WORLD IS MINE(前編) ◆ZbV3TMNKJw
「ふむ、こんなところか」
今之川権三は、足元の穴倉を見ながらぽつりとひとりごちた。
宮本武蔵との交戦後、彼はひたすらに歩き回っていた。
あてもなく、というよりは拠点とすべき場所を探し回っていたのだ。
またあの千年男のような輩と出会った時、避難する場所があるのとないとではまるで違うからだ。
うろうろと探し回ること三十分ほどだろうか。
宮本武蔵との交戦後、彼はひたすらに歩き回っていた。
あてもなく、というよりは拠点とすべき場所を探し回っていたのだ。
またあの千年男のような輩と出会った時、避難する場所があるのとないとではまるで違うからだ。
うろうろと探し回ること三十分ほどだろうか。
こじんまりとした洞穴を見つけた権三は中を検分。
異常がないと見るや、掌を地面に叩きつけた。
異常がないと見るや、掌を地面に叩きつけた。
武蔵に斬られた八つ当たりではない。
権三は五指を立て、その先端から鉄の塊を発射する。
勢いをもったそれは、ある程度までは地面を削り停止した。
権三は構わず次弾を発射。
その弾は、先に削り停止していた弾に当たり、更に地面を掘り進めた。
権三は五指を立て、その先端から鉄の塊を発射する。
勢いをもったそれは、ある程度までは地面を削り停止した。
権三は構わず次弾を発射。
その弾は、先に削り停止していた弾に当たり、更に地面を掘り進めた。
「これだけ掘れれば...よっと」
権三は掌の下にある土くれを持ち上げひとつの穴を作り上げた。
「祭りのカタ抜きみたいだぞい。では...ぬんっ」
穴に向かって放つ拳。
大木すらもへし折るそのパワーで殴りつけられた土は容易く崩れ、穴は更に深さを増した。
大木すらもへし折るそのパワーで殴りつけられた土は容易く崩れ、穴は更に深さを増した。
「深さは3メートル弱...まあこんなものだぞい」
土をかきわけ入り口を広げ、出来た穴に権三は入り込む。
そして今度は足元ではなく胸板の高さに向けて拳を放った。
そして今度は足元ではなく胸板の高さに向けて拳を放った。
「地面が脆くてどんどん掘れる。楽チン楽チン」
ある程度掘れたところで、今度はトン、トン、と小さく跳躍。そして。
「フンッ!!」
膝を折り曲げ全力で跳びあがった。
常人ならばただ天井にぶつかって終わりだ。
だが、彼には鋼化の技がある。
鋼鉄と化した彼の身体が猛スピードでぶつかれば、砕けるのは天井の方だ。
天井を砕き、地盤を粉砕し、権三の頭が地上に出る。
キョロキョロと周囲を見回し誰もいないことを確認した権三は、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
常人ならばただ天井にぶつかって終わりだ。
だが、彼には鋼化の技がある。
鋼鉄と化した彼の身体が猛スピードでぶつかれば、砕けるのは天井の方だ。
天井を砕き、地盤を粉砕し、権三の頭が地上に出る。
キョロキョロと周囲を見回し誰もいないことを確認した権三は、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
「これぞ今之川式簡易防空壕...非常口もある親切設計だぞい」
我ながら頭がいいと権三は自賛する。
この洞穴ならば身を隠すことが出来るし、万が一の時はいま作った穴から脱出することもできる。
中が暗めというのもいい。まず外部から不意打ちされないし、中を伺う暢気な参加者に不意打ちをかますこともできる。
こんなものを1時間もしない内に作ってしまうなどやはり自分は偉大だと再び自賛した。
中が暗めというのもいい。まず外部から不意打ちされないし、中を伺う暢気な参加者に不意打ちをかますこともできる。
こんなものを1時間もしない内に作ってしまうなどやはり自分は偉大だと再び自賛した。
さて、再びジュースを探しに行こうかと穴からよじ登り地上へと出たその時だ。
ズドン。
突如、飛来した何かが権三の頭上を通り過ぎ、地面を抉り砂埃を巻き上げた。
権三は目を凝らす。落ちてきたものの正体を確かめるために。
権三は目を凝らす。落ちてきたものの正体を確かめるために。
―――ゾワリ
権三の背筋に怖気が走った。
(こ、これは...!?)
