貴方の隣に立ちたくて ◆ldjkweYF9s
真っ赤なバイクが、未だ暗い夜の道を飛ばしている。
メルトリリスと白銀御行を乗せたそれは、那田蜘蛛山を右手に見ながら通れそうな道を選び走り続けていた。
四宮かぐやと石上優の二人と合流したいと考えている白銀だが、しかし秀知院学園以外に三人にとって目印になりそうな場所は心当たりがない。
よって、とにかくしらみつぶしに探すか、はたまた待機するかの二択を迫られたわけだが──自分がいるという情報を託した立花たちがペンタゴンを目指す、即ち反時計回りに動くらしいということは分かった。
となれば、自分たちは反対に時計回りで巡れば、単純に会える可能性は高いだろう、というわけだ。
立花たちには「自衛隊入間基地に向かっている」と伝えてあるし、秀知院学園にもその旨は書き残しておいたので、少しでも再会できる確率は上がったはずだ。
そんなわけで、一路バイクを飛ばしている二人であったが。
メルトリリスと白銀御行を乗せたそれは、那田蜘蛛山を右手に見ながら通れそうな道を選び走り続けていた。
四宮かぐやと石上優の二人と合流したいと考えている白銀だが、しかし秀知院学園以外に三人にとって目印になりそうな場所は心当たりがない。
よって、とにかくしらみつぶしに探すか、はたまた待機するかの二択を迫られたわけだが──自分がいるという情報を託した立花たちがペンタゴンを目指す、即ち反時計回りに動くらしいということは分かった。
となれば、自分たちは反対に時計回りで巡れば、単純に会える可能性は高いだろう、というわけだ。
立花たちには「自衛隊入間基地に向かっている」と伝えてあるし、秀知院学園にもその旨は書き残しておいたので、少しでも再会できる確率は上がったはずだ。
そんなわけで、一路バイクを飛ばしている二人であったが。
「……それで?改めて弁解は?」
「……すまなかった。本当に反省している」
「……すまなかった。本当に反省している」
当の二人の空気は、若干、剣呑としたものであった。
メルトリリスは呆れと蔑みがないまぜになった表情で後部の白銀を睨み、その白銀はといえばばつの悪そうな表情で支給品である抹茶ソーダをちびちびと飲んでいた。
メルトリリスは呆れと蔑みがないまぜになった表情で後部の白銀を睨み、その白銀はといえばばつの悪そうな表情で支給品である抹茶ソーダをちびちびと飲んでいた。
彼らがどうしてこうなったのかというのは──端的に言えば、白銀御行が爆睡した。
白銀御行という男の一日は、生徒会の執務とバイト、そして何より十時間を超える勉強で構成されている。
そんな生活であるから、勿論のこと睡眠時間は常日頃から病的なまでに少なく、彼の目つきが常日頃から悪いことについてもこれが原因の大半を占めている。
そんな既に人間の活動限界を見誤ったくらいの稼働を続けている彼が、絶対に欠かしてはいけないもの──それが、カフェイン入りの珈琲だった。
齢十七にして重度のカフェイン中毒と化した彼は、三時間ごとにこれを摂取しなければいとも容易く爆睡してしまうのだ。
そして、このバトルロワイアルの会場において、ただでさえ常日頃とは同じ環境で精神を擦り減らしていたところに、メルトリリスとの遭遇や藤丸たちとの会話などが重なった結果──彼自身、そのことをすっかり忘れていたのである。
そんな生活であるから、勿論のこと睡眠時間は常日頃から病的なまでに少なく、彼の目つきが常日頃から悪いことについてもこれが原因の大半を占めている。
そんな既に人間の活動限界を見誤ったくらいの稼働を続けている彼が、絶対に欠かしてはいけないもの──それが、カフェイン入りの珈琲だった。
齢十七にして重度のカフェイン中毒と化した彼は、三時間ごとにこれを摂取しなければいとも容易く爆睡してしまうのだ。
そして、このバトルロワイアルの会場において、ただでさえ常日頃とは同じ環境で精神を擦り減らしていたところに、メルトリリスとの遭遇や藤丸たちとの会話などが重なった結果──彼自身、そのことをすっかり忘れていたのである。
