白銀の雷光
亡霊の棲む街2
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thrones
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朝靄の巴里の街。
辺りには人の気配がなく、ひっそりと静まり返っていた。
この街が賑やかになるにはまだまだ時間があった。
そんな街中を旅人の出で立ちの男が一人、足早に歩いている。
石畳で響く足音だけが彼を追い掛けてゆく。
メイスはそのまま街を出た。外れの大木の下でようやく立ち止まると、荷物の中から何枚かの紙を取り出し、ペラペラと弾いていく。
細々と何か書かれた書類に地図。
昨日あれから慌てて集めた資料だった。
メイスは地図を指で追い掛けていく。
そして、あるところでピタリと止まった。
(この辺りで間違い無さそうだ。)
目的地の検討をつけ、確認するように頷く。
ここからは、かなりの距離がある―
「ふう。」
小さな溜息を一つ漏らすと、メイスは再び歩き始めた。
辺りには人の気配がなく、ひっそりと静まり返っていた。
この街が賑やかになるにはまだまだ時間があった。
そんな街中を旅人の出で立ちの男が一人、足早に歩いている。
石畳で響く足音だけが彼を追い掛けてゆく。
メイスはそのまま街を出た。外れの大木の下でようやく立ち止まると、荷物の中から何枚かの紙を取り出し、ペラペラと弾いていく。
細々と何か書かれた書類に地図。
昨日あれから慌てて集めた資料だった。
メイスは地図を指で追い掛けていく。
そして、あるところでピタリと止まった。
(この辺りで間違い無さそうだ。)
目的地の検討をつけ、確認するように頷く。
ここからは、かなりの距離がある―
「ふう。」
小さな溜息を一つ漏らすと、メイスは再び歩き始めた。
数時間後―。
朝日が建物を照らし、街が目覚めはじめる頃、カイはすでに警察機構の自室にいた。
どうしてもここを離れる事が出来ない理由。
カイは数日前から膨大な資料を整理していた。
ある企業に関するもので、以前から色々と言われていたところだ。
良い噂は聞かない、出てくるのはキナ臭い話ばかりである。
以前、ある事件の際に調査が入った事がある。
しかし、その時は何でもないただの研究機関だった。
違法性の物は何も出てこなかった。いや―、見せられなかった。
と言った方が正しいのかも知れない。
巧妙に隠されている。そんな感じだ。
カイもちょうどその場にいた、内部の空気が何かあることを感じさせる。
しかし、何も出てこない以上、手出しは出来なかった。
(ここには絶対なにかある―)
悔しさに拳を握りしめ、一度も振り返らずに帰ってきた事を思い出す。
(今度こそは必ず不正を暴いてみせる…!)
カイは再び山と積まれた資料の整理に没頭していった。
朝日が建物を照らし、街が目覚めはじめる頃、カイはすでに警察機構の自室にいた。
どうしてもここを離れる事が出来ない理由。
カイは数日前から膨大な資料を整理していた。
ある企業に関するもので、以前から色々と言われていたところだ。
良い噂は聞かない、出てくるのはキナ臭い話ばかりである。
以前、ある事件の際に調査が入った事がある。
しかし、その時は何でもないただの研究機関だった。
違法性の物は何も出てこなかった。いや―、見せられなかった。
と言った方が正しいのかも知れない。
巧妙に隠されている。そんな感じだ。
カイもちょうどその場にいた、内部の空気が何かあることを感じさせる。
しかし、何も出てこない以上、手出しは出来なかった。
(ここには絶対なにかある―)
悔しさに拳を握りしめ、一度も振り返らずに帰ってきた事を思い出す。
(今度こそは必ず不正を暴いてみせる…!)
カイは再び山と積まれた資料の整理に没頭していった。
どれくらい時間が過ぎたのか―。
カイはふと顏をあげる。
夢中になっていて、時間は気にもならなかった。
辺りはすでに薄暗くなりはじめていて、街のあちこちで灯りが瞬いて見える。
そこでカイはようやく手を止めた。
一息ついて席を立ち、窓際から街を見下ろす。
柔らかな街の灯りに、自然と表情が和らぐ。
(今日はこれくらいにしておきましょうか。)
散らかった資料を、手早く集め片付けると帰途についた。
カイはふと顏をあげる。
夢中になっていて、時間は気にもならなかった。
辺りはすでに薄暗くなりはじめていて、街のあちこちで灯りが瞬いて見える。
そこでカイはようやく手を止めた。
一息ついて席を立ち、窓際から街を見下ろす。
柔らかな街の灯りに、自然と表情が和らぐ。
(今日はこれくらいにしておきましょうか。)
散らかった資料を、手早く集め片付けると帰途についた。
とある町外れの小さな酒場。
薄暗い店内には、まだ時間が早いせいか客はまばらで、時間がゆっくりと流れていた。
カラン。
グラスと氷が当たって乾いた音をたてる。
マスターが怪訝な表情で目の前の男を見た。
出した酒に手をつける事なく、微動だにしない。
ただ、男の眼だけが飢えた獣のようにギラギラとした光を放っている。
「本当か?」
「ああ、間違いねえ」
店の奥で二人の男が、声を潜めてヒソヒソと何かを話している。
男はじっと聞き耳を立てていた。
二人の男が話し出した時、気になる単語を聞いたからだ。
普通の人間であれば、到底聞こえるはずもない会話を男は聞き取っていた。
酒場はいい情報源だ。
中にはガセもあるが、信じられないようなネタも転がっている。
高額の賞金首は大抵その居場所を掴ませない。
だが、そういった情報もこんな酒場では簡単に知る事もできるのだ。
男は街から街を渡り歩きながら、こういった酒場で情報を仕入れていた。
やがて二人の男たちは話を終え、酒を楽しく酌み交わし始めたようだ。
「………」
男は目の前に置かれた酒を一気にあおり、カウンターに金を置くと酒場を出ていった。
外はすでに暗くなり、街は賑やかな明かりで彩られている。
行き交う人々の雑踏を避け、路地裏へと歩きだす。
建物の影から青白い光を放つ月を仰ぎ見て、
「やれやれだぜ…」
小さくつぶやくと闇の中に溶けていった。
薄暗い店内には、まだ時間が早いせいか客はまばらで、時間がゆっくりと流れていた。
カラン。
グラスと氷が当たって乾いた音をたてる。
マスターが怪訝な表情で目の前の男を見た。
出した酒に手をつける事なく、微動だにしない。
ただ、男の眼だけが飢えた獣のようにギラギラとした光を放っている。
「本当か?」
「ああ、間違いねえ」
店の奥で二人の男が、声を潜めてヒソヒソと何かを話している。
男はじっと聞き耳を立てていた。
二人の男が話し出した時、気になる単語を聞いたからだ。
普通の人間であれば、到底聞こえるはずもない会話を男は聞き取っていた。
酒場はいい情報源だ。
中にはガセもあるが、信じられないようなネタも転がっている。
高額の賞金首は大抵その居場所を掴ませない。
だが、そういった情報もこんな酒場では簡単に知る事もできるのだ。
男は街から街を渡り歩きながら、こういった酒場で情報を仕入れていた。
やがて二人の男たちは話を終え、酒を楽しく酌み交わし始めたようだ。
「………」
男は目の前に置かれた酒を一気にあおり、カウンターに金を置くと酒場を出ていった。
外はすでに暗くなり、街は賑やかな明かりで彩られている。
行き交う人々の雑踏を避け、路地裏へと歩きだす。
建物の影から青白い光を放つ月を仰ぎ見て、
「やれやれだぜ…」
小さくつぶやくと闇の中に溶けていった。