ケロちゃん殺し合いに負けず ◆30RBj585Is
ドゴオォン!!
どこからともなく轟音が鳴り響いた。どこかで戦いが起きているのだろうか?
なんとなくだが、禁止エリアとなっている所から聞こえたような気がするのだが・・・
「うーん。まさか、こんなことになるなんて・・・」
月明かりが照らす夜の大通りを、とぼとぼと歩く一人の少女がいた。
ただし、それはただの少女ではない。見た目とは裏腹に強大な力を持つ守屋の二柱神の一人、その名を洩矢諏訪子という。
諏訪子はこの殺し合いに巻き込まれたことについて、やれやれという様な反応だ。
殺し合いならば大昔に国と信仰の防衛で神奈子とやりあったことがあるが、ある意味そんなものよりもたちが悪いだろう。
『お集まり頂いて光栄です。ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます』
最初に聞いたときは、まさに「あーうー」と言いたくなった。
…そういえば、自分たちが元々いた世界、ここでいう外の世界で似たようなことがあったような気がする。
それは・・・いや、おそらく関係ないだろう。おそらくは。
そう思い、諏訪子は特にこれといった目的地を考えずに歩いていた。
いや、本当は守屋神社に行きたかったのだが、飛行移動を封じられている上に現在地は守屋神社とは反対方向なので行くにも行けない状況である。
それに、早苗と神奈子も見つけたい。特に早苗は人間だし、命を賭けるような戦いの経験がない分、危険だ。なんとしても捜さなければならない。
「・・・さぁて、と」
大通りが二手に分かれる場所まで着いたところで諏訪子は足を止めた。そして、
「誰かいるのかしら?」
そう言うと誰かがいそうな岩陰に注目し、スキマ袋から武器を取り出した。
「・・・・・・」
返事がない。だが、かまわずに岩陰を威嚇する。
「私はこちらからやりあうつもりはないよ。そっちもそうだったら、大人しく出てきてくれない?」
そう言って、打器として使えそうなトランペットを強く握り締めた。
我ながらかっこいい事を言ったと思う。もっとも、これは演技ではなく、マジなのだが。
(私が様子を見てくるわ。あなたはしばらく隠れてて)
(大丈夫でしょうか・・・?相手はあなたとは格が違う気が・・・)
(向こうは敵意がないなら、と言っていた。ならば可能性はあるよ)
諏訪子が目を向けた岩陰には本当に誰かがいた。
そのうちの一人が
「お、やっぱりいたんだね。名前は?」
「
ルナサ・プリズムリバーよ。
…本当にやりあうつもりはないの?」
騒霊三姉妹の長女、ルナサ・プリズムリバーが現れた。
ルナサが真っ先に発した言葉に諏訪子は
「ないよ。向こうから仕掛けないかぎりだけど」
こう答えた。紛れもない本心だし、今後もそれを貫き通すつもりでいる。
「ところで・・・あなたのスキマ袋はどこ?
