敵になってしまえば本末転倒である。

 そんな迷いが生じているレイラの周りを、複数の光線が横切った。
 ルシオラの光線の正体は霊力の奔流だ。
 自身の膨大な霊力を収束し、目標に向かて放出する。
 それは腕からだけでなく、周囲の空間から複数の霊波を放出させることも可能である。
 ルシオラは止め(とどめ)とばかりに、レイラの居る一帯に向けて幾条もの光線を放っている。

 レイラに迷っている時間はない。
 ここでこの敵を倒さなければ、仲間達に危害が及ぶのだ。
 それは絶対に許されない。
 許してはならない。

 輪廻を使用してしまった場合の保険として、名簿には仲間の事を記述している。
 ガッシュ。清麿。ナゾナゾ博士。フォルゴレ。
 思い出すのは、短い間ではあったが共に戦った仲間達の姿。
 あの仲間達の命を、こんなくだらない場所で失わせるわけにはいかない。
 仲間達に危機を齎す(もたらす)敵を、野放しにしてはならない。
 大丈夫、あの仲間達と敵対することなど絶対に起こらない。
 そう、信じている。

 思いを固めたレイラは、輪廻を発動させる。
 今よりも強い自分。
 眼前の敵を倒せる力を身に付けた自分。

 レイラの体が、変化し始めた。










「……何?」


 攻撃を続けていたルシオラは違和感を感じていた。
 強力な魔族であるルシオラは、魔力や霊力といったものを感じ取る能力を持っている。
 例え相手が茂みに身を隠していようと、その位置を把握することが可能だ。
 だが、その探知能力は優れているわけでもない。
 感じ取ることができるのは強力な霊能力者や魔族の力のみで、普通の人間程度の霊力や浮遊霊のような魂までは感知できない大雑把なものである。
 今の攻撃もレイラ本人を直接狙っているのだが、魔力の気配が消えていない。
 攻撃が外れてしまっているのだろう。
 まだ生きているのは確実だ。

 気配が移動していない事から、動けないのかもしれない。
 だとすれば、霊波の無駄撃ちを続けるよりも、近付いて確実に仕留めた方が賢明だ。

 そう思った時であった。
 魔力の気配が強くなったのだ。
 場所からして、その源が少女であることは間違いない。
 しかし、疑問が湧き上がる。
 突然魔力が上昇したのはどういう訳か。
 今まで力を隠していたのだろうか。
 それとも、何か支給品を使ったのだろうか。

 何をしたのかはわからないが、何かをしたのは確かだ。
 面倒なことになる前に息の根を止める。

 ルシオラはレイラが居るであろう場所に向けて、五条の霊波を放った。
 わざわざ何かをしている相手に近づく必要もない。
 五条の光が気配のする場所を襲い、地面も草木も全てを吹き飛ばす。
 土煙りが濛々(もうもう)と立ち込める中から、何者かが飛び出した。

 飛び出してきた人物は、さっきまで戦っていた小柄な少女ではない。
 二十歳と思しき(おぼしき)、若い女性だ。

 この女性は何者なのか。
 突然この場に現れた他の参加者であろうか。
 いや、それは違うとルシオラは思う。
 この女性には既視感を覚えるからだ。
 女性の手には、先程の少女と同じ青紫色の本と小さな杖が握られている。
 服装も、少女の服をそのまま大きくしたかのようにそっくりな作りであり、髪型や髪の色までもが少女と同じである。
 頭から生えている角は少女の角よりも大きいが、少女が成長すればこれくらいの大きさになっていることだろう。
 この女性は、先程の少女とあまりにもそっくりなのだ。

 女性が少女と同一人物であるとの判断は一瞬でついた。
 現に、女性の顔からは少女の面影が見て取れる。
 姿を変える魔族など珍しいものではない。

「それがあなたの本当の姿ってわけね!」

「あら、じゃあ私は今までどんな姿をしていたのかしら?」


 どうやらまとも答える気はないらしい。
 だが、相手がどんな姿に変わろうと、ルシオラのやる事は変わらない。


「訊いているのは──」


 ルシオラはレイラの動きに合わせて腕を動かす。
 腕の先に霊力を収束させた。


「──こっちの方よ!!」


 ルシオラの腕から光が放たれる。
 しかし、レイラの動きは少女の時とは比べ物にならない程速くなっていた。
 近距離での高速移動に加え、先程までの少女の速度を想定していたルシオラは、レイラの動きを完全に捉える事ができなかった。
 ルシオラが放った光線はレイラが通り過ぎた空間を空しく(むなしく)通過し、植物園に破壊の爪跡を残すに終わる。
 レイラは攻撃直後の隙を衝き、ルシオラの真横を取ると同時に杖を構えた。


