GSK 最高経営責任者 (2009) ◆27ZYfcW1SM
紫と行動をともにして数時間……
こんなに女性…いや、霊夢や魔理沙だって一緒にいたことは無いな。
思考をして行動できる僕たちは時とともに縁を育てる。
縁(えん)は縁(ゆかり)とも読むことができる。
同じ読みの名前を持つ紫とゲーム開始早々出会えたことは必然と考えるべきか……
ならば紫に契約をつかまされたことも必然。
紫と行動して得られたものは散弾銃SPAS12と自分の身の安全性、そして一番は
先ほども述べたが『思考をして行動できる僕たちは時とともに縁を育てる』
縁だ。
気が付けば『何を考えているか分からないから苦手』という紫を嫌う理由が薄れていることに気が付いた。
長い時間を一緒にすごすことでお互いのことを知っていく。商売人としては縁はとてもいいものだ。
商品を安値で仕入れることができるし、自分の経営が窮地に立たされたときは手助けになってくれる。
縁はすばらしい。
でも今の紫との縁は商売人が築く縁とは違うような……
生まれた疑問、すべてが断言できないこれは正しい選択だったのかと悩みを生む。
疑問の種は加速する。
メディスン・メランコリーだったか……
彼女の攻撃を受け、不意を突かれたといっても、それを上回る勢いで紫は明らかに劣勢だった。
大妖怪である紫が幻想郷縁起によると妖怪として生まれたばかりのメディスン・メランコリーに劣勢とは笑える冗談ではない。
なぜなら僕は彼女に戦闘を代わってもらう契約をしているのだ。
契約を結んだときの自分の生命を守る条件の1つを崩されたのだったら怒るか絶望するのが一般的な反応だろう。
実際、絶望感はあった。もっと悪になれる気持ちがあったならSPAS12を紫から奪って一人で行動していたのかもしれない。
それほどの酷い縁を切りかねない失望感。向こうが契約違反を犯したのだから僕が契約を破棄しても罪悪感は無い。
自分は物事の判断基準が甘いと自覚はしている。
魔理沙や霊夢の帰ってくる当ての無いツケだって受けているし、売れば赤字になるのが目に見えている値段で商品を売ったり……。
商人として最低、客になめられない程度には接しているが、厳密な守銭奴店主よりはだいぶやわらかいと思う。
それを踏まえて、蝋燭の灯りで本を読んでいた頃の自分に問う。
帰ってきた答えは紫は信用ならないという答え。
まぁ、当然だろう。
約束ごとは商人として守られて当然のこと。信頼あっての物売りだ。
だけど僕と紫は未だに一緒に行動をし、さらには紫から行動主権さえ奪っていない。
長い間一緒にすごしたといっても、一日もたってはいない。
縁が育つにはまだまだ時間がかかるはずだ。
結論から言えば、縁以外の何かの気持ちが紫と僕を一緒にいさせているのだ。
その気持ちが分かれば『なぜ紫と一緒にいる? なぜ紫と契約を結んだことに疑問を持つか?』の答えを見つけ出せるというのに……
そういえば、紫のことだ。
相変わらず負傷した手を隠すように永遠亭への道を進んでいる紫と僕。
完全には隠すことはできるはずもなく、ちらちらとただれた手が見えるのだけれど……
普段隙間とか言う空間の裂け目に座るようにして浮遊している紫はずいぶんと大きな存在に見えた。
しかし、能力を思うように行使することができず、当然隙間を出すことはできない。
仕方なく紫は自身の足で歩いている。
そこで気が付いた。紫の肩は僕よりもだいぶ低いところにあるのだ。
普段とは違い、見慣れない景色に紫を思わず凝視してしまう。
視線に気が付いたのか紫はこっちをちらりと見たが、すまなそうにすぐに視線をそらした。
見える紫の行動すべてがハリボテで作った城のように見える。
別にたとえるなら砂漠の中の蜃気楼だ。近づいてしまったら消えてしまう。
あの事件があったからだ。大妖怪の『カリスマ』が霞んで見える。
仮面は大妖怪は幻想郷の管理者であり、いかなる兵も退ける賢者。
だが、その仮面を取った姿は人間基準で十代後半から二十代半ばあたりの女性と言うわけなのか……
「紫」
「なにかしら?」
「君は契約で僕に銃をくれた。力をくれたわけだ」
紫は僕の意図がつかめず、首をわずかにかしげた。
「次戦うことがあったなら、僕は……この力を使う。引き金を引くことにする」
「それって…?」
「勘違いしないでくれ。僕が『誰に向けて引き金を引く』とは言っていない」
紫の表情が青ざめたような気がした。
「僕はただ、今までのように、たまに客が来る程度の店を営業し続けたいだけだ。
だけど、それは僕が手を下さなくても得られる未来じゃない。
僕を殺そうと襲ってくる奴らはいるからね。逃げても襲われる」
「そこでだ、僕は選ぶ。
自分の正しいと思った道以外は僕はこいつで撃ち落とす。
その射線上に君がいた場合も撃つ。殺し合いに乗るわけじゃない。自分の意思で殺すんだ。
君を殺したらいけないと契約にはないだろう?
だけど、
もし君が僕と同じ道を進み、背中を押してくれるなら、見てくれるだけでもいい。
それなら僕は道を切り開いてやるさ」
紫は顔を俯いた。
そして何かを決めたのか顔を上げる。
「私は貴方の背中を押したり、見つめたりするつもりはないわ。
私は貴方の背中を守るわ。そして私も背中を預ける」
なっと僕は声を漏らした。
「背中を預けることはいつでも後ろから撃てる意よ」
「……背中合わせのスタイルか」
「そう、見ている方向は違えど、進む道は一緒。
貴方が失敗しない。私ももう失敗はしない。それなら無敵の陣よ」
「分かった。契約は続行。まだ君といられてうれしいよ」
紫の顔色はわずかに明るくなった。
「私もうれしいわ。こんな怖いところに一人なんて考えただけで寒気がしますもの」
「たいした冗談だ」
僕の守る背中はもはや大きなものではない。
僕の背中の影にすっぽり隠れてしまうほどの一人の女性の背中だ。
SPAS12のスライドを引いた。
まだ薬室に一発も弾が入ってなかったのだ。
先ほど撃とうと思って引き金を引いても弾は出るはずも無かった。
しかし今は違う。薬室にしっかりと12ゲージのバードショットがつめられた。
物語のプロローグは終わりを告げ、僕の物語の第一章はここから始まるのだ。
そうだな……第一章のサブタイトルは……
【D-7 一日目 午前】
【森近霖之助】
[状態]正常
[装備]SPAS12 装弾数(7/8)バードショット・バックショットの順に交互に入れてある
文々。新聞
[道具]支給品一式(筆記具抜き)、バードショット(8発)、バックショット(9発)
色々な煙草(12箱)、ライター、箱に詰められた色々な酒(29本)、手帳
[思考・状況]基本方針:契約とコンピューターのため、紫についていく。
[備考]この異変自体について何か思うことがあるようです。
【八雲紫】
[状態]正常
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム(0~2)武器は無かったと思われる、酒1本
[思考・状況]基本方針:主催者をスキマ送りにして契約を果たす。
1.永遠亭に向かう。同時に治療するものを探す
2.自分は大妖怪であり続けなければならないと感じている
[備考]主催者に何かを感じているようです。
※手が爛れています。痺れがある。多少回復し、軽いもの程度なら握れる
最終更新:2009年11月02日 15:26