もがき続けてCrazy,Crazy,Crazy ◆5A9Zb3fLQo
一組の男女が対峙する。
薄汚れ、ボロボロな服と不健康そうな痩身の色褪せた男。
きらびやかな服装と艶めかしい肉体美を惜し気もなく晒す彩色鮮やかな女。
自衛隊基地のゲート入り口を挟む様にして向かい合う対極な二人。
薄汚れ、ボロボロな服と不健康そうな痩身の色褪せた男。
きらびやかな服装と艶めかしい肉体美を惜し気もなく晒す彩色鮮やかな女。
自衛隊基地のゲート入り口を挟む様にして向かい合う対極な二人。
「こんばんわ、お互い災難ね」
「……そうだな」
「……そうだな」
女が人好きのする笑顔で挨拶をする。
男は陰気さと儚さを漂わせる仏頂面を変えることなく、ぶっきらぼうに返す。
男は陰気さと儚さを漂わせる仏頂面を変えることなく、ぶっきらぼうに返す。
「ちょっと貴方の後ろにある建物に用があるんだけれども、中に入って探し物とかしたかしら? ほら、あなたが物色済みだった所に入ったら私の骨折り損じゃない?」
「勝手に探せ、俺は中の物なんて興味はない。……入り口なら空いていたから好きにしろ」
「勝手に探せ、俺は中の物なんて興味はない。……入り口なら空いていたから好きにしろ」
遠目に見える営舎を指差す女に釣られるように男が微かに振り返る。
が、すぐに顔の向きを戻してつっけんどんに返答した。
お互いに一歩たりとも前に進もうとしない。やり取りに不穏さはないというのに奇妙な緊張が漂っていた。
が、すぐに顔の向きを戻してつっけんどんに返答した。
お互いに一歩たりとも前に進もうとしない。やり取りに不穏さはないというのに奇妙な緊張が漂っていた。
「ご親切にどうも、それじゃあ私も1つばかり親切のお返しを」
「……」
「……」
その発言を皮切りに場の空気が緊張から剣呑なものへと推移していく。
笑顔を浮かべたまま、女の手が腰に差していた刀へと伸びた。
仏頂面を浮かべたまま、男の手がデイパックを無造作に後方へ放り投げながら懐から茶色のカードを取り出した。
示し合わせたように、理解し合っていたかのように、互いが互いに武器を構える。
ゲート入り口に備え付けられた受付所のガラスが二人の姿を映し出す。
女・宮本武蔵の青く透き通った瞳と男・スモーキーの黒々とした瞳が交差する。
スモーキーの周囲から耳障りな高音が響く一方で、武蔵が手に持った刀の鯉口をチャキリと鳴らした。
笑顔を浮かべたまま、女の手が腰に差していた刀へと伸びた。
仏頂面を浮かべたまま、男の手がデイパックを無造作に後方へ放り投げながら懐から茶色のカードを取り出した。
示し合わせたように、理解し合っていたかのように、互いが互いに武器を構える。
ゲート入り口に備え付けられた受付所のガラスが二人の姿を映し出す。
女・宮本武蔵の青く透き通った瞳と男・スモーキーの黒々とした瞳が交差する。
スモーキーの周囲から耳障りな高音が響く一方で、武蔵が手に持った刀の鯉口をチャキリと鳴らした。
「そんなに殺気が明け透けじゃあ、気付く人にはすぐ気付かれるわよ?」
「そうか。――変身!」
「そうか。――変身!」
刀を抜き放ち一跳びに駆ける武蔵を、無数の鏡像が折り重なる様にして仮面ライダーインペラーへと変身を遂げたスモーキーが迎え撃つ。
先手を打ったは武蔵、受けるはスモーキー。
インペラーの変身動作に要した時間。ほんの数秒程度であるが、武蔵であれば一息に距離を詰めるに足るだけの時間。それがスモーキーにとっては致命的なタイムラグとなった。
低く屈む様な疾走のフォームのまま剣撃の間合いに入り込み、右斜め下に構えた刀を横一文字に振り払う。
直後、響くのは耳障りな金属音。武蔵の視界に膝を折り曲げた状態で右腿を振り上げ、アンクレットで刀の一撃をいなしたインペラーの姿が映る。
先手を打ったは武蔵、受けるはスモーキー。
インペラーの変身動作に要した時間。ほんの数秒程度であるが、武蔵であれば一息に距離を詰めるに足るだけの時間。それがスモーキーにとっては致命的なタイムラグとなった。
低く屈む様な疾走のフォームのまま剣撃の間合いに入り込み、右斜め下に構えた刀を横一文字に振り払う。
直後、響くのは耳障りな金属音。武蔵の視界に膝を折り曲げた状態で右腿を振り上げ、アンクレットで刀の一撃をいなしたインペラーの姿が映る。
(手応えが硬い! 脛当で弾かれた!)
