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第8話

 訓練を始めてから一週間が過ぎた。
 それまでの間は訓練と呼ぶよりは能力測定という感が強く、銃火器に関する訓練は一切無かった。
 そのせいか、ちょっと厳しい運動系の学校だと勘違いする者が多く、ここ二日は軽口を叩く者がよく目に付くようになっていた。
 何が目的か―――それを理解できた者はそれに則した実績をたたき出し、理解できない者はこれがまだ訓練の一つだと思い、理解してる者を鼻で笑う。「こんなので本気でやるな」と。

 そんな体が訓練に慣れてきた頃、氷室教官から分隊の発表が行われた。

「今から貴様達を分隊に分けて管理・評価していく。この分隊分けはこの一週間で得られた最新の成績で分けられたものだ。文句は一切受け付けんぞ。
 では、分隊を発表する」

 そう云って、プロジェクターで分隊表を表示させた。

「A分隊、源、森上、勝名、齋藤、久我、朝倉。分隊長は源、お前がやれ」
「はいっ!」
「次、B分隊。中原、中岡、坂上、中村、松浦、佐橋。分隊長は中原だ」
「はいっ!」
「C分隊。坂下、新河、坂口、皆口、井上、神田、野中。分隊長は井上」
「はい!」
「D分隊。雪野、藤林、好川、入江、青野、榎本、高山。分隊長は入江だ」
「はいっ」
「返事が聞こえないな!」
「は、はいっ!」
「聞こえるように返事をしろ………次、E分隊。前沢、近藤、川辺、井口、上原、田原、松本、前田。上原、お前が分隊長だ」
「は、はい!」
「………最後にF分隊。有田、田村、青木、市原、加藤、水口、日吉、高山―――市原、お前だ」
「はい!」

 次々と分隊分けが発表されていく。
 全部で7分隊。一週間ながらもAから成績が高い順………なのだと思いたいが、A分隊に成績が低い久我と、最下位の朝倉 都がいることが全員気になった。
 だが、全員その事に対して口には出さない。この一週間で少しではあるが、教官の言葉は絶対であるという教育が行き届いていた。

「教官、一つ質問があります」
「なんだ、中岡」
「B分隊には多くの男がいます。がその分隊の長が女性というのには理由があるんでしょうか?」

 一種の男女差別を口にする中岡 裕次郎
 多くの訓練兵がその事に顔をしかめるが、氷室は一切顔色を変えずこう言い放った。

「理由は簡単だ。貴様より中原 渚の方が部隊を指揮する面で優れている。それだけだ」
「な…!?」

 思いがけない理由だったのか、こうもハッキリ言い切られたのがショックだったのか、酷く顔が歪んだ。 

「そ、それだけ、です…か!?」
「それ以上にどんな理由が要る?」

 あまりにも簡単な理由に、中岡はさらに愕然とする。
 ―――中岡が云いたいのは多分こういうことなんだろう。
 疲弊しきったこの時代でも、大抵の部隊は男性を長とする風潮がある。外から見れば「軍隊の隊長=男性」だという印象を持つのは当然だし、実際軍隊はそういう情報操作をしている。これは「人類はまだそこまで劣勢ではない」という事を示すためで、人民の精神的負担を減らすためと軍隊としてのプライドがそうさせている。
 そういう既成概念で物を言ってたのだと…悠希や雫らは思うことにした。

「質問は無いな?では5分だけ時間をやる。分隊長は与えられた分隊を掌握しろ」

 その言葉と同時に、一斉に各分隊長が自身の分隊員を呼び集めた。



 源 雫は集まった面々の顔を見て、一度頷く。

「今更自己紹介ってのも変な感じだけど、A分隊を任され貴方達の長となる源 雫よ。
 あの一週間がなんであるか理解できてる連中であると信じ、私はとやかく言わない。
 各々の目的もあるでしょう。ならば、私を利用しなさい。私を利用して、みんなを利用して、自分を磨き鍛え上げなさい。
 それがこの隊の、ひいては日本や世界のためになるのだから。以上よ」

 最後に敬礼し、解散させる―――が、ふと云い忘れてたことを思い出し、

「あ、でも久我。拡大解釈は禁止ね。女の子に手を出すのも」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?そりゃないっすよ分隊長ぉ!」

 応馬が嘆く。そんな彼の肩を叩く悠希。ただしかなり力を入れて。

「雫に手を出したらお前の21本目の指をへし折るから」

 と、笑顔で言い捨てて去っていった。



 一通りの分隊長が与えられた分隊を掌握する。
 全員が席に戻り、その全員を氷室は一度見渡す。

「今後、貴様等は分隊単位で評価され、分隊単位で罰を受けることになる。
 それが嫌なら、分隊員全員で遅れている屑を鍛え上げろ。いいな!?」
『はい!』
「よろしい。では早速訓練に入る」

 そう最後に締めくくり、教材を畳む氷室。
 と、ふと思い出したかのように立ち止まり、どこか滲み出るようなサディストの顔で全員を睨む。

「最後に一つ言っておこう。これまでのが訓練だと勘違いするなよ?本番はこれからだ」

 その言葉に、全員の背筋に冷たい何かが走った。


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第9話に続く
最終更新:2009年03月29日 20:02
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