繋がる夢、想い、そして―― ◆CxB4Q1Bk8I
人里の外れ。
左右に木造の建物が雑然と立ち並ぶ静かな道を、小さな鬼を背負い歩くは秋の神。
金に輝く髪に紅葉の髪飾り。
血とは違う、美しい紅色の服。
顔は大きな悲しみと、小さな決意に満ちている。
その後を、不安げにきょろきょろしながら付いていくのは金髪の妖精。
時折吹く冬の風は、寂しさよりも孤独で、終焉よりも濃い死の香り――
秋静葉は、立ち止まって大きく息を吐いた。
先ほどまでに、続けざまに銃声を聞いていた。
この小さな人の里で、誰かが誰かを傷つけようとしている。
無視できるはずも無い。だって、そんなこと、罪も無い誰かが傷つけられること、許されては駄目だって思う。
これは、当然の気持ちだ。静葉はそう思っている。
でも、静葉は鬼を背負い、妖精を連れて、銃声と逆の方角へ。
北西の里の外れへ向かい、歩いている。
ルナチャイルドが不安げな目で静葉を見た。
大丈夫よ、と目で合図すると再び歩き出す。
きっと、この小さな妖精も、私と同じように不安で一杯なんだろうと、思った。
幾度と銃声が聞こえても、静葉の行動は何も変わらなかった。
普段の静葉なら怯えて震えているだろうし、もし美鈴ならば、誰かを助けにいくかもしれない。
それでも、今、背中にある一つの命こそが、静葉にとって手の届く唯一の暖かさだったから。
美鈴が救い、静葉がそれを受け継いだ。
どうしても、この命だけは、守らなければならないと、それだけを思っていた。
すぐに治療が出来れば一番良かったのだけど、銃声から遠ざける事を優先させたのだ。
美鈴さんが魂を込めたのだから、きっとこの鬼さんは大丈夫。
だから、自分がそれを守らないと。
穣子は、人里で死んだと、聞いていた。
探したい。会いたい。そんな気持ちだって、強く持っている。
でも、今私に手の届く命は、この背中にある。
落ち葉を拾うよりも、紅葉を見守る方が、穣子だって好きだった。
だから穣子、もうちょっと待っててね。
安全なところまで行って、手当てして、鬼さんがちゃんと動けるようになったら。
叶うなら、会いに行くから。
守りたい、そんな気持ちは、一人では持てなかっただろう。
美鈴さんが、その命を懸けて、私に教えてくれたのかもしれない。
でも。
誰かのために死んでもかまわないとか、そんなのは、悲しすぎる。
だから、精一杯、自分のできることで、誰かを守れればいいんだと思う。
美鈴さんは、格好良かった。自分のできることを、凄く大きく持っていて。
私と会って、赤の他人なのに、私をずっと守ろうとしてくれた。
私はその間、不安に押し潰されそうで、泣いてばかりだったのに。
私も、あんなふうになれるのかな。
「ねぇ、大丈夫?」
不意に、ルナチャイルドが問いかけてきた。
大丈夫じゃないように見えたのかしら、とちょっと考える。
確かに、背中の鬼は小柄だけれど、元々静葉も筋力のある神ではない。
背負って歩くのは、決して楽なことではなかった。
「大丈夫よ、少し疲れたけど」
そう言って微笑む。
少しは明るく見えたかな? ちょっと、穣子っぽく、笑ってみた。
いつも、穣子に笑われるような、寂しそうな顔じゃ、この子を不安にさせると思ったから。
「なら、いいけど。うーん、ちょっと怖かったからねっ」
ルナチャイルドは、邪気なく真意を口にした。
「怖かった?」
「うん。なんか、凄く怖い顔してた」
…そうだよね。わかってる。
こうやって託されたから、目の前のことだけを見てるから、誤魔化してるけど。
穣子が死んだって聞いて、美鈴さんがいなくなって。
泣かないって決めたのを破ってしまって。
涙は枯れるほど泣いたけど、悲しみは全然消えてないから。
「ごめんね」
穣子。美鈴さん。
「あっ、謝ることなんてないよっ」
ルナチャイルドはわたわたと手を振る。
それを見て、少しだけ、ふふっと微笑んだ。
今はこれで精一杯だけど。
自分に与えられた事、悲しいこと、全部終わって、それから、また、笑えたらいいな。
「あっ、ねぇ、あそこで休めそうだよ」
ルナチャイルドが嬉しそうに言った。
静葉が顔を上げると、横切る広い道の向こうに、少し大きめの民家があった。
見たところ人の動きは無さそうだし、裕福そうだから薬の類も置いてあるかもしれない。
歩き続けた疲労はある。これ以上外に居るのも厳しいだろう。
