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Hive Mind10D

最終更新:2012年09月15日 13:17

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『信じてください、ガイスト。ゲンダーなら大丈夫です。きっと戻ってきてくれます!』
 メイヴはそう言うが、僕にはできなかった。ただ祈って待つだけだなんて。
 ゲンダーやメイヴのことを信じられないわけじゃない。ときに我々には理解できない行動を取るゲンダー。だが先の戦いではそれが敵の兵器『鯰』を止めるのに活躍した。たまに明確な理由を示すことなく、機械でありながらまるで計算外の作戦を示してくれるメイヴ。しかしその作戦はいつも結果的に間違ってはいなかった。
 いつもメイヴは間違っていなかった。彼の指示によっていくつもの窮地を乗り越えてきた。
 だが今回は少し違った。たしかにメイヴは今回もひとつの案として彼なりの指示を出してくれたが、それは信じて祈れというものだった。具体的な内容を伴う建設的な作戦ではない。
――祈るだって……そんな非科学的な!
「信じて待っているだけなんて何もしないのと同じだ! 祈ったってそれが何かをしてくれるわけじゃないんだ! くそっ、なんとしてもゲンダーを救いだす方法を考えないと……考えろ、考えろ!」
『ガイスト、少し冷静になってください。私からは同じことしか言えません。どうか私を信じてください。それができないならそれでもいい。でもせめてゲンダーを信じてあげてください…』


第十章D(メイヴ編)『自分を信じてください』



 私を信じてください。ゲンダーを救うためにはこれしかない。彼の帰還を信じて祈ろう。大丈夫、ゲンダーならきっと自分を取り戻してくれます。精神体なんかに負るようなゲンダーではありませんから――それがメイヴの選んだ答えだった。
 しかしガイストはここに来てその答えは信じられないという。
 祈る――その答えは科学に関わるものにとってあまりにも非現実的な手段でしかなかった。理想の結末をいくら信じて祈ったところで、ただそれを頭に思い浮かべるだけではそれはただの妄想と何も変わらない。祈るだけでは解決にならないのだ。
 あるいは少し冗談を言い過ぎてしまったか。ガイストに少し落ち着いてほしいと思ってやったことだったが裏目にでてしまったのかもしれない。ああ、私としたことが……。
 だが思い出してほしい。私たちは一体何と戦っているのか。今までどうやって戦ってきたのか。
(いえ、失敗を恐れてはいけませんね。ガイストもきっとわかってくれます。彼を信じましょう)
 そう自分に言い聞かせてメイヴは飛行艇『鮫』の機銃から銃弾をばらまく。
 前方には敵の攻撃による瓦礫が一挙に迫っていた。


「ここは――?」
 気がつくとゲンダーは薄暗い空間に立っていた。
 木も建物もなく地面に起伏すらない、何もないどこまでも続いているかのように見える黒一色の平面だった。
 ゲンダー以外には誰の姿もなく、気配すらも感じられない。無限に広がっているかのような空間でありながら、一面の黒に覆われた世界はその広さにもかかわらず閉塞感を感じさせる。
 その一方で意識の端には戦いを続けるメイヴたちの様子がちらついて感じられていた。
 まるで夢と現実を同時に見ているかのような不思議な光景。初めてそれを見る者なら、誰でもこの奇妙な感覚に混乱しただろう。
 だがゲンダーは知っていた。以前にもここと似たような空間に来たことがある。
「これは……精神世界か。前の戦いでヴェルスタンドの大統領と戦った場所ダな」
 精神世界。それは前ヴェルスタンドの大統領が創り出した現実には存在しない空間、精神のみが存在することを許される世界。
 ここでは物理的な法則は通じない。想いの強さという概念こそがこの空間を支配しているのだ。この空間で思ったことはすべて実現する。二つの意思がぶつかり合った場合は、想いの強いほうが現実となる。そんな世界だ。
「ということは…」
 誰の気配もなかった空間に突如として敵意が浮かび上がった。
 敵意は蒼い光を帯びて次第に人の姿をかたどっていく。それは紛れもなく、かつてゲンダーの戦った前ヴェルスタンド大統領の姿だった。
「出たな、大統領の亡霊め」
 蒼い亡霊は何も喋らない。なぜならそれはかつての大統領ではない。ただの残留思念だからだ。
 残留思念は自由な意思を持たない。意思の持ち主が死んだ時点でその意思が固定されてしまうのだ。
 だが、だからこそその意思は絶対にぶれることはない。決して揺るがない。想いの強さが力の強さに比例するこの精神世界においては絶対の強さを発揮する存在なのだ。
 蒼い亡霊はゲンダーの姿を確認するなり、何も言わずにただ明確な敵意のみをもって襲いかかって来た。かつての精神世界での大統領との戦いのように。
 それをゲンダーが迎え撃つ。
「ガイストが言ってたな。大精神体は大統領の意思を吸収してでかくなった化け物ダと。つまりこいつを倒せば精神体の暴走は止まるんダ!」
 メイヴが犠牲になるような結末はもう望まない。
 そんな運命はオレが変えてやる。オレがこいつに勝つことで!
 大統領との精神世界での戦いが再び始まった。


