武蔵、出逢う! ◆Akt6fX8OUk
ハナ
“刃鳴”が――散る。
“刃鳴”が――散る。
ハネ
“刃音”が――舞う。
“刃音”が――舞う。
ハガネ ハカイ
“刃金”が煌き、“刃戒”を謳う。
“刃金”が煌き、“刃戒”を謳う。
「……」
宵の森山に吹き荒れる剣風。銀閃が走り、甲高い金属音が鳴る。
斬る――と。その意思を込めた切っ先が互いの鎬を削る。鎬を削り、清廉な剣戟の音を奏でる。
円舞の如く二つの影は衝突し、そして立ち位置を変えてまた向かい合う。
踏み込み、幾度と繰り返されるそれは、正に剣の聖域とも言える空間であった。
斬る――と。その意思を込めた切っ先が互いの鎬を削る。鎬を削り、清廉な剣戟の音を奏でる。
円舞の如く二つの影は衝突し、そして立ち位置を変えてまた向かい合う。
踏み込み、幾度と繰り返されるそれは、正に剣の聖域とも言える空間であった。
迫るは刃。防ぐも刃。
来るは刃。弾くも刃。――唸り合う計四つの斬撃。
石火の寸暇に数多の火花が散る。膝丈の草が夜風になびくその間、十重二十重に剣雨は吹き荒れる。
そして、ひときわ高い音と共に間合いが取られた。
吐息を絞り、向かい合うは二人の男女……左右の両手に刀を握った二人の男女である。
来るは刃。弾くも刃。――唸り合う計四つの斬撃。
石火の寸暇に数多の火花が散る。膝丈の草が夜風になびくその間、十重二十重に剣雨は吹き荒れる。
そして、ひときわ高い音と共に間合いが取られた。
吐息を絞り、向かい合うは二人の男女……左右の両手に刀を握った二人の男女である。
……否。
余人には銀の豪風としか映らぬそれらは、もはや、人でなく剣であった。
そう。それらは真実、二振りの刀、であった。
余人には銀の豪風としか映らぬそれらは、もはや、人でなく剣であった。
そう。それらは真実、二振りの刀、であった。
苛烈なるその二本の一刀、銘を宮本武蔵。
月代を剃らぬ膨髪を一本にくくり、瓢悍たる身を簡素な袴姿で覆った男。
――――言うなれば虎。豪傑無比の剣士なり。
月代を剃らぬ膨髪を一本にくくり、瓢悍たる身を簡素な袴姿で覆った男。
――――言うなれば虎。豪傑無比の剣士なり。
対するは花。
鮮やかなるその二本の一刀、銘を宮本武蔵。
たなびく銀の髪を闇に冴えさせ、当世風の振り袖とすら言えぬ艶やかな踊り子衣装で足を運ぶ女。
――――言うなれば天元の花。天衣無縫の剣鬼なり。
鮮やかなるその二本の一刀、銘を宮本武蔵。
たなびく銀の髪を闇に冴えさせ、当世風の振り袖とすら言えぬ艶やかな踊り子衣装で足を運ぶ女。
――――言うなれば天元の花。天衣無縫の剣鬼なり。
「……」
太刀とは、“断ち”に通ず。
故に繰り出されるそれは必殺でなければならない。いや、彼らの繰り出す剣は、事実として常に必殺である。
だが、死なぬ。だが、斬れぬ。
永劫と続くまぐあいの如く、互いの放つ一刀が互いの肌を切ることもない。
豪力の軍配は武蔵――男に。
剣技の軍配は武蔵――女に。
残すところの疾剣の冴えと気勢の冴えは、揺れ動く天秤の如く足場や環境によって移り変わっていた。
故に繰り出されるそれは必殺でなければならない。いや、彼らの繰り出す剣は、事実として常に必殺である。
だが、死なぬ。だが、斬れぬ。
永劫と続くまぐあいの如く、互いの放つ一刀が互いの肌を切ることもない。
豪力の軍配は武蔵――男に。
剣技の軍配は武蔵――女に。
残すところの疾剣の冴えと気勢の冴えは、揺れ動く天秤の如く足場や環境によって移り変わっていた。
結果、ついぞ互いが互いを仕留めることも叶わない。
一枚の岩じみた膠着とは裏腹、対峙する二人の剣士は対照的に――――片や野侍の如き野卑な男、片や花魁めいた美女と異なる色彩で立ち振る舞っている。太刀を振り舞っている。
だが、おお、見るがいい。
量るように睨み合う彼らが共に握りしは二刀。
二本の大刀をその両手に握り、挟むように相手の両目へ切っ先を向ける。
これぞ、中段の構え。二天一流の中段の構え。
すなわち、それを互いに向け合えば……これまさに二天一流対二天一流であった。
だが、おお、見るがいい。
量るように睨み合う彼らが共に握りしは二刀。
二本の大刀をその両手に握り、挟むように相手の両目へ切っ先を向ける。
これぞ、中段の構え。二天一流の中段の構え。
すなわち、それを互いに向け合えば……これまさに二天一流対二天一流であった。
舞台は屍山血河。吹くは血風。唸るは剣風。
柳生か、新免か。一体どちらが上なのか。そんな仮定こそ無益である。
これなるは、宮本武蔵対宮本武蔵であった。
柳生か、新免か。一体どちらが上なのか。そんな仮定こそ無益である。
これなるは、宮本武蔵対宮本武蔵であった。
◆◆◆
武蔵、出逢う!