「ラージア・ミグセン!」


 レイラの持つ杖から、巨大化した三日月が放たれる。
 至近距離からの攻撃だ。
 霊波で迎撃できる時間はない。


「このっ!」


 ルシオラは力任せに片腕を三日月にぶつける。
 先程と同じ攻撃と思い直接受けたが、威力も強度も格段に跳ね上がっている。
 一度受けた攻撃とは言え迂闊な事をしたか、と一瞬肝を冷やしたが、体へのダメージはさほど感じられない。
 このまま押し切っても問題はないと、腕に込めた力を更に強める。

 三日月を砕きながらレイラへと強引に狙いを定め、そのまま霊波を放出した。
 光の線は狙い通りの場所へ向かって突き進む。だが、そこにレイラの姿は存在しない。
 巨大な三日月の陰になって気付かなかったが、レイラはラージア・ミグセンを放った直後に行動を再開していたのだ。
 ルシオラから放出された光は木々を吹き飛ばし植物園の壁すら貫くも、目標であったレイラの気配はすでに植物群の中。
 レイラのおおよその位置は掴めるものの、所詮はそれまでだ。
 ルシオラの探知能力では、絶えず移動している気配を正確に捕捉することはできない。


「ちょこまかと!」


 感じられる気配に向けて再度霊波を放つ。
 しかし、無駄撃ちの回数を増やしただけで、目標にはかすりもしない。
 ここまできて、ルシオラは苛立ちを覚え始める。

 最初は楽な相手と思っていた。
 事実、あちらの攻撃はこちらに効かず、逆にこちらの攻撃はあちらに効いている。
 間違っても苦戦するような相手ではない。
 それなのに、攻撃を直接当てることができたのは一度だけ。
 それ以降は無駄な力を浪費してし続けている。
 ルシオラは、どうやってこの敵を確実に仕留めるかを考えあぐねていた。





「……攻撃が効いていないわね」


 レイラは園内を疾走しながら考える。
 敵の様子を見る限り、敵がダメージを負っているようには感じられなかった。
 ラージア・ミグセンはレイラの術の中でも高い攻撃力を有している。
 だというのに、それが相手を倒す足がかりにすらなっていない。

 連続で攻撃できれば勝機も出てくるかもしれないが、レイラの術はどれも杖による三日月の操作の術である。
 小さな術ならば連続攻撃も可能だが、大きな術はその要である三日月を飛ばすのだ。
 三日月が回復するまでの間、次の攻撃は不可能であった。

 三日月の回復に要する時間は数秒にも満たない。
 しかし、その数秒が勝負の行方を左右する事をレイラは理解している。
 戦闘における一秒の遅れは、自身が敗北するのに十分な時間となるのだ。


「せめて、パートナーが居れば……」


 パートナー。
 無意識に口を吐いた自分の言葉に、レイラは何か懐かしいものを感じた。
 パートナーとは魔本を読むことのできる人間のことで、魔界の王を決める戦いにおける重要な存在である。
 パートナーが居なければ魔物の子は術が出せず、圧倒的不利な状況に陥ってしまう。
 魔界の王を決める戦いは魔物ならば誰でも知ってることであり、この程度の知識は魔界の一般常識だ。
 魔物の中には、パートナーを術を唱えるためだけの存在と考える者も居るが、そうではないことをレイラは知っている。

 どうしてかはわからない。
 それでも、術を唱える役割とは違う、もっと別の、大切な何かを『パートナー』という言葉からレイラは感じ取っていた。
 もしかしたら、自分は魔界の王を決める戦いに参加していたのかもしれないとレイラは思う。
 かもしれないというのはここに連れてこられる以前の記憶が自分にはないからだ。
 思い出そうとしても、霞がかかったようにぼんやりとしてしまっている。
 わかることは、自分が何者かということと、殺し合いの場に居るという今の状況。
 そして、目の前の敵を倒さなければならないという、湧き上がる思いだけだ。