先ほどの銃声からも、悲劇の現場からも、可能な限り離れた筈だ。
「そうね、あそこで、鬼さんの手当てしようかな」
ルナチャイルドに話しかけ、よっと鬼を負ぶさりなおす。
「うんっ。あ、私、見てくるねっ」
ルナチャイルドが走って行く。
「気をつけてね」
それを、一抹すらも、不安を感じぬままに送り出した。
失いすぎて、枯れてしまった心が、余りに初歩的な危険を察知出来なかった。
死角となっていた納屋を過ぎ、十字に走る里の道にその姿を出して――
「あはははははははっ、見つけたッ!」
響く笑い声。唸る機関銃の発射音。無機質に死に追いやる狂気の音。
ルナチャイルドの小さな身体が、踊るように跳ねた。
真赤な何かが、里の道を紅葉のように染める。
秋よりもっと濃厚に、鈍い死の色に。
身体を撃ち抜かれたルナチャイルドの悲鳴が、静葉の心的恐怖を想起させる。
またも、自分と連れ立った仲間を、目の前で失ってしまうかもしれない。
否定しなければ折れてしまいそうな現実に、心が先走った。
「ルナチャイルドっ!」
背中の鬼を背負ったまま、傷つき倒れて呻く妖精の元へと走る。
納屋の死角から道に飛び出すも、何故か次の攻撃は続いてこない。
その不可解な時間的余裕の間に、静葉はルナチャイルドの元へと駆け寄った。
「やったぁ!今度こそっ、ちゃんとやったよ!」
無邪気で残酷に笑う少女が一人。
古明地こいし。
東から歩いてきた壊れた人形は、南から来た妖精が北へと横切るその姿を偶然その視界に捉えたのだ。
その手に巨大な武器を抱えて。傷だらけの身体を抱えて。
亡霊に撃抜かれた足は、白い布で乱暴にぐるぐると巻かれていた。
既にそれは紅く染まっているが、全く気に留めている様子も無い。
自分の身体が送る情報なんて、必要ない。
意識を閉ざしてしまえば、痛みなど中身の無い信号に過ぎない。
ただ衝動の命ずるままに動いてくれるのならば、何一つ問題など無かった。
大切なのは、アリスとの約束。こいしにはそれだけだった。
「あははっ、あはははははっ!」
こいしは、虚空に笑いかける。
ルナチャイルドの元へ走っていった静葉も、高揚した気持ちの中で目に入らない。
ただ今自分が一人、他者を破壊したという気持ちの昂ぶりを見えぬ何かに誇っていた。
「痛いっ…痛いよ…」
ルナチャイルドの身体は、見ただけでも絶望的なのではないかと静葉に思わせる状態だった。
気絶して無いだけ奇跡なのではないか。いや、何故残酷にも意識を繋ぎとめてしまっているのかと。
右腕は既に機関銃の豪力により、その身体に辛うじて繋がってる以外は原形を留めていない。
それ以外の傷は、相手の照準が悪かったのか、一つ一つは致命傷には至らず傷も多くない。
しかし撃ち込まれた弾丸は確実に妖精の命を傷つけている。
この小さな身体の、どこにこんなに血が流れていたのかと、静葉に思わせるほどに。
土を鈍赤に染める流血は、止まる気配を見せない。
右腕、右脇腹、左足…目を逸らしたくなるような姿だ。
それでも、生かしたい。死なないで、と心から願う。
「しっかりしてっ!すぐ手当てっ…」
「あははっ、まだいたぁっ!」
こいしが、ようやく静葉の存在に気付く。
珍しいものを見つけた子供のように、嬉々とした声で叫んだ。
静葉もまた、叫び声を受け正気に戻り、狙撃手が自分に気付いたことを知る。
こいしは手に持った機関銃を再度構える。
静葉は慌てて片腕でルナチャイルドを抱え、一心不乱に正面の民家の玄関へと飛び込んだ。
静葉に遅れることごく僅か、機関銃の銃弾が壁を掠め、その壁を抉っていく。
飛ばされる木片の勢いが、それが身体に当たれば即ち死に直結することを物語る。
「あはははっ!違うよ? かくれんぼじゃなくて殺し合いだよっ!」
まるで、命の大切さも知らぬ少年が、虫を追い回して叩き潰すのを楽しんでいるかのような、無邪気で壊れた笑い声がした。
民家の入り口の壁を背に、静葉は二三度強く深呼吸する。
どうしよう。
自分が、今、判断しなくてはいけない。最善を考えなくてはならない。
落ち着かないと、落ち着かないと。
腕の中には、荒く息をする重傷の妖精。
横には、背中から下ろした、未だ意識の復調を感じない小さな鬼。
このままでは、全員があの武器の餌食だ。
だから、逃げなければ、いけない。
でも、どこに?
