エトリアの中盤

あるは、獣の大弓に目を輝かせる。


 アクルフィアが良い品物ねと褒めちぎっていたのに影響されたか、
 焦点の店先でそれを抱いて動かなくなる。自分も欲しい、と。
 じゃあ買い与えようとした一向に、唯一大反対したのはもちろんアクルフィアである。

「アンタ達、正気!? 今日という日ほどアンタたちの常識を疑った日はなかったわ!
 この弓の威力は迷宮で散々目にしてきたでしょ!? それなのに子どもの手に持たせようとするなんて!
 それに、この子に武器なんてそれこそバカになんとかじゃない! 間違えた! なんとかに刃物じゃない!」

 んー。と、パーティ一同沈黙した上で。最初に切り出したのはココノエ。

「仰ることはわかります。倫理的に危うい面があるのは確かです。
 ですが、我々が日常として歩んでいるのはあの迷宮の中です。あそこでは各位が自衛の手段を求められますし、
 そして何より、あるはを迷宮にまで連れ歩いているのは他ならぬ私たちです。
 ですから、自衛手段を講じた彼女の、その手助けをすることは我々の監督責任のうちに数えられるのではないでしょうか」

 次に、キマ。

「みんなが気絶しちゃって、あるはだけが目を覚ましてる時のこととかを考えてもねえ」と、ココノエの言葉に頷いて。
「それとさ。私なんか錬金術しか能がないからすごい実感するんだけど、芸は身を助けるってホントだよね。まだずーっと先の話だとは思うけど、例えばこの先、迷宮を最後まで進み終えたりなんだりしてみんな解散するときになってさ、その後のあるはの身の振り方まで考えてみると、歌なり弓なり、特技があるかどうかで大分違ってくると思う」

 ついでに、らとれい。

「(誤って)こっちに(矢が)飛んできても、避けれると思う」

 ともあれアクルフィアはうめき声をあげる。
 キマとらとれいは、旅暮らしという形で身を危険にさらし続けてきた。
 ココノエは、武家育ちと言うことで武器を手にすることに抵抗がない。
 こいつらと私とでは価値観が違うし、常識も違うのだ。
 しかし、迷宮を支配する常識は、こいつらの方の常識に近い。

「……解ったわよ。ただ、一つだけ訊かせて欲しいんだけど」
 非常に苦々しい顔で。
「弓の扱いは誰が教えるのよ」
 もちろん、その答えは解っているレンジャーのアクルフィア。
最終更新:2010年04月01日 02:27