結果として。
二人がバイクを走らせ始めてから彼が爆睡するまで、そう時間はかからなかった。
二人がバイクを走らせ始めてから彼が爆睡するまで、そう時間はかからなかった。
当然、真後ろでそこまで思いっきり爆睡されると、単純にメルトリリスとしても対処はせねばなるまい。
単に気を詰めていたから、というのであれば休ませるのも悪くはなかったが、しかしこの移動中というのは非常時に振り落とされかねないし、事情を聴いた今だとそういう訳ですらなかったのであるからいただけない。
幸い、抹茶ソーダの成分表を確認したところ──何故か、というべきかどうかは微妙なラインだが──本来の抹茶と同様にしっかりカフェインが入っていた為、今後は味の微妙さに顔を顰めつつもそれをちびちびと飲んでいくことにした、のだが。
単に気を詰めていたから、というのであれば休ませるのも悪くはなかったが、しかしこの移動中というのは非常時に振り落とされかねないし、事情を聴いた今だとそういう訳ですらなかったのであるからいただけない。
幸い、抹茶ソーダの成分表を確認したところ──何故か、というべきかどうかは微妙なラインだが──本来の抹茶と同様にしっかりカフェインが入っていた為、今後は味の微妙さに顔を顰めつつもそれをちびちびと飲んでいくことにした、のだが。
「そんなに身体を壊すくらいなら、日頃の行いには気を付けるべきではなくて?こんな状況──は予想できないかもしれないけど、完全に身体を壊すのなら愚かとしか言いようがないわ」
結果として、メルトリリスにこう言われてしまうのも仕方のないことではあった。
ぐ、と言葉に詰まる白銀だったが、やがて俯きつつ、それでも力の籠った声で呟いた。
ぐ、と言葉に詰まる白銀だったが、やがて俯きつつ、それでも力の籠った声で呟いた。
「……それは、できない」
運転中である為に白銀の顔こそ見れないメルトリリスだったが、それでもそこに静かな、けれど確かな意志があることは感じられた。
「俺は、四宮と対等であり続ける為に──この努力をやめる訳にはいかないんだ」
そうして、ぽつぽつと、白銀は語り始める。
四宮かぐやに恋をしていること。天才の彼女に認識してもらう為に、自分も天才を演じなければならないこと。そして、それを維持する為には尋常じゃない努力が必要だということ。
流石に細かいイベントなどまでは話さなかったが、それでもそれを聞いただけでメルトリリスにも大体の事情が把握できた。
四宮かぐやに恋をしていること。天才の彼女に認識してもらう為に、自分も天才を演じなければならないこと。そして、それを維持する為には尋常じゃない努力が必要だということ。
流石に細かいイベントなどまでは話さなかったが、それでもそれを聞いただけでメルトリリスにも大体の事情が把握できた。
「だから、俺はただひたすらに頑張って──その末に、四宮に告(もとめ)られる。そうでなければ」
付き合うことなどできない──対等には、なれない。
そう締めくくった白銀に、メルトリリスは小さくため息をついた。
そう締めくくった白銀に、メルトリリスは小さくため息をついた。
「………己が壊れようと、隣に居続ける為に……ね」
困ったものだ、とメルトリリスは思う。
この男を自分の近くに配置したBBは、一体何を考えていたのか。だが、よりにもよってこんなことを言う輩を配置したからには、どうせろくでもないことを考えていたのだろう。
この男を自分の近くに配置したBBは、一体何を考えていたのか。だが、よりにもよってこんなことを言う輩を配置したからには、どうせろくでもないことを考えていたのだろう。
「どうした」
「いえ、別に?それならそれでいいわ」
「いえ、別に?それならそれでいいわ」
そう、それでいい。
それで、いいのだ。
それで、いいのだ。