あの少女との距離を考えれば、追われないように逃げるのは不可能だ。
ルナチャイルドと鬼を抱え、非力な自分が逃げ切れるとは思えない。
隠れるという選択肢も、同じ理由で危険すぎる。
自分だけ逃げる、そんな思考は浮かぶことすら無かった。
絶望的な思考が静葉を襲う。
外からは、土を踏みしめる音が恐怖を運んでくる。
歩くようなスピードだけれど、確実に相手がこちらに近づいて来ている。
この二人を、守らなきゃいけない。
美鈴さんがそうだったように。
もしかしたら穣子がそうだったように。
でもどうしたらいい?
万に一つだって、勝ち目は無いかもしれない。
あちらは強力な遠距離武器を持っている。
対してこちらは不気味な洋剣一本だ。
それでも、やるしか、ない。あのときの、美鈴さんのように。
私は美鈴さんのような勇気は無い。
今も、怖さで泣き出してしまいそう。
でも、今、私の後ろには、守りたい命がある。
そのためになら武器を持てるって、思える。戦えるって、思える。
妖精を下ろして寝かせると、フランベルジェを握り締める。
きっと及び腰に弱々しい眼、とても戦えるような姿には見えないのかもしれないけれど。
「ルナ、ここで待ってて。すぐ戻るから!我慢してて!」
「わ、私、だいじょう、ぶ、だよ… だから、ぜっ、たい、帰ってきて…」
それでも、守りたい意志だけは、強く持っているから。
静葉は民家の中から、少しだけ外を見た。
攻撃してきた少女は、納屋から10メートル先のところまで、距離を詰めていた。
こいしの手の武器は、先ほどまでの機関銃から、小さな拳銃に代わっていた。
穴に追い詰めた鼠を狩るのに、ダイナマイトなど必要ない。
腕を伸ばしてその身を掴み、爪で身体を切り裂き、牙を首元に突き立てるだけの話なのだから。
静葉にとっては、絶望的な攻撃を一方的に受けないだけ、状況は良くなったと言えるかもしれない。
窮鼠が猫を噛むとしたら、慢心した相手の油断を付けばいい。
静葉は相手の注意を自分に引きつけるように、姿を敵の前に晒す。
フランベルジェを構え、キッとこいしを睨みつける。
「アハハハハハッ」
こいしは足を止めると、高らかに笑った。
「そんな剣じゃ私は殺せないよ、先に私が殺しちゃうから!」
「ま、待って!私の、話を聞いてくださいっ!」
静葉は叫んだ。今出せる全力の声で叫んだ。
聞こえている筈なのに、こいしは、表情を変えない。凍りついたような不気味な笑顔を、崩さない。
「私たちは、戦いたくないんです! 殺し合いなんて、駄目ですっ…! だから、やめましょう…!」
甘えかもしれない。無理だって自分でもどこかでわかっている。
それでも、自分の死も、他人の死も、辛いことだって知っているから。
戦うことが、今、何も生み出さないことを知っているから。
「私達は貴女を傷つけませんっ…! だから…!」
「駄目、だよ。約束だもん」
それでも心の叫びは、まるで相手の心に響かなかった。
他人の声など、何の意味も持たぬ雑音でしかないのだと。
こいしの口の端が、大きく歪んだ。
無邪気で不気味な笑顔が、ただ殺意の具現と化す。
戦うしか、無い。
引けない。
そう思った。
だから。
フランベルジェを、ぎゅっと握り締めて。
全ての恐怖を飲み込んで、全ての勇気を振り絞って、守るために戦うことを選んだ。
「葉符『狂いの落葉』!」
相手が動き出す前に、先手を取って鮮やかな紅葉の弾幕を散らし、敵との間に視界を遮る幕を生成する。
相手の遠距離武器の精度を可能な限り落とすことが第一の目的。
第二に、予想以上に効果がありそうならば、これを盾に二人を連れてここから逃走を計るため。
しかし、第一はまだしも、第二の目的を達することは不可能だと、すぐに考えを改めざるを得なかった。
こいしは、広範囲の弾幕の隙間を縫うように、軽やかに静葉に近づいてくる。
それを身体に喰らうことなど恐れていないかのように。
走るよりは足止めが出来ているものの、逃走するには余裕がなさ過ぎる。
それに、弾幕を放つだけで、力の消費を感じるほど、自分達にかかっている制限は大きいもののようだ。
洋剣は手に持ったままだが、出来れば使いたくなかった。
だが、それ以外に武器は無い。
それ故に、消耗してでも弾幕を休み無く生成し続けて相手の隙を付くしかない。
静葉の放った幾度目かの弾幕の間を縫い、こいしは拳銃を放ってきた。
それは大きく逸れて遠くの民家の屋根に突き刺さるが、静葉がそちらに気を取られた隙にこいしは弾幕を広げる。