この感覚に権三は覚えがある。
忘れもしない。忘れることはできない。自尊心の塊である彼ですら認めざるをえない格上から発せられる威圧感だ。
では、落ちてきたモノの正体は―――
忘れもしない。忘れることはできない。自尊心の塊である彼ですら認めざるをえない格上から発せられる威圧感だ。
では、落ちてきたモノの正体は―――
砂埃の先でゆらり、と影が蠢くのを合図にするかのように、権三は思わず口にした。
「せっ、千年男!!」
酷似していた。
あの男から発せられた不気味さに。恐ろしさに。
だから権三は咄嗟に臨戦態勢に入った。
が、敵からの攻撃はなく。
あの男から発せられた不気味さに。恐ろしさに。
だから権三は咄嗟に臨戦態勢に入った。
が、敵からの攻撃はなく。
「いやはや驚いた。しっかり身体能力も向上しているとはね」
煙が晴れたその先にいたのは、千年男とは似ても似つかぬ風貌の、笑顔が特徴の優男だった。
「き、貴様だれぞい!」
「ん?きみも参加者かい?殴り飛ばされた先にいるなんてなんて偶然だろう。俺の名は童磨。君の名は?」
「ワ、ワシは今之川権三...いやそれよりも!貴様なぜあの千年男のような気配をしておる!?」
「千年男?そんなヤツ知り合いにいたかなぁ」
「ん?きみも参加者かい?殴り飛ばされた先にいるなんてなんて偶然だろう。俺の名は童磨。君の名は?」
「ワ、ワシは今之川権三...いやそれよりも!貴様なぜあの千年男のような気配をしておる!?」
「千年男?そんなヤツ知り合いにいたかなぁ」
童磨は顎に手をやり数秒だけう~んと唸ると、突如己のこめかみに指を突き刺した。
当てたのではない。頭蓋骨を貫通し、脳髄を弄くっているのだ。
当てたのではない。頭蓋骨を貫通し、脳髄を弄くっているのだ。
「これでもないあれでもない...悪いね、俺は記憶力がいい方なんだけど、君の言う千年男とやらは見当たらなかったよ。俺はとても興味が湧いてきた。どんなヤツなのか教えてくれるかな?」
相も変らぬ笑みであっけらかんと喋る童磨に今之川権三は背筋が凍った。
脳髄とは生物における重要器官である。
如何に身体を強靭に鍛え上げようと、ここを破壊されれば間違いなく死に至る。
驚異的な再生能力と人智を超えた力を有す今之川権三がそうだったのだから間違いない。
脳髄とは生物における重要器官である。
如何に身体を強靭に鍛え上げようと、ここを破壊されれば間違いなく死に至る。
驚異的な再生能力と人智を超えた力を有す今之川権三がそうだったのだから間違いない。
だというのにこの男は、自ら平然と己の脳髄を掻き乱したのだ。
権三のように再生能力に自信があるとしてもだ。たかだか記憶を探るためだけに、己の身体に枷が嵌められているこの状況でなぜそんなことが出来る。
いや、そもそもそんなことで記憶を引きずり出せるのか?
権三のように再生能力に自信があるとしてもだ。たかだか記憶を探るためだけに、己の身体に枷が嵌められているこの状況でなぜそんなことが出来る。
いや、そもそもそんなことで記憶を引きずり出せるのか?
(わからん...不気味すぎるぞい)
童磨の異様さに権三が呑まれかけていたその時だ。
ズンッ、と地響きが鳴り、第二の砂埃が舞い上がったのは。
「逃がさんぞ童磨。とはいえ殴り飛ばしたのは私だがな」
砂煙が晴れ、現れたのは女だった。
凛とした佇まいに長い黒髪、そして服からはち切れんばかりの豊満な胸部が特徴的な女だった。
凛とした佇まいに長い黒髪、そして服からはち切れんばかりの豊満な胸部が特徴的な女だった。
「次から次へとなんだ貴様ら!」
「ん、参加者か。一刻も早くここから...いや、その服の返り血...なるほど。貴様は離れる必要は無いな。童磨共々考えを改めさせてやろう」
「ああん?なぜ貴様にそんなことを...っ!?」
「ん、参加者か。一刻も早くここから...いや、その服の返り血...なるほど。貴様は離れる必要は無いな。童磨共々考えを改めさせてやろう」
「ああん?なぜ貴様にそんなことを...っ!?」
権三は気がついた。
女の漂わせる気配に。
この女も、千年男に近い異様さを放っていることに。
女の漂わせる気配に。
この女も、千年男に近い異様さを放っていることに。
(どういうことじゃ...あの千年男、こんなに子沢山だったのか?)