武蔵の瞬撃が神業であれば後手に回ったとはいえスモーキーが咄嗟にその攻撃に反応し、脚部の装甲の中でも頑強なガゼルバイザーによって斬撃を受け流したこともまた神業であると言えるだろう。
勢いを乗せた攻撃を凌がれ踏み込んだ体勢で隙を晒す武蔵であったが、武蔵の斬撃を完全に受け止めきれず衝撃を受け流す様に左回転をしながら後方に跳躍して体勢を建て直したスモーキーにも、攻撃に転じるだけの余裕は無かった。
両腕をだらりと垂らしたスモーキーと日輪刀を正眼に構えた武蔵が再び対峙する。
勢いを乗せた攻撃を凌がれ踏み込んだ体勢で隙を晒す武蔵であったが、武蔵の斬撃を完全に受け止めきれず衝撃を受け流す様に左回転をしながら後方に跳躍して体勢を建て直したスモーキーにも、攻撃に転じるだけの余裕は無かった。
両腕をだらりと垂らしたスモーキーと日輪刀を正眼に構えた武蔵が再び対峙する。
「穏やかじゃないわね。君、女子供も容赦なく殺せる手合い?」
「女子供を残して勝ち残ったとして、俺を含めた全員が帰れると思うか?」
「無理でしょうね」
「そういうことだ」
「女子供を残して勝ち残ったとして、俺を含めた全員が帰れると思うか?」
「無理でしょうね」
「そういうことだ」
互いにじりじりと動きながら距離を測っていく。
動の攻防から一転、静の攻防へと二人がシフトした形だ。
隙1つ見せない武蔵の立ち振舞いをマスクのバイザー越しから覗くスモーキーの表情に微かに渋いものが混ざる。
先程のコブラとの戦闘で認識していたことではあるが、インペラーに変身しているだけで体力を消耗しているのだ。それはいつ病という爆弾が爆発してもおかしくない彼にとって著しいデメリットと言えるだろう。
速やかに決着をつけたいところではあったが、迂闊に攻め込めば刀による迎撃が目に見えている。
無名街の番人として始末してきた外敵の中には当然武器を持った者も存在していた。だが、そんなチンピラ達と目の前の女性では格が違うのは体感したばかりである。先の一撃は運良く対応することが出来たが、それが何度も通用する相手で無いことは理解していた。
また、攻撃を凌いだとはいえ全くの無傷という訳でもない。
斬撃をいなした右膝は微かに痺れる様な痛みを伝えている。斬られることこそ防いだとはいえ高速で打ち払われた金属片を叩きつけられているのだ。軽減出来たとはいえ相応のダメージは受けている。
腕や足の装甲で斬撃を防げたとしても何度も受け続けてしまえば装甲に守られた生身の方が使い物にならなくなってしまうことは明白だろう。
動の攻防から一転、静の攻防へと二人がシフトした形だ。
隙1つ見せない武蔵の立ち振舞いをマスクのバイザー越しから覗くスモーキーの表情に微かに渋いものが混ざる。
先程のコブラとの戦闘で認識していたことではあるが、インペラーに変身しているだけで体力を消耗しているのだ。それはいつ病という爆弾が爆発してもおかしくない彼にとって著しいデメリットと言えるだろう。
速やかに決着をつけたいところではあったが、迂闊に攻め込めば刀による迎撃が目に見えている。
無名街の番人として始末してきた外敵の中には当然武器を持った者も存在していた。だが、そんなチンピラ達と目の前の女性では格が違うのは体感したばかりである。先の一撃は運良く対応することが出来たが、それが何度も通用する相手で無いことは理解していた。
また、攻撃を凌いだとはいえ全くの無傷という訳でもない。
斬撃をいなした右膝は微かに痺れる様な痛みを伝えている。斬られることこそ防いだとはいえ高速で打ち払われた金属片を叩きつけられているのだ。軽減出来たとはいえ相応のダメージは受けている。
腕や足の装甲で斬撃を防げたとしても何度も受け続けてしまえば装甲に守られた生身の方が使い物にならなくなってしまうことは明白だろう。
攻めるに難しといった状況ではあるが打開策はある。インペラーの所持する三枚のカードの内、従僕の怪物を召喚するアドベントだ。質で優れる相手ならば量をもって押し潰せばいい。
だが、問題はこの一息に詰められる距離でカードをガゼルバイザーに差し込めるかである。相手は変身完了の僅かな時間で斬撃を決められる武蔵なのだ。
バイザーを開ける・カードを取り出す・カードを差し込む・怪物が召喚される。この四工程の最中にスモーキーの首が宙を舞う可能性は十分にありえるだろう。
だが、問題はこの一息に詰められる距離でカードをガゼルバイザーに差し込めるかである。相手は変身完了の僅かな時間で斬撃を決められる武蔵なのだ。
バイザーを開ける・カードを取り出す・カードを差し込む・怪物が召喚される。この四工程の最中にスモーキーの首が宙を舞う可能性は十分にありえるだろう。
だが、それを理解している上でスモーキーは屈むように足を折り曲げ、ガゼルバイザーを開封した。
「むざむざ見過ごすと思ってるのかしら!」
再び武蔵が姿勢を低くしながら距離を詰める。次はガゼルバイザーで受け流されぬ様に、右斜め下から斬り上げる腹積もりだ。
先の攻防で自身の力量を理解したと思っていたスモーキーの取った行動に疑念はあったが、だからといって相手の一手を見逃す愚を犯すわけにもいかない。
猫科の肉食獣を連想させるしなやかなバネをもって肉薄する武蔵。
先の攻防で自身の力量を理解したと思っていたスモーキーの取った行動に疑念はあったが、だからといって相手の一手を見逃す愚を犯すわけにもいかない。
猫科の肉食獣を連想させるしなやかなバネをもって肉薄する武蔵。
「思ってないさ」
日輪刀を振り上げる直前に、マスク越しのくぐもった呟きを武蔵の耳が聞き取った。
視線を合わせ、日輪刀を振り払う。極度の集中状態に入った武蔵の視界に徐々に入り込んでくる銀色の閃きは狙い過たず褐色の甲冑の主を逆袈裟に斬り上げる軌道を描いている。
瞬間、その甲冑が宙に浮いた。先程までインペラーのいた空間には既に何物も存在しない。無人の空間を必殺の刃が虚しく通り抜けていく。
視線を合わせ、日輪刀を振り払う。極度の集中状態に入った武蔵の視界に徐々に入り込んでくる銀色の閃きは狙い過たず褐色の甲冑の主を逆袈裟に斬り上げる軌道を描いている。
瞬間、その甲冑が宙に浮いた。先程までインペラーのいた空間には既に何物も存在しない。無人の空間を必殺の刃が虚しく通り抜けていく。
「でも、こうすればお前は必ず斬りかかってくれると思っていた」
上方から響く声。反射的に顔を上げればそこに映ったのは武蔵を見下ろす様に宙を舞うインペラーの姿。バイザー越しの視線と彼女の視線がぶつかる。
カードを挿入する動作で武蔵の攻撃を誘い、インペラーの超人的な脚力を持って武蔵の斬撃に合わせる様に跳躍したのだ。