 この気持ちはどこからくるのか。
 あの敵は攻撃力、防御力共に高い。
 自分の力で太刀打ちできないのは明白だ。
 普通ならば、逃げるのが得策だろう。
 敵わない(かなわない)敵に向かっていくのは愚行以外の何物でもない。
 そこまでわかっているのに、不思議と逃るという考えを自分で否定してしまう。
 逃げれば大切なものを失ってしまう。あの敵を倒さなければ必ず後悔する。
 その強い思いがレイラをこの場に留めていた。

 退く気はない。
 が、敵を倒すには力が足りない。
 この状況をどうやって打破するか、そう考えていた時だった。
 謎の声が、レイラに呼びかけた。





 ◆ ◆ ◆





 ルシオラはこの状況を打破することを決めた。
 敵の気配はわかるが、目視できなければ攻撃を当てることは難しい。
 ならば、障害となる植物を先に薙ぎ払ってしまえば良い。

 まずは気配の進行方向にある草木を霊波で吹き飛ばす。
 ルシオラから放たれた光が通り過ぎた後には、開けた空間が出来上がった。
 これならば敵が飛び出した瞬間に狙い撃つ事が可能だ。

 次に、気配のやや後方に向けて霊波を放つ。
 気配の周りの見通しを良くし、隠れられる場所を徐々に無くしていく。

 敵は姿を見せるのを躊躇っているのか、残った茂みの中で動きを止めている。
 後は炙り出すだけだ。
 目の前の一帯にむけて、全ての草木を一掃しようと霊波を放った。

 その時、初めて聞く声がルシオラの耳に届く。
 女の声ではない。
 若い、少年のような声だ。
 その声はレイラの気配のする辺りから聞こえてきた。
 だが、感じられる気配は一つだけだ。

 また姿を変えたのか、それとも霊力の低い他の参加者が居たのか。
 どちらにしろ関係ない。
 ルシオラの放つ光が、レイラを隠していた植物達を消し飛ばす。
 破壊音の後には、背の高い木や身を隠す茂みがほとんどなくなっている。

 少し木屑が舞っているが、自分から見てやや右寄りの位置に立っている青紫色の服を視認することができた。
 あの場所から残っている植物群までには、十分な距離がある。
 動きが速くなっているといっても、狙いを付けて攻撃を当てることは可能と判断する。

 問題は先程聞こえた声の主だ。
 目の前の敵に、姿が変わった様子はない。
 しかし、他に人影は見当たらない。

 答えはすぐに見えた。
 黒い羽の生えた不気味なものが、レイラの近くで宙に浮いていたのだ。



(あれは通信鬼……!)


 通信鬼。
 魔界に棲む低級の鬼で、同種間ならば例え異界であろうと音声の伝達ができる存在である。
 主に魔族が、その名の通り離れた相手との通信に使用している。

 通信鬼自体の霊力は非常に低い。
 茂みから一人の気配しか感じられないのも当然のことだった。
 その通信鬼から、先程聞こえた声と同じ人物の声が発せられる。


『左手の茂みに向かえ! そこが一番近い!』

「了解よ!」


 レイラは通信鬼から発せられた声に応じると、全速力で動き出そうと足を曲げる。



「仲間が居たのね!」


 確かに、レイラの立つ位置からはそちらの茂みが一番近いだろう。
 だが、声が丸聴こえである。
 これでは『今からそこに移動するから狙い撃ちにしてくれ』と言っているようなものだ。
 ルシオラは、レイラから見て左手、ルシオラから見て右手へと腕を動かす。

 レイラは持てる力の全てを使い、地面を蹴って一気に跳躍した。
 レイラから見て右手、ルシオラから見て八時の方向へと最大速度で体を飛ばす。



「はっ!? どういうこと!?」


 ルシオラは右に動かし始めた腕を急いで左へと戻すが、一度動かした腕はそう簡単にはレイラの速度に追いつけない。
 もう片方の腕を使うにしても、一度収束しかけた霊力を移動させるのは、何もしていない状態から霊力を収束させるよりも数瞬遅れるのだ。
 その上、レイラは地面を駆ける平面の動きではなく、斜め上方に飛び上がる立体の動きをした。

 茂みに向かって地を駆けると予想していたルシオラの攻撃は、レイラに当たることなく植物園を破壊する。


(信用してなかったってこと!? まさか右と左を間違えたってオチじゃないでしょうね!)