息子と娘にしては似ていないなとか、子供同士ならそもそもなぜ戦っているのかとか。
気になることは山ほどあったが、千年も生きていれば子供の一人や二人はいるだろうし、あの貧乏くさいツラからして教育現場もロクなものじゃないだろうという考えに至り、追求するのは止めた。
いまの彼にとって重要なのは、自分がこの状況でどう立ち回るかだ。
気になることは山ほどあったが、千年も生きていれば子供の一人や二人はいるだろうし、あの貧乏くさいツラからして教育現場もロクなものじゃないだろうという考えに至り、追求するのは止めた。
いまの彼にとって重要なのは、自分がこの状況でどう立ち回るかだ。
そんな権三を捨て置き、童磨と女は再び向かい合う。
「めだかちゃん。きみは凄いよ。今まで多くの人間を救ってきたけど、誰の手も借りず鬼に成る子は一人としていなかった。けれど、だからこそわかるだろう。この戦いが如何に不毛かは」
「不毛なことか。私の拳が、想いが、貴様の心に届けばそれでいい。それだけでも意味はある」
「う~ん、イマイチ話が噛み合わないなぁ。もう少し続けてみるかい?」
「当然だ」
「不毛なことか。私の拳が、想いが、貴様の心に届けばそれでいい。それだけでも意味はある」
「う~ん、イマイチ話が噛み合わないなぁ。もう少し続けてみるかい?」
「当然だ」
一瞬の沈黙―――そして。
パンッ、と空気が弾ける音がした。
かと思えば、童磨とめだかが正面から衝突し、拳を打ち付け合っていた。
繰出し交わされる拳の雨、蹴撃の嵐。
その速度は、超人たる権三をもってしても目で追うのがやっとだった。
パンッ、と空気が弾ける音がした。
かと思えば、童磨とめだかが正面から衝突し、拳を打ち付け合っていた。
繰出し交わされる拳の雨、蹴撃の嵐。
その速度は、超人たる権三をもってしても目で追うのがやっとだった。
(それだけではない...攻撃が部位を破壊するたびに互いに再生しあっておる。化け物じゃ)
くだけた拳も。裂かれた顎も。噴出す鮮血と臓物も。
互いが互いの攻撃を瞬時に再生し、その傍から破壊しあっている。
常人からしてみればこの異常で異様で凄惨な光景も、しかし権三は別の角度から見ていた。
互いが互いの攻撃を瞬時に再生し、その傍から破壊しあっている。
常人からしてみればこの異常で異様で凄惨な光景も、しかし権三は別の角度から見ていた。
(なるほど。あのドーマとかいうのの言う通り、確かに不毛じゃ)
どちらが強いか弱いか以前に、同じ能力と再生力を有しているならそもそも決着が着き様がない。
ただ、どちらが優勢かと問われれば―――
ただ、どちらが優勢かと問われれば―――
「うんうん。やはり先ほどまでとはレベルが違う。だいぶ力をモノにしてきたようだね」
(ドーマの方じゃな)
(ドーマの方じゃな)
めだかは確かに『鬼』を観察し新たな力『鬼神モード』を手に入れた。
が、そもそも鬼とは人を食らうことで力を増していく。
いくら『鬼』を完成させたところで、その前提は変わらない。
人を大勢食らった童磨の『鬼』とめだかの『鬼』ではどうしても力の差が出てきてしまうのだ。
が、そもそも鬼とは人を食らうことで力を増していく。
いくら『鬼』を完成させたところで、その前提は変わらない。
人を大勢食らった童磨の『鬼』とめだかの『鬼』ではどうしても力の差が出てきてしまうのだ。
なにより、童磨はまだ力の全てを披露していない。
『血鬼術』―――鬼の本領を発揮する業を。
『血鬼術』―――鬼の本領を発揮する業を。
「『黒神スキップロープ』」
その血鬼術を、めだかは使用した。
めだかが腕を振るうのに僅かに遅れて、氷の蔦が背後から現れたのだ。
