東方ファイト、今回の勝負は、主自慢――
あまりにも対戦選手二人にぴったりの競技に、既に会場は期待と不安の極地に達していた。
なお、今回の勝負は、同じくすばらしい主を持つ従者として、
八意永琳、魂魄妖夢、東風谷早苗、
以上三名を審判としてジャッジが行われる。
あまりにも対戦選手二人にぴったりの競技に、既に会場は期待と不安の極地に達していた。
なお、今回の勝負は、同じくすばらしい主を持つ従者として、
八意永琳、魂魄妖夢、東風谷早苗、
以上三名を審判としてジャッジが行われる。
「……十六夜咲夜。人間の身でありながら悪魔の従者。完全で瀟洒を名乗るその傲慢、ここに正してくれる」
「八雲藍。すきま妖怪の式にして式神使い。主の命に従うしか能の無いプログラムに、従者という言葉の意味を教えてあげるわ」
「八雲藍。すきま妖怪の式にして式神使い。主の命に従うしか能の無いプログラムに、従者という言葉の意味を教えてあげるわ」
対戦前から既にばちばちと火花を散らす両者。
「それでは、始めてください」
八意永琳の号令で試合開始。最初に動いたのは、咲夜。
「最近のお嬢様のお気に入りのお茶請けはラズベリータルト。
紅茶には砂糖を入れずに、血のように真っ赤なタルトの酸味と甘みを堪能するの。
紅茶の香りにふ、と息をつき、紅茶を飲み下してほう、と息をつき、
そしていよいよ待ちに待ったタルトを、口いっぱいに頬張るの。
その赤みの差した頬、笑みに緩んだ口元、きらめく瞳、
ああ、その幸せそうな顔といったら、まさに悪魔的な愛らしさ!
そしてそんなお嬢様に私は言うの。『お嬢様、口元にパイくずがついてますわ』
そうして私の取り出したハンカチが、お、お嬢様のあの綿菓子みたいに白くてシュークリームみたいに柔らかいほっぺに、ふ、触れ、ぬぐい取って……
ど、どうよ! もう口に出さなくてもわかるでしょ! この瞬間の幸せと言ったら、至福という表現に相応しいわ!!」
紅茶には砂糖を入れずに、血のように真っ赤なタルトの酸味と甘みを堪能するの。
紅茶の香りにふ、と息をつき、紅茶を飲み下してほう、と息をつき、
そしていよいよ待ちに待ったタルトを、口いっぱいに頬張るの。
その赤みの差した頬、笑みに緩んだ口元、きらめく瞳、
ああ、その幸せそうな顔といったら、まさに悪魔的な愛らしさ!
そしてそんなお嬢様に私は言うの。『お嬢様、口元にパイくずがついてますわ』
そうして私の取り出したハンカチが、お、お嬢様のあの綿菓子みたいに白くてシュークリームみたいに柔らかいほっぺに、ふ、触れ、ぬぐい取って……
ど、どうよ! もう口に出さなくてもわかるでしょ! この瞬間の幸せと言ったら、至福という表現に相応しいわ!!」
一気呵成にまくしたてた咲夜。会場中に広がる、駄々甘い空気と「無いわー」という呆れの視線。
だが、対面の藍は、真剣な顔。
だが、対面の藍は、真剣な顔。
「くっ、やるな咲夜……だが、まだ我が主の足元止まりよ」
「ふっ、御託はいいわ、あなたのお手並みを拝見させてくださいな」
「いいだろう……私の主、紫様は周知のことだが朝に弱い。
これは別に欠点でも何でもない。紫様は妖怪の上位存在、闇夜に生きるものならば、朝起きるのが遅くて当然なのだ。
さて、そんな紫様が朝起きるときは、当然ながら私がお起こしさせていただいている。
起き抜けの紫様は、ほとんど前後不覚といった態でな……無論、そういった姿を晒すことこそ、式たる私への信頼の証だ。
ゆえに、紫様の朝の支度は私が手伝わせていただいている。
……そうだな、いきなり全てを事細かに話すのも大人げなかろう。一例として、朝の洗面を挙げよう。
想像してみて欲しい。朝、寝ぼけ眼で洗面台に立つ紫様。その側に控える私。
『はい紫様、顔を洗いますよ……歯を磨きますから噛まないでくださいね』『んむ、ふう、ふう』
紫様の歯列を私は歯ブラシで蹂躙、もとい磨いて差し上げる……歯磨き粉を飲まないよう、ちょっと息苦しくしてる紫様。
『はい、紫様、口をゆすぎますね……水を飲まないでくださいね』『ぐじゅぐじゅ、ぺ、ぺ』
紫様の口腔が水で満たされ、紫様は口に注がれた白濁液を洗面台に吐き流す。
『では紫様、お顔を洗いますので、流しのほうに顔を……失礼します』『んうー……ぷは。おはよう、藍』
紫様のお顔の玉の肌を水で洗う――信じられるか、肌が水を弾くのが私の手にじかに伝わるのだ。
この一連の行動での赤子のように無垢な言動もさることながら、やはり一番なのはこの時のおはようと言う紫様の笑顔だ!