 ルシオラはレイラが跳んだ先へ急いで振り返る。
 まだレイラは空を跳んでいる途中で、着地はしていない。
 距離は遠いが、あれならば攻撃を当てることなど簡単だ。
 この一撃で確実に仕留める。
 そう思いを強めたルシオラは、五条の光をレイラに向けて放出した。
 まだ殺し合いの序盤と言う事もあり力を抑えていたが、今回の光の束には今までよりも多く霊力を込めている。
 今度こそは外さない、と未だ空中に居るレイラを睨みつける。

 レイラはルシオラの攻撃を予期していたかのように、体制を変えてルシオラの方を向いていた。
 術で迎撃するために、迫り来る光に向かって杖を構える。
 心の力が注ぎ込まれた魔本が輝きを放ち、呪文が叫ばれた。


「ミシルド!」





 ◆ ◆ ◆





 ルシオラは視界の端で何かが輝くのを捉えた。
 植物園の奥。高さ三メートル程の土手の上だ。
 そういえば、とルシオラは思い出す。
 この敵は攻撃を放つ時、持っている本が光り輝き、そして攻撃の名前であろう言葉を叫んでいた。
 しかし、今のレイラの手元には杖しかなく、あの青紫色をした本がいつのまにか消えている。
 その事に気付くと同時に、ルシオラの耳に遠くから叫び声が届いた。
 レイラの声ではない。通信鬼から聞こえた少年の声だ。
 まさかとレイラに意識を戻すと、レイラの目の前に三日月型の盾が出現し、五条の光線を防いでいた。


「そんな!」


 ルシオラは驚愕する。
 この攻撃は、これまでの霊力の節約のために抑えて撃っていた霊波とは違う。
 確実に相手を消し飛ばすための攻撃だ。
 それを、あんな顔の描かれたおかしな盾で防がれるなどありえない。

 ルシオラは攻撃の出力を更に上げる。
 流石に耐えきれなくなったのか、三日月の盾に亀裂が走り始める。
 だが、ルシオラもこれ以上の連続した霊力の放出は限界だった。
 一旦攻撃を終わらせ、再度霊力を収束させる。
 その間に、レイラは土手へと着地していた。

 ルシオラの居る場所から土手までは距離がある上、植物が邪魔をし見通しが悪い。
 今までは、障害物のない空中は格好の的になるため飛ぶ事を控えていたが、相手の居場所がわかる今ならば問題はない。
 ルシオラは見通しの良い空中に飛び上がると、土手へと目を向ける。
 土手の上は木々の間隔も広く、敵の姿を見失うこともないだろう。

 目を凝らして見れば、土手にはレイラの他にもう一人、少年の姿があった。
 年の頃は十二歳に見える。
 少年の手には、青紫色のレイラの魔本が収まっていた。 

 自分が少年の存在に気付けなかったということは、ただの人間だろうか。
 力を隠している魔族や霊能者の可能性もあるが、関係ない。
 アシュタロス様以外の者は全て葬るだけだ。

 ルシオラは再び収束した霊力を土手に向かって放出する。
 もう手加減はしない。
 本気で放たれた六条の光が、二人目掛けて直進した。


「ラージア・ミグセン!!」


 少年が呪文を唱えると同時に、レイラの杖からラージア・ミグセンが放たれる。
 今までのラージア・ミグセンとは違う。
 前回のものよりも一周り大きくなった三日月が、光の束へと突き進む。



「こんな……こんな馬鹿な事が……!!」

 ルシオラは、目の前で起こっている事が信じられないでいた。
 本気で放った霊波の束が、三日月を破壊できないどころかその進撃を止める事すらできていないのだ。
 アシュタロス様の眷属である自分の本気が押し負けている。
 まさか相手はアシュ様に匹敵する力を持っているとでも言うのか。


