姉弟 ◆TyYO48RGw2
■ ■
「七花。どいてなさい。わたしはそこの草を毟りたいだけなのよ」
本人たちの知るよしもないことだが、いわゆるお約束である。
現代でいうところの天丼芸というやつだ。
むろんのこと、本人たちに漫才をする意思は毛頭なく、結果として同じ言葉を吐くことになった――ただそれだけの話であり、やはりこれは漫才ではなく、真剣勝負。
比喩でなく、刀と刀との鍔迫り合い。剣呑な雰囲気が三人――あるいは二人の間を取り巻いていた。
現代でいうところの天丼芸というやつだ。
むろんのこと、本人たちに漫才をする意思は毛頭なく、結果として同じ言葉を吐くことになった――ただそれだけの話であり、やはりこれは漫才ではなく、真剣勝負。
比喩でなく、刀と刀との鍔迫り合い。剣呑な雰囲気が三人――あるいは二人の間を取り巻いていた。
「姉ちゃん、邪魔するなよ。おれはとがめを病院とやらに送らなきゃいけないんだ」
一人は、走った影響か、ぼさぼさ頭をさらに乱した長身の男、虚刀流七代目当主・鑢七花である。
鍛え上げられた肉体に偽りはなく、小柄とはいえ人を背負い走っていたにも関わらず息を切らした様子もない。
かの剣聖、前日本最強であるところの錆白兵を打ち破った――すなわち現日本最強の男だと思えば、むべなるかな。
ただし、そんな七花をして額に汗がたらりと落ちた。
疲労による汗ではなく、恐るべきものを前にして流れる冷や汗。これほどまでに背筋が凍ることもなかったな、と七花は顧みる。
鍛え上げられた肉体に偽りはなく、小柄とはいえ人を背負い走っていたにも関わらず息を切らした様子もない。
かの剣聖、前日本最強であるところの錆白兵を打ち破った――すなわち現日本最強の男だと思えば、むべなるかな。
ただし、そんな七花をして額に汗がたらりと落ちた。
疲労による汗ではなく、恐るべきものを前にして流れる冷や汗。これほどまでに背筋が凍ることもなかったな、と七花は顧みる。
「病院? ――ああ、あの。いいですか、七花。このような果し合いの舞台に医者がいるわけないでしょう」
七花と対するは、女であった。
簡素な着物に身を包んだ女からはどこか儚げな印象を受ける。
いかにも死にそうな――むしろ死んでいるのに動いているような――死体のような雰囲気さえ漂っていた。
七花が咄嗟に身構えた一方で、女は構えるどころか両手をぶら下げたまま、一歩、また一歩と七花へと無遠慮に近づいていく。
七花は知っている。構えないのではない。女にとって構えなど不要であることを。
女にいわく、虚刀流、零の型『無花果』。
そして女とは当然、鑢家家長・鑢七実のことであった。
簡素な着物に身を包んだ女からはどこか儚げな印象を受ける。
いかにも死にそうな――むしろ死んでいるのに動いているような――死体のような雰囲気さえ漂っていた。
七花が咄嗟に身構えた一方で、女は構えるどころか両手をぶら下げたまま、一歩、また一歩と七花へと無遠慮に近づいていく。
七花は知っている。構えないのではない。女にとって構えなど不要であることを。
女にいわく、虚刀流、零の型『無花果』。
そして女とは当然、鑢家家長・鑢七実のことであった。
「それでもとがめを放っておくことなんて出来るかよ」
この場に居合わせるは残り一人。
白く染められた総髪の女――尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督こと、奇策士とがめだ。
七花の背に身体を預けたまま、依然として気を失っている。
回復を待つように、解放を待つように。さながら蛹のように、眠っていた。
七実の視線がとがめへと走る。
じっくりと、見る――視る――観る――看る――診る。
たっぷりと、聞く――聴く――訊く――効く――利く。
目を使い、耳を扱い、とがめの『容態』を窺う。
果てに、七実から漏れ出たのは浅い溜息だ。物思いの似合う女である。