「水面下で幾ら醜く必死に足を動かしていても、その美しさは白鳥のものであるように。血反吐を吐く努力をしなければ得られない主演という役柄を、それでも演じて輝くのは女優自身であるように」
より正確に言うのであれば。
メルトリリス自身が、「そうあってほしい」と願った。
ただ、それだけのこと。
メルトリリス自身が、「そうあってほしい」と願った。
ただ、それだけのこと。
「眩しく焦がれたモノの為に、瞬く銀色に輝こうとするのなら、それは──ええ、きっと。善きものであってほしいと、私はそう思います」
初めて聞くメルトリリスの敬語に、白銀は思わず息を呑む。
その言葉に込められた想いに、彼女自身ただならぬ想いを込めているということは、理解できたから。
その言葉に込められた想いに、彼女自身ただならぬ想いを込めているということは、理解できたから。
「……残念だけど、話はもう終わりみたいよ」
だが、その感情への返答の言葉を紡ぐより先に、メルトリリスが盛大にハンドルを切る。
そして、その直後──彼等の傍らで、轟音が鳴り響いた。
一体何事だ、とうろたえる白銀の前で彼女が睨むのは、目の前に迫った教会。その屋上。
そこに、巨大な重火器を抱えた覆面の男が立っていた。
全身を包むのは緑のボディスーツ。上半身には鎧のようなパーツが付随し、覆面と合わせてどこか重装歩兵を思わせるデザインになっている。
そして、その直後──彼等の傍らで、轟音が鳴り響いた。
一体何事だ、とうろたえる白銀の前で彼女が睨むのは、目の前に迫った教会。その屋上。
そこに、巨大な重火器を抱えた覆面の男が立っていた。
全身を包むのは緑のボディスーツ。上半身には鎧のようなパーツが付随し、覆面と合わせてどこか重装歩兵を思わせるデザインになっている。
「誤射だ、って言い張るなら場合によっては逃がしてあげなくもないわよ?」
バイクから降りつつ、メルトリリスがそう言い放つ。
言葉による返答はなく──代わりに再び放たれた弾丸が、無言の返答だった。
言葉による返答はなく──代わりに再び放たれた弾丸が、無言の返答だった。
「下がりなさい、ミユキ」
呼びかけながら、襲い掛かる弾丸に獰猛な笑みを浮かべる。
振るわれるのはジゼルの踵。流麗に煌めく足の一閃が、砲弾を盛大に蹴り飛ばす。
そのまま地を蹴ったメルトリリスの身体が教会の屋上へと跳ね上がり、緑の男の前へと瞬時に躍り出る。
一瞬意表を突かれたような、否、感心するような仕草を見せた男だったが、しかしその対応は落ち着いたものだった。
突っ込んできたメルトリリスへ持っていた巨砲を放り、右手にハンドガンを構えなおす。
砲台を叩き落としたメルトリリスへ、ハンドガンを連射。踊るような仕草でそれを躱すも、その間に後ろへと下がって適切な距離を保とうとする。
弓兵として、接近戦は不味いと考えたか。元より屋上からの狙い撃ちを仕掛けていた以上、此方がいとも容易く同じ土俵へ立つこと自体想定外だったのだろう。
だが、そう。その土俵で戦おうとするのが、今の男が犯した間違いだ。
屋根を踏み切り、猛然と加速する。敏捷ステータスがAランクオーバーのメルトリリスの加速は、銃弾の再装填よりも速く男の懐へと潜り込む。
そこから足を一閃し、首を斬る──それを狙ったメルトリリスだったが、しかしここで
振るわれるのはジゼルの踵。流麗に煌めく足の一閃が、砲弾を盛大に蹴り飛ばす。
そのまま地を蹴ったメルトリリスの身体が教会の屋上へと跳ね上がり、緑の男の前へと瞬時に躍り出る。
一瞬意表を突かれたような、否、感心するような仕草を見せた男だったが、しかしその対応は落ち着いたものだった。
突っ込んできたメルトリリスへ持っていた巨砲を放り、右手にハンドガンを構えなおす。
砲台を叩き落としたメルトリリスへ、ハンドガンを連射。踊るような仕草でそれを躱すも、その間に後ろへと下がって適切な距離を保とうとする。
弓兵として、接近戦は不味いと考えたか。元より屋上からの狙い撃ちを仕掛けていた以上、此方がいとも容易く同じ土俵へ立つこと自体想定外だったのだろう。