「本能『イドの解放』」
こいしを中心に、広範囲にハート型の弾幕が撒かれる。
静葉は辛うじて第一波を回避するものの、すぐに違和感に気付いた。
ハート型の弾幕が、こいしと静葉を囲うように広く円形に停滞したままだった。
「しまっ…!」
静葉を逃がすまいと、その道を封じるように背後に弾幕が迫る。
それを避けながら攻撃出来るほどの判断力も反射神経も、静葉には無い。
必然的に、弾幕をかわしつつ常時動きながら、敵の拳銃に照準を合わせられないようにするのが精一杯だ。
しかし、相手に余裕を与えれば更に弾がばら撒かれてしまい、徐々に自分が追い詰められていくことに繋がる。
「あはははははっ」
気付けば、こいしの手中で踊っているだけのような錯覚に陥る。
追い詰められた穴ではなく、既に檻の中に囚われてしまっているような感覚。
まるで、勝ち目というものが見出せない。
このままでは、どうしようもない。
封じた考えを、再度表に出さざるを得ない。
手元の洋剣を強く握る。
二度と使いたくない。その気持ちは今も変わらない。
それでも、守りたいものをこの武器が守ってくれるのなら。
静葉は強く踏み込むと、弾幕の隙間を縫い、洋剣を構え大きく跳んで間合いを詰める。
静葉が全力で振るったフランベルジェが、こいしが払うように振った銀のナイフと、火花を散らした。
「――!」
遠距離武器だけでなく、やはり近距離用の武器も所持していた。
静葉が不得意とはいえ、まだ相手の実力が未知数だった近距離戦ならば勝ち目はあったかもしれないと考えたのだが、結果は同じだった。
二度、三度と続く剣戟は、手品のように左右に撫ぜるナイフに悉く跳ね返された。
漂っていたハート型の弾は消えていた。先ほどまで手にしていた拳銃は服を括った紐に引っ掛けている。
こいしは、今は右手左手に一本ずつ、銀のナイフを逆手に構えている。
妖なる者を封じるために聖なる刻印の刻まれた武器。
あまり手馴れているとは言えないが先の予測できないトリッキーな動き。
まるで「人形師が人形を操っているかのような」緻密なナイフ捌き。
お互いが慣れない武器とはいえ、根本の戦力差は、明白だった。
力の差。経験の差。そして――殺意の差。
どれをとっても、静葉に有利な点など見つからない。
それでも、相手が休む暇を与えてしまえば、間合いを離されて遠距離戦に持ち込まれるかもしれない。
そうなれば先ほどと同じだ。今以上に不利な状況に追い込まれかねない。
それに、ルナチャイルドの状態からして、時間をかける余裕は無い。
一刻も早く、手当てをしなくてはいけない。
早く相手を敗走させるか、行動不能に陥らせなくては。
焦りのような感情は、静葉の行動を誤らせるように膨れ上がる。
静葉は慣れぬ剣を振るう。既に幾度目かもわからない剣戟。
右から左へ、静葉の可能な限りの速さで振るった剣。
こいしは、それを同じような動作でナイフで払う――事無く、小さなバックステップでかわす。
不意に反発の重力が働かなかった静葉の足がたたらを踏む。
「きゃはははははっ」
狂ったような、しかし明確に自分の優位を意識した笑い声。
前のめりになった静葉は、思わず顔だけを右に振り返らせる。
そこには、こいしの勝ち誇った顔があった。
眼を見開いて、今から起こることを心から楽しみたいのだと、誰かに伝えるような笑顔。
それは随分とスローに、静葉の眼に映りこんだ。
「残念でしたっ」
楽しそうで、満足そうな声だった。
構えたナイフが、妖しくキラリと光った。
それは、静葉の首筋に今にも振り下ろされようとしていた。
「――あれっ?」
こいしの声が、静葉にも不思議とはっきり聞こえた直後。
こいしの表情が、ほんの少しだけ疑問を浮かべた。
本来なら、静葉の首を切り裂くはずだったナイフが、僅かにテンポが遅れ、静葉の右上腕を突き刺した。
「――ッ!」
思考が停止するほどの激痛が走り、手を離れたフランベルジェは遠く前方へ飛ばされた。
そのまま前に倒れこむ。思わず今刺されたばかりの右腕で、顔面からの地面への衝突を回避しようとする。
「ーーーーーーー!!!」
身体を支えようとした右腕に、言葉にならない激痛が二重三重に走る。
即座に左腕を代用して支えにし、地面との衝突は避ける。
ワンクッションの後に側面から倒れこみ、受身など取れずに身体を強くぶつけた。
「あは、あはははっ!」
何が可笑しいのか、こいしが狂ったように笑う。
