ここは都庁にほど近い、東京都のどこか。
そこには超人血盟軍のリーダーにして最後の生き残りである、キン肉マンソルジャーことキン肉アタルと、妻に死に絶望し完全にヘタレと化したベジータ王子がいた。
時間は影薄組及び都庁同盟軍と決別してからさほど経っていない。
とにかく敵対してしまった都庁から少しでも遠くへ離れることと、ベジータを正気に戻すために安全地帯を探す必要があった。
「「SATUGAIセヨ! SATUGAIセヨ!」」
「くっ……
DMC狂信者か!」
「ブルマ……ブルマ……」
しかし、アタルたちは都庁から離れたところでモブ狂信者たちと出くわし、囲まれてしまう。
都庁の支配区域の狂信者は全滅したが、その外側にはぐるっと包囲するように狂信者たちが配備されているのだ。
相手はモブなのでアタル兄さんの戦闘力と冷静で的確な判断力なら簡単に倒すことはできるものの、モブ狂信者はほぼ無限湧き、そして騒ぎを聞きつけた戦闘力の高いネームドエネミーこと指揮官級の狂信者に当たってしまえば結果はわからない。
今のベジータはまったく戦力にならず、仲間である以上は守らねばならない以上、守りながら戦う羽目になる。
そうなればアタルと言えどジリ貧であり、ベジータごとやられてしまう可能性が高い。
(引き返すか? いや、後ろには敵対してしまった都庁の者たちがいて退けない!
どうすれば良い……?! 考えるんだ、冷静で的確に!)
「「SATUGAIセヨーーー!!」」
「くっ!!」
前門の狂信者、後門の都庁……どこへ進み、どう戦い、どう逃げるか考えるアタルだったが、彼の判断を待たずにモブ狂信者は一斉に攻撃を仕掛ける。
だが、モブ狂信者たちの攻撃がアタルとベジータに届くことはなかった。
「ジャイアントスイング!」
「地獄のシンフォニー!」
「螺旋懐体搾り!」
「アトランティス・ドライバー!」
「ミイラ・パッケージ!」
「タワーブリッジ・ネイキッド!」
「キン肉バスター!」
「!?」
モブ狂信者の背後をつくように、突如、複数の男たちが現れ、各々の肉体を使った技……いずれもアタルにとって見覚え聞き覚えのある技で狂信者を瞬く間に粉砕していった。
「まさか、君たちが来てくれるとは……」
嬉しい誤算、地獄に仏と言うべきか、頼れる味方が現れたことにアタルの表情は仮面の下で綻ぶ。
駆けつけた男たちは七人、皆超人であった。
先に亡くなったアシュラマンに並ぶ悪魔六騎士の一人で実力者、黄金色に輝く角ばった巨大なボディが特徴なヘビー級悪魔超人。
「サンシャイン!」
カセットデッキの体を持ち、理論上無限の超人技を使用できる機械の悪魔超人。
「ステカセキング!」
一見するとギャグ漫画のような見た目だが、高い弾力を持ち、関節技には無類の防御力を持つ、金属バネの悪魔超人。
「スプリングマン!」
半魚人の体を持つ、水辺では実力を何倍にも上昇させられる誇り高き海の悪魔超人戦士。
「アトランティス!」
相対する敵をミイラに変える残虐性を持つ者だが、味方にすればこれ以上頼もしいものはいないエジプトの悪魔超人。
「ミスター・カーメン!」
鎧を模した外見だけでなく優れた知性と戦闘力、紳士としての誇り高さはまさに騎士と呼ぶにふさわしい正義超人のリーダー格。
「ロビンマスク!」
そして!