さしもの童磨もこれには驚き、動きが止まった隙を突かれ、蔦で顔面を叩かれた。
めだかが腕を振るうのに僅かに遅れて、氷の蔦が背後から現れたのだ。
さしもの童磨もこれには驚き、動きが止まった隙を突かれ、蔦で顔面を叩かれた。
揺れる視界の中、童磨は思う。
やはり彼女は面白い、と。
ただ相手の模倣をするのではなく、その上で相手の能力を己のモノにする。
いまの血鬼術がいい例だ。
童磨はめだかとの戦いで血鬼術はまだ『蓮葉氷』しか見せていない。
しかし、彼女はその応用技をなんの前振りもなく使ってみせた。
ただの模倣では到底できない業だ。
ただ相手の模倣をするのではなく、その上で相手の能力を己のモノにする。
いまの血鬼術がいい例だ。
童磨はめだかとの戦いで血鬼術はまだ『蓮葉氷』しか見せていない。
しかし、彼女はその応用技をなんの前振りもなく使ってみせた。
ただの模倣では到底できない業だ。
(きみみたいな子は本当に初めてだ。改めて興味が湧いてきたよ)
ぐるん、と反れた上体を起こした童磨は笑う。
救う前に、もっと彼女を観察したい。彼女の限界を知り、己の糧にしたいと。
救う前に、もっと彼女を観察したい。彼女の限界を知り、己の糧にしたいと。
「めだかちゃん、俺は嬉しいよ!まさか俺の血鬼術まで自分のモノにするなんてさ!俺の術の使い心地はどうだい?気に入ってもらえたかな?」
「血鬼術。それがこの能力の名前か。ウム、応用はいくらでもきくし、中々どうして使い心地は悪くない。お姉さまの『凍る火柱(アイスファイア)』とてここまで氷の形を自在には操れんだろう」
「それはよかった。せっかく俺の能力を手に入れたのに肝心の血鬼術が馴染まなければ申し訳ないからね。そんなきみに俺からご褒美だ」
「血鬼術。それがこの能力の名前か。ウム、応用はいくらでもきくし、中々どうして使い心地は悪くない。お姉さまの『凍る火柱(アイスファイア)』とてここまで氷の形を自在には操れんだろう」
「それはよかった。せっかく俺の能力を手に入れたのに肝心の血鬼術が馴染まなければ申し訳ないからね。そんなきみに俺からご褒美だ」
童磨が両掌に冷気を集め、己の前方に翳す。
するとどうだろうか。
童磨の姿かたちをした小さな氷像が出来上がったではないか。
それも一体ではない。五体もの氷像が童磨の前に並び立つ。
するとどうだろうか。
童磨の姿かたちをした小さな氷像が出来上がったではないか。
それも一体ではない。五体もの氷像が童磨の前に並び立つ。
「血鬼術『結晶ノ御子』。この子は俺と同じくらいの強さの技出せるんだ。さ、遊んでおいで」
童磨の号令と共に、氷像たちは一斉に手の扇を振るい蓮葉氷を放つ。
めだかは両腕で目元だけは隠さぬように顔面を覆い、氷像たちを見据えつつ冷気に耐える。
めだかは両腕で目元だけは隠さぬように顔面を覆い、氷像たちを見据えつつ冷気に耐える。
「なるほど。確かに一体一体が貴様の攻撃となんら遜色がない。こういった手合いは分裂すれば弱体化するはずなのだがな。ならばこちらも」
めだかは冷気を吸い込まぬよう息を止め、目を瞑り呟く。
「『光化静翔(テーマソング) めだかスタイル』」
瞬間。
めだかが文字通り5体に増幅し、各々結晶ノ御子へと飛び掛る。
めだかが文字通り5体に増幅し、各々結晶ノ御子へと飛び掛る。
『光化静翔(テーマソング)』―――箱庭学園の英雄、日之影空洞の異常性『知られざる英雄(ミスターアンノウン)』を不知火半袖が『正喰者(リアルイーター)』で喰い改めたスキル。
その性質は目にも映らぬ速さで光速の如く動き、且つ己はその衝撃を受けないというスピードに特化したスキルである。