◆◆◆
男、武蔵。兵法者、武蔵。
草を揺らしてのそりと身を動かし、立つは辺りに木々の満ちし野山……蜘蛛山であった。
夜の天蓋を陰らせるような枝葉の下、武蔵は静かに思考する。
肌を刺す空気から知れる。不吉の気配めいて闇に覆われた四方八方は、関ヶ原にも劣らぬ殺し合いの場であろう。
“びぃびぃ”なる女の言葉は理解に及ばなかったが、武蔵、知恵を捨てられるということは知恵を持つ。
故に獣の天稟じみた感覚で、“びぃびぃ”の言葉に込められた意図を理解した。
草を揺らしてのそりと身を動かし、立つは辺りに木々の満ちし野山……蜘蛛山であった。
夜の天蓋を陰らせるような枝葉の下、武蔵は静かに思考する。
肌を刺す空気から知れる。不吉の気配めいて闇に覆われた四方八方は、関ヶ原にも劣らぬ殺し合いの場であろう。
“びぃびぃ”なる女の言葉は理解に及ばなかったが、武蔵、知恵を捨てられるということは知恵を持つ。
故に獣の天稟じみた感覚で、“びぃびぃ”の言葉に込められた意図を理解した。
此度の戦いにて得られるもの、合戦にて名を挙げることと同じである。
すわ徳川方に大砲を打ち込まれた大阪城の如くに吹き飛びし頭の主であった少女は民草であろうが、民草、武芸者構わず死ぬのが合戦の場。
その死もまた、ある種の道理であった。
合戦は、死は、民や士を選ばぬものである。
しかし、
すわ徳川方に大砲を打ち込まれた大阪城の如くに吹き飛びし頭の主であった少女は民草であろうが、民草、武芸者構わず死ぬのが合戦の場。
その死もまた、ある種の道理であった。
合戦は、死は、民や士を選ばぬものである。
しかし、
(武蔵、犬コロにあらず)
合戦、結構。
果たし合い、結構。
だが、外せぬと銘打たれてつけられた首輪なぞ、武蔵、今にも引きちぎらんとする思いでいっぱいになった。
牢人でもこのような扱いを受けるものか。
戦う前から、奴婢同然の始末である。
果たし合い、結構。
だが、外せぬと銘打たれてつけられた首輪なぞ、武蔵、今にも引きちぎらんとする思いでいっぱいになった。
牢人でもこのような扱いを受けるものか。
戦う前から、奴婢同然の始末である。
枷者に配られる具足以下の道具を腰に差し、武蔵、一息に力を込める。
怒気と殺気が膨れ上がる。剣を握らずとも、武蔵、剣気を放つ。
首輪がみしりと音を立て、その一間で――――武蔵に死が降り掛かった。
怒気と殺気が膨れ上がる。剣を握らずとも、武蔵、剣気を放つ。
首輪がみしりと音を立て、その一間で――――武蔵に死が降り掛かった。
唸るは抜刀。
瞬き一間のその暇に吹き荒ぶ剣風を、武蔵の剣が迎撃する。
迎撃、二つ。十字が二つ。
風が、嗤った。
華が、嗤った。
瞬き一間のその暇に吹き荒ぶ剣風を、武蔵の剣が迎撃する。
迎撃、二つ。十字が二つ。
風が、嗤った。
華が、嗤った。
「……へえ。決着前に“かどわかし”なんて、なんて無粋なこともあったかと思いましたが――……いいでしょう、いいでしょう。なるほどなるほど。この豪腕、おまけに二刀流が相手とは。……面白い仕掛けね」
「……」
「とは言っても、今ばっかりは“仕掛け”たのは私の方になるか……なるわねこの場合。なりましょうとも。うん……しまったな。今更やめよう、って言うのもなんか……」
「……」
「とは言っても、今ばっかりは“仕掛け”たのは私の方になるか……なるわねこの場合。なりましょうとも。うん……しまったな。今更やめよう、って言うのもなんか……」
間合いをとって、剣を担いで華のような女が苦笑する。
二刀にて斬りかかった女は、応じる武蔵の剣気に苦々しい笑いを漏らした。
一方、武蔵、半ば驚愕。
立ち振る舞いこそ飄々とし、如何なる動きもできるように腰を据えぬ女であったが、武蔵の迎撃を受け流したのである。
武蔵の豪剣を、流したのである。
二刀にて斬りかかった女は、応じる武蔵の剣気に苦々しい笑いを漏らした。
一方、武蔵、半ば驚愕。
立ち振る舞いこそ飄々とし、如何なる動きもできるように腰を据えぬ女であったが、武蔵の迎撃を受け流したのである。
武蔵の豪剣を、流したのである。
(上の上……いや、それ以上)
腕力(かいなぢから)で勝つは武蔵であるが、女、それでも剣を落とさず。
大の男の打ち掛かりすらも迎撃のその太刀のまま、相手の剣を弾き返して顔を砕き屠るほどの武蔵の豪剣。
女、見目からは想像もつかぬ腕力と言えよう。或いは、技術か。
……いや。技術――その技術というのが最も奇妙であった。
二刀を自在に扱うことこそ、奇妙であった。
大の男の打ち掛かりすらも迎撃のその太刀のまま、相手の剣を弾き返して顔を砕き屠るほどの武蔵の豪剣。
女、見目からは想像もつかぬ腕力と言えよう。或いは、技術か。
……いや。技術――その技術というのが最も奇妙であった。
二刀を自在に扱うことこそ、奇妙であった。
だが、女の目から感じる戦と死の気配。兵法者の気配へ、武蔵はまだ好意的だった。
むしろ、僅かに天っ晴れと思う気さえある。あった。
あったのだ。このときまでは。
むしろ、僅かに天っ晴れと思う気さえある。あった。
あったのだ。このときまでは。
「……女、名は?」
「武蔵。新免武蔵守藤原玄信とは長いので――宮本武蔵!」
「……なに?」
「武蔵。新免武蔵守藤原玄信とは長いので――宮本武蔵!」