男なら憧れる筋骨隆々なマッスルボディと気高き優しさにより豚のような不細工なマスクとニンニク臭さすら帳消しにする我らがヒーロー――キン肉マン。
「大丈夫か! アタル兄さん!」
「スグル……弟よ、来てくれて助かった」
弟は生きており、その弟が仲間を引き連れて命を救ってくれた感動の再開……こんな殺し合いの場でなければ熱い抱擁をしたいぐらいだったが、冷静なアタルは的確に情報を把握しようとする。
まずはこの中では悪魔超人側の代表格であるサンシャインに目を向ける。
「スグル、正義超人であるロビンマスクはともかく、悪魔超人であるサンシャインたちは?」
「兄さん、彼らに関しては心配しなくて良い。彼らも私たちと同じ対主催で、今は味方同士だ」
「あのお方からの命令によるものもあるがな。キン肉マンが言った通り対主催として動いている。
よりマーダーと主催を駆逐しやすくするために同じ対主催や本来は敵対関係にある正義超人とも手を組んで良いというおたっしだ」
「兄さんもアシュラマンやBHと手を組んでいたところからしてそれも知っていると思ったが」
「ああ、まあな」
アシュラマンたちが悪魔将軍からの命令を受けて対主催として動いていることは知っていた。
ともすれば悪魔超人は味方である。
殺し合いという非常時故に超人オリンピックを除くと本来はありえない悪魔超人と正義超人の同盟を組むことができるのだ、超人血盟軍のように。
「ところで、放送で流れていたザ・ニンジャとBHは仕方ないとして、アシュラマンとバッファローマンはどこに行った?」
サンシャインはまだ放送で流れていない二人の超人の姿がないことに疑問に思った。
その答えをアタルはなるべく冷静に、しかしどこかすまなそうに悪魔超人たちに話した。
「すまない……私の判断ミスのせいで、二人は都庁の手の者に殺されてしまった」
「なんだと!?」
アタルの言葉に超人たちはどよめく。
悪魔超人の中でも猛者である二人の仲間が都庁の者に殺された……悪魔超人たちが衝撃を受けないわけがなかった。
正義超人の二人もバッフォローマンは盟友であったがために、殺されたことには大きなショックを受けていた。
「おのれぇ~! 都庁め!」
「奴らめ! 仲間を殺した償いをさせてやる!」
「全員ミイラにしてやるぞ!」
「それに何が機械嫌いだ! 文明の進歩と進化を否定する畜生どもが!」
「おまえたち落ち着け!」
「流石にこの戦力で真正面からでは無理だ!」
「アシュラマンとバッフォローマンほどの強者を一撃で殺せる者がいた。無策に突っ込めば二の舞だぞ!」
「悔しいが、怒りも悲しみも今は堪えるない」
スプリングマン、アトランティス、カーメン、ステカセキングは怒りの矛先をアタルには向けず、殺した下手人である都庁に向ける。
その勢いは比較的冷静だったサンシャインとロビンマスク、キン肉兄弟がなだめなければ、すぐにでも都庁に突っ込みかねないほどであった。
「マーダー集団の都庁の屑共はいずれ皆殺しにする、だが今は耐えるんだ」
「……ま、待て、都庁の者たちは……」
「オイ、奴らが来るぞ!」
サンシャインは都庁同盟軍に明確な殺意を抱きつつも冷静に悪魔超人たちをまとめる。
アタルは都庁の者たちもこちらを勘違いしているだけで、本来は志を共にする対主催であることを仲間に伝えようとするが、それよりも早く遠くから声が聞こえてきた。
SATUGAIセヨ SATUGAIセヨ!
――DMC狂信者だ。
「チッ、またきやがったか」
「奴らは何人殺してもまた湧いて出てきやがる」
「しかし戦ってもキリがないぞ。どうする?」
超人が8人も揃っている彼らならモブ狂信者程度が束になってもやられることはまずない。
しかしモブと言えど狂信者は上層部のシゴキによって強化されており、足止めぐらいはできる。
足止めを食らうとモブよりも遥かに強い指揮官級の狂信者を呼び寄せたり、都庁同盟軍の追撃部隊が来る恐れがある。
そうなると彼らでも危険である。
「突破するしかないか!」
「待てスグル、みんな! 私にいい考えがある」
そこで冷静で的確な判断ができるアタルは妙案を思いついた。
すぐさま最寄りの文房具屋から白と黒の絵の具を手に入れ、まずベジータの顔にクラウザーを模したフェイスペイントを施した。
額にはもちろんチャームポイントである“殺”の字も描く。
そこまで来てようやく周囲もアタルの考えが見えてきた。
「まさかソルジャー、狂信者に偽装して突破しようというのか?」
「そのまさかだ。狂信者も同じ狂信者は襲わない。
ならば狂信者を装えば余計な戦闘をせずにこの場を脱出できるだろう」
「「「なんという冷静で的確な判断力なんだ!!」」」
アタルの名案に周囲はお決まりの賞賛を送った。
「みんなもベジータと同じように顔を塗るんだ。