――考えろ!
 たとえどんなに大きくてもあれは精神体。弱点が音と射影機であることには変わりない。
 思い出せ。かつての戦争……鯰との戦いのときだってそうだったじゃないか。敵は精神体、瓦礫を使っての攻防一体の戦法、規模こそ違うが状況は同じだ。そしてそれを打ち倒したのはメイヴの波動砲だった。あのときメイヴは精神体とどう戦っていた?
 そうだ。メイヴはまず音響手榴弾をばら撒き、敵の注意を引こうとしたのだ。だがそれは予期しない結果を生んだ。そう、精神体の弱点とは音だったのだ。そこで初めて僕たちは精神体の弱点を知ることになったのだ。
 そして身動きが取れなくなった隙を突いて、メイヴは波動砲を使って自らを犠牲に精神体を撃ち抜いた。それは精神体を守る瓦礫を一気に吹き飛ばすための策だったが、これも良い意味で予想外の結果を生んだ。波動砲……つまり衝撃波は空気との摩擦で強烈なパルス波を生じさせる。パルス波とは音の振動の一種、すなわちこれも精神体には有効打だったのだ。そしてそこに射影機がトドメを刺してかつての戦いは幕を閉じた。
 射影機や波動砲と同じ効果は精神波動砲で与えられる。あの大精神体をなんとかゲンダーから引き剥がすことさえできれば、ためらうことなく精神波動砲でやつを撃ち抜くことができる。
 あと残るのはパルス波、音だ。音による攻撃でなんとかゲンダーを助けられないだろうか。
「精神波動砲は強力な衝撃波だ。音で精神体の動きを止めることはできても、精神体を動かしてゲンダーから追い出すことはできない…」
 こうして考えている間にも、飛行艇に向かって巨大な瓦礫がいくつも飛んでくる。メイヴはそれをひとつ残らず撃ち落としていく。飛んでくる弾が大きいのでかわすのは一苦労だが、それを見落として予期しない一撃をもらう心配はない。また的が大きいのでそれを撃ち落とすことはそう難しくない。だが、それをすべて撃ち落とすとなれば話は変わってくる。
 後方には後退してもらったフィーティン軍、そしてヘルツがいる。戦車隊は大部分がやられてしまっており、飛んでくる瓦礫を迎撃するには厳しい状況だ。敵の攻撃を一発も後ろへ通すわけにはいかない。
 そのとき艦体ががくんと大きく揺れた。飛行艇内に緊急事態を知らせる警告音が鳴り響く。
『くっ。左舷後方被弾しました!』
「大丈夫か!?」
『ご安心を、かすっただけです』
 瓦礫をかすめたことで飛行艇は大きくバランスを崩し、後方へいくつかの瓦礫を通してしまった。瓦礫は後方のフィーティン軍を襲い、戦車の一台をいとも簡単にスクラップにしてしまった。
 飛行艇は迎撃を続けつつなんとか体勢を持ち直したようだが、後衛に被害を出してしまった。それにかすっただけでこの威力。もう一発もらえば次も無事とはとても言い切れない。
 あまり悩んでいる暇はない。すぐにでも妙案を出さなければ。しかしどうすればゲンダーを救えるのか。焦りは精神を揺さぶり正常な思考を困難にする。急げ、でも落ち付け。こんなときに落ち着いていられるか。
「ここで僕がなんとかしないとゲンダーが…。いや、それどころかフィーティンの兵士たちにも被害が……くそっ、急げ! 僕が……僕がなんとかしなきゃならないんだッ!!」
 思考が堂々と巡り空回りする。頭が痛い。激しい頭痛に襲われる。
 だが弱音を吐いている場合じゃない。このままでは消耗するだけだ。一時でも早く解決策を見出さなければ。
 自分がなんとかしなければならない。しかし時間はあまりない。失敗は許されない。やらなければならない。
 プレッシャーがガイストを追い詰める。脳裏にはいくつもの光景が浮かんだ。
 ゲンダーを救うことができずに犠牲にしてしまった光景。
 解決策を見つけられず『鮫』が撃墜されてしまった光景。
 精神体を止められずマキナやフィーティンが滅ぼされてしまった光景。
 めまいがする。手が震える。冷や汗が止めどとなく溢れ出す。
「ああぁぁあぁっ!! くそっ、どうすれば…!!」
 とうとうガイストは頭を抱え込んでしまった。