「……なに?」
武蔵、沈黙。
からりと笑う女の名乗った名は、伊達や酔狂で名乗れるものではない。
むっつりと、武蔵、呟いた。
からりと笑う女の名乗った名は、伊達や酔狂で名乗れるものではない。
むっつりと、武蔵、呟いた。
「武蔵、冗談は好かぬ」
「私も冗談で言ってるんじゃないんだけどねー……って、ええと、あの……………………武蔵!? 武蔵って!? もしかして貴方のこと!? ……ええと、その、出身と父親は?」
「異なことを申す。武蔵の生まれは、作州大原が宮本村。父は宮本無二」
「…………あー、あー、あー、そう。そっかそっか。彼が言ってた男の私かぁ。……凄まじい剣気だからてっきり英霊剣豪かと思ったんだけど、ううんそうか、そうかー……こっち? の私ね。これまた何たる奇遇というか、自分に逢うのは初めてかしら?」
「私も冗談で言ってるんじゃないんだけどねー……って、ええと、あの……………………武蔵!? 武蔵って!? もしかして貴方のこと!? ……ええと、その、出身と父親は?」
「異なことを申す。武蔵の生まれは、作州大原が宮本村。父は宮本無二」
「…………あー、あー、あー、そう。そっかそっか。彼が言ってた男の私かぁ。……凄まじい剣気だからてっきり英霊剣豪かと思ったんだけど、ううんそうか、そうかー……こっち? の私ね。これまた何たる奇遇というか、自分に逢うのは初めてかしら?」
刀を剥き出しにぼんやりと頷く女の様子に、奇っ怪さはあれど虚言を弄する気配なし。
魔眼や浄眼のようなその蒼き瞳に、詐術の様子なし。正気あり。
武蔵、驚愕。半ばなどでなく驚愕。内心、ガチ驚愕でござった。
魔眼や浄眼のようなその蒼き瞳に、詐術の様子なし。正気あり。
武蔵、驚愕。半ばなどでなく驚愕。内心、ガチ驚愕でござった。
「男になるとこうなるのかぁ。こうかぁ。そうかぁ……んー、こうなっちゃうかぁ……。いやでも、これでもっとずっと若い頃ならまぁ結構イケそうかも……イケるか……うーん……どうせならもっと若い内に会えていればと残念です」
首を捻り、なにやら判らぬ女の言葉。眉間に皺を寄せた女を前に、武蔵、ただ剣の握りを強めた。
(女、武蔵を名乗るか。戦に狂へる女か)
ぐう、と武蔵の体の重さが増した。いや、気配の重さが強まった。握る二刀に気勢と剣気が静かに砥がれる。
女、武蔵を名乗るか。
武蔵を、名乗るか。
ならば、武蔵がすべきはただの一つ。
女、武蔵を名乗るか。
武蔵を、名乗るか。
ならば、武蔵がすべきはただの一つ。
踏み込み、打つ――電光石火の一歩。
二天一流。或いは、二刀流。
その流派、いや剣位に特徴あり。一刀にない特徴あり。
片手で握るというその特性上、半身のままに踏み出すが故に遠間に伸びる。敵に晒す己の面を削りつつ、踏み込みと共に繰り出されるその打ち込みは一刀の比にあらじ。
ましてや、武蔵の豪力。
風を唸らせて繰り出される切っ先は、もはや、嚆矢であった。
その流派、いや剣位に特徴あり。一刀にない特徴あり。
片手で握るというその特性上、半身のままに踏み出すが故に遠間に伸びる。敵に晒す己の面を削りつつ、踏み込みと共に繰り出されるその打ち込みは一刀の比にあらじ。
ましてや、武蔵の豪力。
風を唸らせて繰り出される切っ先は、もはや、嚆矢であった。
だが、防がれる。
否、流される。
否――――なんと、返したのだ。
武蔵の切っ先を女の左が払い、続く右の刺突が喉を狙い来る。咄嗟に武蔵、女の剣を阻み止めた。
何たることか。
女が繰り出した技は紛れもなく二天一流。互いの間を阻む刀身を叩き下げ、空いた体の正面――喉を穿つ鎧殺しの技である。
否、流される。
否――――なんと、返したのだ。
武蔵の切っ先を女の左が払い、続く右の刺突が喉を狙い来る。咄嗟に武蔵、女の剣を阻み止めた。
何たることか。
女が繰り出した技は紛れもなく二天一流。互いの間を阻む刀身を叩き下げ、空いた体の正面――喉を穿つ鎧殺しの技である。
「……やるな女。狂い女には思えぬ。どこで習うた」
「習ったというか編み出したというか……ええ、ほら、これでも二天一流の開祖なので」
「……開祖と。武蔵以外が、開祖を名乗るか」
「いやあ、だからさっきも言ったけど……私も宮本武蔵なのよね。この通り……って言っても判らないか。判らない……んだろうなぁ。弱ったな」
「剣はともかく、冗談は好かぬぞ」
「冗談ではありませんので」
「習ったというか編み出したというか……ええ、ほら、これでも二天一流の開祖なので」
「……開祖と。武蔵以外が、開祖を名乗るか」
「いやあ、だからさっきも言ったけど……私も宮本武蔵なのよね。この通り……って言っても判らないか。判らない……んだろうなぁ。弱ったな」
「剣はともかく、冗談は好かぬぞ」
「冗談ではありませんので」
鍔迫り合いを脱し、間合いを切る。
二人のそんな間で、ひゅうと吹く風が凪いだ。
互いに向き合い、気配を量る。気勢を量る。断じて狂い女とは呼べぬものである。
そんな女が、瑞々しい唇を開いた。
二人のそんな間で、ひゅうと吹く風が凪いだ。
互いに向き合い、気配を量る。気勢を量る。断じて狂い女とは呼べぬものである。
そんな女が、瑞々しい唇を開いた。
「一応聞くけど……さっきのあれ、貴方はどう思った? 可愛らしい女の子があんな目に遭わされてたんだけど」
