第11話

 ここは、百里基地でも特に重要なハンガーであり地下深くに存在している。
機密保持のために高度なセキュリティーが施されており入れるのは一部の技術者と基地司令とわずかな人物のみでありそもそもここの存在を知るもの自体が少ない……
そこには先日持ち込まれた謎の機器が置かれていた。

「先輩何なんですか?あれ?」

一人の整備兵が先輩に今日配備された謎の機器について聞いてきた。

「俺もよくわからないんだが、つい先日持ち込まれたんだよ。」

「そうなんですか……」

彼らは、特別な整備兵のためにこと「Need to know」に関しては弁えているため深くは追求しなかった。


時間はさかのぼりその頃の森上たちは……

訓練にも慣れ皆が部隊の空気にもなじみ始めた頃

多くの衛士や整備兵やその他に基地で働く者たちがPXに集まり始めている。
森上たちは、比較的空いている席へと腰をかけた。

「総戦技評価演習まであとどのくらいの日数残っているんだろうな……」

森上は、いつとは具体的に伝えられていない“総戦技評価演習”の事を案じていた。

「すぐっていう事でもなさそうだけど、1~3か月ぐらいじゃないかしら。」

雫は、自分たちの部隊の特色から考えられる意見を答えた。

「まあ、その辺が妥当なところだろうな……少なくとも他の訓練兵よりは、早い訓練課程になるな。」

雫は食事をする手を休め森上のほうに顔をむけた。

「そうね。それだけ私たちに掛けられた期待の大きさと重要性が高いってことね。」

この部隊は、他の訓練兵よりも優秀でなければならない。それは、義務であり命題である。
そして、それがこの部隊に与えられた宿命であるとともに人類に悲願を成し遂げるために与えられた運命でもあるのだ。

そんな、雰囲気が徐々に重たくなる方向へとシフトしつつあることに感づいた久我は、口にしかけていた豚の角煮を名残惜しそうに皿に戻し箸を置くと。

「まぁ、そんなに考えたってどうこうなるわけじゃないと思うぞ。まっ、俺としては雫ちゃんたちの初々しい衛士強化装備がみたいけどな」

久我は、にやけながら話していたが最後の一節に雫が反応し隣の久我にボディーブローをかました。

「ちょっ、雫ちゃん食事中にそれはまずいよ……」

殴られたところを抑えながら雫に向かい声を絞り出すように抗議したが……

「あんたが悪いんでしょ?」

「うっ……」

久我はうな垂れるように食事に戻った。

森上は久我の方をチラリと見て、心の中で礼を述べた。
(悪いな久我……お前は、一番まともな人間かもな……)



「それにしても」

森上の向かいの席で食事をしていた齊藤が話し出すとその場にいた訓練兵の視線は彼女に向いた。

「いつもの事ですが朝倉さん座学での成績には、私自身驚きです。」

唐突に話を振られた朝倉は少し驚いたようだったが……

「そんな事ないですよ、みなさんだってすごいじゃないですかっ!
私なんて運動が苦手だから着いていくのもやっとですよ……」

朝倉は、首が取れるんじゃないかといった勢いで首を横に振りながら否定した。

そんな朝倉の態度を見ていた勝名は、

「たしかに、朝倉は運動が苦手かもしんないけどさ最近じゃあ、しっかりついて来れるようになったじゃねえか。しかも座学に関してはトップクラスの成績だしよ。あたしなんて座学中は眠くなっちまうからよ、どうにかしてほしいもんだわ。
この間なんて半分意識がなかったところを当てられてあせったけどな・・・」

勝名は、話し終えると苦笑いを浮かべていた。

朝倉は褒められて、はにかんだ笑顔を浮かべた




その日の夜ある一室で・・・

「総戦技評価演習は何時にしますか氷室教官?」

教官にしては聊か老けている風貌の富樫が、とある一室にて居合わせた氷室に尋ねた。

「そうですね、そろそろあいつらも訓練に慣れてきてはいるようなので・・・」

年長であるので氷室は、富樫に対しては基本的に敬語である。

「私見ですが訓練を見る限りでは訓練の状況は、問題なく推移しているように感じます。」

「どうしたものでしょうか・・・」

二人は、何しろ特別な部隊を任されているためマニュアルに沿った訓練課程では、話にならないと感じていた。

コン、コン

扉をたたく音がし氷室たちは扉の方を向き入ってきた人物を確認した。
そこには、体格の良い年長の男性が入ってきた。その双眸は、今は優しい光を宿しているが状況によっては、恐ろしい衛士の目へと変化することをこの場の氷室と富樫は知っていた。

氷室たちは、この基地のトップである基地司令の大場に向かい敬礼をした。
大場は楽にしてくれと言うと、氷室とは向かいの席に座った。
その後氷室たちも席に着いた。

「基地司令どうかなされたのですか?」氷室は大場に向かい質問をした

大場は、あまり固すぎるのは好きではないのだが部下と上司の関係であるのでこのあたりは、出来る限り線引きをしておきたいと一人考えている氷室であった。

「訓練生たちの状況が気になってな。近況を直接聞きに来たのだが。」

基地司令には毎日訓練生たちの事をまとめたレポートを送っていたが
度々このように直接近況を聞きに来るのである。

「今のところ訓練は順調です。訓練生達も訓練になれ始めました頃合いです。」

「そうか、ところで総戦技評価演習は何時にするんだね?」

すると氷室は・・・

「今、富樫教官と話していたところです。私としては、早くてあと1カ月、可能であれば3カ月ほどは、欲しいところです。」

「ふむ・・・」

この部隊の重要性と特殊性を考えると最長で3カ月、最短でも後1カ月は、訓練しなけらば成りないという旨を氷室は、正直に話した。

すると富樫教官が、

「私としても氷室教官と同意見です。」

大場は考え込み、本来ならばもっと多くの時間をかけて訓練をしたいのだが、何分初のxm3訓練部隊である。
国内外問わずに様々な視線がこの基地いやこの訓練部隊に向けられているため
あまりにも遅い任官だと国内のお偉いさんは圧力を掛けてくるだろう、自分としてはそんなものはどうとでもなるのだが、xm3に特化した訓練部隊には次の目標である甲20号に参加させるべく早期に任官させてやりたいというのが現状である。
さらに訓練兵には新型の戦術機や兵器を使うため早めに任官させ慣らしておく必要がある。

「承知した。基礎訓練に関しては、君たち教官に任せる。」

大場は、そう言い残すとその場を後にした。


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第12話に続く
最終更新:2009年09月13日 12:20
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