「くっ!」


 霊力の放出を止め、空中で三日月を避ける。
 このままでは拙い(まずい)。
 どういう訳かは知らないが、敵の力が格段に上がっている。
 それも、アシュ様の脅威に成りえる程の力だ。
 今ここで倒さなければ、アシュ様に害を成す危険性がある。
 アシュ様の行く手を阻む者は全て排除する。
 それが眷属たる自分の役目であり、存在している理由だ。
 この命は、アシュ様のためだけに在るのだ。

 一連の行動を見た限りでは、やはりあの二人は仲間であるらしい。
 知り合い同士が呼ばれていることは、私とアシュ様、最初の広場の様子で察しはついていた。
 敵の攻撃にはあの本と技の叫びが必要ということも、今までの戦いから想像がつく。
 おそらく、空中で少年の元へ本を投げ飛ばしたのだろう。

 あの青紫の髪の女は、通信鬼で仲間と連絡を取り合った後に不可解な行動をとったが、結果的にに仲間の所へ無事に到達している。
 あの通信自体が罠だったと考えるのが妥当だろう。
 いつの間に一連の行動を伝え合ったのか疑問に思うところだが、今は保留だ。
 敵はもはや雑魚から難敵にまで強くなっている。
 しかし、こちらにも奥の手はある。

 ルシオラの手には勾玉が握られていた。
 一見するとただの装飾具に見えるが、『竜の牙』と呼ばれる変幻自在の神の剣だ。

 ルシオラは竜の牙に自身の霊力を込める。
 竜の牙はルシオラの霊力によってその形を変え、騎乗槍へと変貌した。
 ルシオラはその槍を構えると、少年目掛けて一気に加速する。
 攻撃役である女の方は、本が無ければその力を発揮する事ができない。
 ならば、先に本を持つ者を狙うのは当然のことだ。

 ルシオラが猛スピードで迫っているというのに、少年はその場を動こうとしない。
 レイラは少年を守るように移動し、ルシオラへ杖の照準を合わせる。
 少年の持つ青紫色の魔本が、術を発動さるために輝き始めた。


(かかったわね!)


 ルシオラは、敵が自分の術中に嵌まった事で勝利を確信した。
 彼女は蛍の化身である。
 その能力は光を操り幻影を作りだすこと、そして獲物に麻酔し昏倒させることだ。

 空中を飛ぶルシオラは光が生み出した幻影。
 本物はすでに二人の背後に回り込んでいる。

 光を操り姿を消したルシオラを、二人が視認することは不可能だ。
 幻影に集中している今が好機。
 ルシオラは手に持つ竜の牙を構え、縦に並んでいる二人を貫こうと襲い掛かった。
 そして、その動きに呼応するかのように少年が呪文を叫ぶ。


(えっ?)


 少年が呪文を叫び始めると同時にレイラの体が振り返る。
 レイラの杖は、見えないはずのルシオラを完全に捉えていた。


「ミグロン!」


 杖から放たれた光の鞭がアルの頭上を通り過ぎ、ルシオラ目掛けて突進する。
 動き始めたばかりのルシオラの体では、今更回避行動をとっても間に合わない。
 とっさに竜の牙を盾にしようとするが、最速の術であるミグロンを防ぐにはもう遅かった。

 光の鞭は、ルシオラの体へ打撃となって突き刺さる。


「がはっ!」


 衝撃で空気が体の外へと押し出された。
 この術までもが強化している。
 痛みはあるが、内臓へのダメージはない。
 ルシオラの幻影はまだ二人に向かって突き進んでいたが、レイラの体を通り抜けるとそのまま霧散した。
 まるで最初から幻影であると知っていたかのように、二人はそれに対する反応を示さない。

 気付かれていたのか。
 一体、どこで計略に気が付いたのだろう。
 それに、姿を消している自分の居場所を、どうやって知ることができたのか。
 見当も付かないが、それを考えている時間はない。