倒れこんだままの静葉に、いつの間にかまた手にしていた拳銃を突きつけて。
「ねぇっ、妹いるでしょっ!」
どこか楽しそうに、話しかけた。
走る鋭い痛みの中でさえ、こいしの言葉が随分とはっきり聞こえる。
「妹、…どうして…?」
どうして、そんな事を聞くのだろう。
「さぁ?なんとなく。居そうな気がしたの」
まるで、何を考えているかわからない。
不気味に笑う少女を見つめ、ハッと一つの可能性に思い当たる。
もしかしたら、穣子のこと、知っているのかもしれない。
…もし、そうならば、何処で穣子の事を知ったのだろう。
どこかで会ったのだろうか。
鈴仙さんが言っていた、悲劇の場所に居たのかもしれない。
穣子へ繋がる僅かな糸を、自分のことも忘れて掴み取ろうと手を伸ばす。
しかし、静葉がそれを尋ねる前に、こいしは次の言葉を繋ぐ。
「…ねぇ、仲は良かったの?妹は好き?」
意図の読めない笑顔で、こいしは尋ねる。
何かを期待しているような。何かを欲しているような、そんな表情に思えた。
穣子の笑顔が、脳裏に浮かんで消えた。
同時に、楽しかった、平和だった過去が思い返される。
泣いて泣いて、その涙でも流せない、流すことなど出来ない思い出が。
静葉は、噛み締めるように返答する。
「…ええ。私達、とても…仲は良かっ」
次の瞬間、全く何の前触れも見せずに、こいしは引き金を引いた。
静葉の右脚を、弾丸が撃ち抜いた。
一瞬、何が起こったのかわからず、呆けてしまう。
直後、遅れて走った激痛に、静葉は思わず苦痛を叫んだ。
「あはははははっ!そう!よかったね!よかったねっ!」
全くの無意識の中で、本人すら気付かない憎しみの黒き衝動が、こいしを駆り立てた。
「よかったねっ! でも私と――
私と、アリスさんの絆には適わないかな!あははははっ!」
何も笑うことは無い。面白いことも、楽しいことも無い。
それでも、笑いが狂ったように出てくるのは。
何か心の奥に隠してしまった感情を、出て来させまいとする無意識が、壊れた心から溢れてくるから。
静葉は言葉を失った。
こいしはどこか壊れた笑いを今も続けている。
静葉は必死に立ち上がろうとするが、体中に力が入らない。
少しでも動かすたびに激痛が入る。
目を逸らしたかったが、今の静葉の右足からは、脈打つたびに血が溢れ出てくる。
こいしは、不意に笑い声を止めた。
「うん、アリスさん、わかってるよ。ちょっと遊んだだけ。大丈夫、任せて、私に」
再度、空に話しかける。今度は、空虚でないしっかりとした口調で、笑いの消えた表情で。
そして、静葉の方に向き直ると、流れるように拳銃を構え、引き金に指をかける。
それは決して正しい構えではないかもしれないが、それが引かれた瞬間に静葉は確実に命を失うだろう。
静葉は、その黒い銃口をぼんやりと目で追った。
それが自分を狙い、死の瞬間がすぐ近くまで来ていることを、痛みの中のぼんやりした思考の中で悟った。
……
こいしの動きが、ふと止まった。
静葉が申し訳程度の盾として顔を隠した左腕は、来る筈の銃撃を感知しなかった。
「駄目っ…やめ、ようよっ…」
こいしの脚に、満身創痍のルナチャイルドが抱き付いていた。
右腕はボロボロで、今も血が流れ出ている。それでも、左腕一本だけででも、その脚の動きを止めようと、必死で掴んでいる。
「ルナチャイルドっ…!」
「痛い、よ…。私も、このお姉ちゃんもっ…!あのお姉ちゃんだってっ…きっと、痛かった、よ…!
傷つくの、嫌だよ。死ぬの、嫌だよ…。殺すの、やめようよっ…!」
ここまで這ってでも来たのか、痛々しい流血の道が出来ている。
脚だってマトモに機能せず、動くことすら困難だったというのに、小さな妖精はここまで辿り着いたのだ。
「妖怪とか、人間とかっ、いっぱい、いるけど、いろいろ、あったけど…! でも、こんなのはっ、違うよっ…ちがっ…」
永き命を持つが故に、多くの種族から忘れかけられていた恐怖。
死は、ありとあらゆる生命にとって、存在するだけで戦慄を覚える、嫌悪の最たる対象。
それを、ルナチャイルドは、必死でこの少女に伝えようとしていた。
静葉は、止めなきゃいけないと思った。
今のこの相手には、言葉が伝わらない。それは自分が戦って話した中で、わかったことだから。
だからお願い――!早く、逃げて…
でも、それは、言葉にならない。
ルナチャイルドの必死の言葉だけが、響き渡る。
「殺すのっ…おかしい、よっ…!そんな、のっ…皆っ、死にたくなんか、ないのにっ…!