「落ち着けガイスト! おまえまで自分を見失ってどうする!!」
 指揮戦車から通信端末に向かってヘルツが叫んだ。
 ヘルツは通信からガイストがパニックを起こしていることに気がついたのだ。
「精神体を倒せるのは精神波動砲だけだが、それを発射できるのは『鮫』に搭乗しているガイストだけだ。あいつにしっかりしてもらわなければ勝ち目はないぞ。ならば……」
 端末を通して再度ガイストに声をかける。
 これでも俺は精神科医なのだ。ゲンダーを精神体から救うのがガイストなら、混乱の淵からガイストを救うのは俺だ。俺にもっと出番をくれ。
「ガイスト、おいガイスト。俺の声が聞こえるか」
 だがガイストからの返答はない。代わりに目の前に遠隔モニタが現れてメイヴが答えた。
『私にできることがあれば協力いたしますが』
「これは……セイヴとかいうやつか」
『正確にはメイヴです。今はサメイヴと呼んでください』
「どっちでもいい。とにかく今はガイストを落ち着かせなければ。おまえには何ができる?」
『言ってみてください。ガイストを落ち着かせたいのは私も同じです』
 本来、診察は患者と直接対面して病状を把握、そこから所見をとり必要に応じて検査も行い診断を下す。主訴、つまり本人から主観的な症状を聞くのが基本だが、今は場合が場合なので仕方がない。通信から聴こえてきた音から客観的に判断するなら、”自分が”やらなければならないというプレッシャーから自分を追い詰め過ぎてしまったのだろう。
 精神疾患には投薬療法や会話による精神療法などがあるが、もちろん投薬ができる状況ではないし、その効果が現れるのを悠長に待っている時間もない。ガイストが応答しないので説得して落ち着かせることも難しい。
『では私はどうすれば?』
「あまり薦めんが……電気ショック療法というものがある。だがこれは……」
『ああ、いわゆるショック療法ですか』
 これは電気刺激を与えることで意識障害の改善を期待するものだ。敢えて詳しい説明はもはや不要だろう。ここで用いられる電流にはサイン波型やパルス波型があり、後者のほうが副作用が少ないと言われている。
『ちょっと期待してましたが結局ベタな解決策ですね、なーんて。なるほど、パルス波ですか。それだけ聞ければ十分です』
「待て、何をする気だ!? おい、あまり無茶は…」
 それを最後に遠隔モニタは消えた。
 次の瞬間には端末からガイストの悲鳴が聴こえてきた。
「……機械め、無茶しやがって」