だが、そう。その土俵で戦おうとするのが、今の男が犯した間違いだ。
屋根を踏み切り、猛然と加速する。敏捷ステータスがAランクオーバーのメルトリリスの加速は、銃弾の再装填よりも速く男の懐へと潜り込む。
そこから足を一閃し、首を斬る──それを狙ったメルトリリスだったが、しかしここで
至近距離で猛然と振るわれる踵を落ち着いて銃で受け流しつつ、間隙を縫って確実に一発ずつ打ち込んでくる。
そうして数度の競り合いの中で、踵と腕、銃弾が飛び交うこと数度。高速のヒットアンドアウェイに持ち込みたいメルトリリスに対し、緑の男は牽制と突撃を繰り返すことで痛打を避けていた。
そうして数度の競り合いの中で、踵と腕、銃弾が飛び交うこと数度。高速のヒットアンドアウェイに持ち込みたいメルトリリスに対し、緑の男は牽制と突撃を繰り返すことで痛打を避けていた。
「へえ、やるじゃない──」
上手い。
技量は相当のもの、戦場を生き延びてきたもののそれだ。それに加えて、純粋なパワー・スピード共に自分に追いすがる程度には備えている。
近距離戦で本領を発揮できていないであろう今はともかく、弓兵として振舞えばそこらのサーヴァントに勝るとも劣らない程度の実力はあるだろう。
技量は相当のもの、戦場を生き延びてきたもののそれだ。それに加えて、純粋なパワー・スピード共に自分に追いすがる程度には備えている。
近距離戦で本領を発揮できていないであろう今はともかく、弓兵として振舞えばそこらのサーヴァントに勝るとも劣らない程度の実力はあるだろう。
だが。
センチネルでこそなくなったとはいえ、今のメルトリリスは身体の損傷を癒した本調子の状態。加えて、前述の通り既に近接戦へと持ち込んだ。
そんな状態で、並大抵の攻撃で撃ち落とせるほど、この白鳥は甘くはない。
センチネルでこそなくなったとはいえ、今のメルトリリスは身体の損傷を癒した本調子の状態。加えて、前述の通り既に近接戦へと持ち込んだ。
そんな状態で、並大抵の攻撃で撃ち落とせるほど、この白鳥は甘くはない。
身を屈め、それまでより一層鋭く、深く切り込む。
月面宙返りの要領で繰り出された鋭い一撃が、銃を持たない左手を吹き飛ばす。
更に、これでは終わらない。一瞬空いたその隙を突いて、メルトリリスは大きく屋根を蹴る。
腕を失った男が振り向くが、遅い。その時には既に彼女の身体は、教会の最上部、そこに備える十字架の上へと到達しており。
月面宙返りの要領で繰り出された鋭い一撃が、銃を持たない左手を吹き飛ばす。
更に、これでは終わらない。一瞬空いたその隙を突いて、メルトリリスは大きく屋根を蹴る。
腕を失った男が振り向くが、遅い。その時には既に彼女の身体は、教会の最上部、そこに備える十字架の上へと到達しており。
突き出すのは右脚。
十字架が砕けんばかりの勢いで蹴りだされた彼女の身体が、脚が、一直線に男へと迫る。
男は残った右腕を腰から胸の前に回しでそれを受け止め──しかし、それを上回る勢いでの一撃は、腕の防御ごと胸を貫く。
衝撃で教会の天井が突き破られ、一気に落下を始める。
メルトリリスにとって、それは些細な問題にすぎなかった。
既に胸に突き刺した
だからこそ、この戦闘はもう終わり──喧嘩を売ってきたにしては大したことはない相手だった、と、そう結論付けようとしていた。
十字架が砕けんばかりの勢いで蹴りだされた彼女の身体が、脚が、一直線に男へと迫る。
男は残った右腕を腰から胸の前に回しでそれを受け止め──しかし、それを上回る勢いでの一撃は、腕の防御ごと胸を貫く。
衝撃で教会の天井が突き破られ、一気に落下を始める。
メルトリリスにとって、それは些細な問題にすぎなかった。
既に胸に突き刺した
だからこそ、この戦闘はもう終わり──喧嘩を売ってきたにしては大したことはない相手だった、と、そう結論付けようとしていた。
<──Shoot vent──>