絶対っ…おかしいよっ…!」
こいしは、呆けたような表情を見せると、狂気すら感じない無感情な声で言った。
「おかしく、ないよ。アリスさんが言ったもん」
静葉を捉えていた銃口が向きを変え、
乾いた音と共に、無慈悲な弾丸が、ルナチャイルドの額を撃抜いた。
妖精は、小さな妖精は、勇気を振り絞って心を伝えようとした妖精は――
血に塗れて、死んだ。
動かない。
静葉の目の前で。
もう誰も失いたくないと思った静葉の前で。
心の悲鳴は、喉に引っかかって、声にならなかった。
酷使された涙腺が悲鳴を上げ、溢れる筈の涙の代わりに痛いくらいに目の奥が熱い。
「アリスさん。大丈夫、私は惑わされないから。ね、アリスさん」
こいしの呟くような声は、この世界のどこにも届かぬかのように、空で消えた。
あの声も届かないほどに、悲しい出来事に負けてしまったのだろうか。
誰かに守られたかもしれないその命を、繋ぐよりも悲しい使い方にしか使えない、
アリスという名の、呪いのような誓いに縛られて。
もし、美鈴さんが、最後に残した言葉が。
穣子が、最後に残した言葉が。
それを望んでしまったのなら。
私だって、わからない。
彼女がどんな経験をして来たのかわからない。
彼女にとって、それがどんなに重いことかなんか、わからない。
でも。
悲しいから。
そんなの、悲しすぎるから。
静葉は、弾幕ではなく、声を絞り出した。ルナチャイルドの気持ちを、そのまま捨てたくはなかった。
「ねぇっ…!奪っても、戻らないっ…。殺したって、何も得られないですよっ…!だから、もうっ…」
「駄目、だよ。アリスさんが望んだことだもん」
「お願いっ…!聞いてッ…!アリスって人が望んだことは、きっとこんな事じゃな…」
「五月蝿いッ!!」
目の前の狂気に染まった顔が、酷く醜く歪んだように見えた。
それは静葉という存在を、今すぐにでも消してしまいそうなほどの怒りに色を変えた。
「アリスさんを!アリスさんを!否定するなぁッ!!」
少女は、もう、聞いていなかった。
無邪気な少女でも、好奇心溢れる少女でもない。純粋な憎悪と殺意がその表情を包んだ。
アリスに囚われた心の錠は、幾重に掛けられた鍵は、それを開こうとするものを全て拒んだ。
それを奪わんとするものを、全て敵と看做した。
こいしは拳銃を構えた。会話も、躊躇いも、アリスとの約束に不要なものだった。
ああ、もう、死ぬのかな。
静葉は、自分へ向こうとする拳銃と、その向こうの怒り狂った表情を呆然と見つめながら、不思議と冷静に、そんな風に考えた。
託された命が、今そこに、あるのに。最後まで守ることが出来なかった。
今ここで散った命を、何かに繋ぐこともできなかった。
穣子、ごめんね。
もしかしたらあなたと、最後に会えたかもしれないのに。
美鈴さん、ごめんなさい。
守ってくれた私の命も、守ろうとしたあの命も、こんなところで――
そして、視界の色が変わった。
最後の一枚、紅葉が散るようにあっさりとした一時だった。
しかし、二度目の最期の瞬間は、またも訪れることは無かった。
「――ッッ!」
何かが凄い勢いで衝突したような。とても生物が出すようには思えない音がした。
こいしが、言葉にならない悲鳴を上げ、静葉の視界から消えた。
静葉の目の前には、
「お、鬼さん…」
先ほどまでは生死の境にいた筈の鬼の背中があった。
「大丈夫、なん、ですか…?」
静葉が小さく声をかけると、鬼は静葉に向き直った。
その表情は元気そうで、ほんの少し笑顔であった。
「ああ、大丈夫。力を吹き込んでくれた人がいたから、今はもう万全だよ。あとは私に任せな」
「よ、か、った…」
ふっ、と静葉にも笑顔が戻る。
悲しい出来事の連鎖の中の、ほんの一瞬の、一つの奇跡に。
私が託された命を、守ることができて。
大切な命を、繋ぐことができて。
終わる秋から冬へ、そして芽吹く春へと繋ぐ命を。
落ちた葉が、土を潤し、新たな命が息吹くまで。
希望を穣らせるもので――
静葉は安心したように、ふっと力が抜けるように倒れた。
激痛と悲しみに耐えていた、心を支える糸が、切れたように。
◇
静葉が目を閉じると、萃香の表情は一瞬にして苦痛に溢れたものとなる。
身体を支えるのがやっと、といった様子で大きく息を吐いた。
その両脚は、折れかける膝をどうにか支えていた。
無理して作った笑顔は、彼女を騙してしまっただろうか。
鬼である自分が嘘をついてしまうなんて。
それが、恩義ある相手に鬼が出来る精一杯の強がりであったとしても。
