紅い月の夜に急遽開催された東方ファイト。
会場となる紅魔館の敷地前には三人の選手が集められ、目の前の光景に圧倒されていた。
閃光。爆発。その度に築かれる瓦礫の山。フランドール・スカーレットが紅い月を見て興奮し暴れているのだ。
会場となる紅魔館の敷地前には三人の選手が集められ、目の前の光景に圧倒されていた。
閃光。爆発。その度に築かれる瓦礫の山。フランドール・スカーレットが紅い月を見て興奮し暴れているのだ。
「骨の折れそうな相手ね。せっかくこんなに可愛い服を着てるのに……」
「私はこんなふりふりした奴は嫌いだ」
「私はこんなふりふりした奴は嫌いだ」
蓬莱人二人の恐怖心は薄かった。輝夜など自分の着ていたメイド服の心配をするくらいの余裕があったのだ。
輝夜は対戦相手で、自分の部下でもある鈴仙を見やる。
ふりふりのメイド服とは対照的に、まるでフリッツのような軍服姿に身を包む鈴仙。逃げ腰だったが、狙撃銃を持って耐えていた。
輝夜は対戦相手で、自分の部下でもある鈴仙を見やる。
ふりふりのメイド服とは対照的に、まるでフリッツのような軍服姿に身を包む鈴仙。逃げ腰だったが、狙撃銃を持って耐えていた。
ファイト開始の号令が出た。まず最初に飛び出したのは、意外にも鈴仙だった。
以前のファイトで使用された狙撃銃の薬室に弾薬を装填する。実は、鈴仙はファイト前に永琳から特製の弾丸を託されていた。
それは弾の形をした薬だった。撃ち込むことで生物に精神的な充足感を与える代物である。
以前のファイトで使用された狙撃銃の薬室に弾薬を装填する。実は、鈴仙はファイト前に永琳から特製の弾丸を託されていた。
それは弾の形をした薬だった。撃ち込むことで生物に精神的な充足感を与える代物である。
レティクルの中心に小さな吸血鬼の影が重なる。呼吸を落ち着かせ、横風の影響を考える。
過去の訓練と経験を踏まえ、鈴仙はレティクルの中心から影をずらし偏差を修正して引き金に指をかけた。
過去の訓練と経験を踏まえ、鈴仙はレティクルの中心から影をずらし偏差を修正して引き金に指をかけた。
「暗夜に霜が降る如く――……」
静かに引き金を絞る。綺麗な弾道を描いて飛翔する弾丸は、小さな目標に命中した。
だが、命中したのは体の末端部。効果は薄かった。フランドールは笑って射手の方向に炎の剣を翳し、薙いだ。
しかし、炎の剣が鈴仙へ到達する寸前に別の炎がそれを遮って打ち消した。妹紅の操る炎だった。
だが、命中したのは体の末端部。効果は薄かった。フランドールは笑って射手の方向に炎の剣を翳し、薙いだ。
しかし、炎の剣が鈴仙へ到達する寸前に別の炎がそれを遮って打ち消した。妹紅の操る炎だった。
「こっちのことも忘れてもらっちゃ困る! お嬢ちゃん、気が済むまで遊んでやるよ!」
「紅魔館が駄目になるかならないかなのよ、妹紅にだけいい格好はさせないわ!」
「紅魔館が駄目になるかならないかなのよ、妹紅にだけいい格好はさせないわ!」
不死身の蓬莱人が相手では、悪魔の妹といえども一筋縄ではいかない。
奇妙な光景だった。これは対決だったはずなのに、密かな共同戦線が張られているのだ。
奇妙な光景だった。これは対決だったはずなのに、密かな共同戦線が張られているのだ。
それから数刻後、体力的に限界を迎えた鈴仙が倒れた。
蓬莱人二人はメイド服がぼろぼろになりながらも戦い続け、やがて死闘の末に金閣寺の天板をぶつけられたフランドールは、満ち足りた笑顔で墜落した。
墜落地点へ様子を見にいくと、フランドールは満足したように安らかな寝息を立てていた。
蓬莱人二人はメイド服がぼろぼろになりながらも戦い続け、やがて死闘の末に金閣寺の天板をぶつけられたフランドールは、満ち足りた笑顔で墜落した。
墜落地点へ様子を見にいくと、フランドールは満足したように安らかな寝息を立てていた。
「や……やったわ……!」
「まったく、何回リザレクションしたことやら……って、なに抱きついてるんだ! 輝夜!」
「……え? な、なに抱きついてきてんのよ! 妹紅!」
「それはこっちの台詞だ!」
「まったく、何回リザレクションしたことやら……って、なに抱きついてるんだ! 輝夜!」
「……え? な、なに抱きついてきてんのよ! 妹紅!」
「それはこっちの台詞だ!」
崩壊した紅魔館の中心で、輝夜と妹紅は達成感と喜びの余り抱き合ったが、すぐに喧嘩別れした。
結果:輝夜と妹紅の勝利
「ご苦労様、ウドンゲ」
「あ、師匠……。すみません、せっかく師匠から弾丸を託されたのに」
「元々貴方の勝ち目はほとんど無かったわ。あれなら善戦したほうよ」
「……勝ち目がないと知っていて、なぜ師匠は私にあの弾丸を託したんですか?」
「私の弾丸が無ければ、貴方の勝機は皆無だった。全く可能性が存在しないのと、僅かでも存在するのとでは大違い。
それに、そちらのほうが姫も楽しめると踏んだのよ。競うライバルがいないと、ファイトはつまらないわ」
「輝夜様のためですか……師匠らしいです」
「ちゃんと貴方のことも考えていたのよ。まぁ今日はゆっくりと休みなさい」
「あ、師匠……。すみません、せっかく師匠から弾丸を託されたのに」
「元々貴方の勝ち目はほとんど無かったわ。あれなら善戦したほうよ」
「……勝ち目がないと知っていて、なぜ師匠は私にあの弾丸を託したんですか?」
「私の弾丸が無ければ、貴方の勝機は皆無だった。全く可能性が存在しないのと、僅かでも存在するのとでは大違い。
それに、そちらのほうが姫も楽しめると踏んだのよ。競うライバルがいないと、ファイトはつまらないわ」
「輝夜様のためですか……師匠らしいです」
「ちゃんと貴方のことも考えていたのよ。まぁ今日はゆっくりと休みなさい」
※なお、崩壊した紅魔館は咲夜さんが一晩で再建してくれました。