白銀の雷光
亡霊の棲む街7
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深い森の中。
木々が乱雑に生い茂り獣道もない。
それでも、前を歩く者は意に介さないかのように、歩を進める。
カイは、置いていかれないよう付いていく。
ここで逸れたら、この森を抜ける事もできそうになかった。
ただ、黙々とソルの背を追い掛ける。
カイはソルに聞きたい事が山程あった。
けれど…恐らく聞いたところで何も返ってはこないだろう。
だから、何も言わずに歩く。この先に答えがあるのだから―。
無理に問いただしたところで、険悪な雰囲気になるだけだ…。
分かっているから何も聞かない。大人しく後に付いて歩く。
辺りは漆黒の静寂の中―。木々の擦れる音だけが森に響いた。
木々が乱雑に生い茂り獣道もない。
それでも、前を歩く者は意に介さないかのように、歩を進める。
カイは、置いていかれないよう付いていく。
ここで逸れたら、この森を抜ける事もできそうになかった。
ただ、黙々とソルの背を追い掛ける。
カイはソルに聞きたい事が山程あった。
けれど…恐らく聞いたところで何も返ってはこないだろう。
だから、何も言わずに歩く。この先に答えがあるのだから―。
無理に問いただしたところで、険悪な雰囲気になるだけだ…。
分かっているから何も聞かない。大人しく後に付いて歩く。
辺りは漆黒の静寂の中―。木々の擦れる音だけが森に響いた。
どれほど歩いただろうか。
時間と言う概念がすでに失われ、体の感覚がマヒした頃、目の前が大きく開けた。
カイは、自分の目に映るそれに漠然とする。
見覚えのある建物。ここは―!
カイが口を開きかけたところで、ソルがゆっくりと振り返った。
「ダメだと言っても付いてくるんだろ?なら、その傷なんとかしろ。」
指差して、うんざりしたようにソルが口を開いた。
「あ…」
そこでようやく思い出す。張り詰めていたためだろう、カイ自身すっかり忘れていた。
ギアとの戦いで負った傷はそのままで、細く赤い線を引く。
「分かっている!」
拗ねた子供のようにふいと視線を外すと、手に法力を集中させる。
青白い柔らかな光が集まってきて、傷口を治していく。
なんとか止血だけを終え、カイはソルの隣に並んだ。
「………」
ソルは何も答えず、カイの顔を見ただけで、再び歩き出す。
「ソル…!!」
カイがソルを呼び止める。
呼び止められたソルは、面倒臭そうに振り返った。
「一つだけ教えてくれ。ここは先ほどのギアと、関係あるのか?」
これだけは聞いておきたい。どうしても。
青碧の瞳が、嘘や言い逃れを許さない光を宿して、ソルをまっすぐに見つめた。
殺気にも似た、張り詰めた空気が辺りを支配する。
永遠とも言える、時間の流れにも感じられたわずかな時の後、ふいとソルが視線を外し、背を向ける。
「ソル!!」
悲鳴にも似た叫び。
「そうだ。」
ただ一言。それだけ言うと、ソルは再び歩き始めた。
その後ろ姿を追い掛けながら、カイはすべてが一つの糸に繋がったのを確信した。
時間と言う概念がすでに失われ、体の感覚がマヒした頃、目の前が大きく開けた。
カイは、自分の目に映るそれに漠然とする。
見覚えのある建物。ここは―!