武蔵が斬り上げの動作から体勢を戻し振り返る頃には跳躍したスモーキーは一回転をしながら入場ゲートの先、最初に武蔵が立っていた
であろう位置付近に着地する直前であった。
着地の間際に折り曲げた右膝のガゼルバイザーに一枚のカードが滑り込み、着地と同時にバイザーが閉まる。
カードを挿入する動作で武蔵の攻撃を誘い、インペラーの超人的な脚力を持って武蔵の斬撃に合わせる様に跳躍したのだ。
武蔵が斬り上げの動作から体勢を戻し振り返る頃には跳躍したスモーキーは一回転をしながら入場ゲートの先、最初に武蔵が立っていた
であろう位置付近に着地する直前であった。
着地の間際に折り曲げた右膝のガゼルバイザーに一枚のカードが滑り込み、着地と同時にバイザーが閉まる。
――ADVENT――
電子音声が響くと同時に変化はすぐに訪れた。
ゆっくりと立ち上がり武蔵へと振り向くスモーキーに呼応する様に、彼の背後から紫の体色をした二本の角の異形、レイヨウ型ミラーモンスターであるギガゼールが姿を現し、甲高い嘶き声を上げながらスモーキーの傍らに立つ。
だが、それだけでは終わらない。ギガゼールに率いられる様に姿を見せる無数の影。同一種のギガゼールや色違い個体のメガゼール、水牛の様な角をしたオメガゼールにネガゼール、羊の様な角をしたマガゼール、リング状の角をしたベガゼールや山羊の様な角をしたイガゼール。
多種多様なレイヨウ型ミラーモンスターが、ある者はスモーキーとギガゼールの横を通りすぎ、またある者はゲートや受付所といった建築物を驚異的な跳躍で飛び越しながら武蔵とスモーキーを遮る様に展開していく。
ゆっくりと立ち上がり武蔵へと振り向くスモーキーに呼応する様に、彼の背後から紫の体色をした二本の角の異形、レイヨウ型ミラーモンスターであるギガゼールが姿を現し、甲高い嘶き声を上げながらスモーキーの傍らに立つ。
だが、それだけでは終わらない。ギガゼールに率いられる様に姿を見せる無数の影。同一種のギガゼールや色違い個体のメガゼール、水牛の様な角をしたオメガゼールにネガゼール、羊の様な角をしたマガゼール、リング状の角をしたベガゼールや山羊の様な角をしたイガゼール。
多種多様なレイヨウ型ミラーモンスターが、ある者はスモーキーとギガゼールの横を通りすぎ、またある者はゲートや受付所といった建築物を驚異的な跳躍で飛び越しながら武蔵とスモーキーを遮る様に展開していく。
「ちょ、ちょっと! 流石にそれって容赦無さすぎじゃない!?」
「やれ」
「やれ」
思わず飛び出した武蔵の非難など気にも留めず、無スモーキーがギガゼール、そしてギガゼールが率いるミラーモンスター達に無慈悲な指示を飛ばす。
数体のゼール種が武蔵を飛び越す形で跳躍し周囲を包囲する形で彼女の逃走経路を塞ぎ、続いて正面より残ったゼール種が腕部のガゼルカッターを展開しながら武蔵を両断すべく殺到していく。
数体のゼール種が武蔵を飛び越す形で跳躍し周囲を包囲する形で彼女の逃走経路を塞ぎ、続いて正面より残ったゼール種が腕部のガゼルカッターを展開しながら武蔵を両断すべく殺到していく。
(鹿人間? 羊人間? 牛人間? どこかの世界の雪国で異国の鹿人間なら斬った記憶はあるけど全然モノが違うわね!)
先陣をきって猛進してくるメガゼールの横薙ぎを紙一重で躱しながら、通り抜けざまを狙って胴部に日輪刀を滑らせる。
悲鳴じみた泣き声を上げながら横向きに一回転しながら転倒するメガゼール。だが、武蔵の手に伝わった手応えは浅い。
悲鳴じみた泣き声を上げながら横向きに一回転しながら転倒するメガゼール。だが、武蔵の手に伝わった手応えは浅い。
(皮が硬い!? 仕留めそこなった!)
小さく舌打ちをしながら続いて飛びかかってきたマガゼール、オメガゼール、ネガゼールの波状攻撃を刀でいなしていく。
その間に倒れていたメガゼールがむくりと起き上がった。武蔵の見立て通り怪人の表皮に完全には刃が通らず殺害にまでは至らなかったのだろう。
ステップを多用しながら攻撃をいなし、どうにか包囲を抜けられないか試みる武蔵ではあったが、連携に優れたゼール達はその都度に陣形を巧妙に変え包囲を崩さずに彼女を追い込んでいく。
一太刀では仕留めきれぬ装甲に加えて多勢に無勢、そして退路を断たれたこの状況。
それをゼール種の輪の外から眺めるスモーキーは自身の勝利を確信した。
このまま持久戦に持ち込めば武蔵は確実に仕留められる。だが、そうすれば変身による消耗で持病が発生する可能性も高まってしまうだろう。
ならば、ここで勝負を決めてしまう必要がある。
その間に倒れていたメガゼールがむくりと起き上がった。武蔵の見立て通り怪人の表皮に完全には刃が通らず殺害にまでは至らなかったのだろう。
ステップを多用しながら攻撃をいなし、どうにか包囲を抜けられないか試みる武蔵ではあったが、連携に優れたゼール達はその都度に陣形を巧妙に変え包囲を崩さずに彼女を追い込んでいく。
一太刀では仕留めきれぬ装甲に加えて多勢に無勢、そして退路を断たれたこの状況。
それをゼール種の輪の外から眺めるスモーキーは自身の勝利を確信した。
このまま持久戦に持ち込めば武蔵は確実に仕留められる。だが、そうすれば変身による消耗で持病が発生する可能性も高まってしまうだろう。
ならば、ここで勝負を決めてしまう必要がある。
「げっ、しまった……!」
不幸にも建物の壁を背にする位置に逃げ込んでしまった武蔵。背にした壁はかなりの高さがあり、飛び越えて逃げることも不可能だろう。カバーする方向が少なくなったことでゼール達の包囲の層が厚くなる。
ここが絶好の機会と判断したスモーキーがギガゼールに勝負を決める様に指示を出す。その指示を電気信号で仲間に通達したギガゼールによりイガゼールとべガゼールが仕掛けた。
地を駆けるべガゼールと跳躍するイガゼールの同時攻撃、二匹四本の死の刃が武蔵へと迫りくる。
ここが絶好の機会と判断したスモーキーがギガゼールに勝負を決める様に指示を出す。その指示を電気信号で仲間に通達したギガゼールによりイガゼールとべガゼールが仕掛けた。
地を駆けるべガゼールと跳躍するイガゼールの同時攻撃、二匹四本の死の刃が武蔵へと迫りくる。
だが、その刃が哀れな犠牲者の命を刈り取ることは叶わなかった。
黒色の閃きが走り抜ける。べガゼールの体を音もなく通り抜けた刃が翻ると同時にずるりとべガゼールの腰から上が滑り落ちて地に落ち爆発する。
交差するようにべガゼールを斬り抜け爆発の範囲からは辛うじて外れていた武蔵は、重力にしたがって背後に着地するイガゼールと向き直り、振り向く暇さえ与えずに頭から唐竹割の要領で刃を振り下ろす。左右に分かれたイガゼールだったものが、ドサリと音を立てて地に倒れ間を置いて爆発した。