「万物の望みが叶うとあらば合戦。そして、民草や武芸者を問わぬのが合戦のならい……女、お前はどう思った?」
「ええ、まぁ、そりゃあそうなんだろうけど……。――そうか。こっちの私は、あれを習いと言えるのね。言えてしまうのね。――そう、ならいいでしょう」
「万物の望みが叶うとあらば合戦。そして、民草や武芸者を問わぬのが合戦のならい……女、お前はどう思った?」
「ええ、まぁ、そりゃあそうなんだろうけど……。――そうか。こっちの私は、あれを習いと言えるのね。言えてしまうのね。――そう、ならいいでしょう」
びりと、殺気が肌を刺す。
この意気は余人にあらじ。女もまた、剣士である――。
いや……ただの剣士にあらじ。その気、魔剣豪と称される域まで至る。断じて狂へる女とは呼べぬ。ならば真実、この女は武蔵を名乗ったのか。
故に、武蔵は決めた。
斬らねばならぬとその心が決めたのだ。
この意気は余人にあらじ。女もまた、剣士である――。
いや……ただの剣士にあらじ。その気、魔剣豪と称される域まで至る。断じて狂へる女とは呼べぬ。ならば真実、この女は武蔵を名乗ったのか。
故に、武蔵は決めた。
斬らねばならぬとその心が決めたのだ。
「……」
はたして、武蔵、剣をとる。
女もまた、剣をとる。
互いの思考は同じ――――目の前の存在の脳天に、剣を叩き込むべし。
二刀を掲げ、武蔵と武蔵は踏み出した。
女もまた、剣をとる。
互いの思考は同じ――――目の前の存在の脳天に、剣を叩き込むべし。
二刀を掲げ、武蔵と武蔵は踏み出した。
◆◆◆
“刃鳴”が――散る。
“刃音”が――舞う。
“刃金”が煌き、“刃戒”を謳う。
きぃんと、涼やかな音が鳴る。
左から女の繰り出す一刀へ左刀で応じ、抑え、遅れるように袈裟に薙ぐ右刀。
それを女の剣が抑えた。左剣で抑え、その手の右剣が巻き払い――鍔で武蔵の鎬を滑らせつつ体の内側へと切っ先を捩じ込み抜けてくる。
他方、武蔵。あえて押し込み、迎え撃ち――滑らされる刀の鍔で女の鍔へ激突する。
左から女の繰り出す一刀へ左刀で応じ、抑え、遅れるように袈裟に薙ぐ右刀。
それを女の剣が抑えた。左剣で抑え、その手の右剣が巻き払い――鍔で武蔵の鎬を滑らせつつ体の内側へと切っ先を捩じ込み抜けてくる。
他方、武蔵。あえて押し込み、迎え撃ち――滑らされる刀の鍔で女の鍔へ激突する。
鍔迫り合い。
足を払わんとすれば、女は額を繰り出した。
首を躱し、武蔵、後ろに倒れる。倒れつつも膝を鳩尾に繰り出さんとすれば、女もまた膝で武蔵の股間を狙った。
咄嗟、膝を割り込ませて体を捻る。女も捻った。
右と左に、それぞれの身体が転がった。
首を躱し、武蔵、後ろに倒れる。倒れつつも膝を鳩尾に繰り出さんとすれば、女もまた膝で武蔵の股間を狙った。
咄嗟、膝を割り込ませて体を捻る。女も捻った。
右と左に、それぞれの身体が転がった。
「鬼ほどじゃないけど、すごい力ね。……ただその剣、空位には遠いと言わせて貰いましょうか」
また間合いを開けた女が切っ先を向けて不敵に笑う。武蔵は低く唸った。
都合、幾合に及ぼうか。
果ての見えぬ剣戟に、汗を流す武蔵は知った。
否が応でも解った…………いや、解っているからこそ、女を斬らんとしたのだ。斬らねばならぬのだ。
まさしくその剣、二天一流に相違えなし。合戦の作法に違えなし。
であるからこそ、
都合、幾合に及ぼうか。
果ての見えぬ剣戟に、汗を流す武蔵は知った。
否が応でも解った…………いや、解っているからこそ、女を斬らんとしたのだ。斬らねばならぬのだ。
まさしくその剣、二天一流に相違えなし。合戦の作法に違えなし。
であるからこそ、
(鬼か、幻か。……斬るか武蔵、二天一流を斬るか)
武蔵はまた己を奮い立たせた。
二天一流を斬り、己の二天一流こそが唯一無二と示す――――ためではない。
剣の高みに至る、或いは剣名を轟かせる――――ためではない。
二天一流を斬り、己の二天一流こそが唯一無二と示す――――ためではない。
剣の高みに至る、或いは剣名を轟かせる――――ためではない。
(斬るか武蔵、二天一流を斬るか。鬼を斬るか)
そう、鬼だ。女が口にした、正に鬼だ。
鬼とは、世のかけがえない花を散らす者。命を喰み、死を与え、生を狂わす魑魅異形の怪物。
女の二天一流に違えなし。
ならば、武蔵の出した推論は女が鬼であるということ。
不死身とは思えぬ。だが、この世に二つとない二天一流を武蔵と同等に扱えるこれを、なんと呼べばいいのか。
その奇っ怪。鬼なる異形の、異技なのか。
鬼とは、世のかけがえない花を散らす者。命を喰み、死を与え、生を狂わす魑魅異形の怪物。
女の二天一流に違えなし。
ならば、武蔵の出した推論は女が鬼であるということ。
不死身とは思えぬ。だが、この世に二つとない二天一流を武蔵と同等に扱えるこれを、なんと呼べばいいのか。
その奇っ怪。鬼なる異形の、異技なのか。
いや、そも、女にはなにかの渇望があった。
飢えに等しい剣への渇望があった。剣名のためでなく、剣のために剣を振るう渇望があった。
鬼は鬼でも剣鬼――――少なくともそれは間違いない。故に、武蔵、剣鬼へと刃を向ける。
飢えに等しい剣への渇望があった。剣名のためでなく、剣のために剣を振るう渇望があった。
