全く視界の利かない土砂降りの中を、いつもの服に合羽を着て、走るとは言えない速度で進む文。
傘を差すどころか傘そのものな小傘は、ハイテンションで既に前方遠くだ。
しかし、文には策があった。可憐なる美少女記者、という自称に背くような非道な策が。
傘を差すどころか傘そのものな小傘は、ハイテンションで既に前方遠くだ。
しかし、文には策があった。可憐なる美少女記者、という自称に背くような非道な策が。
小傘「あっめあっめふっれふっれ か~ぁさ~んが~」
土砂降りの中を、おろしたての長靴で飛び出した子供のようにはしゃいで走る小傘。
その前方の木陰に、白い姿が一つ、ぽつんと立っていた。
椛「はぁー……」
小傘「やや、あんな所に人が……」
千里眼で小傘を発見した椛は、わざとらしく溜息を吐く。
その気配に気付いて小傘が近寄ると、目線を逸らしたまま大きな声で呟く。
椛「あぁー、傘があれば山まで戻れるんですがー(棒)」
あまりに棒読みな台詞だったが、大雨の中に佇む人影が傘を欲していると知れば、黙っていられなかった。
小傘「そういう事なら是非!どうぞ!何卒!この傘の中に!」
椛「……そんな茄子みたいな色の傘に入る人は居ないと思いますよ(棒)」
小傘「ごふっ!……さ、さでずむ……」
そう、この椛こそが文の策略、先行する小傘を惹きつけ、心を折るための罠だったのだ。
椛「そんな不恰好な傘を差すぐらいなら、濡れて帰りますよ(棒)」
小傘「う……うぅ……うわぁぁぁぁぁんっ!」
滝のような雨の中を、大粒の涙を流しながらダッシュで逃げて行く小傘。
椛「あっ!わ、私のミスじゃないですよね……?」
そしてコースから一段高い路肩に居る椛は、小傘の走り去った先、
坂の上方から、圧倒的な量の水が流れて来るのを見る。
大雨の中で小傘が流した涙は、大粒の涙雨となってその水量をゲリラ台風級に増したのだ。
椛「このコースって、全体的にこんな形だから……」
己をここに配置させた文の行く末を案じつつも、特に何ができるでもなかったので、
椛は大人しく雨宿りを続ける事にした。
土砂降りの中を、おろしたての長靴で飛び出した子供のようにはしゃいで走る小傘。
その前方の木陰に、白い姿が一つ、ぽつんと立っていた。
椛「はぁー……」
小傘「やや、あんな所に人が……」
千里眼で小傘を発見した椛は、わざとらしく溜息を吐く。
その気配に気付いて小傘が近寄ると、目線を逸らしたまま大きな声で呟く。
椛「あぁー、傘があれば山まで戻れるんですがー(棒)」
あまりに棒読みな台詞だったが、大雨の中に佇む人影が傘を欲していると知れば、黙っていられなかった。
小傘「そういう事なら是非!どうぞ!何卒!この傘の中に!」
椛「……そんな茄子みたいな色の傘に入る人は居ないと思いますよ(棒)」
小傘「ごふっ!……さ、さでずむ……」
そう、この椛こそが文の策略、先行する小傘を惹きつけ、心を折るための罠だったのだ。
椛「そんな不恰好な傘を差すぐらいなら、濡れて帰りますよ(棒)」
小傘「う……うぅ……うわぁぁぁぁぁんっ!」
滝のような雨の中を、大粒の涙を流しながらダッシュで逃げて行く小傘。
椛「あっ!わ、私のミスじゃないですよね……?」
そしてコースから一段高い路肩に居る椛は、小傘の走り去った先、
坂の上方から、圧倒的な量の水が流れて来るのを見る。
大雨の中で小傘が流した涙は、大粒の涙雨となってその水量をゲリラ台風級に増したのだ。
椛「このコースって、全体的にこんな形だから……」
己をここに配置させた文の行く末を案じつつも、特に何ができるでもなかったので、
椛は大人しく雨宿りを続ける事にした。
文「ふっふっふ、そろそろ椛が私の策を完成させる頃!そうすればあの化け傘も……
あやや?これは何の音でしょう?」
先方での経緯を知らない文は、洪水のように押し寄せる水に一瞬にして飲まれた。
文「ごぼごぼ……ぷはぁっ!こ、これは雨……涙雨!?つまり策士溺れるって事ですかー!?」
あやや?これは何の音でしょう?」
先方での経緯を知らない文は、洪水のように押し寄せる水に一瞬にして飲まれた。
文「ごぼごぼ……ぷはぁっ!こ、これは雨……涙雨!?つまり策士溺れるって事ですかー!?」
小傘「うぅ……ひっく……」
慧音「あー……泣いている所をすまないが、ご覧の通り傘が無い。里まで送ってもらえないか?」
小傘「……こんな、茄子みたいな色……みんな嫌だって……」
慧音「そんな事はない。歴史を紐解けば、この紫の色は高貴な色、選び抜かれた色だぞ」
小傘「本当に……?」
慧音「ああ、本当だとも。だからもう泣くんじゃない」
小傘「うん……ありがとう」
慧音「それはこっちの台詞だ。では頼むぞ」
慧音「あー……泣いている所をすまないが、ご覧の通り傘が無い。里まで送ってもらえないか?」
小傘「……こんな、茄子みたいな色……みんな嫌だって……」
慧音「そんな事はない。歴史を紐解けば、この紫の色は高貴な色、選び抜かれた色だぞ」
小傘「本当に……?」
慧音「ああ、本当だとも。だからもう泣くんじゃない」
小傘「うん……ありがとう」
慧音「それはこっちの台詞だ。では頼むぞ」
結果:文が文字通り策に溺れてしまったため、小傘の勝利。