……これだけでは味付けがもの足りないな。
ステカセキングはDMCの曲を流してくれ! 少しでも偽装を完璧にする」
「あいわかった!」
ステカセキングは所持していたDMCのカセットを、己の体に入れて曲を流した。
曲はDMCを象徴する曲「SATUGAI」である。
―― 殺せ殺せ親など殺せ 殺せ殺せすべてを殺せ ――
「……うわぁ、相変わずひでえ曲だな」
「私は聞いただけで吐き気がしてきたぞ……」
「お、おい、大丈夫かキン肉マン」
「そういえばキン肉マンはDMCの曲が大嫌いだったな」
「すまないスグル……狂信者の包囲網を抜けるまでは我慢してくれ。顔色の悪さはフェイスペイントでごまかそう」
「ああ、気持ち悪い。これでは牛丼もしばらく胃に入らんぞ」
キン肉マンはクラウザーの曲を聞くだけで気分が悪くなるDMCアンチであり、ステカセキングから流れた曲を聞いただけで顔を青くしていた。
クラウザーさんは魔王や大天使すら惹きつけるほど信者を量産したが、逆に彼の歌を毛嫌いする者もいるのだ。
「おいおまえ、今クラウザーさんの歌が気持ち悪いと言ったか?」
「え?」
―― 思い出を血に染めてやれ 未来など血に染めてやれ ――
――それは突然だった。
閃光が瞬いたと思ったら、キン肉スグルの豚面が首ごと弾けて消し飛んでいた。
あの伝説の超人ヒーロー・キン肉マンがあっけなく死んだのだ。
その下手人は――仲間であるハズのベジータ。
「べ、ベジータ?!」
突然過ぎるスグルの死とベジータの裏切りに、周囲の超人たちは、アタルさえも脳内の処理が追いつかず、呆気に取られていた。
そしてDMCのペイントが施された顔でベジータがニヤリと笑いかけたかと思うと、超人たちに向けて掌から大出力のエネルギー波を放った。
「ぎゃああああああああ」
「うおおおおおおおおお」
「ニーブラァ!?」
いかな超人と言えど、惑星すら簡単に破壊できるほどの絶大な火力を誇るサイヤ人の攻撃を凌げるわけもなく、閃光は超人たちを容赦なく飲み込み、蒸発させた。
ただ一人、ベジータの異常に誰よりも早く気づいて躱したアタルを除いて。
「ベジータ~~~~っ! なんのつもりだ!?」
仲間と弟を一瞬で皆殺しにしたベジータの裏切りに、怒りと驚きを交えて怒鳴るアタル。
だがベジータはさっきまでのヘタレさは何処へ、極めて冷静かつ冷酷なスマイルを浮かべてアタルに言ったのだった。
「妻のブルマが死んだ以上……俺はもう、サイヤ人の王子だとか、生き残ることだとか、カオスロワだとかどうでもよくなったんだよ」
キン肉マンソルジャーことキン肉アタルの考案した偽装による狂信者突破は実に理に適っていた。
……だが彼はクラウザーさんの歌の特性を知らなかった。
それは今までDMCの歌に興味がなくても、強い悲しみでぽっかり穴が開いた心をその滅茶苦茶な歌が埋めてしまうのである。
「俺の傷ついた心を癒してくれるクラウザーさんの歌を除いてなあ!!」
「ベジータッ!」
ベジータは妻を失った絶望を味わっている時にクラウザーの歌を聞くことで狂信者に身を堕としたのだ。
そしてスーパーサイヤ人と化し、かつての仲間であることも忘れてアタルに襲いかかった!
【キン肉スグル@キン肉マン 死亡】
【ロビンマスク@キン肉マン 死亡】
【サンシャイン@キン肉マン 死亡】
【スプリングマン@キン肉マン 死亡】
【ミスター・カーメン@キン肉マン 死亡】
【アトランティス@キン肉マン 死亡】
【ステカセキング@キン肉マン 死亡】
【ダンシングフィッソン族@お笑いネタ 死亡】
※こいつはその辺に隠れていただけですが、ベジータの攻撃の巻き添えで死にました
今、虐殺で祝われる「謝肉祭」が始まる。
―― SA TSU GAI! ――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
地下から都庁を目指していた
なのは組だが、彼らの歩行速度は恐ろしく牛歩になっていた。
主になのはのせいで。
「やだやだやだ!! 私以外にユーノ君の体が弄られるのはヤなの!!」
「ちょっと、なのは! そんなこと言わないで!」
なのはが都庁へ向かうのを嫌がる理由……それは支給品の千年タクウでユーノがフォレスト・セルに陵辱(実際は治療)される未来を見たがために、彼をそんな目に合わせたくないがためにだだをこねているのだ。
今、彼女は桑原とレオリオによって、両腕を引っ張られて引きづられている。
「まったく、都庁はもうすぐだって言うのに全然前に進まねえぞ!」
なのはが暴れるせいでほとんど前に進まない現状にレオリオは愚痴をたれる。
「しかし、なのはの話も一理ある気がするな……」
「桑原お兄ちゃんどうして? ……ユーノさんのお尻がいじられるから?」
