アットウィキロゴ

第13話

ここは、基地施設のグラウンドだ。主に体を鍛えるための基礎訓練と射撃を行うための射撃場から成り立っている。

グラウンドは、黄土色の土が一面に広がり、そこには白線で走るコースを示している。

今彼は、PXでの食事を終え静かにグラウンドの端にひっそりと佇んでいる木蔭へと仰向けになり目をつぶりながら考え事をしていた……


俺は中村朋也この基地に来て1ヶ月がたった。最初ははっきり言ってかなりしんどかった。前の訓練校とは別次元の厳しさを味わって正直なところこのまま衛士になる事が出来るのかと思ったほどだ。

しかもこの訓練校はいわば引き抜かれたエリート。それぞれ個人が得意とするものや特殊な才能を持ち合わせている。そのなかで俺はいったい何が出来るのだろう?
生まれてこのかた、ここまで周りの事を気にしたのは始めだった。
確かに俺が引き抜かれたと言う事は俺に何かしらの才能があったということだろう。

(でも、俺に才能なんて……)

この木蔭は、涼しい風が吹き抜けておりその風が朋也の頬を撫でている。
次第に朋也は、眠くなり半ば意識が朦朧とし始めていたとき……

「どうしたんですか?朋也くんボーっとして」

その端整な顔は、美しいか可愛いのどちらかと言うと可愛いという部類に入る彼女「中原 渚」が俺の顔を上から覗き込むようにして話しかける。

「渚か・・どうしたんだこんなところまで来て?」

彼はそういうと体のばねを使い跳ね起きた。

渚は朋也が起きると彼のほうを向き、

「朋也くんそろそろ訓練が始まりますよ。いそがないと駄目ですっ!」

渚は、語尾を強くし朋也を急かした。

「そんな時間か……教えてくれてありがとな」

渚は、手と顔を振りながら、

「いえっ!お礼を言われるような事ではないですっ」

朋也は、頭を掻きながら、

「渚が起こしてくれなかったら教官に半殺しにされる所だった。命の恩人だよ渚は。」

渚は、少し頬を紅潮させている。

「朋也くんは、しっかりした人ですから一人でも起きれたと思います。」

朋也は、渚の必死さに笑みがこぼれる。

「そうかもな、でもお前が起してくれたおかげで目覚めがいいよ、ありがとな。」

渚は、まだ顔を赤らめながら

「そうですか、それはよかったです……」

朋也は本来の趣旨からずれている事に気付き渚の手を掴み

「やべっ、訓練だ!早く行くぞ渚!」

「はいっ!」

朋也は渚の手を引きながら足を急がせた。



訓練開始……


朋也は今日の訓練の最初のメニューである30kmマラソンを消化しながら
今の分隊の状況は把握を行った。

まずは、分隊長である“中原渚”

渚は俺と同じ訓練校からの引き抜きで長い付き合いだ。
性格は、おとなしいが頑固であり自分の決めた事は必ず守る。
人には親切に接しそのために前の訓練校では、男女問わずかなりの人気があったな。
容姿は可愛い部類に入るスタイルは平均……だと思う。
その外見からは想像がつかないが部隊の指揮に関してはこの訓練部隊であってもトップクラスだろうな。
(渚……好きだ。)

次に俺の少し後ろを走る“中岡裕次郎”
彼は、1ヶ月の訓練でわかったことは性格は実直だ。
しかしかなりの熱血漢であり訓練時にはそれが遺憾なく発揮される。
しかし、彼は男尊女卑とまではいかないが女が男である自分の上に立つのが許せないらしい。今となっては渚と普通に接しているがこの考えは彼が
末端でありながらも武家の出身であるからだろう……
(基本的にはいいやつなんだけどな……というか、扱い方さえ覚えれば問題ないな。)



次に俺の前を走る“坂上史郎”
彼はこの訓練部隊で唯一のBETAとの戦いを経験している人物で、甲21号作戦で
「信濃」の砲手として参加していたらしい。
その後、彼はその艦の艦長に進められ衛士になろうと志した。
性格は捕らえづらかったが飄々として人当たりがいいと言う事はわかった。
やはり、唯一のBETAとの戦いの経験者と言う事もあり彼の話を聞こうとするものも多い
(ていうか、坂上の好きな女のタイプってどんなんだろうな。気になる……)

次は少し後ろを小さいながらもしっかりとした足取りで走る“松浦葵”
彼女は、明るい性格であり小柄な体系のため一部ではマスコット扱いを受けている。
彼女も嫌がってはいないみたいだが……
彼女によると父は光州作戦で戦死。
家族もBETA本土上陸の際に死別してしまったらしい。
あまり詳しい話は聞かなかったが、彼女の心にはこのときの傷がまだ残っているのだろう。
(松浦か……戦術機に乗ったらいい勝負ができそうだな。)

最後に、俺の隣を走る“佐橋優奈”
彼女は、部隊ではお姉さんのような存在であり頼りになる存在である。
ここ最近の彼女の訓練の様子を見ていると能力が全般的に高く特に射撃に関してはかなりの腕前である。
(かなり頼りになる存在だな。ていうか、色々不思議な人だよな。)


朋也が部隊の状況確認が終わると同時に彼も30kmを走りきった。

(ずいぶんラクに走れるようになったな。最初のころは走るだけでいっぱいだったのにな。)

(一応、これでB分隊の状況整理は出来たな。)

朋也が状況を整理する理由は、仲間の能力や性格を知っておけばいざと言うときに役に立つからである。

(といってもお袋からの受け売りだけどな。)


PXで……

「ん~~~、やっと今日の訓練も終わったわ~。」
佐橋は、椅子に座ると思い切り背伸びをし、体中から音を出す。
それが好きなのか少し恍惚とした表情である。

「皆さんお疲れ様でしたっ。」
中原は、お盆に乗った人数分の水を全員の前に置いていく。

「有難うございます。渚さん」
松浦は、水を受け取ると両手で水の入ったコップを持ち一気に飲み干した・

そして、各々が出された水を飲むと食事をとりに行く。

「渚さん、水を持ってきてくれたお礼にご飯持ってきますね。何がいいですか?」

「有難うございます葵ちゃん。でも、大丈夫ですよ。私もみんなと一緒に取りに行きます。」

「そうですか?じゃあ、今度何かやってほしいことがあったら言ってくださいね。渚さん。」

そういうと、中原と松浦は食事をもらってくるために列へと並んだ。


「生姜焼きおいしそうです!」

葵はその見た目どおり幼い声でうれしさを表し、その光景を見ていたB分隊の男性メンバーはとても癒されていた。
松浦の隣でそんな様子を男性陣に気付かれないように見ていた佐橋は、

「ねえ、あなたたちそんな目で葵を見ない方がいいわよ。危ない人たちに見えるわよ。」

癒されていた男性陣を一蹴した。


第12話に戻る
第14話に続く
最終更新:2009年09月13日 12:24
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。