“ぞわり” ◆USARVARnn2
二者択一。
一つ、馴染み深い声の方に向かう。二つ、叫びの意図を汲んで遠ざかる。
存在しない二つの道が確かに眼前に存在し、突として岐路に立たされている。
ナビゲーターの不在や、それぞれの道の先が見渡せない事よりも、真なる問題がある。
形こそ二つに一つであれ、必ずしも一つが正解であるとは限らず、どちらを選ぼうと何処にも辿り着かないやもしれない。
他人事のように客観的に思ったのは四宮かぐやであり、主観的に考えるまでに大いに時間を要したのが四宮かぐやであった。
「石上君、じゃないわよね……?」
零れ落ちたのは疑問ではなく、確認でもなく、自身すら騙せぬ欺瞞。
捉えた振動は鼓膜を揺らし、彼女の優れた脳は正しく認識を済ませている。
信じたくはないが信じる他に無く、聞こえなかった事にしようにも聞き取れている。
勝敗で言えば敗北だ。
裁判の機会すら与えられずに、聞こえてしまった時点で負けている。
「本当にバカ……賢くないというか……、得の無い事をしたがる子というか……」
止まらないようでいて、言葉となって口から出ているのは実は僅かで。
言葉の体を成さずに巡り廻っている思いこそ、頭の中で止まる気配が見られない。
一学年下で生徒会会計の石上優は、口を開けば可愛くない事を言う後輩で、故に可愛い後輩だった。
斜に構えて内に秘めたモノに蓋をしているようで、その蓋は至る所が隙間だらけで碌に塞ぎ切れていなかった。
そんな有様に気付いてしまったからであろう。同学年で書記の藤原千花がシビアな態度を取る一方で、かぐやが優を見る目は少しずつ柔らかくなっていった。
いやきっとと、かぐやは今ならば思う。きっと理解した上で、お互いに烈しく接していたのだろう。
彼女はそういう接し方が出来る子だから。自分のように内外の二つに一つではないのだから。
一つ、馴染み深い声の方に向かう。二つ、叫びの意図を汲んで遠ざかる。
存在しない二つの道が確かに眼前に存在し、突として岐路に立たされている。
ナビゲーターの不在や、それぞれの道の先が見渡せない事よりも、真なる問題がある。
形こそ二つに一つであれ、必ずしも一つが正解であるとは限らず、どちらを選ぼうと何処にも辿り着かないやもしれない。
他人事のように客観的に思ったのは四宮かぐやであり、主観的に考えるまでに大いに時間を要したのが四宮かぐやであった。
「石上君、じゃないわよね……?」
零れ落ちたのは疑問ではなく、確認でもなく、自身すら騙せぬ欺瞞。
捉えた振動は鼓膜を揺らし、彼女の優れた脳は正しく認識を済ませている。
信じたくはないが信じる他に無く、聞こえなかった事にしようにも聞き取れている。
勝敗で言えば敗北だ。
裁判の機会すら与えられずに、聞こえてしまった時点で負けている。
「本当にバカ……賢くないというか……、得の無い事をしたがる子というか……」
止まらないようでいて、言葉となって口から出ているのは実は僅かで。
言葉の体を成さずに巡り廻っている思いこそ、頭の中で止まる気配が見られない。
一学年下で生徒会会計の石上優は、口を開けば可愛くない事を言う後輩で、故に可愛い後輩だった。
斜に構えて内に秘めたモノに蓋をしているようで、その蓋は至る所が隙間だらけで碌に塞ぎ切れていなかった。
そんな有様に気付いてしまったからであろう。同学年で書記の藤原千花がシビアな態度を取る一方で、かぐやが優を見る目は少しずつ柔らかくなっていった。
いやきっとと、かぐやは今ならば思う。きっと理解した上で、お互いに烈しく接していたのだろう。
彼女はそういう接し方が出来る子だから。自分のように内外の二つに一つではないのだから。
嗚呼、だからこそ―――四宮かぐやは叫びたい。
後輩は震える声で“逃げろ”と叫んだ。
先輩として、“またなの”と叫び返したい。
可愛い後輩には、一人で負債を抱え込む癖がある。最早、悪癖と呼んで差し支え無いだろう。
己の不利益ばかりを鑑みるのが必ずしも正しいと、氷解した現時点のかぐやは断固として思わない。
それでも、時たま軽く刺すくらいはしておくべきだったかもしれない。
何故見過ごしていたのかなど、今更考えるまでも無い。
やはり、どうしても、そんなどうしようもない彼が、やはり、どうしても、どうしようもなく可愛い後輩であったからだ。