爆炎がその身を焼く前に退がっていた武蔵が爆発をバックにスモーキーへと向き直る。
爆風に煽られた前髪がふぁさ、と揺れた。
黒色の閃きが走り抜ける。べガゼールの体を音もなく通り抜けた刃が翻ると同時にずるりとべガゼールの腰から上が滑り落ちて地に落ち爆発する。
交差するようにべガゼールを斬り抜け爆発の範囲からは辛うじて外れていた武蔵は、重力にしたがって背後に着地するイガゼールと向き直り、振り向く暇さえ与えずに頭から唐竹割の要領で刃を振り下ろす。左右に分かれたイガゼールだったものが、ドサリと音を立てて地に倒れ間を置いて爆発した。
爆炎がその身を焼く前に退がっていた武蔵が爆発をバックにスモーキーへと向き直る。
爆風に煽られた前髪がふぁさ、と揺れた。
「侮っていた訳ではないですけれど、普通にやっても斬れないと分かったので斬れるところを斬らせて貰ったわ。それより爆発するって何なのよ! 危ないじゃない!」
得意げな笑顔を浮かべたかと思えば烈火の如く怒り出す武蔵。
想定外の事態にスモーキーはマスクの裏で驚きながらもギガゼールに指示を出し、今度はマガゼール・ネガゼール・オメガゼールの三体を同時に向かわせる。
嘶き飛び交う三つの影と迎え撃つ一つの影。武蔵の青く澄んだ瞳がキュウッと絞まり、刃が三度閃いた。
刃を交差させることすら叶わずに一太刀で切り伏せられたゼール達が爆発するが、既に爆発の範囲を見切り飛び退った武蔵に影響はない。
天眼。無数にある未来の中から“対象を斬る”という結果にたいして最適解の斬撃を繰り出すことの出来る、彼女の保有する特殊な魔眼。それを用いて頑健な表皮を持つゼール種を切り伏せるに最適な斬撃を繰り出したのだ。
想定外の事態にスモーキーはマスクの裏で驚きながらもギガゼールに指示を出し、今度はマガゼール・ネガゼール・オメガゼールの三体を同時に向かわせる。
嘶き飛び交う三つの影と迎え撃つ一つの影。武蔵の青く澄んだ瞳がキュウッと絞まり、刃が三度閃いた。
刃を交差させることすら叶わずに一太刀で切り伏せられたゼール達が爆発するが、既に爆発の範囲を見切り飛び退った武蔵に影響はない。
天眼。無数にある未来の中から“対象を斬る”という結果にたいして最適解の斬撃を繰り出すことの出来る、彼女の保有する特殊な魔眼。それを用いて頑健な表皮を持つゼール種を切り伏せるに最適な斬撃を繰り出したのだ。
「さあ、かかってくるなら来なさいな。生憎と多勢に無勢の戦いは吉岡殿のところで経験済みです。そうそう後れを取るなんて思わないことね」
そう言って壁を背に不敵に笑う武蔵。
聳える壁は武蔵の移動を封じているが、それと同時にゼール達の攻撃経路も封鎖している。これでは仕掛けるルートが減少し、その分だけ武蔵への各方面からの攻撃に対する警戒で発生する負担も減少することになるだろう。追い込んだ筈が、全周囲を包囲していた先ほどまでと異なりスモーキーの優位が下がった形だ。
聳える壁は武蔵の移動を封じているが、それと同時にゼール達の攻撃経路も封鎖している。これでは仕掛けるルートが減少し、その分だけ武蔵への各方面からの攻撃に対する警戒で発生する負担も減少することになるだろう。追い込んだ筈が、全周囲を包囲していた先ほどまでと異なりスモーキーの優位が下がった形だ。
「わざとここに逃げたな、追い詰められたフリまでしやがって」
「あら、バレちゃった?」
「あら、バレちゃった?」
不愉快げなスモーキーの問いかけに対し、武蔵が悪戯っぽく笑う。
ここに来てスモーキーは彼女が追い込まれてこの位置まで来たのではなく、追い込まれたフリをしてこの位置まで移動してきたのだという事に気がついたのだ。
元より迎撃をするつもりで立ち回っていたというのであれば退路の一つが封じられたというデメリットは敵の攻撃経路を一つ封じたというメリットに反転する。
無論、この状況、この戦力差において全て迎撃出来るという常人から見れば無理難題としか言えない前提の理屈があってこその策ではあるが、武蔵はその無理難題を己の技量をもってすれば実行可能であると判断してここまで手を進めてきたのだ。
ここに来てスモーキーは彼女が追い込まれてこの位置まで来たのではなく、追い込まれたフリをしてこの位置まで移動してきたのだという事に気がついたのだ。
元より迎撃をするつもりで立ち回っていたというのであれば退路の一つが封じられたというデメリットは敵の攻撃経路を一つ封じたというメリットに反転する。
無論、この状況、この戦力差において全て迎撃出来るという常人から見れば無理難題としか言えない前提の理屈があってこその策ではあるが、武蔵はその無理難題を己の技量をもってすれば実行可能であると判断してここまで手を進めてきたのだ。
スモーキーが指示を飛ばしゼールの群れを殺到させる。
単身で攻め入ることは論外として、ゼール種に混じって攻撃を仕掛けようにも切り伏せられたゼール種の爆発のせいで行動が制限されては自身も武蔵の餌食になる可能性が上がってしまう以上、指示を飛ばすことに徹して物量によって強引に武蔵を攻め落とす。それ以外に打てる筋は存在しない。
スモーキーの視界に武蔵に切り捨てられては次々と爆散していく己の配下の姿が映し出されていく。
夜の闇の下で煌々とした光に照らされて舞うように戦う武蔵の姿は見る物が見れば美しさを感じるだろうがスモーキーにはそんな余裕はない。
単身で攻め入ることは論外として、ゼール種に混じって攻撃を仕掛けようにも切り伏せられたゼール種の爆発のせいで行動が制限されては自身も武蔵の餌食になる可能性が上がってしまう以上、指示を飛ばすことに徹して物量によって強引に武蔵を攻め落とす。それ以外に打てる筋は存在しない。
スモーキーの視界に武蔵に切り捨てられては次々と爆散していく己の配下の姿が映し出されていく。
夜の闇の下で煌々とした光に照らされて舞うように戦う武蔵の姿は見る物が見れば美しさを感じるだろうがスモーキーにはそんな余裕はない。
目減りしていく戦力を前にどうにかして打開策を浮かべようと思考を巡らすスモーキー。
その体を不意に激痛が襲った。
その体を不意に激痛が襲った。
「……ッ! ゴフッ!」
肺を締め付ける様な感覚に反射的にプロテクターの胸部へ手をあて、込み上げる嘔吐感から堪えきれずに咳き込む。マスクに付着した吐瀉物から酸化した鉄を思わせる匂いが鼻孔を刺激する。
嗅ぎなれた匂い。血の匂い。
自身のタイムリミットを宣告する忌まわしき匂い。
嗅ぎなれた匂い。血の匂い。
自身のタイムリミットを宣告する忌まわしき匂い。
(こんな、時にか)