白く染められた総髪の女――尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督こと、奇策士とがめだ。
七花の背に身体を預けたまま、依然として気を失っている。
回復を待つように、解放を待つように。さながら蛹のように、眠っていた。
七実の視線がとがめへと走る。
じっくりと、見る――視る――観る――看る――診る。
たっぷりと、聞く――聴く――訊く――効く――利く。
目を使い、耳を扱い、とがめの『容態』を窺う。
果てに、七実から漏れ出たのは浅い溜息だ。物思いの似合う女である。
「ふう。七花。もう一度だけ言ってあげる。それをわたしに毟らせなさい。――不愉快だわ」
七実が直情的に不快感を露わにするのに珍しさを覚えながらも、七花は首を横に振る。
七花がとがめに立てた誓いが一つ、『とがめを守る』。開幕にして早々破られてしまった約束を、これ以上違えるわけにもいかない。
なにより、姉ちゃんがとがめだけを狙う理由が、一切掴めなかった。七花にとって衝撃は殊の外大きい。
七花がとがめに立てた誓いが一つ、『とがめを守る』。開幕にして早々破られてしまった約束を、これ以上違えるわけにもいかない。
なにより、姉ちゃんがとがめだけを狙う理由が、一切掴めなかった。七花にとって衝撃は殊の外大きい。
「なあ、姉ちゃんはおれより頭いいんだし、覚えてるだろ? 睦月のころおれたちの島に来たとがめだよ」
「たわごとも休み休みにしなさい。当然、とがめさんのことは覚えていますし、あなたが惚れたのなんのと島を出ていったのも覚えています」
「たわごとも休み休みにしなさい。当然、とがめさんのことは覚えていますし、あなたが惚れたのなんのと島を出ていったのも覚えています」
二人の距離がある程度狭まった頃、七実はぴたりと歩みを止める。
とがめが命じるならば姉であろうと、たとえ大きく実力が劣っていようとも斬りかかる気概は持ち合わせているつもりだ。
されど、取り立てて斬りつける理由もない以上――殺し合いという場においても、七花の成すべき行動が変わるわけもなく――浅くも、しかし肩を上下させるように呼吸をする七実の看病もしてあげたい気持ちもある。
行動に移せないのは、ひとえに七実の剣幕に原因があった。さしもの七花であってもただならぬ剣幕であることは理解できる。
とがめが命じるならば姉であろうと、たとえ大きく実力が劣っていようとも斬りかかる気概は持ち合わせているつもりだ。
されど、取り立てて斬りつける理由もない以上――殺し合いという場においても、七花の成すべき行動が変わるわけもなく――浅くも、しかし肩を上下させるように呼吸をする七実の看病もしてあげたい気持ちもある。
行動に移せないのは、ひとえに七実の剣幕に原因があった。さしもの七花であってもただならぬ剣幕であることは理解できる。
「この場が殺し合いだからか? だったらまずおれと勝負するのが筋だろう。言っちゃ悪いがとがめは姉ちゃんと比べ物にならないぐらい弱いぜ」
「のん気なことね。……ですが、ええ、当然事が済めば七花、あなたとも殺し合うつもりよ。
「なら……!」
「にしたって何事にも順番というものがあるでしょう」
「それが……とがめを殺すということなのか?」
「のん気なことね。……ですが、ええ、当然事が済めば七花、あなたとも殺し合うつもりよ。
「なら……!」
「にしたって何事にも順番というものがあるでしょう」
「それが……とがめを殺すということなのか?」
大きくつばを飲み込んで、七実に問い掛ける。
七花の拙い記憶力が確かならば、とがめと七実との仲は良好とまでは言えなくとも、積極的に殺し合うような中ではなかったはずだ。
姉ちゃんは一体何がしたいんだ、七花なりに頭を働かせるも、答えらしい答えは見つからなかった。
問われて、僅かがあった後、七実は諭すようにして七花に語る。