「何で素直に可愛い後輩やってるのよ、石上君」
叫びには程遠い静かな声音。
声量は違えど、後輩と同じく震えている。
「悪いけど、私は貴方みたいに素直ではないので。それに大事な事を忘れてるわ、石上君。貴方のそんな叫び、会長が聴いたらきっと……」
多少休む心積もりであったが、そうも言っていられなくなった。
落ち着く気配が一向に見えない鼓動を感じつつ、かぐやは可愛い後輩の声が聞こえてきた方角を見据える。
踏み出した一歩は小さく、綿の上でも歩いているかの如き不安定感と共にあったが、断じてそのような内面を見せず強く振る舞う。
それが石上優の前での四宮かぐやであった。
先輩として、“またなの”と叫び返したい。
可愛い後輩には、一人で負債を抱え込む癖がある。最早、悪癖と呼んで差し支え無いだろう。
己の不利益ばかりを鑑みるのが必ずしも正しいと、氷解した現時点のかぐやは断固として思わない。
それでも、時たま軽く刺すくらいはしておくべきだったかもしれない。
何故見過ごしていたのかなど、今更考えるまでも無い。
やはり、どうしても、そんなどうしようもない彼が、やはり、どうしても、どうしようもなく可愛い後輩であったからだ。
「何で素直に可愛い後輩やってるのよ、石上君」
叫びには程遠い静かな声音。
声量は違えど、後輩と同じく震えている。
「悪いけど、私は貴方みたいに素直ではないので。それに大事な事を忘れてるわ、石上君。貴方のそんな叫び、会長が聴いたらきっと……」
多少休む心積もりであったが、そうも言っていられなくなった。
落ち着く気配が一向に見えない鼓動を感じつつ、かぐやは可愛い後輩の声が聞こえてきた方角を見据える。
踏み出した一歩は小さく、綿の上でも歩いているかの如き不安定感と共にあったが、断じてそのような内面を見せず強く振る舞う。
それが石上優の前での四宮かぐやであった。
*
こうして、少女は前を向く。
されど彼女を見守る男達は、その険しい表情を崩さない。
されど彼女を見守る男達は、その険しい表情を崩さない。
*
「よもや……っ!」
犬養幻之介が漏らした呟きに、かぐやが凄まじい速度で振り返る。
豊臣家御馬廻が一人としてはあるまじき失態には、已むに已まれぬ理由がある。
姿を捉えて距離を詰めている段階で華奢だとは思っていたが、女人だとは思いもよらなかった。
確かに名簿には到底男児であるとは思い難い名前もあったが、分かっていながら考慮から外してしまっていた。
戦に女子供が巻き込まれる事への違和感など、大坂の役を知る幻之介にはない。
女子供は斬れないなどと与太を扱くつもりもない。その手を手を女子供の血で汚した経験、今更数えるまでもない。
にもかかわらず猛丸のために女を殺す、その可能性を考慮していなかったのだ。
―――甘いな。否、甘くなったのか。
幻之介は自嘲する。
もしも猛丸と出逢う以前に仕える殿の為に皆殺しに挑んでいたのであれば、決して悟られる事なく隙を衝いていた。
かつての自身は、間違いなく殿の為であれば女子供を殺すのは当然と認識していた。
それでいながら、今、猛丸の為に女子供を殺すという発想を抱いてすらいなかった事実に、我が事ながら驚愕する。
―――だが、俺は犬だ。檻の中の犬が餌を選り好みするものか。
決意を新たに、幻之介は視線を強くする。
それだけでかぐやを支配するには事足りる。
手に木剣を携えた幻之介が歩み寄ってくるというのに、その瞳から目を離す事も敵わない。
「ちょ、ちょっと……!?」
幻之介が飛ばしたのは圧であり、剣気であり、殺意である。
この木剣にて首を落とす。慣れない“変身”を使うまでもない。木製も隻腕も不足に非ず。骨肉を断つに足りる。
その想い一つでかぐやの呼吸は乱れ、心臓は早鐘の様相と化す。銃器の存在は思考から飛んだ。
動かねばならない正しい結論に至っていようと、逸る気持ちに反して体は僅かに後退りするばかり。詰まっていく距離を広げる事は叶わない。
「すまぬ。許せ」
零れた謝罪はやはり意図せぬ代物で、幻之介は妙な感傷を抱いている自身を呪う。
士の幻之介が戦場で女を切り伏せるにおいて、何故口惜しさに打ちひしがれる必要があろうか。
しかしながら戦場に不要なこの感傷こそが、如何にも猛丸が幻之介に埋め込んだ杭であり宝だという自覚もある。