めだかは、このスキルを観察しておきながら奥の手であるアコースティックバージョンを使うことができず。
光化静翔を参考にし、高速で突撃する『黒神ファントム』に取り入れるのが限度だった。
正史における獅子目言彦との戦いでも、アコースティックバージョンを使用する素振りさえみせなかったことから、光化静翔の使用難易度の高さが伺いしれるだろう。
その性質は目にも映らぬ速さで光速の如く動き、且つ己はその衝撃を受けないというスピードに特化したスキルである。
めだかは、このスキルを観察しておきながら奥の手であるアコースティックバージョンを使うことができず。
光化静翔を参考にし、高速で突撃する『黒神ファントム』に取り入れるのが限度だった。
正史における獅子目言彦との戦いでも、アコースティックバージョンを使用する素振りさえみせなかったことから、光化静翔の使用難易度の高さが伺いしれるだろう。
では、光化静翔を使いこなしていた日之影空洞と完成させても使い切ることのできなかった黒神めだかとの違いは何か。
―――頑強さ。
サイズか。筋肉の質か。具体的なことはわからないが、違いがあるとすればそこだろう。
光化静翔により己への衝撃を無くすまでの負荷に耐え得る頑強さがあればこそ、日之影空洞は自由自在に光速で動けていたのだろう。
サイズか。筋肉の質か。具体的なことはわからないが、違いがあるとすればそこだろう。
光化静翔により己への衝撃を無くすまでの負荷に耐え得る頑強さがあればこそ、日之影空洞は自由自在に光速で動けていたのだろう。
そんないまのめだかは、鬼神モードにより不死性のほかに身体能力及び頑強さも増している。
つまり。増幅したその全てが実体となるアコースティックバージョンにも耐え得る身体になったのだ。
つまり。増幅したその全てが実体となるアコースティックバージョンにも耐え得る身体になったのだ。
「「「「「はああああああ!!」」」」」
結晶ノ御子の放つ冷気を突破し殴りかかる五人のめだか。
そのめだかを迎え撃つ結晶ノ御子たち。
それを見ていた権三は思った。
こいつらはわしの手には負えそうにないと。
そのめだかを迎え撃つ結晶ノ御子たち。
それを見ていた権三は思った。
こいつらはわしの手には負えそうにないと。
再び、鬼と鬼の食らい合いが始まる。
先ほどの焼き直しか―――否。
先ほどの焼き直しか―――否。
(なるほど。どうやら彼女はなにもかもを模倣できるわけではないみたいだね)
殴りあうめだか達やこそこそと離れていく気配を他所に、本体の童磨は戦況を観察していた。
(彼女の能力の本質は"観察"だ。対象の技を観察し、その能力を昇華させる...所謂完成に近づける。だが、それにも制限がある)
童磨がそう判断したのは、結晶ノ御子に対して光化静翔で迎え撃ったことからだ。
(俺が産み出したものに対して、血鬼術まで使ってみせた彼女は己を分身させて迎え撃った。どう考えても非効率だ。
つまり彼女は結晶ノ御子を使えない。それが能力が故か性格が故かはわからないけれどね)
つまり彼女は結晶ノ御子を使えない。それが能力が故か性格が故かはわからないけれどね)
童磨の見解は的を得ていた。
めだかは例え結晶ノ御子までも完成させたとて、それを使うことはできないだろう。
黒神めだかは何事においてもまずは己の身を前線に置くことを考える。そんな彼女が、童磨のように分身を戦わせて自分は後ろで待機するなどできるはずもない。
めだかは例え結晶ノ御子までも完成させたとて、それを使うことはできないだろう。
黒神めだかは何事においてもまずは己の身を前線に置くことを考える。そんな彼女が、童磨のように分身を戦わせて自分は後ろで待機するなどできるはずもない。