『おはようございます、ガイスト。気分はいかがですか』
 ふらふらとガイストが立ち上がり、『鮫』の操縦席に座り直す。
「い、いてて…。何があったんだ?」
『ちょっとうっかり漏電しただけです。問題ありません、ええ』
「そ、そうか。ところで僕は一体何をしていたんだ…? たしか精神体を追い詰めたところまでは覚えているんだが……」
 記憶には記銘、保持、追想、再認のプロセスがあり、どれを欠いても記憶障害を引き起こしてしまう。記銘とは新たに覚えること。追想と再認は記憶したことを思い出すことであり、保持は記憶したものを忘れずに頭にしまっておくことをいう。
 この記憶の保持は電気ショックなどが原因で失われてしまうことがある。いわゆるショック療法の副作用だ。敢えて言えば一過性の部分健忘症といったところか。新しい記憶は古い記憶に比べてまだ不安定で失われやすいものなのだ。
『うまくリセットされましたね。これは都合がいい……じゃなかった。ではガイスト、ゲンダーが敵に捕まってしまったことは覚えていますか?』
「なんだって!? そ、そういえばそうだった。僕は早くゲンダーを助ける方法を見つけなくちゃならないんだ!」
『心配は要りません。ゲンダーの無事を祈ってください。私の計算ではそれですべてが解決します』
「いのる? 何を馬鹿なことを言ってるんだ。それでは何も解決にならないぞ!」
 すぐにガイストは数分前と同じことを言い始めた。なんと頑固な、とメイヴは思ったがそこで焦りはしない。それはメイヴが機械だからだろうか。否、メイヴにはガイストをなんとか信じさせる作戦があったのだ。
『あなたこそ何を馬鹿なことを言ってるんですか、ガイスト。みんなの祈りの力で精神体と戦おうと言いだしたのはあなたじゃないですか。そのための機械まで準備をしておいて、みすみすその機会を捨てようというのですか?』
「祈りの力で戦う……そのための機械……? そんなこと言ったかな…。それに祈ることでどうやってゲンダーが助けられるというんだ」
『きっとさっきのショックで忘れてしまったんですよ。では説明しましょう。いいですか……』
 メイヴは祈りによって精神体と戦う作戦を説明し始めた。ショック療法によってガイストの前後の記憶が飛んでしまうのは計算外だったが結果オーライ、これでようやくガイストに話を聞いてもらうことができる。
 説明を受けてガイストは腕を組みながら首をひねっていた。
「なるほど、筋は通ってる。けど、本当にそんなことを僕が言ったのか。まるで非科学的なんだけど」
『あなたがそれを言うなんて意外ですね。それを言うなら精神体理論だって十分非科学的だと私は思いますけどね。祈りも精神も本来ならば目には視えないもの。同じですよ』
「そ、そうか。わかった、おまえの祈り理論を信じるよ…。あ、いや、僕が言ったんだっけ?」
『まぁそんなことはどうでもいいですから、そうと決まれば作戦決行です! さっさとヘルツたちに伝えやがれです』
 まだ首をかしげながらもガイストはヘルツに、そしてヘルツからフィーティン軍将軍に、そして将軍から全軍に作戦が伝えられた。兵士たちは黙って将軍からの命令に従う。メイヴから遠隔モニタで先に(ガイストを信じさせるための)作戦を知らされていたヘルツも、ここでは非科学的だなどと騒ぎ立てたりはしない。
(やれやれ、科学者というのは頭が固くていけませんねぇ)
 遠隔モニタには出さないが、一人こっそりと愚痴をこぼすメイヴにガイストは準備が完了したことを告げる。
「本当にこれでうまくいくのか? というか本当に僕がそんな変な理論を立てたのか?」
『むっ……変で悪かったですね。ですが大丈夫、自分を信じてください』
「なんでおまえが不機嫌になってるんだ…?」
『なんでもありません…。さあ、ぐずぐずしてないでガイストも祈って! 敵の攻撃も激しいです。『鮫』もあまり長くはもたないかもしれませんよ!』
 こうしてようやくメイヴの選んだ答えは作戦として共有された。ゲンダーを救出するため、そして大精神体を滅ぼすために、今ここに対精神体機械支援祈祷作戦が実行された。
 信じてください――ゲンダーならきっとやってくれます。