鬼は鬼でも剣鬼――――少なくともそれは間違いない。故に、武蔵、剣鬼へと刃を向ける。
「……」
同じく、女の宮本武蔵も――斬り合うべしと決めていた。
己と同じ二天一流の使い手である異なる世界の宮本武蔵。
それと斬り合えることへの歓びもあったが、やはり、それ以上のものもあった。
正義の剣客を気取るわけでなく、我欲もある。
それでも正義の剣客ではないが故に解る。あれを合戦のならいと言えてしまう男は、やはり、剣鬼に等しい。
見逃すべきかと考え、諸般の事情で見逃さぬ方が良いかもしれないと結論付けた。故に彼女もまた死合に興じたのである。
己と同じ二天一流の使い手である異なる世界の宮本武蔵。
それと斬り合えることへの歓びもあったが、やはり、それ以上のものもあった。
正義の剣客を気取るわけでなく、我欲もある。
それでも正義の剣客ではないが故に解る。あれを合戦のならいと言えてしまう男は、やはり、剣鬼に等しい。
見逃すべきかと考え、諸般の事情で見逃さぬ方が良いかもしれないと結論付けた。故に彼女もまた死合に興じたのである。
さて、しかし、この豪力を如何とするか。
そう考え、剣を取り直したときである。
そう考え、剣を取り直したときである。
「あ」
ぺきりと、音が上がった。
音が上がったというか、音を上げたというか。
使い手よりも先に、刀の方が戦いを手放していた。
音が上がったというか、音を上げたというか。
使い手よりも先に、刀の方が戦いを手放していた。
彼女の支給品は、竃門炭治郎の刀。
余談であるがこの炭治郎、使った刀の数が多い。
まずは最終選別で用いた刀。これは師である鱗滝左近次の刀である。
それから手に入れた日輪刀。これは正にこの蜘蛛山にての戦いの折に折れている。
それから更に手に入れた日輪刀。これは鬼の身体に投げつけ紛失。その後折られている。
また新たに手に入れた日輪刀。この刃は上弦の鬼との戦いで刃が欠けている。
そしてまた、上弦の肆との戦いで別の刀を使い――これは折れていないが結局そのあと別の刀を手に入れた。
余談であるがこの炭治郎、使った刀の数が多い。
まずは最終選別で用いた刀。これは師である鱗滝左近次の刀である。
それから手に入れた日輪刀。これは正にこの蜘蛛山にての戦いの折に折れている。
それから更に手に入れた日輪刀。これは鬼の身体に投げつけ紛失。その後折られている。
また新たに手に入れた日輪刀。この刃は上弦の鬼との戦いで刃が欠けている。
そしてまた、上弦の肆との戦いで別の刀を使い――これは折れていないが結局そのあと別の刀を手に入れた。
「……………………」
BBのちょっとした茶目っ気なのか。
それとも三十七歳独身の刀鍛冶に対する嫌がらせなのか。宮本武蔵への嫌がらせなのか。主に三十七歳独身の刀鍛冶に対する多大な嫌がらせなのか。
宮本武蔵に渡された支給品は、折れる刀だった。
正しくは、折れる寸前の刀だった。
それとも三十七歳独身の刀鍛冶に対する嫌がらせなのか。宮本武蔵への嫌がらせなのか。主に三十七歳独身の刀鍛冶に対する多大な嫌がらせなのか。
宮本武蔵に渡された支給品は、折れる刀だった。
正しくは、折れる寸前の刀だった。
「……………………」
冷や汗を流す女の武蔵と、一方、思わぬ勝機にギラリと目を輝かせる男の武蔵。
「ちょっちょっちょ、ちょっとタンマぁ! 見てこれ! ほら! 折れちゃってるでしょう!」
「……」
「いやほら、刀に文句をつける訳ではないですけど! ないでしょうけど! やっぱりこう、剣士としての立ち会いをするなら、お互いに万全の方がいいんじゃないかしら! いいと思う! 武士の情けというかなんというか!」
「……」
「いやほら、刀に文句をつける訳ではないですけど! ないでしょうけど! やっぱりこう、剣士としての立ち会いをするなら、お互いに万全の方がいいんじゃないかしら! いいと思う! 武士の情けというかなんというか!」
慌ただしく手のひらを武蔵を前に、武蔵、引かぬ。
彼とて知っている。宮本武蔵ならば――二天一流ならば、この程度、なんのさわりにはなりはせぬと。
刀に頼むが二天一流にあらじ。二天一流とは、すなわち、合戦の作法である。
彼とて知っている。宮本武蔵ならば――二天一流ならば、この程度、なんのさわりにはなりはせぬと。
刀に頼むが二天一流にあらじ。二天一流とは、すなわち、合戦の作法である。
「……」
……いや。
認めよう。否、もう既に認めている。他ならぬ宮本武蔵が、この相手は宮本武蔵だと――剣が認めていた。
己が逆に動揺するほど、剣は女が宮本武蔵であることを自然と呑み込んだ。
認めよう。否、もう既に認めている。他ならぬ宮本武蔵が、この相手は宮本武蔵だと――剣が認めていた。
己が逆に動揺するほど、剣は女が宮本武蔵であることを自然と呑み込んだ。
そして宮本武蔵は、そんな宮本武蔵の隙を見逃さない。
武蔵、折れた刀を投げつけられる。荷物袋を投げつけられる。
咄嗟に弾けば、その隙に女は大きく距離を開けた。さしもの武蔵も一歩では飛び込めぬ間合い。飛び込めば、死に体目掛けて死を突きつけられる間合い。
互いに測り合うような、睨み合うような静止ののちに、
武蔵、折れた刀を投げつけられる。荷物袋を投げつけられる。