「バッ……そうじゃねえハス太。
どうにも都庁に近づくたびに嫌な予感がするんだぜ」
桑原は生まれつき霊感が強く勘も鋭い。
並の霊能力者が手こずる迷いの森すら最短ルートで抜けてしまうほどに。
そんな彼の勘が悪い予感がすると囁いているのだ。
「都庁の魔物や協力者たちはやはりネットで囁かれるような危険な連中で、エリカと神樹があいつらと一緒に戦っていたのも脅されたていたか洗脳されていたから……とも考えられるか」
「確証はねえが、その可能性は捨てきれねえな。ユーノはどう思う?」
都庁の者たちに疑問を持ち始めるレオリオと桑原の視線がユーノに向く。
彼は一行の行動を左右するリーダー格だ。
グループの最終判断の決定は知力に優れた彼の役目である。
「いや、このまま都庁に向かう。
都庁に存在する参加者が志を共にする対主催の仲間ならそれでよし。
違っても無理やり協力させられているエリカさんと神樹を助け出さなくちゃいけない。
今から引き返しても現状の僕らの戦力じゃ神樹を倒したオカマにやられるだけだ。
仮に僕がなんらかの事情で陵辱させられる羽目になったら、あらゆる手段を講じて脱出するだけさ」
「おう、そうだな」
「どちらにせよ都庁に向かうしかねえってことか」
ユーノは都庁が白でも黒でも突き進むことに決め、リーダーの判断になのは以外の全員が従った。
(まあ、もし都庁の奴らがなのはに危害を加えるんだったら、コノ手デ殲滅スルケドネ)
ユーノのなのはを守りたいと想いと、都庁が敵だったらとの想像が合わさった爪が一瞬だけ獣のように伸びたが、それもまた一瞬で元通りになり、地下の暗さも手伝って誰も気づかなかった。
「嫌だよ、行きたくないよ。ユーノ君が他の誰かに取られるなんて!」
「大丈夫だよ、なのは。僕は死ぬ気はないし、君以外に抱かれる気もないから」
(うわあ~バカップル)
(ラブラブだね)
(羨ましいぜ。俺も雪菜さんとあれぐらいイチャイチャしてえな~)
だだをこねるなのはとそれをなだめるユーノ、二人を生暖かく見つめる三人の男の一幕があった。
だがそれも唐突に終わりを告げる。
地上からなのはたちのいる地下へ、天井を何枚もぶち破ってそれは現れた。
……血まみれの超人と、黄金の気を纏い金髪をしたM字ハゲの狂信者らしき男が。
「きゃあ!」
「いったいなんだ!?」
「ぐふッ……逃げるんだ……」
天井から降ってきた瓦礫を避けたなのは一行のなのはとユーノにボロボロの超人アタルは目があった時に危険を知らせ、逃げるように促す。
だが次の瞬間、アタルの右半身がエネルギー波によって消し飛び、絶命させた。
「ベジ……貴様――」
「前にアシュラマンが言っていた俺には『戦うという覚悟』が足りないという言葉をようやく理解したよ。頭ではなく心で。
こんな怖いものだらけの絶望的な世界でもクラウザーさんの歌を聞けるなら『戦うという覚悟』なんていくらでも湧いてくる!!
その証拠に金髪なんてもう怖くもなんともない!!」
世界に絶望し、クラウザーさんの歌を聞いたために、金髪であるユーノやハス太を目の前にしてもベジータは恐れることはもうなくなっていた。
代償としてその心は狂気に染まってしまい、サイヤ人の誇りなど微塵も残っていないが。
もし人類が後に来る大災害を打破し、後世があるのなら歴史家はこう言う。
キン肉アタルの最大の失敗は、野球をしたことでもなく、ガチレズを仲間にしたことでも、都庁に無警戒で入ろうとしたことでもない。
野球の数合わせのためにベジータという男を仲間に招いてしまったことであると……
【キン肉アタル@キン肉マン 死亡】
スーパーサイヤ人であるベジータから放たれるオーラ。
それはかつてユーノたちが戦ったOVERや戸愚呂兄、下手をすると天魔王すら凌ぐ、今まで戦った中で最強最悪の部類のマーダーであると全員に肌で感じさせた。
戦慄する一行に対して、ベジータは獲物を見つけた猛獣のような笑顔を見せる。
「おまえらも逃がさんぞ。全員まとめてSATUGAIし、クラウザーさんへの貢物にしてやる」
なのはたちに、ジャンプ漫画最強のクラスに位置するスーパーサイヤ人が容赦なく襲いかかる!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それは影薄一行と神樹とアルルーナを率いるエリカたちは都庁の世界樹へ入ろうとした時であった。
「なに!? なのはたちが襲われている!」
「神樹、それは本当なんですか!?」
神樹とエリカの本来の仲間であるなのは組が、ここからそう遠くない地下で襲われている……超巨体故に感覚にも優れていた神樹がそれを感じ取ったのだ。
「エリカの仲間を? 襲ってるのはどこのどいつだい!?」
「DMC狂信者か!