(とはいえ、後々まで残しておくと大変なことになりそうだ)
童磨の危惧は、めだかをここで逃がすことで主へ負担をかけてしまう可能性だ。
彼女の能力を加味しても、己が負ける要素は現状はない。
だが、もうすぐ朝日が昇る頃合いだ。
もしも彼女を仕留め切れなければ、童磨はイヤでも退く他ない。
そうなれば他の参加者とめだかが遭遇を重ね、多種多様な能力を完成させることだろう。
そんな彼女と主が遭遇すればいらぬ手間をかけてしまう。
彼女の能力を加味しても、己が負ける要素は現状はない。
だが、もうすぐ朝日が昇る頃合いだ。
もしも彼女を仕留め切れなければ、童磨はイヤでも退く他ない。
そうなれば他の参加者とめだかが遭遇を重ね、多種多様な能力を完成させることだろう。
そんな彼女と主が遭遇すればいらぬ手間をかけてしまう。
(そんなことになれば叱られてしまうからなあ。それ自体は構わないが、あの方が不機嫌になるのは申し訳が立たない。名残惜しいけど、ここまでかな)
黒神めだかへの興味は未だ尽きていない。
けれど、ここが殺し合いの場である以上、時間は有限だ。
黒神めだかの脱落は絶対ではあるが、主と自分はともかくとして、他の面子、特に女を殺せない猗窩座ではどれだけ相手をできることやら。
めだかの観察はまだ足りていないが、童磨はいまここでめだかを救うと決めた。
けれど、ここが殺し合いの場である以上、時間は有限だ。
黒神めだかの脱落は絶対ではあるが、主と自分はともかくとして、他の面子、特に女を殺せない猗窩座ではどれだけ相手をできることやら。
めだかの観察はまだ足りていないが、童磨はいまここでめだかを救うと決めた。
結晶ノ御子の相手をする一体のめだかに、童磨は飛び掛る。
どれが本物か、などは考えない。全てが実体である以上判別は難しく、悩むだけ時間が削がれてしまうからだ。
ならば全てに攻撃するだけだ。
どれが本物か、などは考えない。全てが実体である以上判別は難しく、悩むだけ時間が削がれてしまうからだ。
ならば全てに攻撃するだけだ。
童磨の掌がめだかの頭部に迫る。
「「隙だらけ」」「だぞい!!」
誰かと声が重なったと思った瞬間、童磨の足が掴まれ、力付くで後方へと投げ飛ばされた。
完全に虚を突かれた童磨は成す術もなく吹き飛ばされてしまった。
下手人は今之川権三。めだかと童磨が戦いながら移動してくるより前にこの場にいた男である。
完全に虚を突かれた童磨は成す術もなく吹き飛ばされてしまった。
下手人は今之川権三。めだかと童磨が戦いながら移動してくるより前にこの場にいた男である。
(いくぞい、ここが正念場じゃ)
始めは、眼前の戦いの熾烈さから、ここは人知れずこっそりと退こうかと権三は考えていた。
しかしだ。
仮にここで逃げたとして、もし再び彼らのどちらかにでも遭遇すればどうなるか。
間違いなく戦う羽目になり、殺されてしまうことだろう。
権三は己の強さを自負しているが、しかし眼前の彼らに無策で勝てるとは思ってもいない。
しかしだ。
仮にここで逃げたとして、もし再び彼らのどちらかにでも遭遇すればどうなるか。
間違いなく戦う羽目になり、殺されてしまうことだろう。
権三は己の強さを自負しているが、しかし眼前の彼らに無策で勝てるとは思ってもいない。
ならば今後を見据え、ここで片方でも排除しておくべきだ。
そして排除するべきなのはというと。
そして排除するべきなのはというと。
(間違いなくドーマじゃ。この状況を見た限り、厄介なのは、千年男の気配が濃いコイツの方じゃ!ならばこそこやつはここで排除する!)