咄嗟に弾けば、その隙に女は大きく距離を開けた。さしもの武蔵も一歩では飛び込めぬ間合い。飛び込めば、死に体目掛けて死を突きつけられる間合い。
互いに測り合うような、睨み合うような静止ののちに、
「という訳で――御免! また会いましょう! 会いたくないけど! 会いたいような……いや、会うなら万全で! またの機会に!」
脱兎の如く、女怪は背を向けて闇に消えていった。
零れんばかりの白瓜の如き乳房を震わせて、全力疾走であった。
武蔵を虎と呼ぶなら、その乳は牛と言えよう。
奇っ怪な髪色と日ノ本女子離れをした得体。
すごい揺れていた。乳が。乳が――揺れていた。揺れていたのだ。乳が。瓜のような乳が。冗談ではあるまい。冗談乳ではあるまい。
そして残り香の如き剣気が薄れるのに合わせて、武蔵は構えをおろしてただ呟く。
零れんばかりの白瓜の如き乳房を震わせて、全力疾走であった。
武蔵を虎と呼ぶなら、その乳は牛と言えよう。
奇っ怪な髪色と日ノ本女子離れをした得体。
すごい揺れていた。乳が。乳が――揺れていた。揺れていたのだ。乳が。瓜のような乳が。冗談ではあるまい。冗談乳ではあるまい。
そして残り香の如き剣気が薄れるのに合わせて、武蔵は構えをおろしてただ呟く。
「……武蔵、再び鬼とまみえるか」
己以外の、己と言える、信じられぬ剣士。剣豪。
己を宮本武蔵と言うならば――否、己は宮本武蔵に他ならない――ならばあれはなんだ。
幻か。夢か。
いや、武蔵の今の道理に合うものを呼ぶなら――鬼か。
己を宮本武蔵と言うならば――否、己は宮本武蔵に他ならない――ならばあれはなんだ。
幻か。夢か。
いや、武蔵の今の道理に合うものを呼ぶなら――鬼か。
死人はかつて、死人だった。
だが今の武蔵は知る。世に鬼あり。神州無敵の吉備津彦命や平安武家の棟梁の源頼光の伝説に偽りなし……と。
あの女、鬼か。牛鬼か。乳牛鬼か。
……或いはそれをも超える存在かと思案した。
眉唾ものとは言うまい。かつて己が見ていたものとかつて己が見たもの。道理が道理に限らぬとは、武蔵、知っている。
だが今の武蔵は知る。世に鬼あり。神州無敵の吉備津彦命や平安武家の棟梁の源頼光の伝説に偽りなし……と。
あの女、鬼か。牛鬼か。乳牛鬼か。
……或いはそれをも超える存在かと思案した。
眉唾ものとは言うまい。かつて己が見ていたものとかつて己が見たもの。道理が道理に限らぬとは、武蔵、知っている。
いずれにせよ……
「鋸のような刃よな」
両手の得物を見て、武蔵は呟いた。
拡張具足なく、武蔵拵えの刀なく、神童殺しなく鬼に向かい合うのは不足というより……合戦にて存分に打ち掛け合いたるようなこの刃は、奇怪であった。
奇怪であり、道理であった。
拡張具足なく、武蔵拵えの刀なく、神童殺しなく鬼に向かい合うのは不足というより……合戦にて存分に打ち掛け合いたるようなこの刃は、奇怪であった。
奇怪であり、道理であった。
武蔵の知る鬼とて斬られた四肢を繋げ、穿たれた胴を塞ぐ怪物である。
ならば、鋸の刃の如き荒れた刃にて【削ぎ取る】というのは正しい――――鬼を滅するのに正しい。正しい刀だ。
しかし、武蔵は同時に驚嘆していた。
荒れた刃にて物を斬らんとすれば、その刃の方こそ折れかねない。余計な抵抗が、刃金を殺す。刃筋が立たねば、刃道が違えられれば剣は容易く砕け散る。
そう、この剣に必要なのは、剛力というより卓越した“肌感覚”である。
ならば、鋸の刃の如き荒れた刃にて【削ぎ取る】というのは正しい――――鬼を滅するのに正しい。正しい刀だ。
しかし、武蔵は同時に驚嘆していた。
荒れた刃にて物を斬らんとすれば、その刃の方こそ折れかねない。余計な抵抗が、刃金を殺す。刃筋が立たねば、刃道が違えられれば剣は容易く砕け散る。
そう、この剣に必要なのは、剛力というより卓越した“肌感覚”である。
それなるほどの剣士が使う剣。獣の牙めいた剣。そこに刻まれしは【惡鬼滅殺】の四文字。
そうだ。鬼はいる。
人を喰らい、嘆きを喰らい、喜びを喰らい、世の闇に潜む悪鬼はいる。その証明こそ、この刀である。
故に、斬るべし。
鬼を斬るべし。鬼を哭かせ、鬼を誅するために斬るべし。
人を喰らい、嘆きを喰らい、喜びを喰らい、世の闇に潜む悪鬼はいる。その証明こそ、この刀である。
故に、斬るべし。
鬼を斬るべし。鬼を哭かせ、鬼を誅するために斬るべし。
【C-5・那田蜘蛛山・西/1日目・深夜】
【宮本武蔵@衛府の七忍】
[状態]:健康、疲労(小)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0��3、嘴平伊之助の日輪刀@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:この世にまたとない命を散らせる――鬼を討つ。
1:剣に慣れる
2:事情通の者に出会う
[備考]
※参戦時期、明石全登を滅したのち。
[状態]:健康、疲労(小)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0��3、嘴平伊之助の日輪刀@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:この世にまたとない命を散らせる――鬼を討つ。
1:剣に慣れる
2:事情通の者に出会う