天魔王軍か?」
これから仲間になるかもしれない者たちのピンチに焦る影薄組の小町と日之影が神樹に敵の正体を聞くと、以外な答えが返っていた。
「いや……この声は……超人血盟軍のベジータだ!」
「ベジータだって!?」
ベジータと言えば、つい先ほど別れたばかりの超人血盟軍の一員だ。
桃子の憧れの先輩さえも殺した最悪の集団・拳王連合軍と同盟を持つだけに信用してはならない集団の超人血盟軍の一員でもある。
しかし、先ほど会った時はヘタレた背の低い小男にしか見えなかっただけに、小町には襲撃にギャップを感じさせていた。
「でも、なんでだ?
仲間のハズのソルジャーとかいう奴を殺しただと……?」
「キン肉マンソルジャーが殺されてる? いったいどういうことだい?!」
「神樹、小町さん。今はそんなことよりなのはさんたちを助けにいかないと!」
神樹によると仲間であるハズのアタルはベジータに殺されたらしい。
いったい何があったのか疑問にどよめいた小町と影薄組だったが、エリカは疑問を後回しにさせてとにかくなのは組の救助とベジータ討伐を優先させる。
「しかし、俺の巨体じゃ地下には入れねえし、深さ的に攻撃も届かねえ。
どっかにベジータが開けただろう穴があるからそこから――みんな伏せろ!!」
体が大きすぎる神樹では地下に向かうことができない。
戦闘力があり、狭い地下でも戦えるサイズの者はエリカとアルルーナ、小町と日之影に向かってもらう……そう言いかけた時だった。
突如、地面に大穴が開くと同時に眩い閃光――ベジータの気が詰め込まれたエネルギー砲・ファイナルフラッシュが地下を焼き溶かして神樹に直撃したのだ!
その威力はダオスがハザマ・大和戦で見せた小鳥とサクヤ、都庁の魔物たちの協力で放たれたハイパーダオス・レーザー……の約二倍!!
その一撃だけで神樹の幹を真っ二つに折り、断面から鮮血のような大量の樹液を放出させる。
最大の幸運は神樹が障害物になったことで超濃密なエネルギーの塊は世界樹自身に当たることはなく、真横に逸れたことであろう。
「ぐああああぁああああぁあああ!!!」
「神樹!!」
神樹の頭の上に載っていたエリカが一撃で倒された神樹に声をかけるも、幹から折られた神樹が自由落下によって地上に落ちようとする。
その落ちる先にはアルルーナと影薄組がおり、小町は勢いよく自分たちに落ちてくる神樹の巨体に対し急いで能力で対処し、圧殺から自分と仲間を守ろうとする。
「ヤバイ……『距離を操る程度の能りょ…‥」
「こまっちゃん!! また来たぞ!」
「!!?」
しかし、小町が能力を神樹に向けて放つよりも早く、地下から二発目の光弾が地上にいる小町たちと世界樹に向けて放たれた。
小町はその時、咄嗟に能力を神樹にではなく光弾に向けて使用。
結果、光弾は小町たちや世界樹に当たることはなく明後日の方向へ飛んでいき、世界樹は窮地を免れた。
……世界樹を救う引き換えに神樹は地上に落下した。
新宿全体を揺さぶる振動と高く舞う土煙。
小町たちの命運はいかに?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「きゃああああああああああああ!!」
神樹の頭上にいたエリカだったが、神樹地上落下の衝撃で彼女は投げ出され、ベジータの攻撃で開いた穴によって地下へと入ってしまった。
「くッ! モジャンボ!!」
「モジャーッ!」
普通の人間ならば落下でぺちゃんこになって死亡していたが、幸い彼女は強い精神力の持ち主で、手持ちのポケモンにも恵まれていた。
全身に蔓を生やした植物ポケモンのモジャンボを呼び出し、エリカがその背中に捕まる。
そしてモジャンボの蔓を壁に引っ掛けて落下を防いだ。
「ありがとうモジャンボ、ゆっくり降下して!」
「モジャ」
エリカは地上にいる倒された神樹や影薄たちも気になったが、それよりも今は地下にいるなのは組の救助とベジータの討伐が先だと思い、降りて地下へ向かう。