七花の拙い記憶力が確かならば、とがめと七実との仲は良好とまでは言えなくとも、積極的に殺し合うような中ではなかったはずだ。
姉ちゃんは一体何がしたいんだ、七花なりに頭を働かせるも、答えらしい答えは見つからなかった。
問われて、僅かがあった後、七実は諭すようにして七花に語る。
「……。ああ、もしかして七花。後生大事そうに背負っているそれが何か、勘違いしているのね。でしたら良いことを――いえ、悪いことなのかしら。まあどちらでも構わないのだけれど……教えてあげる。それはもう、ただの草よ」
ふふ、と可笑しそうに――犯しそうに七実は笑い飛ばす。
ようやくあの子のやりたいことが把握できた、さもそう言いたげな表情だ。
対する七花の動きは、ぴたりと止まる。姉ちゃんは今、触れてはいけないものに触れた――鋭くねめつける瞳に決意が宿る。
ようやくあの子のやりたいことが把握できた、さもそう言いたげな表情だ。
対する七花の動きは、ぴたりと止まる。姉ちゃんは今、触れてはいけないものに触れた――鋭くねめつける瞳に決意が宿る。
「今、とがめを草って言ったな。姉ちゃん」
「雑草に雑草と言ったまでです」
「同じことだ! 姉ちゃんは今、とがめを雑草だと吐き捨ててるんだ!」
「雑草に雑草と言ったまでです」
「同じことだ! 姉ちゃんは今、とがめを雑草だと吐き捨ててるんだ!」
語気を荒げ、七花は吼えたてた。七実が動じるそぶりはまったく見受けられなかったが、叫ばずにはいられない。
近くの木陰にとがめの姿を置いて、七花は今一度――構える。
足を平行に前後へと配置し、膝を落とし、腰を曲げ、上半身を軽く前傾させる――両手は貫手の形で、肘を直角の角度に、これもまた平行に前後に配置する。
体重は前方にかけられているようで、若干、前のめりの体勢だ。
虚刀流七の構え『杜若』。一の構え『鈴蘭』や二の構え『水仙』と対を成す動の構え。変幻自在の足運びを可能とする、攻めの構えである。
激昂とは裏腹に、構えに淀みはなく、定められた型に収まる。長年七花が築き上げてきた鍛錬の賜物と表現しても過言ではない。
近くの木陰にとがめの姿を置いて、七花は今一度――構える。
足を平行に前後へと配置し、膝を落とし、腰を曲げ、上半身を軽く前傾させる――両手は貫手の形で、肘を直角の角度に、これもまた平行に前後に配置する。
体重は前方にかけられているようで、若干、前のめりの体勢だ。
虚刀流七の構え『杜若』。一の構え『鈴蘭』や二の構え『水仙』と対を成す動の構え。変幻自在の足運びを可能とする、攻めの構えである。
激昂とは裏腹に、構えに淀みはなく、定められた型に収まる。長年七花が築き上げてきた鍛錬の賜物と表現しても過言ではない。
「聞き分けのない子ね。いいわ。やる気であるというのなら、殺す気でかかってきなさい。――もっとも今の七花にはそこまで期待はできそうにないけれど」
確かに、確かに鑢七実は虚弱である。
唯一にして最大の弱点と言ってもいいだろう――健康とは程遠い、病魔に蝕まれた身体だ。
儚い存在――人の見る夢のように脆く、人が夢見ると思えないほどに脆い。
しかるに連続した戦闘は叶わない。
七実はここまで何度か戦闘――あれらを戦闘というのならばだが――を繰り広げている。
七花が心配するほどに弱っていたのは間違いなく事実であり、ほかならぬ七実自身、理解していた。
そのうえで。
そのうえで、七花に勝つのは容易いと、宣戦布告している。
見稽古。
見る。
見切り。
見抜き。
見定め。
見通し。
見極め。
見取る。
七花が描く刀身を観察するように――診察する。
はっきりと、くっきりと、きっかりと、きっちりと、くまなく視線を照射して。
診断結果を、七花に告げた。
唯一にして最大の弱点と言ってもいいだろう――健康とは程遠い、病魔に蝕まれた身体だ。
儚い存在――人の見る夢のように脆く、人が夢見ると思えないほどに脆い。
しかるに連続した戦闘は叶わない。