「小娘ぇ!」
権三が叫び、めだかは結晶ノ御子の相手をしながら耳を傾ける。
「その人形を全力で足止めせよ!あいつはわしがどうにかしてやる!」
めだかの同意を得る暇もなく、権三は駆け出す。童磨を投げ飛ばした穴倉へと。
「ま、待て...くっ」
めだかは権三を止めようとするも、結晶ノ御子の攻撃は未だ苛烈。
五人全員のめだかは、それぞれの相手を振り払えずにいた。
五人全員のめだかは、それぞれの相手を振り払えずにいた。
そして、権三が穴倉へと入った数十秒後だった。
地を鳴らすほどの爆発が起きたのは。
☆
「いやはや参ったなぁ」
童磨は暗闇の中、一人ごちた。
「まさかあの彼にしてやられるとは」
それはほんの数分前の出来事だった。
穴倉へと投げられ、そういえば彼もいたなあと童磨が思ったその瞬間。
「喰らうがいい!」
入り口まで駆けつけた権三が、鞄から小さな球を取り出し地面にばら撒いたかと思えば、指先からなにかを発射し―――爆発は起きた。
童磨が観察する暇も無いあっという間の出来事だった。
童磨が観察する暇も無いあっという間の出来事だった。
その結果、童磨は閉じ込められた。
岩石や土砂で出口は崩れ、地面に空いていた穴でその身は埋れ。
現状、童磨は身体こそは治っているものの、身動きの取れない状態に陥っていた。
岩石や土砂で出口は崩れ、地面に空いていた穴でその身は埋れ。
現状、童磨は身体こそは治っているものの、身動きの取れない状態に陥っていた。
「あれが彼の術なのかな?それとも支給品かな?どちらにせよ興味深い」
ほとほと面白い催しだと童磨は思う。
めだかといいあの男といい、不可思議な能力は今後の戦いの参考にもなる。
そうしてどんどん腕を磨いていけば、主もきっと喜ぶだろう。
めだかといいあの男といい、不可思議な能力は今後の戦いの参考にもなる。
そうしてどんどん腕を磨いていけば、主もきっと喜ぶだろう。
「しかしどうしたものかな。もうじき日が昇るころだし無理に出る必要はないけれども」
閉じ込められたといっても、鬼たる童磨にとっては大した問題ではない。
出口さえ開ければいいのだから、少しばかり時間をかければ脱出は容易だ。
出口さえ開ければいいのだから、少しばかり時間をかければ脱出は容易だ。
ただ、出ようとしたところで日光を浴びて消滅などという目も当てられない結末には陥りたくはない。
とはいえ日が沈むまでここで待機というのもなんとも味がない。
とはいえ日が沈むまでここで待機というのもなんとも味がない。
はてさてどうしようか。わざとらしく顎に手をやりつつ、童磨は考え始めた。
程なくして、彼は顔を上げた。
「あれ?この気配...」
☆
「ぶはあっ。中々スリリングだったぞい」
地面から顔を出した権三は、持ち前の筋力で残る土砂ごと跳び出し地上へと降り立った。
権三の戦略は至ってシンプルだ。
童磨が凄まじい再生能力を有しているなら、身動きをとれなくしてしまえばいい。
そのために、彼は1時間ほどかけてこつこつと作った穴倉を犠牲に童磨を閉じ込めた。
不利な状況で千年男(無惨)と出会った時の予行演習も兼ねてだ。
権三の戦略は至ってシンプルだ。
童磨が凄まじい再生能力を有しているなら、身動きをとれなくしてしまえばいい。
そのために、彼は1時間ほどかけてこつこつと作った穴倉を犠牲に童磨を閉じ込めた。
不利な状況で千年男(無惨)と出会った時の予行演習も兼ねてだ。
そしてその方法も至ってシンプル。
炸裂弾『灰かぶり(シンデレラ)』を骨銃で撃ち抜き、その爆発で土砂と岩石で入り口を塞ぐというものだ。
ちなみに傍にいた権三が無事でいられたのは、爆発する寸前に緊急避難用の穴に飛び込んだからである。
炸裂弾『灰かぶり(シンデレラ)』を骨銃で撃ち抜き、その爆発で土砂と岩石で入り口を塞ぐというものだ。
ちなみに傍にいた権三が無事でいられたのは、爆発する寸前に緊急避難用の穴に飛び込んだからである。
(爆弾なぞジュースが飲めなくなるから邪魔だと思っていたが、こういった使い道ならアリだぞい)
「無事だったか、ええと...」
「無事だったか、ええと...」
満足げに己の成果を眺める権三の背後にめだかは立ち、問いかける。
結晶ノ御子は、爆発の余波たる熱風で溶けたのか、既にその姿はなかった。
結晶ノ御子は、爆発の余波たる熱風で溶けたのか、既にその姿はなかった。
「わしの名前は今之川権三じゃ」
「権三か。貴様の助力には感謝しよう。だが、その服の血はどういうことか説明してもらおうか」
「権三か。貴様の助力には感謝しよう。だが、その服の血はどういうことか説明してもらおうか」
―――せっかく助けてやったのになんじゃその生意気な上から目線は!もっとわしを敬え!媚びへつらえ!へりくだれ!