肩で息をしながら武蔵へと視線を向ける。迫り来るゼール種の群れを斬ることに集中している彼女がスモーキーの身を蝕む不調に気付いた様子はない。
悠長に相手の体力切れを狙う手はこの時点でもう不可能となってしまた。どう贔屓目に見てもこの状況で先に音をあげるのは自身の体であることは明白だ。
ここでスモーキーに逃走という選択肢が脳裏を過る。今召喚しているゼール種を捨て駒にし、インペラーの脚力を駆使すれば撤退は容易だろう。
だが、その一方でここで武蔵を生かしておくことの危険性も理解してた。彼女が他の参加者に自分が殺し合いに乗ったことを告げられれば警戒されることは必至である。そのうえもしも村山や雨宮兄弟の耳にまで話が入ればどうなるか。彼らは自分の病気についても知っている。
身体的なハンデがある以上、勝ち抜くための手札はそれほど多くない。不利な状況とはいえもう1つの切り札を考えれば武蔵を倒す機がない訳ではないのだ。その葛藤がスモーキーの判断を鈍らせる。
悠長に相手の体力切れを狙う手はこの時点でもう不可能となってしまた。どう贔屓目に見てもこの状況で先に音をあげるのは自身の体であることは明白だ。
ここでスモーキーに逃走という選択肢が脳裏を過る。今召喚しているゼール種を捨て駒にし、インペラーの脚力を駆使すれば撤退は容易だろう。
だが、その一方でここで武蔵を生かしておくことの危険性も理解してた。彼女が他の参加者に自分が殺し合いに乗ったことを告げられれば警戒されることは必至である。そのうえもしも村山や雨宮兄弟の耳にまで話が入ればどうなるか。彼らは自分の病気についても知っている。
身体的なハンデがある以上、勝ち抜くための手札はそれほど多くない。不利な状況とはいえもう1つの切り札を考えれば武蔵を倒す機がない訳ではないのだ。その葛藤がスモーキーの判断を鈍らせる。
そんな時、甲高い済んだ音が響いた。
「あーっ!?」
すっとんきょうな武蔵の声と共に1/3程折れた日輪刀の先端が宙を舞う。なにやらどす黒い怨念の様なものが立ち上ったかもしれないが、それはすぐに霧散して消えた。
ガゼルバイザーへの一撃とメガゼールへの一太刀目で更に寿命を縮めていた日輪刀が度重なる斬撃の衝撃に耐えきれずとうとう折れてしまったのだ。
これを好機と見たかゼールの群れが飛びかかるも、武蔵は器用にも折れた刀を使って全て切り捨てて見せた。しかし、刀が破損する前に比べれば動きに余裕は無くなったのは端から見ているスモーキーの目にも明らかだ。
ガゼルバイザーへの一撃とメガゼールへの一太刀目で更に寿命を縮めていた日輪刀が度重なる斬撃の衝撃に耐えきれずとうとう折れてしまったのだ。
これを好機と見たかゼールの群れが飛びかかるも、武蔵は器用にも折れた刀を使って全て切り捨てて見せた。しかし、刀が破損する前に比べれば動きに余裕は無くなったのは端から見ているスモーキーの目にも明らかだ。
機が、向こうからやってきた。
武蔵の刀の事情など知る由もないが望外の幸運が転がり込んできたスモーキーがギガゼールに指示を出し最低限のゼールを武蔵の包囲に向かわせて自らの元へと呼び寄せる。
武蔵が敵の動きに変化が出た事に気付き、攻撃をいなしながらスモーキーへと視線を向ける。だが、今の武蔵に包囲を突破するだけの余裕は見られない。
右足を折り曲げガゼルバイザーを開きながら一枚のカードを取り出す。どういったカードなのかは漠然とながら理解はしていた。
視線を正面の武蔵へと向ける。
武蔵の刀の事情など知る由もないが望外の幸運が転がり込んできたスモーキーがギガゼールに指示を出し最低限のゼールを武蔵の包囲に向かわせて自らの元へと呼び寄せる。
武蔵が敵の動きに変化が出た事に気付き、攻撃をいなしながらスモーキーへと視線を向ける。だが、今の武蔵に包囲を突破するだけの余裕は見られない。
右足を折り曲げガゼルバイザーを開きながら一枚のカードを取り出す。どういったカードなのかは漠然とながら理解はしていた。
視線を正面の武蔵へと向ける。
「お前は強い」
称賛の言葉は本心だ。
SWORDの一角、RUDE BOYSのリーダーとして腕にものを言わせていた自分が、この不可思議なプロテクターを装着しなければ勝負にすらならなかったであろう相手である。
味方であったならば心強かったであろう。
敵であったからここまで追い込まれたのだろう。
あまりにも強力で絶対的な実力差。
いつだってスモーキーの行く手を阻んできた理不尽という名の高く厚く聳える壁が、今回は人間の女性の姿を借りて顕現した様にも思える程だった。
SWORDの一角、RUDE BOYSのリーダーとして腕にものを言わせていた自分が、この不可思議なプロテクターを装着しなければ勝負にすらならなかったであろう相手である。
味方であったならば心強かったであろう。
敵であったからここまで追い込まれたのだろう。
あまりにも強力で絶対的な実力差。
いつだってスモーキーの行く手を阻んできた理不尽という名の高く厚く聳える壁が、今回は人間の女性の姿を借りて顕現した様にも思える程だった。
「だけど、俺はお前よりも高く飛ぶ」
それでも、だからといってその壁を飛び越えることを諦めていい道理など存在しない。
いつだってスモーキーは理不尽の壁を飛び越えてきた。
時には飛び越えきれずにぶち当たり、傷つき地面を転げ回ることもあった。だが、それでも飛び越えようとする事を諦めることだけはしなかった。
だから、今回だって飛び越えて見せる。そんな決意を胸の裡に燃やしながら、スモーキーは最後の切り札をガゼルバイザーに滑り込ませる。
いつだってスモーキーは理不尽の壁を飛び越えてきた。
時には飛び越えきれずにぶち当たり、傷つき地面を転げ回ることもあった。だが、それでも飛び越えようとする事を諦めることだけはしなかった。
だから、今回だって飛び越えて見せる。そんな決意を胸の裡に燃やしながら、スモーキーは最後の切り札をガゼルバイザーに滑り込ませる。
――FINAL VENT――
電子音声が鳴り響くと共にその場にいる全てのゼール種が武蔵目がけて飛びかかる。形容するのであればゼール種の奔流といった所だろうか。
両腕のブレードを展開させながら疾駆するゼールの群れが武蔵を飲み込む。武蔵を直接狙うというよりも、その動きは武蔵の行動を制限することに主眼が置かれていた。
それも当然だろう、この攻撃の本質は無数のゼール種の攪乱によって動きを止めた相手に向けてインペラーの必殺の一撃を当てるためのものだからだ。
スモーキーが駆ける。足に込めたエネルギーを迸らせながら向かうは宮本武蔵ただ一人。
足止めを担当したゼール達の活躍により無事にゼールの波に武蔵を巻き込む事が出来た。もはやこの攻撃から逃げることなど能わない。