結局殆ど動けなかったかぐやは、とうに木剣の間合いの内にいる。
猛丸より授かった宝を胸に、幻之介が彼女に齎せる救いは一思いに死に至らしめる事だけである。
幻之介が腰の木剣に手をかけたと同時に、響く大地を蹴る音。
瞬間、寸前まで隠匿されていた強者の気配が、あからさまに膨れ上がる。
あえて悟らせたとしか思えぬ鼻に衝く程の殺意は、強烈な砲音を幻之介の脳裏に蘇らせた。
大坂の役の折に大坂城を滅多打ちならぬ滅多撃ちにし、幻之介の左腕を持って行った覇府の砲。
「――――――ッ」
幻之介の判断は早かった。
覇府の砲に狙われた日とは違い、何かを守らねばならない戦いではない。ただ飛び退いて避けるだけである。
同時に背負っていた荷物を隻腕を滑らせるようにして下ろし、殺害体勢から交戦体勢へと移行する。
完全に身を潜めていながら殺人の瞬間に気配を露わにして登場し、少女を守るように立ち塞がった剣士は、およそ戦わずに殺害できる力量に留まっていない。
羽織の内に秘めた絵札箱を手触りで確認しつつも、その目線を決して剣士から離しはしない。
犬養幻之介が漏らした呟きに、かぐやが凄まじい速度で振り返る。
豊臣家御馬廻が一人としてはあるまじき失態には、已むに已まれぬ理由がある。
姿を捉えて距離を詰めている段階で華奢だとは思っていたが、女人だとは思いもよらなかった。
確かに名簿には到底男児であるとは思い難い名前もあったが、分かっていながら考慮から外してしまっていた。
戦に女子供が巻き込まれる事への違和感など、大坂の役を知る幻之介にはない。
女子供は斬れないなどと与太を扱くつもりもない。その手を手を女子供の血で汚した経験、今更数えるまでもない。
にもかかわらず猛丸のために女を殺す、その可能性を考慮していなかったのだ。
―――甘いな。否、甘くなったのか。
幻之介は自嘲する。
もしも猛丸と出逢う以前に仕える殿の為に皆殺しに挑んでいたのであれば、決して悟られる事なく隙を衝いていた。
かつての自身は、間違いなく殿の為であれば女子供を殺すのは当然と認識していた。
それでいながら、今、猛丸の為に女子供を殺すという発想を抱いてすらいなかった事実に、我が事ながら驚愕する。
―――だが、俺は犬だ。檻の中の犬が餌を選り好みするものか。
決意を新たに、幻之介は視線を強くする。
それだけでかぐやを支配するには事足りる。
手に木剣を携えた幻之介が歩み寄ってくるというのに、その瞳から目を離す事も敵わない。
「ちょ、ちょっと……!?」
幻之介が飛ばしたのは圧であり、剣気であり、殺意である。
この木剣にて首を落とす。慣れない“変身”を使うまでもない。木製も隻腕も不足に非ず。骨肉を断つに足りる。
その想い一つでかぐやの呼吸は乱れ、心臓は早鐘の様相と化す。銃器の存在は思考から飛んだ。
動かねばならない正しい結論に至っていようと、逸る気持ちに反して体は僅かに後退りするばかり。詰まっていく距離を広げる事は叶わない。
「すまぬ。許せ」
零れた謝罪はやはり意図せぬ代物で、幻之介は妙な感傷を抱いている自身を呪う。
士の幻之介が戦場で女を切り伏せるにおいて、何故口惜しさに打ちひしがれる必要があろうか。
しかしながら戦場に不要なこの感傷こそが、如何にも猛丸が幻之介に埋め込んだ杭であり宝だという自覚もある。
結局殆ど動けなかったかぐやは、とうに木剣の間合いの内にいる。
猛丸より授かった宝を胸に、幻之介が彼女に齎せる救いは一思いに死に至らしめる事だけである。
幻之介が腰の木剣に手をかけたと同時に、響く大地を蹴る音。
瞬間、寸前まで隠匿されていた強者の気配が、あからさまに膨れ上がる。
あえて悟らせたとしか思えぬ鼻に衝く程の殺意は、強烈な砲音を幻之介の脳裏に蘇らせた。
大坂の役の折に大坂城を滅多打ちならぬ滅多撃ちにし、幻之介の左腕を持って行った覇府の砲。
「――――――ッ」
幻之介の判断は早かった。
覇府の砲に狙われた日とは違い、何かを守らねばならない戦いではない。ただ飛び退いて避けるだけである。
同時に背負っていた荷物を隻腕を滑らせるようにして下ろし、殺害体勢から交戦体勢へと移行する。
完全に身を潜めていながら殺人の瞬間に気配を露わにして登場し、少女を守るように立ち塞がった剣士は、およそ戦わずに殺害できる力量に留まっていない。