無くしたのか、奪われたのか、そこらへんに置いてあるとか?」
ここで諏訪子は揺さぶりを掛けてみた。
もっとも、これは相手がゲームに乗っていない可能性が高いと思ってのことだ。
「それは・・・」
突然の質問にルナサは何て答えればよいか、詰まってしまった。
本当のことを言うべきか?ただ、それでは・・・
そう考えていると、諏訪子は言った。
「うーん、じゃあ誰かと一緒にいるってこと?もし私に何かあったら荷物を頼む、みたいにさ。
こんな簡単な質問で口ごもるってことは、何か隠したいものがあるけど自分の発言でボロが出そうだからって思っているような感じがするね」
見抜かれてしまった。こうも的確に。
見た感じはリリカより幼く感じても、やはり言われた通り、自分とは格が違う。
思わず、
「・・・よく分かるんだね」
そう正直に答えるしかなかった。
諏訪子とルナサたちはお互いに敵意が無いことを確認し、行動を共にすることになった。
…なんだか、ルナサは自分が負けた様な気がするらしいが。
「へぇ~、この世界の事を書き続けている家系なんだ」
諏訪子はもう一人の岩陰に隠れていた人物を感心するかのように見つめる。
「はい。それが代々伝わる稗田の宿命ですから」
稗田阿求は誇らしそうな表情で応えた。
話によると、阿求は人里に保管してある幻想郷縁記でこの殺し合いについて調べようと、人里へ向かう途中だという。
道中で阿求と出会ったルナサはゲームに乗る気は全くなく、むしろゲームを潰したいと思っていたようだ。
稗田家は、千年近くにわたる知識の蔵書を書き、管理している。それは先代から始まり今に至っているという。
その蔵書は幻想郷のあらゆる事柄が記されており、外の世界すなわち諏訪子が元々いた世界についての資料もあるらしい。
そこで阿求は思った。もしかしたら、幻想郷縁記にこのようなゲームについて何か書いてあるかもしれない、と。
「つまり、その幻想郷縁記ってのでこのゲームについて調べようと思ったわけ?」
諏訪子はすぐさまそう思った。だが、
「・・・そのつもりなんですが、可能性はゼロに近いですね・・・。
私は一応、全ての書物に目を通しています。その中でこのようなゲームに関する事は記入されていませんでした」
「いやいや、書物を全部読んだくらいでその全てを覚えられないでしょ」
そんなことが出来たら人間じゃない。そう思っていた諏訪子だったが
「阿求さんは見たものを一生忘れない能力があるらしいよ。
先代から引き継がれてきた能力らしいけど・・・こう言えば納得できるかしら」
ルナサは諏訪子からもらったトランペットをいじりながら割り込むように答えた。
「ああ、なるほどね。妙に納得できるわ」
なんとなくだが、その言葉に思わず納得せざるを得ない。
「うーん。そうだとすると、書物でゲームの事を調べられる可能性は確かに低いかもね」
諏訪子は腕を組みうんうんと頷く。
「そうですね・・・。せめて、外の世界でも似たようなことがあったって言うのなら話が早いんですが。
まぁ、そんなのあるわけないですね」
阿求は諏訪子に尋ねてみた。
諏訪子は外の世界に長年にわたって存在していた神だけに、何か知っているかどうかをだ。
もっとも、その表情はすでに諦めかけているような感じなのだが。
「うーん、少なくとも私は知らないね。
そもそも、こんなハイテクな首輪なんて今の外の世界で作れるかどうか怪しいくらいだし。
ま、機械についてはあまり詳しいことは言えないけどね」
当然のことのように言い放つ諏訪子。
その様子に、阿求とルナサは何とも言えない雰囲気に包まれる。
だが、ここで諏訪子は気がかりなことがあった。
(首輪、爆発、殺し合い・・・。ってことは?)
まさか・・・と思ったのか、諏訪子の表情が変わった。当然、それを阿求たちが見逃すわけがない。
「あの、どうしたんですか?」
あからさまに分かる諏訪子の態度の変わり様に、思わず尋ねた。
「いや、どうでもいいことかもしれないけどね」
最初に断っておく、そんなつもりで前振りを言う。
「・・・・・・」
諏訪子の言葉に思わず黙り込む二人。何を言いたいのか、そう思っていると
「このゲームと似たような話、思い当たる節はあるよ。ここでいう外の世界で、ごく最近に」
諏訪子にとってはどうでもよさそうな事だった。
だが、二人にとっては聞き逃せるわけがない。
「そ、それは本当のことですか!?」
「外の世界でそんなことが最近になって起こっているなんて・・・」
当然のごとく、二人は食らい付く。
「い、いや、全然関係無いと思うから!そんな反応しなくても・・・」
二人の反応に、諏訪子は思わず両手を目の前で振りながら落ち着かせた。
「・・・んもう、しょうがないね。一応話すけどさ」
やれやれという表情をしながら
「実は・・・」
その時
「!?あれは一体・・・」
「弾幕・・・ですかね」
諏訪子は二人に話そうとしたが、当の本人たちは自分の背側の空を見上げていた。
「ちょっと!人の話を聞きなさいよ!」
人が話そうとしているのに・・・。そう思っていたが
「いいえ、空に浮かぶ星型に並べた弾幕が気になったのよ」
「星型の・・・弾幕・・・?」
今度は諏訪子が聞き逃せない言葉を聞いた。
「まさか!?」
思わず後ろを振り向く。
暗黒の空に浮かぶのは月明かりに負けないほどの輝きを放つ星型に並べた弾幕。
こんな弾幕を使う人物は一人しかいない。いや、沢山いたとしても一目で分かる。
「早苗・・・」
自分を含む守屋の二柱神を祀る風祝、東風谷早苗のものだ。まさか、こんな形で見つけられるとは思わなかった。
空さえ見ていれば、明らかに目立つ。自分の存在を知らせ、仲間を集めるためにあんな大掛かりなことをしたのだろうか?