突如として、目の前の男の肩に大砲が出現するまでは。
「──な」
いきなり何故、と、思う暇もなかった。
膝蹴りに対して防御の構えを取る前に男が腰に手を回していたことが、この為の布石だったとは、ライダーと初めて出会う彼女が理解できていたはずもなく。
放たれた巨砲が、至近距離から彼女を焼き潰そうと迫る。
辛うじて身を逸らすも、突き刺さった右足を瞬時に抜くことはできず──仰け反った反動で剥き出しとなった太腿へと、砲弾が直撃する。
膝蹴りに対して防御の構えを取る前に男が腰に手を回していたことが、この為の布石だったとは、ライダーと初めて出会う彼女が理解できていたはずもなく。
放たれた巨砲が、至近距離から彼女を焼き潰そうと迫る。
辛うじて身を逸らすも、突き刺さった右足を瞬時に抜くことはできず──仰け反った反動で剥き出しとなった太腿へと、砲弾が直撃する。
「──ぐ、ぅ」
罅割れていた頃とそう大差ない程のダメージを受け、メルトリリスの口から苦悶の声が響く。
油断した。最期の足掻きか。
今はまだ、甚大なダメージというだけで済む。暫く移動がバイク頼りになり、戦闘行動にも暫くは参加できない可能性もあるが、再起不能になるにはまだ猶予がある。
だが、このままいけば、落ちるまでの僅かな時間でも右脚が泣き別れになりかねない。そうなれば完全に致命的だ。
最悪の想像をしつつ、それでもなんとか身を捩り続けることで少しでも被害を減らそうとして、
油断した。最期の足掻きか。
今はまだ、甚大なダメージというだけで済む。暫く移動がバイク頼りになり、戦闘行動にも暫くは参加できない可能性もあるが、再起不能になるにはまだ猶予がある。
だが、このままいけば、落ちるまでの僅かな時間でも右脚が泣き別れになりかねない。そうなれば完全に致命的だ。
最悪の想像をしつつ、それでもなんとか身を捩り続けることで少しでも被害を減らそうとして、
──壁を突き破って現れた男が、膝を突き刺した男の肉体を反対側の壁の外へと吹き飛ばした。
■
教会の中に駆け込んだ白銀が見たのは、片膝をついて座り込むメルトリリス。
そして、今しがた教会に飛び込んだと思わしき、新たな男だった。
桃の髪色に白い肌。一目見ただけで化外の化け物だと分かる、異様な男。
そして、今しがた教会に飛び込んだと思わしき、新たな男だった。
桃の髪色に白い肌。一目見ただけで化外の化け物だと分かる、異様な男。
「メルトリリス──」
駆け寄ろうとするが、しかし一歩を踏み出そうとしてようやく足が動かないことに気付く。
見下ろせば、足が竦んで震えている。そして、そこでようやく白銀は自覚する。
──ここから先に踏み込めば、死ぬ。
それはメルトリリスが白銀に向けた警告の意思の視線、そして、白い男から出てくる異様な威圧感から来るものであった。
僅かな静寂。
白銀が立ち尽くす前で、メルトリリスと白い男が睨みあい──
見下ろせば、足が竦んで震えている。そして、そこでようやく白銀は自覚する。
──ここから先に踏み込めば、死ぬ。
それはメルトリリスが白銀に向けた警告の意思の視線、そして、白い男から出てくる異様な威圧感から来るものであった。
僅かな静寂。
白銀が立ち尽くす前で、メルトリリスと白い男が睨みあい──
「貴様といい、先の輩といい──女の皮を被った獣は、幾らかいるようだが」
先に口を開いたのは、白い男の方だった。
白銀でわなく、座り込むメルトリリスへの言葉。だが、その目に籠っているのは──明らかな、侮蔑の視線だった。
白銀でわなく、座り込むメルトリリスへの言葉。だが、その目に籠っているのは──明らかな、侮蔑の視線だった。
「しかし貴様は、弱いな。やはり所詮は女か。この猗窩座の手で殺すまでもない」
そう断じられれば、メルトリリスも不機嫌さを露わにするしかない。
サディズム マゾヒズム
加虐体質を持つ彼女だったが、生憎と被虐性癖まで備えているわけではなかった。