七実はここまで何度か戦闘――あれらを戦闘というのならばだが――を繰り広げている。
七花が心配するほどに弱っていたのは間違いなく事実であり、ほかならぬ七実自身、理解していた。
そのうえで。
そのうえで、七花に勝つのは容易いと、宣戦布告している。
見稽古。
見る。
見切り。
見抜き。
見定め。
見通し。
見極め。
見取る。
七花が描く刀身を観察するように――診察する。
はっきりと、くっきりと、きっかりと、きっちりと、くまなく視線を照射して。
診断結果を、七花に告げた。
「七花――あなた、ずいぶんと弱くなったのね」
「なめるのも大概にしろっ!!」
「なめるのも大概にしろっ!!」
先制を仕掛けたのは七花から。
牽制を交えた足運びで七実に肉薄する。
構えのない構え『無花果』を前にして――そもそも七実の眼を前にして牽制にどれほど意味があるのか。
しかし、身体は自然と動く。型に嵌った動き、かつて父に習った基礎に基づく足捌きに抜かりはなく。
剣聖の称号を欲しいままにした錆白兵を打破しただけの慢心ならぬ自負が、七花にあった。
地を一段と強く蹴り上げ、一気に距離を零へと詰める。
牽制を交えた足運びで七実に肉薄する。
構えのない構え『無花果』を前にして――そもそも七実の眼を前にして牽制にどれほど意味があるのか。
しかし、身体は自然と動く。型に嵌った動き、かつて父に習った基礎に基づく足捌きに抜かりはなく。
剣聖の称号を欲しいままにした錆白兵を打破しただけの慢心ならぬ自負が、七花にあった。
地を一段と強く蹴り上げ、一気に距離を零へと詰める。
「虚刀流奥義『七花八裂』!」
七花の拳が、七実の身体を打ち上げんと押し寄せる。
迅雷がごとく素早さを極めた一撃は避けるに難し――受けるに難し。
この四か月、遊んでいたわけではない。
何も知らない七実に弱くなったなどと突きつけられる筋合いなど、一切なかった。
事実、七花が織りなす手刀は今の実力を知らしめるには十分なほどの斬れ味を誇っている。
ただしここまで語ったことは七花の視点から――という話に過ぎない。
再度溜息を落とす七実は、平静な口調を保ったまま邀撃する。
迅雷がごとく素早さを極めた一撃は避けるに難し――受けるに難し。
この四か月、遊んでいたわけではない。
何も知らない七実に弱くなったなどと突きつけられる筋合いなど、一切なかった。
事実、七花が織りなす手刀は今の実力を知らしめるには十分なほどの斬れ味を誇っている。
ただしここまで語ったことは七花の視点から――という話に過ぎない。
再度溜息を落とす七実は、平静な口調を保ったまま邀撃する。
「とがめさんの居ない今の七花に見せても無駄よね。なら適当にあしらってあげる」
七花の足蹴を無下にいなし、引き寄せる。
体勢を崩した七花の胸元に吸い込まれるように貫手を放ち。
体勢を崩した七花の胸元に吸い込まれるように貫手を放ち。
「虚刀流――『蒲公英』」
勝負はあっけなく終わってしまった。
■ ■
お約束――。
予想された結末、約束された顛末はこの世にある。
であれば、この決着も必然であろう。
予想された結末、約束された顛末はこの世にある。
であれば、この決着も必然であろう。
「これであなたは一回死んでるわ」
鑢七花がとがめと過ごした四か月が無駄でないというのであれば――。
当然、『本来』七実と決するはずであった文月までの残り三か月が無駄であるわけがない。
実力としては、白兵に勝る強者こそいなかったものの、確かな経験値を、あの三か月の間で積んでいる――積むはずだった。
当然、『本来』七実と決するはずであった文月までの残り三か月が無駄であるわけがない。
実力としては、白兵に勝る強者こそいなかったものの、確かな経験値を、あの三か月の間で積んでいる――積むはずだった。
「…………」
「忍法足軽応用編――これをあなたにもう一度見せなければならないわたしの気苦労も知ってほしいものね」