両腕のブレードを展開させながら疾駆するゼールの群れが武蔵を飲み込む。武蔵を直接狙うというよりも、その動きは武蔵の行動を制限することに主眼が置かれていた。
それも当然だろう、この攻撃の本質は無数のゼール種の攪乱によって動きを止めた相手に向けてインペラーの必殺の一撃を当てるためのものだからだ。
スモーキーが駆ける。足に込めたエネルギーを迸らせながら向かうは宮本武蔵ただ一人。
足止めを担当したゼール達の活躍により無事にゼールの波に武蔵を巻き込む事が出来た。もはやこの攻撃から逃げることなど能わない。
紙一重で顔を逸らした武蔵の前髪が僅かにブレードで裂かれて宙を舞う。
武蔵はただ黙して迫りくる獣の群れを睨み据える。
武蔵はただ黙して迫りくる獣の群れを睨み据える。
避け損ねた武蔵の頬に一筋の赤い線が刻まれる。
武蔵は動じず、ただ刀を構え正面を見据え続ける。
武蔵は動じず、ただ刀を構え正面を見据え続ける。
左肩の皮を薄く切られ鮮血が舞う。
武蔵は顔を僅かに顰めるがそれでもまだ視線を正面から離さない。
武蔵は顔を僅かに顰めるがそれでもまだ視線を正面から離さない。
避けきれず受けた刀が破片を散らす。
武蔵の視線が僅かに刀に向かう。残ったのは元の長さの1/2だろうか、もはや武器として使い続けることは不可能なほどに破壊された。
武蔵の視線が僅かに刀に向かう。残ったのは元の長さの1/2だろうか、もはや武器として使い続けることは不可能なほどに破壊された。
これで決める。そう決意しスモーキーが両足に力を込める。
不意に、武蔵が動いた。
不意に、武蔵が動いた。
眼前で跳躍しようとしたギガゼールに向けて目にも留まらぬ速さで刀を突き出す。
ゾブリとギガゼールの胴体の中心突き刺さる半壊した刃。甲高い悲鳴を上げギガゼールが絶命する。
瞬間、スモーキーの体を、正確には装着しているプロテクター装甲越しに急激に力が抜けていく感覚が襲う。
ゾブリとギガゼールの胴体の中心突き刺さる半壊した刃。甲高い悲鳴を上げギガゼールが絶命する。
瞬間、スモーキーの体を、正確には装着しているプロテクター装甲越しに急激に力が抜けていく感覚が襲う。
(何が……!?)
突然の事態に困惑しながらも疾走を続けるスモーキーの視界に映るインペラーのプロテクターに異変が発生していた。
腕部や手の甲を覆う褐色のアーマー部分が塵の様な粒子となって灰色の装甲を露出させていく。それと比例するように重くなる体。
スモーキーは気付く。今目の前で殺害されたギガゼールがアドベントと同時に真っ先に現れた個体であることを、常に彼が他のゼール種を動かす時に指示を出していた個体だということを。
腕部や手の甲を覆う褐色のアーマー部分が塵の様な粒子となって灰色の装甲を露出させていく。それと比例するように重くなる体。
スモーキーは気付く。今目の前で殺害されたギガゼールがアドベントと同時に真っ先に現れた個体であることを、常に彼が他のゼール種を動かす時に指示を出していた個体だということを。
ミラーモンスターと契約を前提した仮面ライダー達の弱点の一つに契約したミラーモンスターを殺害するという物がある。
契約したモンスターを殺されたライダーはその力を失いブランク体という極度に弱体化した形態となってしまう。
無数のゼール種を従えるインペラーであるが契約しているのはギガゼールの一匹だけであり、それ以外は契約したギガゼールが呼び出した眷属である。
とどのつまり、無数のギガゼールの中から契約した一体だけを殺害出来ればインペラーは大幅に弱体することなり、今まさに殺害されたギガゼールこそがその契約した個体であったのだ。
契約したモンスターを殺されたライダーはその力を失いブランク体という極度に弱体化した形態となってしまう。
無数のゼール種を従えるインペラーであるが契約しているのはギガゼールの一匹だけであり、それ以外は契約したギガゼールが呼び出した眷属である。
とどのつまり、無数のギガゼールの中から契約した一体だけを殺害出来ればインペラーは大幅に弱体することなり、今まさに殺害されたギガゼールこそがその契約した個体であったのだ。
武蔵がその事実を知っていた訳ではない。ただ、スモーキーがゼール種の群れを召喚してから司令塔となっていた一頭をずっと気に留めていたのだ。
連携してくる敵の厄介さは十分に熟知している。故に武蔵は是が非でも司令塔らしきギガゼールを仕留めたかったのだが、スモーキーの傍らに侍るギガゼールは無数のゼール種に行く手を阻まれその機会は得られない。
だが、スモーキーのファイナルベントにより全てのゼール種が攻撃体勢に入ったことで予期せぬ好機が舞い降りたのだった。
スモーキーがどんな技を仕掛けるのか見当はついていなくとも、大軍の要、将と例えても遜色のない怪人を仕留めることが出来れば相手の戦力の低下には繋がるだろうと直感した武蔵は、ただ一頭のギガゼールを仕留めることだけに全力を傾けたのだ。
連携してくる敵の厄介さは十分に熟知している。故に武蔵は是が非でも司令塔らしきギガゼールを仕留めたかったのだが、スモーキーの傍らに侍るギガゼールは無数のゼール種に行く手を阻まれその機会は得られない。
だが、スモーキーのファイナルベントにより全てのゼール種が攻撃体勢に入ったことで予期せぬ好機が舞い降りたのだった。
スモーキーがどんな技を仕掛けるのか見当はついていなくとも、大軍の要、将と例えても遜色のない怪人を仕留めることが出来れば相手の戦力の低下には繋がるだろうと直感した武蔵は、ただ一頭のギガゼールを仕留めることだけに全力を傾けたのだ。
果たして武蔵はギガゼールを討った。
その一突きがこの勝負の趨勢を決めるに足る一撃であったということは彼女も、そしてスモーキーも予想していなかったことだろうが。
その一突きがこの勝負の趨勢を決めるに足る一撃であったということは彼女も、そしてスモーキーも予想していなかったことだろうが。
それでもなおスモーキーは駆ける。駆ける以外の道などもう存在しない。
その身が覆う装甲が茶褐色から灰色に変わっていく様はまるで燃え尽きて灰になってしまうかのようだ。
そんなスモーキーの行く手を無慈悲にも遮る様な形で、武蔵は突き刺した刀を抜きざまにギガゼールの死体を蹴りだした。死体とスモーキーが重なる刹那、ギガゼールの爆炎がスモーキーの体を包んだ。
その身が覆う装甲が茶褐色から灰色に変わっていく様はまるで燃え尽きて灰になってしまうかのようだ。
そんなスモーキーの行く手を無慈悲にも遮る様な形で、武蔵は突き刺した刀を抜きざまにギガゼールの死体を蹴りだした。死体とスモーキーが重なる刹那、ギガゼールの爆炎がスモーキーの体を包んだ。