 撤退か、反撃か。
 まだ自分の姿は消えているが、退けば大きな攻撃で狙われる危険がある。
 少年の方はおそらく人間だ。
 この近距離であの巨大な三日月を出せば、どう考えても少年にまで被害が及ぶ。
 まさか自らの危険を省みずに、そんな大技を叫ぶ事はないだろう。

 ここは無理矢理にでも接近し、反撃へ転じるべきだ。
 先程の光の鞭は耐えられる。
 こちらには竜の牙がある。
 大丈夫だ、問題ない。

 ルシオラは崩れた体制を立て直し、反撃に出ようとした。
 だが、ルシオラが体制を立て直す前に少年が指示を出す。


「レイラ! そのままだ!」

「わかったわ!」

「ラージア・ミグセン!」


 言いながら、少年は横へと移動する。
 呪文が言い終わると同時に、レイラの杖の先端にある三日月が巨大化し、切り離される。
 先程まで少年が立っていた空間すら飲み込むまでに巨大化した三日月は、ルシオラ目掛けて突撃を開始した。


(嘘でしょっ!?)


 一体何を考えているのか。
 この至近距離でこんな技を遣えばどうなるかなど、子供でも想像できるはずだ。
 しかし、攻撃は既に放たれた後だ。
 攻撃を防ぐために、ルシオラは迫り来る三日月へ向けて竜の牙を突き立てる。
 三日月を迎え撃つは、神の剣たる竜の牙だ。
 ルシオラの膨大な霊力で発動している今ならば、いかなる攻撃であろうと防げないものは存在しない。

 そう、本来の状態であれば、威力が段違いになっているラージア・ミグセンとはいえ、竜の牙で防ぐことができただろう。
 だが、ルシオラは崩れた体制でこれを迎え撃ったのだ。
 力を出し切れない状態では、ラージア・ミグセンを完全に無力化することはできなかった。
 上手く力を伝えられなかったせいか、竜の牙は三日月の一部を砕いただけに終わり、残りの大半部分に押し切られてしまう。


(そん……な……)


 ラージア・ミグセンの勢いは、ルシオラに激突するだけでは止まらない。
 ルシオラごと地面にその身を沈みこませ、土手の一部を雪崩のように崩してしまった。
 直撃を受けたルシオラの体を痛みが襲う。
 今まで経験した事のない激しい痛みだ。

 光を操り姿を隠していたが、今の衝撃でそれも解けてしまっている。
 敵の姿を確認するが、二人の姿はどこにも見当たらない。
 三日月を放った直後、巻き添えを喰らわないように少年──アル・ボーエンを抱えたレイラは大きく後退し、
土手から離れた場所へと降り立っていたのだ。



(ダメだわ……。私の力じゃ……とても………)


 ルシオラはこの二人に勝利するのは無理だと判断した。
 突然跳ね上がった力。
 幻影を看破する方法。
 全てが謎である。
 今や自分と相手の力関係は逆転し、圧倒的に不利な状況に陥っていた。
 今はまだ殺し合いが始まったばかり。
 強力な敵にいつまでもこだわっているのは効率的ではない。
 この会場内には、竜の牙のような強力な支給品がまだまだ多くあると思われる。
 ここは一度撤退し、他の弱い参加者から支給品を奪い、二人を倒せるだけの力を用意してから再戦した方が得策だろう。

 問題はアシュ様がこの二人と戦う事になってしまった場合だが、アシュ様は自分とは比べ物にならないほど強い。
 仮に不利な状況に陥ったとしても、撤退し体制を立て直す聡明さを持ち合わせておられる。
 どのような人物が相手であろうと、アシュ様が倒される可能性など無に等しい。 

 まずは参加者を減らしながら、力を集める事が先決だ。
 そう考え、撤退しようとしたその時である。


「レイラ、あいつ逃げようとしているぞ」

「ダメよ。逃がすわけにはいかないわ」

「ああ、僕もあんな危険な奴を野放しにする気はない」

「それじゃあ、お願いできるかしら、アル」

「無論だ。僕を誰だと思っている」


 確かに、ルシオラは逃げようとしていた。
 しかし、行動どころかその素振り(そぶり)すらまだ見せてはいない。
 いや、それ以前にこの位置ならば自分の姿を見ることもできないはずだ。
 それなのに、考えが敵の二人に読まれてしまっている。


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