「忍法足軽応用編――これをあなたにもう一度見せなければならないわたしの気苦労も知ってほしいものね」
ふわりと。
七実は七花の胸元から拳を離す。
一蹴――これがここまで似合う場面も早々ないほどにあしらわれた七花は言葉を失う。
姉ちゃんが本気で打ち込んでいたら、間違いなく死んでいた。
七花とて剣士だからおのずと理解させられる。死を覚悟する一撃だった。――情けをかけられた。そして、
七実は七花の胸元から拳を離す。
一蹴――これがここまで似合う場面も早々ないほどにあしらわれた七花は言葉を失う。
姉ちゃんが本気で打ち込んでいたら、間違いなく死んでいた。
七花とて剣士だからおのずと理解させられる。死を覚悟する一撃だった。――情けをかけられた。そして、
「見ればわかるけれど、つくづく弱く……なったわね、七花。ええ、今のあなたには殺されてあげられないわ」
情けをかけられるのが、当然と思えるほどに、実力差があった。
戦慄のあまり背筋が凍る。睨まれていた時とは比べほどにならないほど、冷え冷えと。
腰が抜ける。ぺたりと尻をついたとき、まざまざと実感させられる。剣士としてものの見事に敗北し、刀として完膚なきまでに叩き折られたことを。
七実は七花から離れ、近くに転がっていたとがめの首根っこを掴みあげる。
戦慄のあまり背筋が凍る。睨まれていた時とは比べほどにならないほど、冷え冷えと。
腰が抜ける。ぺたりと尻をついたとき、まざまざと実感させられる。剣士としてものの見事に敗北し、刀として完膚なきまでに叩き折られたことを。
七実は七花から離れ、近くに転がっていたとがめの首根っこを掴みあげる。
「姉ちゃん! やめろ!」
「やめないわよ。負けて折れたあなたが口を出すんじゃありません」
「やめないわよ。負けて折れたあなたが口を出すんじゃありません」
折れた――そうはいってもとがめに惚れた気持ちを忘れたわけではない。
無意識のうちに立ち上がり、腰が抜けた状態におかされてなお、とがめに駆けつけんと歩を進める。
むろんのこと『杜若』と比べるまでもなくよろけた足取りを七実が見切れぬ道理はなく――近寄ってきた七花の顔を力づくで握り差し止めた。
無意識のうちに立ち上がり、腰が抜けた状態におかされてなお、とがめに駆けつけんと歩を進める。
むろんのこと『杜若』と比べるまでもなくよろけた足取りを七実が見切れぬ道理はなく――近寄ってきた七花の顔を力づくで握り差し止めた。
「凍空一族の怪力……といっても七花には分からないかもしれないわね。まあ安心なさい。気が変わりました」
「…………?」
「この雑草……とがめさんでしたか。これはひとまずわたしが預かります」
「…………?」
「この雑草……とがめさんでしたか。これはひとまずわたしが預かります」
みしりと音が鳴るほど、とがめの首を力強く握り込む。
手放すものか、七花に見せつけるように。
『耳』を澄ますこともなく七花の心を容易に逆撫でする様は、惚れ惚れするほどに姉然としていた。
手放すものか、七花に見せつけるように。
『耳』を澄ますこともなく七花の心を容易に逆撫でする様は、惚れ惚れするほどに姉然としていた。
「何をふざけたことを!」
「ですから――ですから七花、強くなりなさい。どうやらこの場には、あなたの鍛錬に相応しそうな方がいると思うわ」
「ですから――ですから七花、強くなりなさい。どうやらこの場には、あなたの鍛錬に相応しそうな方がいると思うわ」
不愉快な雑草はさておくとしても、先に行き会った棍棒を持った男。
いずれにせよ『それなり』の域を抜けないだろうが、あれは本来、もっと戦える人間だったはずだ。
うらやましいほどに、努力に努力を重ねて、鍛錬に鍛錬を積んで、高みに至ったはずだ。
得物の影響か、他の要因か、知る術もないし――どうでもいいのだけれど、きっとこの場にはああいった手合いがごろごろ転がっている。
であれば話は簡単だ。