[備考]
※参戦時期、明石全登を滅したのち。
【支給品紹介】
【嘴平伊之助の日輪刀@鬼滅の刃】
宮本武蔵(衛府の七忍)に支給された。
打ち立てホヤホヤの刀の刃をわざわざ石でぐっちゃぐちゃに欠けさせている。
刀鍛冶はキレた。
宮本武蔵(衛府の七忍)に支給された。
打ち立てホヤホヤの刀の刃をわざわざ石でぐっちゃぐちゃに欠けさせている。
刀鍛冶はキレた。
◆◆◆
野山を飛び駆ける武蔵は、その手の欠けた刃を見て顔を顰める。
武蔵とて常人離れをしているが、あの宮本武蔵の豪力は輪をかけて凄まじい。
武蔵とて常人離れをしているが、あの宮本武蔵の豪力は輪をかけて凄まじい。
(虎ねアレ。虎。剣士じゃなくて虎じゃない。どう育てばああなるのかしら。やっぱりこっちの世界でも無二斎は無二斎ってこと? やんなるなぁ……)
邂逅した男の宮本武蔵――。
異なる世界の完全なる同一人物というより、その剣の至る境地に違いがあるように思えてならなかったが、ひとかどの剣士である。
ならば試してみたくなってしまうのも、道理といえ――
異なる世界の完全なる同一人物というより、その剣の至る境地に違いがあるように思えてならなかったが、ひとかどの剣士である。
ならば試してみたくなってしまうのも、道理といえ――
(……こんなんじゃ、但馬の爺様を笑えないわね)
……いや、言い改めよう。
宮本武蔵――或いは新免武蔵守藤原玄信。
彼女は善性なれど善人にあらじ。その根底、まさに剣士。善を好く知りとて、己が本分が人斬り包丁と知れり。
彼女の知る彼女は、今まさに敵が牙城に飛び込み、剣神に至るほどの腕前を持つ剣客と切り合っていた――その筈だった。
柳生新陰流・柳生但馬守宗矩。セイバー・エンピレオ。
まさに無双。まさに無量。その神域に通ずるほどの剣の腕を前に、武蔵にも確信があった。
そう。己の“空”へと手が届くという確信が――――。
宮本武蔵――或いは新免武蔵守藤原玄信。
彼女は善性なれど善人にあらじ。その根底、まさに剣士。善を好く知りとて、己が本分が人斬り包丁と知れり。
彼女の知る彼女は、今まさに敵が牙城に飛び込み、剣神に至るほどの腕前を持つ剣客と切り合っていた――その筈だった。
柳生新陰流・柳生但馬守宗矩。セイバー・エンピレオ。
まさに無双。まさに無量。その神域に通ずるほどの剣の腕を前に、武蔵にも確信があった。
そう。己の“空”へと手が届くという確信が――――。
……否。ついぞ、それは叶わなかった。
あと一歩というところで、この凄惨な虐殺の場への転移――或いは召喚である。
故に、武蔵は怒った。
剣士にとって剣の高みに至ることというのは至上の命題とも言える。掴みかけていたのだ。空腹で目の前にした握り飯にも等しいそれを、あと一歩で奪われた怒りは余人の想像を超える。
そして、BBにより無辜なる民へと行われた邪悪なる虐殺の光景であり、そこにあの宮本武蔵が重なった。
なればこそ、仕掛けた。不意を討つように仕掛けた。
既に死合の場に登っていた武蔵にとって、あの武蔵の漂わせる獣に等しき剣気は、戦相手と応じても仕方のないものだった。
あと一歩というところで、この凄惨な虐殺の場への転移――或いは召喚である。
故に、武蔵は怒った。
剣士にとって剣の高みに至ることというのは至上の命題とも言える。掴みかけていたのだ。空腹で目の前にした握り飯にも等しいそれを、あと一歩で奪われた怒りは余人の想像を超える。
そして、BBにより無辜なる民へと行われた邪悪なる虐殺の光景であり、そこにあの宮本武蔵が重なった。
なればこそ、仕掛けた。不意を討つように仕掛けた。
既に死合の場に登っていた武蔵にとって、あの武蔵の漂わせる獣に等しき剣気は、戦相手と応じても仕方のないものだった。
ひょっとするとあの美しき――「ンン――――――怪物には怪物! 宮本武蔵には宮本武蔵! 拙僧、その戦いには涙を禁じえませんなぁ!」――なんというかアレな奴の死に汚いなにか術式かと、思っていたのも……まぁ、ある。
……いや、或いは。
仕掛けざるを得なかったのだろうか。
佐々木小次郎が宮本武蔵の宿敵であると同様に、宮本武蔵という剣名は歴史に一人。
宮本武蔵は宮本武蔵に応じずにはいられないのだろうか。
仕掛けざるを得なかったのだろうか。
佐々木小次郎が宮本武蔵の宿敵であると同様に、宮本武蔵という剣名は歴史に一人。
宮本武蔵は宮本武蔵に応じずにはいられないのだろうか。
……しかし、故の、この顛末。
頭を冷やして逃走に転じられたのは、日頃の行いの賜物と言えよう。
藪を飛び抜け、森からの脱出を目指す。
流石に一刀だけであの宮本武蔵に挑みかかるのは、如何に武蔵とて無謀であろう。
ムサシのムはムボウのムではないのだ。そもそも漢字も全く違う。閑話休題。
頭を冷やして逃走に転じられたのは、日頃の行いの賜物と言えよう。
藪を飛び抜け、森からの脱出を目指す。
流石に一刀だけであの宮本武蔵に挑みかかるのは、如何に武蔵とて無謀であろう。
ムサシのムはムボウのムではないのだ。そもそも漢字も全く違う。閑話休題。
裾をなびかせる武蔵の脳裏によぎるのは、
(……また変なことに巻き込まれたとも思ったし、よりにもよってここで……と思いもしたけど……。この場なら、私も、剣位の高みに到れる――?)