羽織の内に秘めた絵札箱を手触りで確認しつつも、その目線を決して剣士から離しはしない。
*
かくして、復讐鬼は一人残された。
唐繰の如き白い顔を歪ませ、笑みを隠すように手で顔を押さえる。
唐繰の如き白い顔を歪ませ、笑みを隠すように手で顔を押さえる。
*
「俺が受け持つ。行け」
かぐやの前に不意に現れた剣士は、人並外れた簡潔さを持ち合わせていた。
不意に現れたという点でも、完結が過ぎるという点でも、剣士という点でも、二人の男を区別する事は出来ない。
全く以て問題は無い。
“許せ”の隻腕木剣武士も、“行け”の左右別色羽織剣士も、両者共に簡潔が過ぎていた。
「あ、貴方、何時から……」
殺意に当てられ、“水”に殺意を祓われ、揺蕩う小舟を思わせる浮遊感の中で、かぐやは抱いた疑問をそのまま口にしてしまう。
らしからぬ、或いはらしいアホさである。
そんな問答をしている場合か否かを見極める氷じみた冷静な判断力は、浮遊感に浸る現時点のかぐやから失われていた。
だが、すぐに取り戻す事となる。
「初めからだ」
瞬間、“ぞわり”がかぐやの体躯を走った。
「言うなれば、お前が譫言のように“藤原”の名を呼んでいた頃からだ」
瞬間、“ぞわり”がかぐやの体躯を駆け抜けていった。
「お前は俺とは違う。行け」
瞬間、“ぞわり”の第二レースが始まり、またしても恐るべき速度で風を切っていった。
「そうですか……ありがとうございます……」
感謝の念はあった。紛れも無く存在していた。死を覚悟した場面で助けてくれた人間を恩人と認識させないほど、四宮家の教育は歪んではいない。
その感謝の念を下地にしたその上で、かぐやは少しばかり引いているだけだ。少しなのでドン引きではない。恩人にドン引きするような教育は受けていない。
ぺこりとお辞儀をして、向かうべき方角へと走っていく。
いくら銃器を持っていようとここにいれば邪魔になると、冷静な判断力から導き出した結論である。
氷の判断力の賜物であって、未だ背筋に残り続ける“ぞわり”が原因である筈が無い。少なくともかぐやはそう信じている。
かぐやの前に不意に現れた剣士は、人並外れた簡潔さを持ち合わせていた。
不意に現れたという点でも、完結が過ぎるという点でも、剣士という点でも、二人の男を区別する事は出来ない。
全く以て問題は無い。
“許せ”の隻腕木剣武士も、“行け”の左右別色羽織剣士も、両者共に簡潔が過ぎていた。
「あ、貴方、何時から……」
殺意に当てられ、“水”に殺意を祓われ、揺蕩う小舟を思わせる浮遊感の中で、かぐやは抱いた疑問をそのまま口にしてしまう。
らしからぬ、或いはらしいアホさである。
そんな問答をしている場合か否かを見極める氷じみた冷静な判断力は、浮遊感に浸る現時点のかぐやから失われていた。
だが、すぐに取り戻す事となる。
「初めからだ」
瞬間、“ぞわり”がかぐやの体躯を走った。
「言うなれば、お前が譫言のように“藤原”の名を呼んでいた頃からだ」
瞬間、“ぞわり”がかぐやの体躯を駆け抜けていった。
「お前は俺とは違う。行け」
瞬間、“ぞわり”の第二レースが始まり、またしても恐るべき速度で風を切っていった。
「そうですか……ありがとうございます……」
感謝の念はあった。紛れも無く存在していた。死を覚悟した場面で助けてくれた人間を恩人と認識させないほど、四宮家の教育は歪んではいない。
その感謝の念を下地にしたその上で、かぐやは少しばかり引いているだけだ。少しなのでドン引きではない。恩人にドン引きするような教育は受けていない。
ぺこりとお辞儀をして、向かうべき方角へと走っていく。
いくら銃器を持っていようとここにいれば邪魔になると、冷静な判断力から導き出した結論である。
氷の判断力の賜物であって、未だ背筋に残り続ける“ぞわり”が原因である筈が無い。少なくともかぐやはそう信じている。
「……何故、彼女を追わなかった」
「……」
冨岡義勇は無回答には慣れているので、然したる驚きは抱かない。剣術と会話、両方において経験が彼を強くした。
妙に喧しく他愛も無い話をしたがる鬼は少なくないが、義勇は元より戦闘中に会話を弾ませる趣味も持ち合わせていない。
ただ単に疑問を投げかけただけだ。
こちらも慣れぬ西洋剣であるが、相手は隻腕に木剣である。