 一方そのころ、ゲンダーは精神世界での亡霊との戦いで苦戦を強いられていた。
『我コソ至高、我コソ絶対』
 ヴェルスタンド前大統領の残留思念は永久に変わることのない絶対の意思でその目的をただ淡々と遂行しようとするだけの存在に過ぎない。それゆえにそれが揺らぐ余地など微塵も存在しない。ゆえに絶対、ゆえに倒れない。それにより生み出される完全防御はまさに無敵。無敵の亡霊は絶対に倒せない。
「こいつ不死身なのか!?」
 亡霊には汁千本も汁一本も、ゲンダー最強の技である極限一極でさえも通用しない。あらゆる攻撃を駆使しても亡霊には傷一つ付けられなかった。
 そしてとうとうゲンダーの表情にも疲れの色が見え始める。機械に肉体的な疲労はなくても、意思を持つゲンダーは精神的な疲労を感じてしまうのだ。そしてそれがこの空間では直接的に己の力へと反映されてしまう。
 疲弊はゲンダーの力を削ぎ落とし、とうとう腕からは汁千本の一滴さえも発射されなくなってしまった。液が枯渇したのではない。気力が枯渇してしまったのだ。
「くそっ……だめダ。もう力が入らない…。オレはここまでなのか…」
 意識が薄れる。目が霞む。
 心が、意思が、全てがこの空間と同じ黒に塗り潰されようとしている。闇は全てを呑み込み逃がさない。
 上も下も右も左も、どこを見ても黒しかない。もう何も考えられない。意識の中も黒一色。全てが塗り潰されてその存在がまさに消滅してしまいそうなそのときだった。
 視界の端にゲンダーはきらりと輝く小さな光を見つけた。それは小さく儚い、しかししっかりとした光だった。
 なぜだろう、その光を見ているとどこか心強い気分になる。そんな光だ。
「力が……勇気が……湧いてくる!?」
 思わず光に手を伸ばす。光に触れると、それは風を巻き起こしながらゲンダーを包み込む。すると光はゲンダーの身体に吸い込まれてゆき、ゲンダーの心のうちにその光の想いが流れ込んでくる。

  ゲンダー、負けるな! おまえなら勝てる!

「これは――」
 小さな光はひとつだけではない。ひとつ、またひとつと精神世界の中に現れては蛍のように黒一色の世界を仄かに照らす。ゲンダーが手を伸ばすとその光もまたゲンダーの中へと取り込まれて想いを伝えた。

  おまえならできる!
  諦めるな、みんながついてるぞ!
  頑張れゲンダー!
  誰かよくわからないけど、とにかくゲンダー!

「この声は……地上で一緒に戦った……フィーティンの?」
 小さな光は次々に現れて暗闇の淵を黄金色の光に染めていく。そしてその光はゲンダーに吸収されていき、そのひとつひとつがゲンダーに力と勇気、そして意志を与えていく。
「この光はみんなの想い? みんながオレを応援してくれてるのか」
 光が思い出させてくれる。
 たしかにこの精神世界ではあの残留思念は無敵ダ。オレにはとても勝ち目がない強敵ダ。だがオレは一人で戦っているわけじゃない。思い出すんダ。オレたちは一体何と戦っているのか。今までどうやって戦ってきたのか。
「そうダ、オレは…。やらなくちゃならない。こんなところで終わるわけにはいけない!」
 仲間のゲンダーを信じる祈りは光となって闇を払いゲンダーを照らす。その強い想いが今、ゲンダーを蘇らせる!