不鮮明な精神の中で、自分の触れていた紅い背中はただ温かく。
そのときは感謝も言葉にすることが出来ない状態だったけれど、今でははっきりと言える。
守られることになんて慣れていないけれど。
心から自分を守ろうとしてくれたこと、心からありがとうと。
先ほど体当たりで飛ばした相手は、遠くで倒れている。
鬼の一撃をまともに食らったんだ。当分は起きて来られないだろう。
あいつと話したいことは山ほどある。でも、今大事なのはこの神様だ。
萃香は急いで静葉を右腕に、ルナチャイルドの死体を左腕に抱えると、傍の民家に並べて寝かせた。
静葉の腕の傷は、案外出血が酷く無い。脚は重傷だが、銃弾は貫通している。
双方傷は浅くは無いものの、血止めをすれば死ぬことは無いだろう。
ルナチャイルドの服を少し破り、止血用の包帯に使う。
「…間に合わなくてごめん」
物言わぬ妖精に、謝る。
サニーミルクの仲間の妖精だろう。きっと、とても悲しむに違いない。
意識の深霧が晴れるまでは、響く戦闘音すら他の世界の出来事のように聞こえていた。
混濁した意識が正常に戻り、立ち上がれたときにはもう、戦いの場の妖精は動いていなかった。
そして霞がかった記憶の中で自分に手を差し出してくれた神様が、今にも命を奪われようとしていた。
その瞬間、柄にも無く必死に走った。感情というものは予想以上に身体を熱くさせた。
ルナチャイルドの死は自分のせいでは無い、そう人は言うだろう。
むしろ、この秋の神を助けたのを誇っていいと、言われるかもしれない。
しかし、こんなに近くに居たというのに、全く私は守れなかった。
妖精を失い、恩人を傷つけて、それで満足など出来る筈が無い。
情けなくて、不甲斐なくて。鬼失格だね、私は。
ザッ、と地に足を擦る音が聞こえ、次いで先ほどより増した殺気を感じた。
体当たりで吹き飛ばした相手が、今起き上がったようだ。
予想外に早い。
全力の体当たりだった。あれを喰らえば気を失うか、そうでなくとも一刻は立ち上がれないはずだというのに。
その間に、恩人を助け、相手を見極めて、自分が出来る範囲でケリをつけるつもりだったというのに。
本当に、自分が今、その力を全て発揮することが出来ていないんだと実感する。
不甲斐なさの上塗りだよ。情けなくて涙が出るね。
鬼が泣くなんざ、恥ずかしくて誰にも言えないけどさ。
「ごめん、守ってくれた命だけど――私はこれを使ってしまうかもしれない」
意識の無い静葉に、そう語りかける。
「でも、鬼は…戦いを止めたときが、死ぬ時なんだってさ」
長い長い鬼の眠りの間に、亡き親友が伝えてくれた言葉だ。
彼女との最期の約束というに足るそれを、鬼である自分が、反故にするなんて出来る筈も無い。
身体は万全には程遠い。むしろ限界に近い。
それでも、朦朧とした意識の中、誰かが自分に分けてくれた力があった。
誰かを守るために使えと、そう言われたような気がしていた。
そして、動けぬ自分を助けようとしてくれた人が、今ここにいる。
鬼が恩義を返せなかったら、後世までの笑いものだよ。
「酒の一献、鬼の一魂――簡単に捨てられるモノじゃない」
両拳を一つ、強く打ち付ける。
民家の陰から、敵の前に姿を晒す。
立ち上がった妖怪が、こちらを見ていた。
顔は見たことがある気がする。でも、会ったとしても遠い昔の話だろう。
それは、今は大切なことでは無い。
既に命を一つ以上奪い、一人を傷つけ、尚も殺意を纏っている。
相手がそうであるならば、必要なのは意志だけだ。
自分を守ってくれた人に、指1本触れさせるものか。
「伊吹萃香! 鬼の名に誓い、この場は譲るものかぁッ!」
◇
まるで全速力の象が体当たりをしてきたような。
全身に幾らとも言いがたい衝撃が走った。
無防備だった秋の神の姿が消え、視界は広い地面を高速で滑った。
空、地、空、地、と高速で視界が変わり、こいしは自分が吹き飛ばされたんだとぼんやり気付いた。
随分と長く思える間宙に舞った後、最後に一転し、地面とグレイズしきれず腰を強かに打ちつけた。
「う、ううっ…!」
流石に堪えたか、すぐに起き上がろうとするも身体が動かない。
拳銃は手放さなかったけれど、静葉の血を浴びていたナイフは手から抜け遠くへ飛んでいったようだ。
尤も、そんなことはこいしには関係ない。
暫くの間、動かそうとする意識に反抗する身体と格闘した後、痛みを無意識で無理矢理覆い隠し、立ち上がった。
足が震え体中が悲鳴を上げるが、それらを全て黙殺する。
土の付いた服を払うことも、血の付いた顔を拭うことも無い。