そんな激情をぐっと堪え、権三は身体を震わせた。
ぷるぷると、まるで子犬のように。
ぷるぷると、まるで子犬のように。
「う、うぅ...わしだって...あんなことはしたくなかったんじゃ...」
鼻をすする音とともに、権三の目には涙がたまり始める。
めだかは表情一つ変えず、権三の言葉に耳を傾ける。
めだかは表情一つ変えず、権三の言葉に耳を傾ける。
「けど...あいつが...わしを殺そうとしたから仕方なく...うぅ...」
勿論演技であり嘘である。
彼がわざわざ危険を冒してまで童磨とめだかを引き剥がしたのは、彼女を味方に引き入れるためだ。
強さもそうなのだが、なにより彼女の再生能力に権三は目をつけた。
この殺し合いにおいて、権三が出会った一般人はセレモニーで爆死した少女を除けば石上ただ一人。
一般人だと思っていた工藤(永井)ですら、妙な能力を有していた。
他に出会った連中は皆、剣豪や千年生きた男に分身やら氷撃やらとなんでもありな荒唐無稽な面子だ。
もしも参加者の内に超人の割合が大きければ、それだけ権三のエネルギー源であるジュース...つまり血液を補給するにも手間がかかってしまう。
その為、できればジュースは大量にストックしておきたいと考えるのは自然の流れ。
そんな折に超速再生を有するめだかと出会えたのだ。
彼女を手なづければ、ジュースは確保できるし千年男のような猛者への盾にもできる。
つまりこの殺し合いにおいて優勝に最も近づけるということだ。
彼がわざわざ危険を冒してまで童磨とめだかを引き剥がしたのは、彼女を味方に引き入れるためだ。
強さもそうなのだが、なにより彼女の再生能力に権三は目をつけた。
この殺し合いにおいて、権三が出会った一般人はセレモニーで爆死した少女を除けば石上ただ一人。
一般人だと思っていた工藤(永井)ですら、妙な能力を有していた。
他に出会った連中は皆、剣豪や千年生きた男に分身やら氷撃やらとなんでもありな荒唐無稽な面子だ。
もしも参加者の内に超人の割合が大きければ、それだけ権三のエネルギー源であるジュース...つまり血液を補給するにも手間がかかってしまう。
その為、できればジュースは大量にストックしておきたいと考えるのは自然の流れ。
そんな折に超速再生を有するめだかと出会えたのだ。
彼女を手なづければ、ジュースは確保できるし千年男のような猛者への盾にもできる。
つまりこの殺し合いにおいて優勝に最も近づけるということだ。
権三はチラ、とめだかへと視線を向ける。
―――どうじゃわしの懇親の演技は。同情しろ。感動しろ。そしてわしの僕となれ
そんな権三の期待に応え、めだかは―――遥か彼方を見据えていた。
懇親の演技を聞き流されたか。いや違う。
ただ聞き流している割には表情は硬く、冷や汗すら掻いていた。
懇親の演技を聞き流されたか。いや違う。
ただ聞き流している割には表情は硬く、冷や汗すら掻いていた。
「ああーん?」
めだかの視線が気になった権三は、彼女の視線を追った。
―――ソイツはじっと見据えていた。
その双眸は何者よりも冷たく。
暗い、暗い林の中から、じぃっと見据えていた。
ソイツの名は。
その邪悪の名は。
「せっ、千年男!!」
―――鬼舞辻無惨。
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