何より神樹すら一撃で叩き折ったベジータの攻撃力は世界樹にとっても危険であり、早急に倒す必要があると思ったのだ。
エリカがモジャンボの力を借りて地下に降りると、そこには信じられない光景が広がっていた。
なのは組のリーダーにして防御面では多くの魔道士の中でも秀でているユーノ。
中身は9歳児だがエースオブエースの将来を約束された魔法少女なのは。
風を操り、潜在能力は邪神級の少年ハス太。
全てを切り裂く次元刀の使い手である桑原。
ハンターであるレオリオ。
並のマーダーならひとひねりにできる五人が、たった一人の逆だった金髪を持つ男にボロボロにされ、地面に膝をついていた。
「みなさん!?」
「エリカさん……きちゃダメだ……」
大怪我を負い、気絶したなのはを抱えるボロボロのユーノがエリカに逃げるように促すも、もう遅い。
「さっきの女か……SATUGAIしてやるぜぇ!」
「……ッ!」
ベジータの視線がギロリとエリカに向く。
一時間も立たない内に何があったというのか。
今のベジータは先程まではなかった覇気と狂気に塗れていた。
それはエリカすら思わず後ずさりしたくなるレベルである。
「キノガッサ! モジャンボ!」
「キノー!」
「モジャーッ!」
それでもエリカは逃げずに戦うことを選択する。
モジャンボの追加でモンスターボールから呼び出したポケモンはカイリキー並の格闘能力と多彩な補助技を持つボクサー型キノコポケモン・キノガッサ!
盾の役割を担う防御力特化型のモジャンボに対し、こちらは攻撃力に特化したエリカの矛である。
エリカもポケモンもベジータに臆することなく、群れバトルで挑んでいく。
「まずキノガッサはキノコの胞子を……」
エリカはまず、キノガッサに命中100%の睡眠技「キノコの胞子」をベジータに浴びせて眠らせ、必殺の「きあいパンチ」で一気にカタをつける鉄板戦法を取ろうとする。
だが……
「フンッ、遅いな」
「キノ?!」
「モジャッ?!」
ベジータの機動力はキノガッサの機動力を遥かに上回っており、それこそ一定の動体視力を持たぬ者には瞬間移動をしているようにしか見えない。
キノガッサが胞子を放つ前にベジータは一瞬で詰め寄り、キノガッサの頭部を拳で大穴を開けて一瞬で絶命させた。
更に隣にいたモジャンボも気の力で一気に焼却し、一瞬で灰にして殺した。
「キノガッサ! モジャンボ! ……くッ、ですが私にはまだ!」
瞬く間に殺された手持ちのポケモンの死に衝撃と悲しみを覚えるも、エリカは戦いをやめるわけにはいかないと新たなポケモンを召喚しようとするが、しかし、残りのモンスターボールを握る右手ごと、そして中身のポケモンごとベジータが握り潰した。
「くああああああああッ!」
「フンッ」
これでエリカは右手と手持ちのポケモンを全て潰された。
戦闘力を大幅に失ったのである。
ベジータはそのままエリカにトドメを刺そうとし、拳を振り上げる。
「うおおおおおおッ! 往生せいやーッ!!」
「エリカを……やらせるかよ!」
「チェーンバインド!」
「エリカさん! こっち!」
「みなさん!」
今にも殺されそうだったエリカを、桑原、レオリオ、ユーノ、ハス太が救うべく、奮闘する。
まずユーノが魔法の鎖を召喚してベジータに絡ませ、ハス太が風の力を使ってエリカを自分たちの元へ手繰り寄せ、レオリオが放出系念能力による不可視の攻撃をベジータに浴びせ、桑原が何もかもを切断できる次元刀で斬りかかった。
だがユーノの鎖は2秒程度の時間稼ぎにしかならずパワーで引きちぎられ、レオリオの念攻撃は圧倒的防御力を誇るスーパーサイヤ人にはほとんど効いておらず。
桑原の次元刀はベジータの防御力さえも両断できるが、当たらなければどうということはないと言わんばかりにミリ単位で躱していく。
幸いなのはエリカはハス太の風で手繰り寄せられベジータのトドメを受けずに済んだことだろう。
「クソッ! 化物め! 避けるんじゃねえ!」
「ハッハッハッ。無駄だ。
俺はアシュラマンとソルジャーのおかげで高い戦闘力が更に強化されている!