目が覚めたとき、私の顔を一番に見て、一番の笑顔を私に向けてくれる――
この瞬間の恍惚は、もはや至極という表現すら生温いわ!」
「ふっ、御託はいいわ、あなたのお手並みを拝見させてくださいな」
「いいだろう……私の主、紫様は周知のことだが朝に弱い。
これは別に欠点でも何でもない。紫様は妖怪の上位存在、闇夜に生きるものならば、朝起きるのが遅くて当然なのだ。
さて、そんな紫様が朝起きるときは、当然ながら私がお起こしさせていただいている。
起き抜けの紫様は、ほとんど前後不覚といった態でな……無論、そういった姿を晒すことこそ、式たる私への信頼の証だ。
ゆえに、紫様の朝の支度は私が手伝わせていただいている。
……そうだな、いきなり全てを事細かに話すのも大人げなかろう。一例として、朝の洗面を挙げよう。
想像してみて欲しい。朝、寝ぼけ眼で洗面台に立つ紫様。その側に控える私。
『はい紫様、顔を洗いますよ……歯を磨きますから噛まないでくださいね』『んむ、ふう、ふう』
紫様の歯列を私は歯ブラシで蹂躙、もとい磨いて差し上げる……歯磨き粉を飲まないよう、ちょっと息苦しくしてる紫様。
『はい、紫様、口をゆすぎますね……水を飲まないでくださいね』『ぐじゅぐじゅ、ぺ、ぺ』
紫様の口腔が水で満たされ、紫様は口に注がれた白濁液を洗面台に吐き流す。
『では紫様、お顔を洗いますので、流しのほうに顔を……失礼します』『んうー……ぷは。おはよう、藍』
紫様のお顔の玉の肌を水で洗う――信じられるか、肌が水を弾くのが私の手にじかに伝わるのだ。
この一連の行動での赤子のように無垢な言動もさることながら、やはり一番なのはこの時のおはようと言う紫様の笑顔だ!
目が覚めたとき、私の顔を一番に見て、一番の笑顔を私に向けてくれる――
この瞬間の恍惚は、もはや至極という表現すら生温いわ!」
またも会場中を埋め尽くす駄々甘い空気、「ありえねー」という視線。
あと一部から「それ老人介護じゃね?」という声が聞こえたような気がしたが、次の瞬間その観客は神隠しに遭っていた。
あと一部から「それ老人介護じゃね?」という声が聞こえたような気がしたが、次の瞬間その観客は神隠しに遭っていた。
「くっ……やるじゃないの八雲藍。だがその程度で上を行ったと思わないことね……!」
「は、まだ抗うか十六夜咲夜! いいだろう、格の違いというものを見せ付けてやろう!」
「は、まだ抗うか十六夜咲夜! いいだろう、格の違いというものを見せ付けてやろう!」
以後、試合は白熱を極めた。
咲夜が「美鈴のオッパオをオモチャにして戯れるお嬢様」を語れば、藍が「自分の尻尾にもふもふする紫様」で対抗し、
藍が「お酒に酔って色気を制御できなくなった紫様」を自慢すれば、咲夜が「妹様と喧嘩した後泣きながら仲直りして一緒に添い寝するお嬢様」で切り返す。
一進一退の攻防の末、両者は一歩も譲らない戦いを繰り広げ、
最後はジャッジに全てを託す格好で勝負は終焉を迎えた。
結果は……
咲夜が「美鈴のオッパオをオモチャにして戯れるお嬢様」を語れば、藍が「自分の尻尾にもふもふする紫様」で対抗し、
藍が「お酒に酔って色気を制御できなくなった紫様」を自慢すれば、咲夜が「妹様と喧嘩した後泣きながら仲直りして一緒に添い寝するお嬢様」で切り返す。
一進一退の攻防の末、両者は一歩も譲らない戦いを繰り広げ、
最後はジャッジに全てを託す格好で勝負は終焉を迎えた。
結果は……
永琳:
「主萌えを全面に押し出してきたのは両者とも非常に好感が持てるが、
主の魅力を主張する面が強かった咲夜よりも、主の魅力を自身の手で引き出し、それでいて出しゃばりすぎない藍のスタンスに好感が持てた、
よって藍に一票」
「主萌えを全面に押し出してきたのは両者とも非常に好感が持てるが、
主の魅力を主張する面が強かった咲夜よりも、主の魅力を自身の手で引き出し、それでいて出しゃばりすぎない藍のスタンスに好感が持てた、
よって藍に一票」
妖夢:
「咲夜のほうが、感情がより明確に伝わってきた。
主に対する切なく狂おしい、今にも押し倒したくて辛抱溜まらん、ああでも従者としては一線を越えるわけにはいかない、
という切羽詰まった息苦しい感情は非常に親近感が持てる。
よって咲夜に一票」
「咲夜のほうが、感情がより明確に伝わってきた。
主に対する切なく狂おしい、今にも押し倒したくて辛抱溜まらん、ああでも従者としては一線を越えるわけにはいかない、
という切羽詰まった息苦しい感情は非常に親近感が持てる。
よって咲夜に一票」
早苗:
「主に対する理解とそれを表すつぶさな表現力で、やはり一日の長が藍さんにあったように思います。
『日々のセクハラが、実は式の成長に一役買っていた』というくだりを聞いたときは、目から鱗が落ちた気分でした。
やはり幻想郷では既存の常識は通用しない……藍さんに一票です」
「主に対する理解とそれを表すつぶさな表現力で、やはり一日の長が藍さんにあったように思います。
『日々のセクハラが、実は式の成長に一役買っていた』というくだりを聞いたときは、目から鱗が落ちた気分でした。
やはり幻想郷では既存の常識は通用しない……藍さんに一票です」
というわけで、2対1で藍が勝利を収めた。
勝負を終えた藍と咲夜は、双方とも非常に満足げな様子で、互いの健闘を称え固く手を握り合ったという。
なお、会場の観客は全て、あまりの駄々甘さにほとんどが失神してしまっていたという。
勝負を終えた藍と咲夜は、双方とも非常に満足げな様子で、互いの健闘を称え固く手を握り合ったという。
なお、会場の観客は全て、あまりの駄々甘さにほとんどが失神してしまっていたという。