  荒野に転がってたときはただのがらくただと思ったが、こんなに強力な味方になるなんて。拾っておいて良かったな。
  小柄だがなかなかガッツがあるやつだ。そんなやつがこれぐらいでくたばるわけがないさ。
  そうだな。あいつはきっと戻ってくる。俺はあいつを信じるぜ。
  負けるな、サボテンのチビっこいの! 俺たちはおまえを信じてるぞ!

 フィーティンの兵士たちはゲンダーの勝利を祈った。
 祈りがゲンダーに立ち上がる力と勇気を与える。

  面会室で初めて見たときはよくしゃべる変な機械だと思ったが、今はおまえが頼りだ。
  機械なのにまるで心があるみたいで、実はおまえのこと少し興味深かったんだ。
  いや、そういう意味だけじゃないが、俺もおまえの無事を祈ってる。戻ってこい!

 ヘルツはゲンダーの無事を祈った。
 祈りがゲンダーに意志の力を取り戻させる。

  ゲンダー……もとはと言えばこんなことになったのも僕の責任だ。
  精神体が存在するならこの想いも形になってちゃんとゲンダーに届くんだろうか。
  おまえを犠牲になんかさせない。どうか戻ってきてくれ、ゲンダー!

 ガイストはゲンダーの帰還を祈った。
 祈りがゲンダーの眼に光を蘇らせる。

  大丈夫、あなたなら必ずやれますよ。これまでともに苦難を乗り越えてきたあなたなら絶対に!
  たとえ万にひとつでも億にひとつだろうと、可能性が0%でないのなら諦めない限り希望はあります。
  諦めたらそこでオシマイですよ、ゲンダー。自分を信じてください!

 メイヴはゲンダーを信じて祈った。
 祈りがゲンダーの心に炎を灯す。
 仲間たちの祈りの光を受け止めたゲンダーの身体が黄金に輝き始める。
 ゲンダーは覚醒した!!
「こんなところで負けられない。オレは還るんだ、仲間のもとへ。オレは負けない!!」
 ゲンダーから黄金の閃光が放たれる。
『我コソガ絶対ナノダ! 我以外ノ絶対ナド認メンゾ!』
 亡霊はその閃光に反応するかのように巨大化し始めた。
 その姿は無限に続くこの黒い世界よりもさらに大きく、精神世界そのものをすべて呑み込んでしまうほどに大きい。
『我トヒトツニナレ! 全テハヒトツ。ヒトツダケデ十分ダ。我コソガ唯一ニシテ絶対ノ存在!!』
 蒼黒い光がゲンダー諸とも精神世界のすべてを呑み込む。すべては蒼黒色一色に塗り潰されて、そのあとには蒼黒色以外の一切の何ものも残らない。そして蒼黒色の世界は静寂の闇の底へと沈み始めた――だが。
「オレは」
 何もない蒼黒い空間に小さな亀裂が走り、そこからは一筋の黄金の光が飛び出した。
「こんなところで」
 亀裂は見る見るうちに大きくなり、ガラスが割れるかのように空間を砕き割ると黄金の光が一斉に溢れ始めた。
「終わらない!!」
 光は無限に広がる精神世界を黄金一色に染めた。
 これですべて終わりダ。アァーラヴゥルゴッチァウト!
 黄金の光は闇を照らしながら空間の裂け目をどんどん広げ、そしてついに崩壊して精神世界は崩れ落ちた。