刀集めなんて迂遠な方法じゃなくとも七花を育て上げることは――できる。
いずれにせよ『それなり』の域を抜けないだろうが、あれは本来、もっと戦える人間だったはずだ。
うらやましいほどに、努力に努力を重ねて、鍛錬に鍛錬を積んで、高みに至ったはずだ。
得物の影響か、他の要因か、知る術もないし――どうでもいいのだけれど、きっとこの場にはああいった手合いがごろごろ転がっている。
であれば話は簡単だ。
刀集めなんて迂遠な方法じゃなくとも七花を育て上げることは――できる。
「そして、わたしから力ずくでこれを取り返してみせなさい」
どの道、今のこの雑草、否、――とがめさんだったか――に七花を預けることは心もとない。
七実にしてみれば、一石二鳥の方案であった。
七実にしてみれば、一石二鳥の方案であった。
「七花、気を抜いていると死んでしまうわよ。とがめさんはもちろん、あなたも」
不安があるとするならば、七花が何某かに殺されてしまうことだろうけれど。
まあ。
そのときは――そのときだ。
そんなことにはならないだろうけど。
自然と過信してしまうあたり、弟を溺愛しているには違いないのだろう。
まあ。
そのときは――そのときだ。
そんなことにはならないだろうけど。
自然と過信してしまうあたり、弟を溺愛しているには違いないのだろう。
「それじゃあね、七花。うまくやりなさい。――そして、わたしをきっと、殺してみせてね」
今度こそ。
安らぎを。
雑草を見て、不愉快な気持ちを抱くこともないように。
願いを込めて、七実は七花を力に任せてぶん投げる。
気絶でもしたのか、壁にぶつかった七花が起きる様子はなく、七実もそそくさと立ち去るのであった。
当然、白き髪の雑草を引きずりまわすようにして。
安らぎを。
雑草を見て、不愉快な気持ちを抱くこともないように。
願いを込めて、七実は七花を力に任せてぶん投げる。
気絶でもしたのか、壁にぶつかった七花が起きる様子はなく、七実もそそくさと立ち去るのであった。
当然、白き髪の雑草を引きずりまわすようにして。
【C-7/1日目・黎明】
【鑢七花@刀語】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(確認済)
[思考・状況]
基本方針:不明
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
【鑢七花@刀語】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(確認済)
[思考・状況]
基本方針:不明
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
■ ■
「それにしても、七花ったら。別に医者に診てもらうほどの傷なんてないじゃない」
見る――聞く――。
とがめの傷は、七花の言葉に反して然したるものではなかった。
しかし、七花の嘘ぐらいは容易く見抜ける。七花の慌てっぷりは本心そのものであったし、きっとそれなりのことがあったのだろう。
とがめは障子紙より破れやすい女だ。
傷を負うぐらいするのだろうけれど――。
とがめの傷は、七花の言葉に反して然したるものではなかった。
しかし、七花の嘘ぐらいは容易く見抜ける。七花の慌てっぷりは本心そのものであったし、きっとそれなりのことがあったのだろう。
とがめは障子紙より破れやすい女だ。
傷を負うぐらいするのだろうけれど――。
「いえ……だとすると、『治った』と見るべきかしら」
見る――聞く――。
とがめの傷から胎動する呼吸を。
傷口が治る。いろいろな意味で、見覚えのある現象だった。
細胞が、じゃれつくように犇めいている。
とがめの傷から胎動する呼吸を。
傷口が治る。いろいろな意味で、見覚えのある現象だった。
細胞が、じゃれつくように犇めいている。