「司令塔っぽいのを落とせばなんとかなりそうとは読んだけれども、ここまで効果的だったとはね」
爆炎を尻目に武蔵が周囲を見渡せば、困惑を隠す事無く狼狽えるゼール達が何処かへと消滅していくのが見える。
契約していたギガゼールを仲介して召喚されていた以上、仲介役が消えたことでアドベントの効果は失われ彼らが元々存在するミラーワールドへと強制送還されてしまったのだ。
この場にいるのは武蔵、そして爆炎に呑まれたスモーキーだけとなった。
契約していたギガゼールを仲介して召喚されていた以上、仲介役が消えたことでアドベントの効果は失われ彼らが元々存在するミラーワールドへと強制送還されてしまったのだ。
この場にいるのは武蔵、そして爆炎に呑まれたスモーキーだけとなった。
「このままあの子が倒れてくれていればありがたいけど、まあそこまで上手い話しもないわよね」
爆炎が消え、煙が晴れていく。
ギガゼールを突き刺した事でとうとう刀としての寿命を完全に使い果たした日輪刀を握りながら状況を見守っていた武蔵の視界にゆらりと一つの影が立つ。
完全にグレーと黒のツートンカラーとなったインペラーがだらりと下がった左腕を抑えながら立っていた。
見るも痛々しい姿ではあったがバイザー越しに光る瞳はまだ死んでなどいない。
ギガゼールを突き刺した事でとうとう刀としての寿命を完全に使い果たした日輪刀を握りながら状況を見守っていた武蔵の視界にゆらりと一つの影が立つ。
完全にグレーと黒のツートンカラーとなったインペラーがだらりと下がった左腕を抑えながら立っていた。
見るも痛々しい姿ではあったがバイザー越しに光る瞳はまだ死んでなどいない。
ここから先は徒手空拳かと身構える武蔵の前に一歩スモーキーが足を踏み出す。
直後、スモーキーの体がビクリと跳ねた。
直後、スモーキーの体がビクリと跳ねた。
「……ガッ! ゲフッ、ゴホッ! ガハッ!」
踏み出した足から崩れ落ちる様にして蹲ったスモーキーが激しくせき込む。
胸を押さえ、体を震わせ、何度も何度も苦し気な咳を出す。
タイムリミットがやってきたのだ。最早スモーキーの体は戦闘もインペラーへの変視認も耐える事が出来なくっていた。震える指がVバックルへと伸び、変身を解除する。
胸を押さえ、体を震わせ、何度も何度も苦し気な咳を出す。
タイムリミットがやってきたのだ。最早スモーキーの体は戦闘もインペラーへの変視認も耐える事が出来なくっていた。震える指がVバックルへと伸び、変身を解除する。
人の姿へと戻ったスモーキーが口許を赤い血で汚しながら地に転がった。
仰向けに転がり、胸で息をするスモーキーに影が差し込む。武蔵が、スモーキーを見下ろす。
こうして二人の戦いはなんとも呆気ない幕切れを迎えることとなった
仰向けに転がり、胸で息をするスモーキーに影が差し込む。武蔵が、スモーキーを見下ろす。
こうして二人の戦いはなんとも呆気ない幕切れを迎えることとなった
「まさか、病人だったなんてね。その様子だと肺かしら」
「さあな」
「さあな」
武蔵が話しかける。
スモーキーが答える。
どうにか体を動かそうするスモーキーだが、体がいう事を聞いてくれない。
武蔵はそれを黙ってみているだけで妨害をする素振りすら見せない。それが無駄な試みだと分かっていたからだ。
スモーキーが答える。
どうにか体を動かそうするスモーキーだが、体がいう事を聞いてくれない。
武蔵はそれを黙ってみているだけで妨害をする素振りすら見せない。それが無駄な試みだと分かっていたからだ。
「俺は、帰らなくちゃならないんだ……、俺の家族の下に」
それでもなお、スモーキーは足掻き続ける。
彼の帰りを待っている家族がいる。
あの無名街で自分に大切なものをくれた家族たちが自分の帰り待っている。
だから、足掻く。
足掻く。
足掻き続ける。
彼の帰りを待っている家族がいる。
あの無名街で自分に大切なものをくれた家族たちが自分の帰り待っている。
だから、足掻く。
足掻く。
足掻き続ける。
それでも、体は動いてなどくれなかった。
「そう、それが君が人を殺そうとした理由なのね」
その様を見下ろしながら、武蔵が呟く。
スモーキーは答えない。ただ無言で武蔵と視線を合わせる。
スモーキーは答えない。ただ無言で武蔵と視線を合わせる。
武蔵が屈み込み、徐々に日輪刀だったものを持った腕を上へ向ける。破損したとはいえ、そのボロボロの刃先を突き刺せば人一人の命など十分に奪えるだろう。
スモーキーは抵抗できない。罵倒すらせずにただ武蔵を見つめている。
互いに無言。後は武蔵が振り上げた腕を下ろすだけで全ては終わるだろう。
スモーキーは抵抗できない。罵倒すらせずにただ武蔵を見つめている。
互いに無言。後は武蔵が振り上げた腕を下ろすだけで全ては終わるだろう。
「ごめんな、皆」
スモーキーの口から謝罪の言葉が零れる。
果たしてその”皆”とは誰の事を指しているのか。
果たしてその謝罪はいったい何を指しているのか。
武蔵には分かる筈もない。
果たしてその”皆”とは誰の事を指しているのか。
果たしてその謝罪はいったい何を指しているのか。
武蔵には分かる筈もない。
そして、武蔵は無言で腕を振り下ろした。
◆
「いやーなんというか、悪運が強いというか」
戦闘の跡地で武蔵は神妙な顔をしながら一振りの刀を眺めていた。
スモーキーの放り投げたデイパックに何か使える物がないかと漁っていた彼女は幸運にも探し求めていた武器を見つけたのだ。
……もっとも、当初もっていた最後の一振りを完全に破壊してしまった以上、彼女はもう一振り刀が必要になった訳であるのが。
スモーキーの放り投げたデイパックに何か使える物がないかと漁っていた彼女は幸運にも探し求めていた武器を見つけたのだ。
……もっとも、当初もっていた最後の一振りを完全に破壊してしまった以上、彼女はもう一振り刀が必要になった訳であるのが。
「しかし、この刀がねぇ。あれ? でもあいつが使ってるのって長船の方じゃなかったかしら。まあいいか」
付属の説明書を見ながら眉根を寄せる。その支給品は彼女にとってもある意味では縁の深いものであったからだ。
五尺あまりはあろうかという長刀。本来であれば彼女のライバルと称される剣士が使っていた刀を感慨深げに武蔵は見つめる。
備中青江、俗称を物干し竿。説明書にサーヴァントの佐々木小次郎が使用している愛刀と記載されたそれは武蔵に奇妙な運命じみたものを感じさせた。
五尺あまりはあろうかという長刀。本来であれば彼女のライバルと称される剣士が使っていた刀を感慨深げに武蔵は見つめる。