おまえたちなど逆立ちしても俺の足元にも及びはしない!」
元々戦闘力の高いサイヤ人であるが、その戦闘力は首輪の有無の差と、アシュラマンによる首コキャとアタルによるフェイスフラッシュによる回復のコンボ……すなわち死地に至って回復する度に
強くなるサイヤ人の特性により、ベジータは今期でもトップクラスの戦闘力をお手軽に手にしていたのだ。
強化された戦闘力がマーダーや主催にではなく、対主催に振るわれるとは流石の冷静で的確な判断力を持つアタルでも予期していなかっただろう。
「戦力を失ったおかっぱは後回しだ。
リーゼント、おまえからまず仕留めてやる!」
「ぐはぁッ!!」
「桑原ーーーッ!」
「桑原さん!」
ベジータは標的を仲間を助けるために突出した桑原に変え、まず腹に膝蹴りをお見舞いする。
ハス太が風による結界で桑原を防御したが、結界は高すぎる攻撃力を持つベジータの前に破られて桑原の腹に蹴りが直撃して吐血させる。
結界は致命傷を避けさせるのが精一杯であった。
「さあ、汚い花火になりな!」
「やっべ……」
そしてベジータのエネルギー弾による非情な一撃が、ゼロ距離で桑原に炸裂しようとする!
腹に一撃をもらった桑原では避けることはかなわない。
ハス太とユーノによる結界は気休めにもならず、先ほどエリカにしたようなハス太の風による手繰り寄せも今からでは間に合わない。
桑原の死は決定的だと思われた。
「……そうは、させないよ!」
「ダニィ!?」
ベジータは聞き覚えのある女の声と同時にエネルギー弾が放つが、その直前に桑原の姿が目の前から消え、弾は床に穴を開けただけに留まる。
気を辿ると、そこには桑原と斬魄刀を構えた少女がいた。
「小野塚小町!」「小町さん!」
小野塚小町の突然の登場にベジータは獲物を殺し損ねた怒りを、エリカは仲間が来たことによる喜びから、彼女の名前を呼ぶ。
「ベジータ……アンタに何があったのか知らないけど、仲間を殺そうとするならあたいが許さないよ!」
「邪魔をするな小町! これでも喰らいやがれ!」
ベジータはエネルギー弾をぶつけて現れた小町を横にいる桑原ごと殺そうとする。
しかし、彼女が手をかざした瞬間、エネルギーは距離を操られることによって明後日の方向に飛んでいき、彼女や桑原たちに当たることはなかった。
「無駄だ! あたいには『距離を操る程度の能力』がある!
タイマンではあたいを殺すことはできないよ」
「クソッ、厄介な奴がきやがったか!」
どんな攻撃でも当たらなければどうということはない。
そして小町には敵に攻撃を当てさせない能力の持ち主であり、地の戦闘力はベジータより遥かに下でも攻撃が命中しない以上は攻撃力が機能しなくなる厄介な敵であった。
「あの能力と赤毛で巨乳……間違いない! あの人はネットで噂されている対主催の人だ!
大阪から姿を消して行方知れずと言われていたけど、まさか関東に、都庁にいたなんて!」
「おや、坊や。あたいのことを知っているのかい?」
「ええ、ネットである程度の情報を見てましたから」
機械に詳しいハス太は、首相官邸にいた時にカオスロワちゃんねるのようなネットにも目を通していた。
ネットには三大巨悪と言われる拳王連合軍やDMC狂信者、
都庁の軍勢の他にも
イチローチームや
ホワイトベース組などの対主催の噂も少なからず書かれており、小町の情報もある程度は書き込まれていた。
「大阪では騎士姿の男と共に超巨大ロボのジプシー・デンジャーを倒した女傑と噂されているんですよ。
他にも拳王連合軍の砲撃を防いだり、有名なプリキュアと交友を持っていたり、見えない敵と戦えたり、一人なのに五人分の戦闘力を持っているなど噂されています」
「小町さんてそんな凄い人だったんですか?」
「ジプシー・デンジャーを倒したのは確かにあたいだが、なんかほとんど噂がひとり歩きしているような……?」
見えない敵と戦えるようになったのは嘘ではないし、ジプシー・デンジャーを倒したのは確かに小町の力だが、
混沌の騎士や影薄組の助力(彼らは影が薄すぎたので他の参加者に認識されなかった)もあり、拳王連合軍の砲撃を防いだのは小町ではなくハクメンである。
ラブたちプリキュアとは最初から交友を持っていたわけではなく、一人で五人分の戦力というのも影薄たちが認識されていないためのことだろう。
風評被害の逆というか誇張と誤報が混じっていることには小町は眉を潜めるが、いつの間にかなんやかんやで他の参加者から頼られているのはわかった。
拳王連合軍に襲われる大阪で自分に対する救援要請が来ていたのも頷ける。