「――本当に雑草みたいに生えてくるものなの」
見る――聞く――。
とがめの傷を、深淵を、覗きこむようにして。
蠢いている。
聴覚そのものは、確かに睦月――あるいは文月のころは今ほどのものではなかった。
それでも、確かな異変は見て取れる。
ああ。
まったくもって。
とがめの傷を、深淵を、覗きこむようにして。
蠢いている。
聴覚そのものは、確かに睦月――あるいは文月のころは今ほどのものではなかった。
それでも、確かな異変は見て取れる。
ああ。
まったくもって。
「……ふう」
不愉快だ。
一億の病魔を身体に埋め込まれた女は、溜息を交えながらつぶやく。
鑢七実、溜息の似合う女である。
一億の病魔を身体に埋め込まれた女は、溜息を交えながらつぶやく。
鑢七実、溜息の似合う女である。
【C-7/1日目・黎明】
【鑢七実@刀語】
[状態]:疲労(大)、割と不機嫌、返り血
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2~8(確認済み、衣類系は無し)
[思考・状況]
基本方針:適当にぶらつく。細かいところをどうするかはその時々で判断。
1:七花が開花したならば殺されたい
2:アマゾンに不快感。さっきの少年(千翼)は殺す
3:とがめは起きてから処遇を考える
[備考]
※参戦時期は死亡後ですが、体の状態は悪刀・鐚を使用する前の病弱状態です。
※自分が生きているのはアマゾン細胞によるものではないかという可能性を考えています。
また、その想像に対して強い不快感を感じています。
※見稽古によって善逸の耳の良さ・呼吸法を会得しています
[状態]:疲労(大)、割と不機嫌、返り血
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2~8(確認済み、衣類系は無し)
[思考・状況]
基本方針:適当にぶらつく。細かいところをどうするかはその時々で判断。
1:七花が開花したならば殺されたい
2:アマゾンに不快感。さっきの少年(千翼)は殺す
3:とがめは起きてから処遇を考える
[備考]
※参戦時期は死亡後ですが、体の状態は悪刀・鐚を使用する前の病弱状態です。
※自分が生きているのはアマゾン細胞によるものではないかという可能性を考えています。
また、その想像に対して強い不快感を感じています。
※見稽古によって善逸の耳の良さ・呼吸法を会得しています
【とがめ@刀語】
[状態]:気絶。重傷→回復中。溶原性細胞感染。
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 (確認済)
[思考・状況]
基本方針:なんとしてでも生き残る
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
※クラゲアマゾンの触手が折れた際にまき散らされた体液が傷口に付着したことで溶原性細胞に感染しました。覚醒まで時間がかかると思います。
[状態]:気絶。重傷→回復中。溶原性細胞感染。
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 (確認済)
[思考・状況]
基本方針:なんとしてでも生き残る
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
※クラゲアマゾンの触手が折れた際にまき散らされた体液が傷口に付着したことで溶原性細胞に感染しました。覚醒まで時間がかかると思います。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 時すでに始まりを刻む | 鑢七花 | 禁断の華を手折るのならば |
| とがめ | 食物語・とがめアマゾン | |
| どうにもならない事があっても幸福な君を守ってあげる | 鑢七実 |