タシロ達の目の前に広がる、悪夢のような光景。
B-3一帯は、草一本と残らぬ死の大地と化していた。
「なんてこった……全てが手遅れだったか……!」
「艦長……!」
爆心地に立つ、二つの機影。
「ぐ……ぅ……」「はぁっ、はぁっ……」
我に返るマシュマーとヴィンデル。
辺り一面に霧がかかり、細かい状況はよくわからない。
機体の計器類も、あちこちいかれてしまったようだ。
「なんということだ……!」
マシュマーは我に返り、己の行いに愕然とする。
なんと迂闊な。相手と戦っている間、自分は完全に憎悪に取り込まれていた。
敵を憎み、倒すことだけに躍起になって……他の全てを見失っていた。
ミオを守るための戦いだというのに……あろうことか、ミオの存在を忘れて戦いに没頭していた。
これだけの爆発、ボロットでは到底耐えられまい。その身に、後悔がのしかかってくる。
それはヴィンデルも同じだった。
友の想いを、与えてくれた力を、怒りと憎しみに任せて振り回してしまった。本来守るべき少女を省みずに。
その結果がこのザマだ。友の想いを、見事に裏切ってしまった。
シャドウミラー総帥の座でふんぞり返り、闘争を望んでいた間ずっと忘れていた感覚。
怒り、悲しみ、憎しみ、殺意。それに溺れた果てにもたらされた悲劇。それを痛感させられる。
これが闘争なのだ。今まで自分がその本分を理解せず望んできた……闘争というものなのだ。
「私は……ッ!!」
自分の浅はかさが、憎い。憎しみは行き場をなくし、歯痒さだけが残る。
場に絶望の空気が流れる。
……もしこのまま何事も無ければどうなっただろう。二人は自分への憎しみを相手に向け、戦い始めたのだろうか?
敵に責任を擦り付け合うような、醜いただの八つ当たりの戦いを。
もっとも、両機とも損傷は半端ではなく、既にまともに戦えるような状況ではないのだが……
だが、事態は既に取り返しのつかない所まで来ていた。
『うおっ!?』
突如鳴り響く地響き。何かが近くにいる……
その気配を察し、マジンカイザーとアストラナガンはその方向へと振り向いた。
霧の向こうに……巨大な影が見える。
「な……なんだこれは……」
その方向の先――そこはボスボロットの頭があった場所ではないか。
少しずつ、霧が晴れる。
そこに姿を見せたのは。
機械のような、生物のような巨大な物体。
あるいは、まるで怪獣のような……
「ガンダム……なのか?」
マシュマーが呆然と呟いた。同時に、自分のしていた嫌な予感とはこれのことだと理解した。
悪魔の集いしB-3の地に、今、最後にして最悪の悪魔が爆誕した。
生体ユニットを得たその悪魔は、魔神と魔王の最大の攻撃をその身に吸収し、ついにその姿を確固たるものとした。
その姿は巨大で、不気味で、奇抜で……そして禍々しかった。
「まるで悪魔のようなガンダム……そう、あれは……」
悪夢再来!
デビルガンダム完全復活!!
「グオオオオオオオアアアアアアアアアア!!!」
デビルガンダムの咆哮が轟いた。己の完全復活を誇示するかのごとく。
その姿の中心……コクピット部分。
二人は、そこに人の姿を確認する。
「あれは……!!」
それは生体コアと化した、守るはずだった少女の姿。
少女はすぐにデビルガンダムの他のパーツに隠れ、見えなくなった。
「!!待て……!!」
二人が叫ぶより早く。
地面が割れ、ガンダムヘッドがその姿を地上に、二人の目前に現した。
「な、何だこれは……!?」
デビルガンダムの周囲に、その本体を守るかのごとく次々とガンダムヘッドが出現する。
見たことも無いその光景に、圧倒される二人。
『いかん!!総員退避!!』
「何!?」
その空間に「艦長命令」が響いた。
ヒュッケバインの外部スピーカーによって、タシロの叫びが響き渡った。
『何をしている!!今すぐここから離れるんだ!!』
突然の乱入者に戸惑いつつも、そんなものに構っている暇など無い。
「何者かは知らぬが、冗談ではない!!あれにはミオが乗っているのだぞ!!」
マシュマーが叫ぶ。あの怪物からミオを救い出さねば。
コクピット部めがけてアストラナガンが跳んだ。
だが満身創痍の彼らの機体に、もはやデビルガンダムに太刀打ちできる力は残っていない。
「ぐおぉっ!?」
アストラナガンは近づくことすらできず、なす術なくガンダムヘッドによってはね飛ばされ、地面に叩きつけられた。
『今の君達の機体では勝ち目は無い!!犬死にするつもりか!!』
「……くっ!」
タシロの言葉に押し黙るマシュマー。
そんな彼の機体に……マジンカイザーが肩を貸した。
「!?貴様、何のつもりだ!?」
「……お前も、あの娘を助けようというのだろう」
「……ッ!」
「今は退くしかあるまい。万全の体勢で挑まねば、彼女の救出は無理だ」
接触回線が働き、ヴィンデルとマシュマーは初めてまともに会話を繋いだ。
ヴィンデルはようやく頭が冷え、マシュマーの今の行動でその意思を確認する。
ミオを殺すつもりだったなら、ゲームに乗るつもりだったなら……今のような行動は取るとは思えない。
……蟠りは消えない、アクセルを殺したのは他ならぬこの男だ。だが今は……
マジンカイザーはアストラナガンを連れ、その場を飛び去った。
もう少し早くそうして冷静になっていれば、こんな事態に陥ることも無かったわけではあるが。