サディズム マゾヒズム
加虐体質を持つ彼女だったが、生憎と被虐性癖まで備えているわけではなかった。
「あら、女は怖いし舐めちゃ駄目よ?恋する乙女は強いって言うでしょう?」
「戯言だ。女は弱い。柱になるような女も偶にはいるが、しかし大部分は男だ。生まれからして守られねば生きていけないような奴をわざわざ殺すなど、俺の手が鈍る」
「戯言だ。女は弱い。柱になるような女も偶にはいるが、しかし大部分は男だ。生まれからして守られねば生きていけないような奴をわざわざ殺すなど、俺の手が鈍る」
メルトリリスの言葉に、しかし猗窩座はどこ吹く風だ。
猗窩座は女は殺さない。
より厳密に言うのであれば、彼は「生まれつき弱い生き物」である、という点で女を殺さないのだ。
どれだけ努力しようと、所詮は守られなければ生きてはいけない生き物。
弱者を見下し、蔑視する彼だが、「弱くしかあれない」ようなものは蔑視するよりもむしろ憐みの対象、という訳だ。
勿論それを脱するような、柱になるような例外もいるし。
猗窩座は女は殺さない。
より厳密に言うのであれば、彼は「生まれつき弱い生き物」である、という点で女を殺さないのだ。
どれだけ努力しようと、所詮は守られなければ生きてはいけない生き物。
弱者を見下し、蔑視する彼だが、「弱くしかあれない」ようなものは蔑視するよりもむしろ憐みの対象、という訳だ。
勿論それを脱するような、柱になるような例外もいるし。
「先の女は、まだ守られなければ生きていけぬような軟弱ではなかった。化け物として飼われ、化け物を殺す為に歪められた、人の域を外れたものだった」
例えば、先に彼が戦った、源頼光も。
アレも、丑御前としての側面も併せ持つ、怪物としての側面を持ち合わせたそれを、更に英霊剣豪という概念で煮詰めた完全なる化生のモノだ。
最早女性という皮を捨てているであろうそれは、先にも告げたように猗窩座自身が至高の領域に達すると見込むだけのものだった。
アレも、丑御前としての側面も併せ持つ、怪物としての側面を持ち合わせたそれを、更に英霊剣豪という概念で煮詰めた完全なる化生のモノだ。
最早女性という皮を捨てているであろうそれは、先にも告げたように猗窩座自身が至高の領域に達すると見込むだけのものだった。
「今の貴様が、か?再生もしないその足で?」
だが、今のメルトリリスは。
右脚に痛打を受け、立ち上がれず、彼の目の前で跪くしかない彼女は。
猗窩座にとっては、殺す対象にすら入らなかった──という、ことだった。
右脚に痛打を受け、立ち上がれず、彼の目の前で跪くしかない彼女は。
猗窩座にとっては、殺す対象にすら入らなかった──という、ことだった。
「随分と舐めてくれるじゃない。でもそういうことはリップに言って貰わないと──生憎、私はそれじゃあノれないわよ?」
それが舐められているということだと認識しつつも、立ち上がるのも困難な現状メルトリリスに出来ることはない。
無論諦めてなどおらず、どうにかして立ち上がれないかと力を込めているが──彼女が負っている傷は、それを許してくれるほど生易しいものではなかった。
仮面ライダーゾルダのギガキャノンは、本来ならば150t相当の破壊力を持つ代物だ。制限を考慮して尚、数発喰らってその程度の傷で済んでいるメルトリリスも、アルターエゴとして十分にスペックが図抜けていると言えるだろう。
それでも口から出た憎まれ口に、猗窩座は最早返答をすることすらしない。
猗窩座からすれば、それは弱者の戯言だ。最早歯牙にもかける必要がない──彼はそう断じたのだ。
無論諦めてなどおらず、どうにかして立ち上がれないかと力を込めているが──彼女が負っている傷は、それを許してくれるほど生易しいものではなかった。
仮面ライダーゾルダのギガキャノンは、本来ならば150t相当の破壊力を持つ代物だ。制限を考慮して尚、数発喰らってその程度の傷で済んでいるメルトリリスも、アルターエゴとして十分にスペックが図抜けていると言えるだろう。