カイが口を開きかけたところで、ソルがゆっくりと振り返った。
「ダメだと言っても付いてくるんだろ?なら、その傷なんとかしろ。」
指差して、うんざりしたようにソルが口を開いた。
「あ…」
そこでようやく思い出す。張り詰めていたためだろう、カイ自身すっかり忘れていた。
ギアとの戦いで負った傷はそのままで、細く赤い線を引く。
「分かっている!」
拗ねた子供のようにふいと視線を外すと、手に法力を集中させる。
青白い柔らかな光が集まってきて、傷口を治していく。
なんとか止血だけを終え、カイはソルの隣に並んだ。
「………」
ソルは何も答えず、カイの顔を見ただけで、再び歩き出す。
「ソル…!!」
カイがソルを呼び止める。
呼び止められたソルは、面倒臭そうに振り返った。
「一つだけ教えてくれ。ここは先ほどのギアと、関係あるのか?」
これだけは聞いておきたい。どうしても。
青碧の瞳が、嘘や言い逃れを許さない光を宿して、ソルをまっすぐに見つめた。
殺気にも似た、張り詰めた空気が辺りを支配する。
永遠とも言える、時間の流れにも感じられたわずかな時の後、ふいとソルが視線を外し、背を向ける。
「ソル!!」
悲鳴にも似た叫び。
「そうだ。」
ただ一言。それだけ言うと、ソルは再び歩き始めた。
その後ろ姿を追い掛けながら、カイはすべてが一つの糸に繋がったのを確信した。
東の空が明るくなり、白い建物に光が反射して、キラキラと輝いた。
内部に人の気配はなく、静まり返っている。
「ちっ」
小さく舌打ちして、ソルはくるりと振り返り、もときた道を引き返す。
「なんだ?どうしたんだソル?」
てっきり強行突破すると思っていたのだが、あっけない程簡単に引き下がったのを見て、不振な表情をソルに向ける。
「…出直しだ」
それだけ言うと、再び森の方へ歩き始める。
カイも何も言わずにソルに従った。何か考えがあるのだろう。
二人は森の中に身を隠し、刻が過ぎるのを待つ。
ソルは樹にもたれて眠りはじめた。
その様子を横目でちらりと見遣り、カイはゆっくりと傷を治す事にした。
「ふぅ…」
一息付いて、集中した法力を解く。
止血だけされていた傷口は綺麗に塞がり、跡形もなく消えていた。
一晩中、道なき道を歩き、失った体力を少しでも回復するために、横になったちょうどその時―
リイィン
呼出し音が鳴り響き、再びカイの体を引き起こした。
「カイ様、ご無事でしたか!」
向こうのベルナルドの声に安堵の色が浮かぶ。
「ええ。すいません、心配を掛けてしまったようですね」
―しまった。
ついソルに気を取られ、すっかり定時連絡を忘れていた!
気を付けなければ。
ベルナルドに返答しながら、心の中で自身に言い聞かせるように呟く。
「何かございましたか?」
「そうですね…色々とありましたよ。今からまた、面白い事になりそうなので、報告は
終った後にまとめてします。」
悪戯っ子が、新しい遊びを見付けた時のような弾んだ声で告げる。
「そうですか?それでは、報告を楽しみにしていましょう。」
そこで通信は切れた。
辺りに再び静けさが戻る。
カイはメダルをしまうと、横になった。
その後すぐに、深い眠りに落ちていった。
内部に人の気配はなく、静まり返っている。
「ちっ」
小さく舌打ちして、ソルはくるりと振り返り、もときた道を引き返す。
「なんだ?どうしたんだソル?」
てっきり強行突破すると思っていたのだが、あっけない程簡単に引き下がったのを見て、不振な表情をソルに向ける。
「…出直しだ」
それだけ言うと、再び森の方へ歩き始める。
カイも何も言わずにソルに従った。何か考えがあるのだろう。
二人は森の中に身を隠し、刻が過ぎるのを待つ。
ソルは樹にもたれて眠りはじめた。
その様子を横目でちらりと見遣り、カイはゆっくりと傷を治す事にした。
「ふぅ…」
一息付いて、集中した法力を解く。
止血だけされていた傷口は綺麗に塞がり、跡形もなく消えていた。
一晩中、道なき道を歩き、失った体力を少しでも回復するために、横になったちょうどその時―
リイィン
呼出し音が鳴り響き、再びカイの体を引き起こした。
「カイ様、ご無事でしたか!」
向こうのベルナルドの声に安堵の色が浮かぶ。
「ええ。すいません、心配を掛けてしまったようですね」
―しまった。
ついソルに気を取られ、すっかり定時連絡を忘れていた!
気を付けなければ。
ベルナルドに返答しながら、心の中で自身に言い聞かせるように呟く。
「何かございましたか?」
「そうですね…色々とありましたよ。今からまた、面白い事になりそうなので、報告は
終った後にまとめてします。」
悪戯っ子が、新しい遊びを見付けた時のような弾んだ声で告げる。
「そうですか?それでは、報告を楽しみにしていましょう。」
そこで通信は切れた。
辺りに再び静けさが戻る。
カイはメダルをしまうと、横になった。
その後すぐに、深い眠りに落ちていった。