そう、剣士であるが故に浮かんでしまう命題。
否。
違う。違うのだと武蔵は首を振った。少なくとも今は、違わねばならない。
否。
違う。違うのだと武蔵は首を振った。少なくとも今は、違わねばならない。
(よし、切り替えましょう! 切り替えていこう! まずは立香君と合流――できるかできないかは置いておいて、できると信じましょう! できると!)
目指すは、己と共に異変を解決しようとしていたマスター。
彼といるその時は正義の剣客の真似事をできるというのもあるし、あの武蔵の言ではないがここは合戦場。
如何に数多の特異点をくぐり抜けたカルデアのマスターでも、一人ではきっと……おそらく限界がある。
故に武蔵は決めた。
彼といるその時は正義の剣客の真似事をできるというのもあるし、あの武蔵の言ではないがここは合戦場。
如何に数多の特異点をくぐり抜けたカルデアのマスターでも、一人ではきっと……おそらく限界がある。
故に武蔵は決めた。
一つ、藤丸立香との合流。
一つ、折れない刀の入手。
一つ――これが一番大事だが――投げつけてしまった食べ物に変わる食べ物。
一つ、折れない刀の入手。
一つ――これが一番大事だが――投げつけてしまった食べ物に変わる食べ物。
腹が減っては戦はできぬとは、古来から語られる通り。
うむと頷き、武蔵は走る。ここは止まる場ではないが故に走るのだ。
だが、
うむと頷き、武蔵は走る。ここは止まる場ではないが故に走るのだ。
だが、
(……それにしても。男の私がここにいるってことは、彼も彼女になってたりして――)
なんの因果か、この場の藤丸立香はこの宮本武蔵の知る藤丸立香とは異なる。
それが何を意味するのか。
答えるものはなく、ただ、武蔵は駆けるのみであった。
それが何を意味するのか。
答えるものはなく、ただ、武蔵は駆けるのみであった。
【C-5・那田蜘蛛山・東/1日目・深夜】
【新免武蔵守藤原玄信@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、疲労(小)
[道具]:竃門炭治郎の刀の内の一つ@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:無空の高みに至る。藤丸立香と合流する。
1:新しい武器を手に入れる。
2:手放した支給品に替わるもの(主にご飯。ご飯大事)を手に入れる
3:強者との戦いで、あと一歩の剣の『なにか』を掴む
[備考]
※参戦時期、セイバー・エンピレオ戦の最中。空位に至る前。
※彼女が知っている藤丸立香は、というより何故かこの宮本武蔵は、『男の藤丸立香』を知る宮本武蔵である。
[状態]:健康、疲労(小)
[道具]:竃門炭治郎の刀の内の一つ@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:無空の高みに至る。藤丸立香と合流する。
1:新しい武器を手に入れる。
2:手放した支給品に替わるもの(主にご飯。ご飯大事)を手に入れる
3:強者との戦いで、あと一歩の剣の『なにか』を掴む
[備考]
※参戦時期、セイバー・エンピレオ戦の最中。空位に至る前。
※彼女が知っている藤丸立香は、というより何故かこの宮本武蔵は、『男の藤丸立香』を知る宮本武蔵である。
【竃門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃】
宮本武蔵(Fate/Grand Order)に支給された。
炭治郎が多く使った刀の内の一つ。
わざわざBBが折れる寸前のものを支給した。
刀が折れると三十七歳刀鍛冶の怨念の声が聞こえるらしい。
宮本武蔵(Fate/Grand Order)に支給された。
炭治郎が多く使った刀の内の一つ。
わざわざBBが折れる寸前のものを支給した。
刀が折れると三十七歳刀鍛冶の怨念の声が聞こえるらしい。
【竃門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃】
同、宮本武蔵(Fate/Grand Order)に支給された。
炭治郎が多く使った刀の内の一つ。
わざわざBBが折れる寸前のものを支給した。
この刀は折れたので三十七歳刀鍛冶の怨念の声が聞こえると思う。多分。
同、宮本武蔵(Fate/Grand Order)に支給された。
炭治郎が多く使った刀の内の一つ。
わざわざBBが折れる寸前のものを支給した。
この刀は折れたので三十七歳刀鍛冶の怨念の声が聞こえると思う。多分。
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| Debut | 宮本武蔵 | 鬼殺しの戦い |
| Debut | 新免武蔵守藤原玄信 | もがき続けてCrazy,Crazy,Crazy |