このような戦力差になった際、逃げる一般人を狙うかのように振る舞って遁走するのが、鬼であった場合のセオリーだ。
にもかかわずそれをしない。“不足ではない”のか、“上乗せする物がある”のか。
「返答無しか。慣れている」
これは完全に余計な一言であったが、彼なりに言葉の少なさを指摘された無数の経験に思うところはあるのだ。
結果として余計であり、その余計な一言を最後に静寂が場を支配する。
仕掛けたのは幻之介で、驚いたのは義勇である。
―――バカな。“遠い”。“遠すぎ”る。
木剣を担ぐようにして構えていた幻之介が、明らかに木剣の間合いから外れた箇所で始動した。
咄嗟に義勇が背後に跳んで距離を取ったのは、血鬼術なる特異な能力を持つ鬼との戦いの経験故である。
初見では見抜く術のない力と戦い続けた積み重ねが無ければ、この一閃で以って義勇は頸動脈を断たれていたであろう。
―――奇妙な握りだ。
文字通りにもう一寸のところで死を回避しながら、義勇は冷静に幻之介の技術を見抜く。
間合いの外から放たれた横凪の一閃。放たれた時点で幻之介が掴んでいたのは鍔元の縁であったが、木剣を振るい切った時点でその手は鍔尻の頭にあった。
振るう最中に握力を緩めて、刀を手の中で流れるように横滑りさせたのであろう。成る程、間合いの外に届き得る筈である。
「虎眼流が太刀を担いだら用心しろとは、よく言ったものだな」
幻之介の技を見極めるべく距離を取ろうとしていた義勇が、仰々しく演技じみている低い声に眉根を寄せる。
「何故いる」
「フ、言うな。すぐに追いつく。だがな、奴のような男を見れば声をかけずにはいられまいよ。仇討の物語……正当なる仇討が正当である故の結末に至る物語から、生まれいずる英霊を前にしてはな」
くつくつと笑って、巌窟王はその歪み切った笑顔を幻之介に向ける。
「……」
冨岡義勇は無回答には慣れているので、然したる驚きは抱かない。剣術と会話、両方において経験が彼を強くした。
妙に喧しく他愛も無い話をしたがる鬼は少なくないが、義勇は元より戦闘中に会話を弾ませる趣味も持ち合わせていない。
ただ単に疑問を投げかけただけだ。
こちらも慣れぬ西洋剣であるが、相手は隻腕に木剣である。
このような戦力差になった際、逃げる一般人を狙うかのように振る舞って遁走するのが、鬼であった場合のセオリーだ。
にもかかわずそれをしない。“不足ではない”のか、“上乗せする物がある”のか。
「返答無しか。慣れている」
これは完全に余計な一言であったが、彼なりに言葉の少なさを指摘された無数の経験に思うところはあるのだ。
結果として余計であり、その余計な一言を最後に静寂が場を支配する。
仕掛けたのは幻之介で、驚いたのは義勇である。
―――バカな。“遠い”。“遠すぎ”る。
木剣を担ぐようにして構えていた幻之介が、明らかに木剣の間合いから外れた箇所で始動した。
咄嗟に義勇が背後に跳んで距離を取ったのは、血鬼術なる特異な能力を持つ鬼との戦いの経験故である。
初見では見抜く術のない力と戦い続けた積み重ねが無ければ、この一閃で以って義勇は頸動脈を断たれていたであろう。
―――奇妙な握りだ。
文字通りにもう一寸のところで死を回避しながら、義勇は冷静に幻之介の技術を見抜く。
間合いの外から放たれた横凪の一閃。放たれた時点で幻之介が掴んでいたのは鍔元の縁であったが、木剣を振るい切った時点でその手は鍔尻の頭にあった。
振るう最中に握力を緩めて、刀を手の中で流れるように横滑りさせたのであろう。成る程、間合いの外に届き得る筈である。
「虎眼流が太刀を担いだら用心しろとは、よく言ったものだな」
幻之介の技を見極めるべく距離を取ろうとしていた義勇が、仰々しく演技じみている低い声に眉根を寄せる。
「何故いる」
「フ、言うな。すぐに追いつく。だがな、奴のような男を見れば声をかけずにはいられまいよ。仇討の物語……正当なる仇討が正当である故の結末に至る物語から、生まれいずる英霊を前にしてはな」
くつくつと笑って、巌窟王はその歪み切った笑顔を幻之介に向ける。
「なァ、そうだろう――――――藤木源之助」
瞬間、“ぞわり”が幻之介の身体を走った。
【C-6/1日目・黎明】
【四宮かぐや@かぐや様は告らせたい】