なのは組側としては小町が都庁についているということは、都庁の軍勢もネットで噂されているような悪党たちではないのだろうと思わせた。
「大阪の多くの参加者を窮地から救った英雄……
その名も『三途の川からやってきた 正 義 の 乳 神』!!」
迫真の表情でハス太は言ったが、その瞬間、小町と桑原とレオリオはズッコケた。
「なんだい乳神って!? あたいは乳神じゃなくて死神だよ!」
「だってネットではそう書かれていて……小町さん! 前! 前!」
「よそ見してる場合か
ああああ!!」
「ええい、こなくそ!!」
どこぞのグラビアアイドル
みたいなふざけた自分の二つ名にズッコケてた小町だが、ベジータが襲いかかってきたので気持ちを切り替えて、攻撃を躱していく。
なお、小町は死神なのだが彼女を目撃した多くののモブ参加者が彼女の巨乳っぷりに目が行き、いつの間にか死神→乳神になってしまったらしい。
「神樹とアルルーナは、影薄組の皆さんは……?」
エリカは小町以外の他の仲間の安否が気になり、心配しつつ彼女に仲間の無事を聞く。
そしてベジータと戦いながら、小町はエリカに応えた。
「大丈夫だ。皆生きてる……」
「!! 良かった……」
(無事とは言い切れないけどね……)
地上にいるポケモンや仲間の無事に安堵するエリカに対して、小町の表情は訝しげだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
地上。
小町と黒子、モモ、あかりの四人が倒れてくる神樹に潰されかける寸前に、日之影とアルルーナが彼女ら四人を庇ったために、日之影とアルルーナが潰される羽目になった。
幸い、人間としては鬼耐久力の日之影と魔物でも強い部類に入るアルルーナは死なずに済んだが、両者は決して小さくはないダメージを負い、巨木である神樹と地面に体を挟まれて身動きが取れなくなってしまった。
「日之影さん、アルルーナさん……」
「
ごめん、私たちを助けたばかりに……」
「なに、良いってことよ」
「私としては自分の身よりもお姉さまと助けに向かわせた小町さんが心配で仕方ありませんわ」
黒子とあかりは傷を負ってまで自分たちを助けてくれた二人に感謝と罪悪感を覚えるも、二人共、自分が傷を負ったことには特に気にした様子はなく、むしろ仲間に死人が出なかったことに喜び、エリカや小町の心配をしていた。
ついでにモモはというと……
「……」
「モモちゃん……」
「
ごめんなさい東横さん……冷静さを失った今のあなたを戦わせるわけにはいかないんです」
モモは神樹が折られた直後、先輩である加治木を殺された怒りと相まって、ベジータの攻撃に怒りを覚えて彼を殺しに行こうと斬鉄剣片手に突撃しようとしていた。
しかしそれは怨恨に狂った故の判断であり、そもそも雀力込みでも超理不尽級のスーパーサイヤ人に彼女一人で勝てる道理はない。
明らかに普段の冷静さを失い、このままではベジータに殺されて犬死にするだけだったので小町がエリカの下に向かう前に当身をして気絶させたのだった。
「おい、アルルーナ。神樹の奴がまったく喋らねえんだが、こいつはまだ生きてるのか?」
「……ええ、気を失っているようだけど幹の中に鼓動を感じる。
それも弱くなっているけど、ギリギリで持ちこたえているわ」
「生きちゃいるが楽観視はできねえってことか」
天魔王に引き続き、幹をゴッソリ折られた神樹であるが、彼はまだ生きていた。
ここまでやられた以上、回復には再びレストクラスの術師が必要だろうが……
「黒子、あかり!
何にせよ身動き取れないこのままじゃ俺たちもこまっちゃんもまずい。
ここは良いからモモを担いで早く都庁に戻って動けそうな仲間を呼んでくれ!」
「はい」
「うん、わかった!」
黒子やあかりの力では巨大な神樹の幹を動かすのは到底不可能である。
日之影とアルルーナを助け出すにはFOEのような力ある仲間を呼び、動かしてもらうしかない。
また神樹がやられたので狂信者が再び攻めてくる危険性もあり、すぐにでも応援を呼んで神樹の穴を埋める必要があった。
ベジータと戦っているであろうエリカと小町に仲間を送る必要もあり、応援は必要不可欠である。
日之影の指示通り、黒子とあかりは気絶したモモを都庁へ向かった。
(こまっちゃん、あのベジータとかいう奴はマジでやべーぞ。ぶっちゃけめだかよりも段違いに強ぇ。
仲間がくるまで生き延びてくれよ……)
日之影はただ、自分の身より送り込んだ仲間である小町のことが心配だった……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
最終更新:2017年02月17日 20:30