今は不気味な笑顔の欠片もなく、その表情は憎悪に満ちている。
武器は幾らでもある。一刻も早く、自分を攻撃した相手を、殺しに行かないと。
こいしは、ただ敵を見た。
どうやら、二本角の鬼が体当たりを喰らわせてきたようだ。
今再び民家の陰から飛び出してきた鬼は、まるで猛る獣のように自分に怒りの視線を向けてくる。
見えるほどの殺意すら感じるような、強烈な気迫を纏っている。
神と小さな妖精の次は、これまた小さな鬼。見れば見るほど奇妙な取り合わせだ。
こいしがいつもどおりなら、さぞかし楽しそうに笑ったに違いない。
でも、今のこいしには、彼女達は全てただの敵でしかない。
自分とアリスの目的を阻害する、共謀した悪でしかない。
ねぇ、ありすさん。
みんなでよってたかってわたしをいじめるんだよ。
わたしはなにもわるくないのに。
「そんなに、」
ぼんやりとした「また」が頭の中に浮かんで消えた。
思い出せないいつだったかの過去と、今。あの僅かな幸せな時間以外は、自分は一人だったような気がした。
「わたしをきらいなの?」
きっと、わたしがこわくて、きらいで、にくくて、きもちわるくて。
だから、こんなに、わたしに、つらくあたって。
だから、わたしはめをとじた。
めをとじさえすれば、わたしがゆるされるせかいになった。
いままではわたしひとりのせかいだったけれど。
だれもはいってこなかったせかいだったけれど。
いまは、アリスさんとふたりのせかい。
だれも。だれだって。はいれないせかい。
わたしのせかい。
「いいよ、みんながわたしをきらいでも。わたしには、ありすさんがいるから」
ここにいる全てを壊すこと。
アリスの望みをかなえること。
私が嫌われないでいられる場所が、そこにしかないのなら。
それ以外の全てを捨て去ることに何の躊躇いも無い。
それだけのために。全てを失っても構わない。
なぜなら、自分は人形だから。
望まれた、人形だから。
「…アリスさんのために。」
◇
囚われた心に従い、少女は堕ちた。
守られた命を繋ぎ、少女は立った。
亡き少女のために。傷ついた少女のために。
譲れぬ想いを抱いた二つの意地がぶつかり合い、冬の人里に、一瞬の熱風を巻き起こした。
【D-4 人里の西側 一日目 午後】
【伊吹萃香】
[状態]重傷 疲労 能力使用により体力低下(底が尽きる時期は不明。戦闘をするほど早くなると思われる)
[装備]なし
[道具]支給品一式 盃
[思考・状況]基本方針:命ある限り戦う。意味のない殺し合いはしない
1.こいしを倒す。静葉は命をかけてでも守る。
2.鬼の誇りにかけて皆を守る。いざとなったらこの身を盾にしてでも……
3.紅魔館へ向う。ある程度人が集まったら主催者の本拠地を探す
4.仲間を探して霊夢の目を覚まさせる
5.酒を探したい
※無意識に密の能力を使用中。底が尽きる時期は不明
※永琳が死ねば全員が死ぬと思っています
※レティと情報交換しました
※美鈴の気功を受けて、自然治癒力が一時的に上昇しています。ですがあまり長続きはしないものと思われます。
【古明地こいし】
[状態]左足銃創(軽い止血処置済、無意識で簡易痛み止め中)、首に切り傷、全身打撲 精神面:狂疾、狂乱
[装備]水色のカーディガン&白のパンツ 防弾チョッキ 銀のナイフ×8 ブローニング・ハイパワー(10/13)
[道具]支給品一式*3 MINIMI軽機関銃(55/200) リリカのキーボード こいしの服 予備弾倉1(13) 詳細名簿 空マガジン*2
[思考・状況]基本方針:殺せばアリスさんが褒めてくれた、だから殺す。
1.全てを壊し尽くす。
※寝過ごした為、第一回の放送の内容をまだ知りません
※
地霊殿組も例外ではありませんが、心中から完全に消し去れたわけではありません。
※フランベルジェ、一本の血塗れの銀のナイフが近くに落ちています。
【D-4 人里の西側民家 一日目 午後】
【秋静葉】
[状態]気絶 右上腕に刺し傷・右ふくらはぎに銃創(双方止血済)精神疲労
[装備]なし
[道具]支給品一式、紅美鈴の写真、不明支給品(0~2)
[思考・状況]基本方針:妹に会いたい。
1.美鈴が助けようとした命を助ける。
2.萃香に、同行を提案してみる。
3.今の妖怪が穣子の事を何か知っているかもしれない。
4.誰ももう傷つけたくない。
5.幽々子を探すかどうかは保留
※鈴仙と情報交換をしました。
【ルナチャイルド 死亡】
※死体は静葉の横に寝かせてあります。
最終更新:2010年03月12日 23:23