[状態]:疲れ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、H&K MP7@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:私はスキを諦めない
1:石上君の声がした方角に向かう。
2:会長たちと合流したい
3:あの巌窟王……って人、私の妄想では……?
4:なんだか銃の使い方がわかった気がする
[備考]
具体的な参戦時期は後続に任せます
[状態]:疲れ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、H&K MP7@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:私はスキを諦めない
1:石上君の声がした方角に向かう。
2:会長たちと合流したい
3:あの巌窟王……って人、私の妄想では……?
4:なんだか銃の使い方がわかった気がする
[備考]
具体的な参戦時期は後続に任せます
【エドモン・ダンテス@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:復讐。脱獄。その手助け。
1:巌窟王として行動する
2:何のかんの言いつつ、かぐやに陰ながら同行し、そのピンチには駆けつける(?)
[備考]
※参戦時期、他のFate/Grand Orderのキャラとの面識、制限は後続に任せます
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:復讐。脱獄。その手助け。
1:巌窟王として行動する
2:何のかんの言いつつ、かぐやに陰ながら同行し、そのピンチには駆けつける(?)
[備考]
※参戦時期、他のFate/Grand Orderのキャラとの面識、制限は後続に任せます
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
【冨岡義勇@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、無毀なる湖光、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:鬼舞辻無惨を討つ。鬼を切り、人を守る。
1:交戦。
[備考]
※参戦時期、柱稽古の頃。
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、無毀なる湖光、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:鬼舞辻無惨を討つ。鬼を切り、人を守る。
1:交戦。
[備考]
※参戦時期、柱稽古の頃。
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
【犬養幻之介@衛府の七忍】
[状態]:健康
[装備]:オルタナティブ・ゼロのカードデッキ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、木剣@現実
[思考・状況]
基本方針:タケルを生かす。
1.殺す。
2.タケルの害になるものを効率的に殺す。
[備考]
※タケル死亡後、豊臣秀頼たちの前に行く前からの参戦。
[状態]:健康
[装備]:オルタナティブ・ゼロのカードデッキ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、木剣@現実
[思考・状況]
基本方針:タケルを生かす。
1.殺す。
2.タケルの害になるものを効率的に殺す。
[備考]
※タケル死亡後、豊臣秀頼たちの前に行く前からの参戦。
【支給品紹介】
【木剣@現実】
日本刀を模した木製品。
剣士ともなれば、木剣で顎を砕き、指を落とし、首を刎ねる事とて可能。
【木剣@現実】
日本刀を模した木製品。
剣士ともなれば、木剣で顎を砕き、指を落とし、首を刎ねる事とて可能。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 見守る柱、見届ける鬼 | 四宮かぐや | シグルイ・オルタナティブ |
| エドモン・ダンテス | ||
| 冨岡義勇 | ||
| 求めしもの | 犬養幻之介 |