 気がつくともうどこにも黒い闇も大統領の亡霊もいない。上空には『鮫』が浮かんでおり、目の前にはメイヴの遠隔モニタが待ちかまえていた。どうやらもとの世界に帰ってきたらしい。
『ゲンダー! あなたなら絶対に大丈夫だと信じていましたよ!!』
「ああ、絶対ダ。なんたって精神世界での絶対は無敵なんダからな」
 想いの強きが勝る――それが精神世界でのルールだ。祈りもまた想いの強さによる意志の力。みんなのゲンダーを信じる強い意志がゲンダーに力を与え、ついに大精神体を凌駕したのだ。
「よかった、ゲンダー! 無事だったんだな」
 こんどはガイストの声だ。
「ガイスト! おまえの想いもちゃんと届いたぞ」
「本当によかった。ついにやったんだな……!」
 長かった精神体との戦いは終わった。そう思われたそのときだった。
「待てよ。このやり取りは前にも何度かあった。この場合は――」
「おっ、ガイストもなかなかわかってきたようダな。そうダ、それは――」
『そうですね。こういうときの「やったか?」は――』
「「やってないフラグだ!」」
 三人が声をそろえた。
 決して最後まで油断はしない。ゲンダーが振り返ると、そこにはまだ蒼黒いオーラが渦を巻いていた。
『我ハ……ゼ、絶タ…イ……』
 だが大精神体にはもはや身動きが取れなかった。大精神体は繰り返し繰り返し、絶対だ至高だと唱え続ける。それはまるで自分にそう言い聞かせているかのように虚しく響いた。亡霊の絶対はもう続かない。その絶対を凌駕するさらなる絶対には決して勝つことはできないのだ。
――思い出せ。ゲンダーたちは一体何と戦っているのか、今までどうやって戦ってきたのかを。
 敵は精神体だ。そして仲間を信じることでゲンダーたちは戦ってきた。
 精神体も信じる心も、どちらも精神。すなわち意志なのだ。精神と精神の戦いではより想いの強いほうが勝る。それこそが精神体を倒す真の方法、そして精神体の真の弱点。そもそも精神波動砲なんていらなかったのだ。
「そうか、やっとわかったぞ……祈りの力で戦うための機械が何なのか。いや、誰のことだったのか!」
『祈りの力がゲンダーに集まっています。なんと強力なエネルギー……これならいけます!』
 ゲンダーが右腕を頭上に掲げる。すると腕が金色に輝き始めた。
「あいつを倒せと言ってるんダな。無駄にしないぞ、みんなの想い!」
「ゲンダー!」『ゲンダー!』
「……ああ、もちろんダ!」
 両腕を大精神体に向けて構える。
 大精神体は身動きが取れない。
『ワ、我……我ハ…。我コソハ……!!』
 汁千本を放つ要領で体中の体表面の内圧を高めていく。しかしまだ発射しない。次に圧力を徐々に両腕に集めていく。数百本の汁を高速で飛ばすほどの力が今、両腕に集中していく。しかしまだだ。まだ発射しない。そこに仲間からもらった力を凝縮。祈りによる意志の力が汁一極のエネルギーを飛躍的に高めていく。あまりのエネルギーに腕が内側からの圧力で破裂しそうになる。強大な意志の力に意識が飛びそうになる。だがそんなことに負けたりはしない。負けてはいられない! さらに力を凝縮。限界まで、極限まで研ぎ澄まして……
「こ れ で 最 後 ダ ! 意志一極!」
 次の一瞬、世界から全ての音と影が瞬間的に消えた。
 瞬間的に極大な一撃、さながらパルス波のようなその一撃が大精神体を貫いた。
 金の閃光が走り、金の風が舞う。
 それは黒き暗雲を吹き飛ばし、蒼き精神体の脅威を消し去った。
 大精神体は「信じる」という意志の力によって掻き消され跡形もなく消滅した。


 誰もがオレの帰還を、そして精神体への勝利を信じてくれたからこその結末ダった。
 ご都合主義? 元気玉展開? メイヴ曰く、細かいことを気にすると禿げちまうぞ。
 しかしオレ一人でも、ガイスト一人でも、メイヴだけでも精神体には勝てなかった。
 みんなの信じる心があったからこそ、この結末がある。だから最後に言わせてくれ。
――ありがとう、と。


Hive Mind 完(TrueEND)

後日談
フローティア2『Hive Mind』
続編『大いなる意志』

◆せっかくなので別の運命を少し覗いてみる
ゲンダーを信じる
他の方法を考える
構わず攻撃する
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