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第4話

 午後の訓練が終わった訓練兵らは、ぐったりした様子でPXで早めの夕食を食べていた。
 20キロという距離を急かされるように、いや急かされながら走らされ続けた身体は、肉体的にだけでなく精神的にも思っている以上に負荷がかかっている。
 結局全力疾走に近い速度で走り続けていたため、20キロを走り抜けれた者は半数にも満たなかった。途中で倒れる者は、しばらく教官方に罵倒され続けていた。
 さらにあの後、腕立て腹筋・懸垂その他諸々の基礎訓練が待ち受けており、それをやり切れる者はさらにその半数にまで減っていた。

「いきなりアレじゃ、この先不安にもなるわねぇ…」

 悠希と同じテーブルについた雫が、トレイに盛られた合成角煮定食を箸でつつきながらボヤく。
 そもそもまだ部隊分けすらしてないと云うのにひたすら基礎体力作りである。しかも、基礎座学すらもやらずに。何がしたいのかわから―――
 そこまで来て、一つだけ思い当たる。そしてそれは、至極当然な理由だった。

「もしかすると、今回の結果から部隊分けする気なのかも」
「単純に、俺達の出鼻を挫くつもりなんじゃないかな?みんな、ちょっと態度が大きい気がするし」

「その両方だと思いますよ」

 突然の第三者の声に雫と悠希は声の方に顔を向けた。その先には、綾香と澄子がトレイを持って立っていた。
 すまし顔で「お隣、いいですか?」と聞かれ、一度雫にアイコンタクトを取り、僅かに頷いたのを確認して肯定の言葉を送る。

「そう云えばお互い自己紹介がまだでしたね。私は齋藤 綾華。こちらが勝名 澄子といいます」
「俺は森上 悠希。で、こっちは源 雫。よろしく齋藤さん、勝名さん」
「源?源と云うと…」
「………何か?」

 何か云おうとする綾華だが、言葉を濁した。

「それで齋藤さん…両方と云う事は、今日のは”教官の趣味”と判断するつもりかしら?」
「しか、ないでしょう。第三に、教官殿が私達を本気で教育する気というのもあるとは思いますが、可能性は低いでしょうね。
 当たり前という意味で」
「なるほど…ね。となると、今後私達が同じ分隊になる可能性があると云うことね」
「そうです。今日の訓練を全てこなせたのは私達と他数名だけでしたから」
「能力が高い者が低い者に合わせるのではなく、低い者が高い者に合わせるべきと考えていれば、そうなるわね」

 食事そっちのけで会話を弾ませる二人を尻目に黙々と角煮を口に運ぶ悠希。
 ここの料理長は腕が良いのか、合成肉特有のチグハグな味を上手く殺し、一つの味を引き出している。
 やるには結構手間な作業なハズなのだが、この量だと逆に楽になるのだろうか?
 等と考えながら突付いていると、妙に突き刺さる視線に気付きそちらを見る。と、その先には何故か睨みつける澄子が。

「…何かな、勝名さん」
「アンタ、ここに来る前は何やってたの?」
「ん?まぁ、色々?」
「それで納得すると思ってる?それともその回答が一番面白いと思ってる?本気でそう思ってるなら考えを改めるべきね」
「はっはっはっ、結構気が強いね。でもその手合いは間に合ってるよ」
「………何か云ったからしら、悠希?」
「何も云ってませんよ俺は」

 話に夢中になってると思っていたが、しっかりこっちの話も聞いてる。耳が良いというか地獄耳と云うか…

「ふ~ん…お二人は、お友達で?」

 綾香が聞く。

「お友達…というより、幼馴染ね。生まれた時からお隣さんなのよ」
「幼馴染…そうですか…」
「…………?あの…何か?」
「いえ、少し思うことがあっただけです。素敵ですね、そういう関係」

 そう云う綾華は、どこか遠い方向を見た。
 少し思案が何かあるのだろうと、思うことでそれを流す雫。
 と、不意に妙な男がトレイを叩きつけるように悠希らの机に置いた。一斉にその男へ視線が集まる。

「どうもお美しいおぜうさん方!お食事ご一緒よろしいですか!?」



 この時…「まったく空気読めなさそうな奴が来たなー」と、そこにいる全員が思った。


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第5話に続く
最終更新:2009年12月25日 09:22
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