だとすれば・・・
「あンの、おバカ・・・」
諏訪子は怒った口調でつぶやいた。
それを見て気づくのは自分だけでない。仲間になりそうな奴だけでもない。危険な奴まで呼びかねない。
しかも、あれだけの力を放出すれば、早苗自身も負担がかかる。それらのことを考えているのだろうか?いいや、考えていないだろう。
「ごめん!ちょっとあそこに行ってくる!」
諏訪子はそう言うなり、ルナサのスキマ袋から大きな物体を取り出した。
「ちょっ・・・どうしたの!?」
急な出来事にルナサは止めに入るが、諏訪子はそれを振り払い、大きな物体に乗って全速力で走っていってしまう。
「ごめんねー!理由は後で話すからー!先に人里で待っててねー!」
そう言った彼女は、走るよりも速いスピードであっという間にこの場からいなくなってしまった。
「・・・何があったんでしょうか?」
阿求はあっけらかんな表情で諏訪子が走っていった道を見つめた。
「さぁ・・・。でも、必死だったのは確かね」
「あの話のことについて聞きたかったのですが・・・」
「また今度、ということになるのかしら。人里で待つように言っていたし、そのときに聞くしかなさそうね」
確か、誰かの名前をつぶやいていた。おそらくその人と関係があることだろう。
自分も、もし妹達の事に関係があるならばそのままにするわけにはいかない。
諏訪子もそうなのだろう。
「諏訪子さんは無事に帰れるんでしょうか」
「分からない。今は無事を祈るしかないと思う。それに・・・」
そう言うと、ルナサは諏訪子からもらったトランペットを構えた。欲を言えばバイオリンのほうがいいのだが、贅沢は言わないでおく。
普通の人たちにとってはただの楽器だが、騒霊にとっては立派な武器になる。魔法使いが魔法書を持つような感じだろう。
「武器はもらったし、私達の方も生き残らないと」
「・・・そうですね」
「私じゃ頼りないかもしれないけど・・・あなたの事、守らせてもらうよ」
「ありがとうございます。でも、無茶はしないように・・・」
「まぁ、それなりにね」
そう言って、残された二人はもう目と鼻の先にある人里へ向けて歩き出した。
【E‐4 一日目 黎明】
【洩矢諏訪子】
[状態]健康
[装備]折りたたみ自転車
[道具]支給品一式、不明アイテム0~2(武器になりそうな物はない)
[思考・状況]星型弾幕の発生源へ向かう(早苗と合流する)
[行動方針]早苗と合流後、人里へ向かう。神奈子を捜す。
【D‐4 一日目 黎明】
【ルナサ・プリズムリバー】
[状態]健康
[装備]メルランのトランペット
[道具]支給品一式
[思考・状況]諏訪子が心配&言おうとしたことが気になる
[行動方針]人里にある阿求の家に行く。
【稗田阿求】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、アイテム不明
[思考・状況]諏訪子が心配&言おうとしたことが気になる
[行動方針]人里にある自分の家に行く。
最終更新:2009年05月26日 19:51