【名称】空腹~江戸時代の文献より~
【発生年月】遥か昔のこと
【性別】記録などない。
【容姿】「あれは大きな口だったんだ。きっと。始めはただの空洞が…虚無が。その中に骨が、体があって…○○の体だ、頭と離れて…何故だ?何故…○○、あれ程__」
生きた証人からの証言は望めない。全ては過去の文献による…歴史上の幾つかの時代の文献に散見されるそれの描写はそれぞれ異なる。曰く、猫であり、子供であり、虚無である。全ての文献に共通することは“ただ大きな、大きなそれは寂れた道を行く。何時も訴えるように腹の鳴る音が聞こえる…それを聞きとった貴方はもうそれから逃れられない。”と。描かれる容姿も全てまちまちだ、猫であり子供であり虚無である。それを捉えた唯一のポラロイド写真に拠ると、道征き彷徨うそれはやはり口であった。周りの風景から推測されるに、縦の長さは4mほどだろうか。虚無を内包したその口の中には、何重にも生える様々な形の歯と…そして骸。食べた食事の残り物。顔だったろう場所はその殆どが口に占領され、 残った部位は耳に鼻…それに目はない。薄い皮膚に覆われてしまったその2つの器官で、それは今日も食事を探す。その頭部のおまけのような体は言うなれば骨と皮。お腹と背中が文字通りくっつきそうな程痩せ細った体は人間のそれに何処か似ている…よくよく見れば、頭部も。皮膚は全て墨のように黒く、動きも半ば四足歩行なのだがね。__ポラロイド写真を撮った人物?勿論、彼の口の中さ。
【概要】それはただ食事をする怪異である。生きているなら、人間から草木、怪異までも。その口に取り込まれた可哀想な貴方は、まず幾重にも重なる歯でしっかりと咀嚼され…食べるときはちゃんと噛めと、昔から言うからな…そして、それだけである。貴方がそれの胃袋に収まることは決してない…あり得ない。口は暴走を始めた。折角いただいた大切な食事を胃袋に送ることもしない。口は自らでそれを吸収する…口腔の壁から食事を頭部に取り込む。しかし胃袋は待っている。何時か我が身にくるものの素晴らしい味を、何時までも待っている…もう、食事の感覚も忘れてしまったけれど。
【かつての意志】それは地に伏せ最早動くことすら叶わない少年の願いだった。お腹いっぱい食べたいな。もう食べられないと思うくらい、いっぱい。それは外壁にもたれ掛かる無気力な少女の願いでもあった。お腹が空いたなんて思わなくていいようになりたいな。今し方暇を出された身寄りの無い女、飼い主の死んだ犬、贄の赤子の願いでも。お腹が空いていては人は幸せになれないでしょう?それは怪異も同じだったんだよ。なんだ、僕達はこんな姿になってもまだ、まだ__満たされない。胃袋に何かが届く気もしない。僕達の胃袋はあの時からずっと空だよ。こんなに食べているのに。早くお腹いっぱいにならなくちゃ、早く早く。そうしなければ、皆で幸せになろうね?…いただきます。
【現在の意志】意志などという高尚なものは最早無い。
【発生年月】遥か昔のこと
【性別】記録などない。
【容姿】「あれは大きな口だったんだ。きっと。始めはただの空洞が…虚無が。その中に骨が、体があって…○○の体だ、頭と離れて…何故だ?何故…○○、あれ程__」
生きた証人からの証言は望めない。全ては過去の文献による…歴史上の幾つかの時代の文献に散見されるそれの描写はそれぞれ異なる。曰く、猫であり、子供であり、虚無である。全ての文献に共通することは“ただ大きな、大きなそれは寂れた道を行く。何時も訴えるように腹の鳴る音が聞こえる…それを聞きとった貴方はもうそれから逃れられない。”と。描かれる容姿も全てまちまちだ、猫であり子供であり虚無である。それを捉えた唯一のポラロイド写真に拠ると、道征き彷徨うそれはやはり口であった。周りの風景から推測されるに、縦の長さは4mほどだろうか。虚無を内包したその口の中には、何重にも生える様々な形の歯と…そして骸。食べた食事の残り物。顔だったろう場所はその殆どが口に占領され、 残った部位は耳に鼻…それに目はない。薄い皮膚に覆われてしまったその2つの器官で、それは今日も食事を探す。その頭部のおまけのような体は言うなれば骨と皮。お腹と背中が文字通りくっつきそうな程痩せ細った体は人間のそれに何処か似ている…よくよく見れば、頭部も。皮膚は全て墨のように黒く、動きも半ば四足歩行なのだがね。__ポラロイド写真を撮った人物?勿論、彼の口の中さ。
【概要】それはただ食事をする怪異である。生きているなら、人間から草木、怪異までも。その口に取り込まれた可哀想な貴方は、まず幾重にも重なる歯でしっかりと咀嚼され…食べるときはちゃんと噛めと、昔から言うからな…そして、それだけである。貴方がそれの胃袋に収まることは決してない…あり得ない。口は暴走を始めた。折角いただいた大切な食事を胃袋に送ることもしない。口は自らでそれを吸収する…口腔の壁から食事を頭部に取り込む。しかし胃袋は待っている。何時か我が身にくるものの素晴らしい味を、何時までも待っている…もう、食事の感覚も忘れてしまったけれど。
【かつての意志】それは地に伏せ最早動くことすら叶わない少年の願いだった。お腹いっぱい食べたいな。もう食べられないと思うくらい、いっぱい。それは外壁にもたれ掛かる無気力な少女の願いでもあった。お腹が空いたなんて思わなくていいようになりたいな。今し方暇を出された身寄りの無い女、飼い主の死んだ犬、贄の赤子の願いでも。お腹が空いていては人は幸せになれないでしょう?それは怪異も同じだったんだよ。なんだ、僕達はこんな姿になってもまだ、まだ__満たされない。胃袋に何かが届く気もしない。僕達の胃袋はあの時からずっと空だよ。こんなに食べているのに。早くお腹いっぱいにならなくちゃ、早く早く。そうしなければ、皆で幸せになろうね?…いただきます。
【現在の意志】意志などという高尚なものは最早無い。