備中青江、俗称を物干し竿。説明書にサーヴァントの佐々木小次郎が使用している愛刀と記載されたそれは武蔵に奇妙な運命じみたものを感じさせた。
「一先ず得物は確保出来て、食料も、うん。何とかできそう。後は……」
物干し竿を背負いながら、地面に転がっている物体へと視界を向ける。
それは大の字に倒れ伏すスモーキー。その身体に傷らしい傷は頭に出来たこぶ一つといったところだろうか。
そう、スモーキーは生きている。武蔵が振り下ろしたのは日輪刀の柄の部分であり、彼は昏倒しているだけにすぎなかったのだ。
それは大の字に倒れ伏すスモーキー。その身体に傷らしい傷は頭に出来たこぶ一つといったところだろうか。
そう、スモーキーは生きている。武蔵が振り下ろしたのは日輪刀の柄の部分であり、彼は昏倒しているだけにすぎなかったのだ。
「はあ、甘いなぁ私も」
厄介事を背負ったことを自覚している武蔵はため息を吐きながら夜空を見上げてぼやく。
殺すことも出来た。
躊躇なく殺そうとしてきた以上は殺されても文句は言えない。武蔵はそう思っている。
例えどんな理由があろうとも人の命を奪おうとするのであれば奪われたとて文句はいえないし、あまつさえここには彼女の知り合いがいる。普段の彼女であれば累が及ぶことを危惧して刃の部分を振り下ろしていただろう。
殺すことも出来た。
躊躇なく殺そうとしてきた以上は殺されても文句は言えない。武蔵はそう思っている。
例えどんな理由があろうとも人の命を奪おうとするのであれば奪われたとて文句はいえないし、あまつさえここには彼女の知り合いがいる。普段の彼女であれば累が及ぶことを危惧して刃の部分を振り下ろしていただろう。
「でも、きっとあの子ならそうしたでしょうしね」
そう呟きながら思い出すのは、ここに呼ばれるまでともにいたカルデアのマスター、藤丸立香のことだった。
命を奪おうとした直前に武蔵は思ってしまった。”藤丸立香ならこの男をどうするだろう”と。
悲しむだろう。怒るだろう。
だが、それでも。それでも最終的にきっと彼はこの青年を助け一緒に脱出しようと説得するのだろう。
無論、宮本武蔵は藤丸立香ではない。必要があれば卑怯な振る舞いもするし躊躇なく人の命を奪うことだってやってのける。
それでも、彼と共にある時は弱きを助け強きをくじく正義の剣士であろうとした。
今この島のどこかには彼がいる。そんな一時の相棒のことを思い浮かべてしまった武蔵は気がつけば柄の方でスモーキーを殴り飛ばしていた。
命を奪おうとした直前に武蔵は思ってしまった。”藤丸立香ならこの男をどうするだろう”と。
悲しむだろう。怒るだろう。
だが、それでも。それでも最終的にきっと彼はこの青年を助け一緒に脱出しようと説得するのだろう。
無論、宮本武蔵は藤丸立香ではない。必要があれば卑怯な振る舞いもするし躊躇なく人の命を奪うことだってやってのける。
それでも、彼と共にある時は弱きを助け強きをくじく正義の剣士であろうとした。
今この島のどこかには彼がいる。そんな一時の相棒のことを思い浮かべてしまった武蔵は気がつけば柄の方でスモーキーを殴り飛ばしていた。
「諭すっていうのは得意じゃないけれど、一先ずはこの子が目覚めるまでゆっくりしてますか。流石に疲れちゃったし」
そうして武蔵は気絶したスモーキーを背負い自衛隊の営舎へと入っていく。
時に一人の勇敢な少年が命を散らす前のことであった。
時に一人の勇敢な少年が命を散らす前のことであった。
【B-5・自衛隊入間基地/1日目・黎明】
【新免武蔵守藤原玄信@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、疲労(中)、頬や肩に軽度の裂傷
[道具]:物干し竿@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:無空の高みに至る。藤丸立香と合流する。
1:基地で休憩する
2:この子(スモーキー)が目を覚ましたら一応説得してみる
3:強者との戦いで、あと一歩の剣の『なにか』を掴む
[備考]
※参戦時期、セイバー・エンピレオ戦の最中。空位に至る前。
※彼女が知っている藤丸立香は、というより何故かこの宮本武蔵は、『男の藤丸立香』を知る宮本武蔵である。
[状態]:健康、疲労(中)、頬や肩に軽度の裂傷
[道具]:物干し竿@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:無空の高みに至る。藤丸立香と合流する。
1:基地で休憩する
2:この子(スモーキー)が目を覚ましたら一応説得してみる
3:強者との戦いで、あと一歩の剣の『なにか』を掴む
[備考]
※参戦時期、セイバー・エンピレオ戦の最中。空位に至る前。
※彼女が知っている藤丸立香は、というより何故かこの宮本武蔵は、『男の藤丸立香』を知る宮本武蔵である。
【スモーキー@HiGH & LOW】
[状態]:体力消耗(大)、気絶、病気
[道具]:基本支給品一式、仮面ライダーインペラー(ブランク体)のデッキ、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:全員を殺して、無名街へと、家族の下へと帰る。
1:??????
2:MAP上の無名街に向かう
[備考]
※契約していたギガゼールが死亡したことにより仮面ライダーインペラーに変身するとブランク体になります。コントラクトカードでミラーモンスターの再契約しない限りはこの状態が継続します。
[状態]:体力消耗(大)、気絶、病気
[道具]:基本支給品一式、仮面ライダーインペラー(ブランク体)のデッキ、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:全員を殺して、無名街へと、家族の下へと帰る。
1:??????
2:MAP上の無名街に向かう
[備考]
※契約していたギガゼールが死亡したことにより仮面ライダーインペラーに変身するとブランク体になります。コントラクトカードでミラーモンスターの再契約しない限りはこの状態が継続します。
【物干し竿@Fate/Grand Order】
佐々木小次郎の愛刀。五尺余りの長刀で備中青江。
特に特殊能力とかはない
佐々木小次郎の愛刀。五尺余りの長刀で備中青江。
特に特殊能力とかはない
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 武蔵、出逢う! | 新免武蔵守藤原玄信 | SHADOWS DIE TWICE |
| あの日に見た明日を捨てきれない | スモーキー |