「例の2機、この空域からの脱出を確認しました!」
「よし……我々も退くぞ!」
ヒュッケバインガンナーも、彼らに続きその場を離脱する。
進化・増殖を続けるデビルガンダムを前に、彼の判断が正しいかどうかはわからない。
だが、デビルガンダムの性質を彼らが知る由もないし、他に手が無いのも事実だった。
「こんな事態になろうとはな……これでは、まるで……」
タシロは思い出していた。忌わしき人類の天敵の存在を。
我が計画の一つが、ついに成就した。
それはコードネーム・隕石怪獣Dこと……デビルガンダムの強化及び完全復活。
ゲッター線の力でその三大理論……特にその自己進化能力を大幅に強化した、究極のデビルガンダムの誕生。
これこそが、DG細胞を使用した本計画の全貌である。
だが、これはまだ始まりに過ぎない。今のデビルガンダムは、まだ生まれたばかりの赤子も同然。
私が望むレベルには、まだ一歩足りぬ。
即ち、「容器」としての役割。
デビルガンダムに「力」を満たし、それを自分が取り込むことで……
私は宇宙の調停者、「超神」として君臨することになる。
「力」、それは超神としての力。だがそれは光の巨人の力ではない。
それは……今は語るべき時ではないだろう。だがいずれすぐわかることだ。
この「力」を集めるために、私はこの
バトルロワイアルを開催したのだから。
デビルガンダムが成長するまで、そして「力」が集まるその時まで。
それまでこの生体コアの少女……ミオ・サスガにはせいぜい役に立ってもらおう。神の身体を育てる、聖母役として。
全てが終わった時、私は全てを超越した存在となる。
まつろわぬ霊の王ケイサル・エフェス……破滅の王ペルフェクティオ……
それらを始めとする数多の人知を超えた存在に等しい、いやそれをも超える存在となることができる。
イングラムよ、私は確実に神への階段を登り始めているぞ。
お前の遺志を継ぐ者達は、これにどう立ち向かう?
さあ抗ってみよ、この地に残る参加者達よ。お前達の持てる力の全てを発揮するのだ。
そして、私はそれを我が物とする……
【ミオ・サスガ 支給機体:ボスボロット(マジンガーZ)→デビルガンダム第一形態(機動武道伝Gガンダム)
パイロット状態:デビルガンダムの生体ユニット化
機体状況:活性化。ゲッター線による能力強化。
現在位置:B-3
第一行動方針:???
最終行動方針:???
備考1:コアを失えば、とりあえずその機体の機能のほとんどが無力化すると思われる
備考2:ハロを失ったため、DG細胞でカイザースクランダーのような新たな別個の存在を生み出すことは不可能】
【タシロ・タツミ 搭乗機体:ヒュッケバインMK3ガンナー(パンプレオリジナル)
パイロット状況:上半身打撲
機体状況:前面装甲にダメージ、Gインパクトキャノン二門破損、Gテリトリー破損
現在位置:B-3
第一行動方針:B-3から離脱
第二行動方針:デビルガンダムをどうにかする
第三行動方針:
リョウトの捜索、シロッコをどうにかする
最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還
備考:AMガンナーに搭乗した副長が管制制御をサポート】
【副長 搭乗機体:ヒュッケバインMK3ガンナー(パンプレオリジナル)
パイロット状況:左足骨折(応急手当済み)
機体状況:前面装甲にダメージ、Gインパクトキャノン二門破損、Gテリトリー破損
現在位置:B-3
第一行動指針:タシロをサポートし、B-3から離脱
最終行動指針:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還
備考:AMガンナーへ乗換。AMガンナーはサポートのみ、本体操作は出来ません】
【マシュマー・セロ 搭乗機体:ディス・アストラナガン(第3次スーパーロボット大戦α)
パイロット状態:激しい憎悪。強化による精神不安定さ再発(少し落ち着いた)
機体状況:Z・Oサイズ紛失、装甲全体に亀裂、ディフレクトフィールド使用不能、EN及び弾数少。
戦闘続行は厳しい。再戦闘には補給及び数時間の自己修復が必要
現在位置:B-3
第一行動方針:B-3から離脱
第二行動方針:ミオの救助
第三行動方針:ハマーン・ブンタの仇討ちのため、参加者の全抹消
最終行動方針:主催者を殺し、自ら命を絶つ】
【ヴィンデル・マウザー 登場機体:マジンカイザー(スクランダー装備)(α仕様)
パイロット状況:全身打撲、アバラ骨数本にヒビと骨折(応急手当済み)、 頭部裂傷(大した事はない)
マジンカイザー操縦の反動によるダメージ有
機体状況:装甲全体に亀裂、EN残り少、戦闘続行は厳しい。
再戦闘には補給及び数時間の自己修復が必要
現在位置:B-3
第一行動方針:B-3から離脱
第二行動方針:ミオの救助
第三行動方針:強力な味方を得る、及び他の参加者と接触し情報を集める
最終行動方針:???
備考:機体及びパイロットにDG細胞反応は無し】
【ハロ 搭乗機体:マジンカイザー(スクランダー装備)(α仕様)
現在位置:B-3
パイロット状況:機能を完全に停止】
【二日目 19:00】
最終更新:2008年06月02日 03:49