それでも口から出た憎まれ口に、猗窩座は最早返答をすることすらしない。
猗窩座からすれば、それは弱者の戯言だ。最早歯牙にもかける必要がない──彼はそう断じたのだ。
「まあいい。そういう訳だ、貴様は見逃してやる。──そして」
そう言いながら、猗窩座は徐に白銀へと向き直る。
「貴様は喰わせてもらおうか。男に生まれながら軟弱な人間、せめて俺の中で糧となるがいい」
──その瞬間に、再び白銀の生存本能に全力の警鐘が鳴り響く。
殺される。
そんな思考が、先刻よりも明確に頭の頂点から爪先まで余すところなく行き渡る。
それでもせめてワンチャンスを狙おうと、無意識に袋へ手を伸ばして──
殺される。
そんな思考が、先刻よりも明確に頭の頂点から爪先まで余すところなく行き渡る。
それでもせめてワンチャンスを狙おうと、無意識に袋へ手を伸ばして──
「た、たすけっ、助けてください!」
──白銀の背後、空いていた扉からその場に現れた第四者の言葉と、同時に頭上から響いたコンクリートの破砕音にそれは中断させられた。
■
現れた人間は、男だった。
ハンチング帽を目深に被り、白いシャツには血が垂れている。しゃがれた声から、老人のようだというのが最も近くにいた白銀には分かった。
ハンチング帽を目深に被り、白いシャツには血が垂れている。しゃがれた声から、老人のようだというのが最も近くにいた白銀には分かった。
そして、コンクリートを砕いて入ってきたのは──漆黒の、謎の化け物。
全身を黒一色に染め上げたそれは、獣のような唸り声を上げながら、最も手近にいた猗窩座へと視線を定めた。
全身を黒一色に染め上げたそれは、獣のような唸り声を上げながら、最も手近にいた猗窩座へと視線を定めた。
「──ほう、まだ面白みのありそうな奴が来たな」
そして、それと向き合うように怪物の側を見上げた白鬼が、愉快そうに口元を歪めた。
白銀に向けていた殺気をそちらに向けなおし、力を籠めるように身を沈める。
白銀に向けていた殺気をそちらに向けなおし、力を籠めるように身を沈める。
「暫く奴と戯れるが──貴様一人ならともかく、あの男たちを逃がそうとしたなら、貴様のもう一本の足も折れると思え」
それが脅しでないことは、言われた当人であるメルトリリスにもわかっていた。
あの影の強さは分からないが、白鬼の強さは先述の通りセンチネル級、ともすればそれ以上という可能性すらある。
手負いでなくとも、自分も相手をするのが難しいような相手だ。一般人などそれこそ片手間で殺せるだろうし、手負いの自分も何処まで持たせられるか分かったものでは無い。
あの影の強さは分からないが、白鬼の強さは先述の通りセンチネル級、ともすればそれ以上という可能性すらある。
手負いでなくとも、自分も相手をするのが難しいような相手だ。一般人などそれこそ片手間で殺せるだろうし、手負いの自分も何処まで持たせられるか分かったものでは無い。
そして、猗窩座は力強く教会の床を蹴り上げた。
同時に、黒い影も窓の穴から飛び降りる。
果たして──衝突。
伽藍とした教会に轟音が響き渡り──その中心地点からおおよそ球形の範囲内で、連続して破壊音が響き始めた。
同時に、黒い影も窓の穴から飛び降りる。
果たして──衝突。
伽藍とした教会に轟音が響き渡り──その中心地点からおおよそ球形の範囲内で、連続して破壊音が響き始めた。
「──あんた、こっちだ!」
そんな、一度巻き込まれれば致命傷は免れないような戦いに巻き込まれないように大回りしながら、白銀は男を引き寄せる。
幸運も手伝いどうにか戦闘地帯から離れつつ、再びメルトリリスの背後へと到達した。
メルトリリスもこの隙に、ガラス窓にそこそこ近い壁へと移動していた。隙があればそこから逃げる、ということだろう。
幸運も手伝いどうにか戦闘地帯から離れつつ、再びメルトリリスの背後へと到達した。
メルトリリスもこの隙に、ガラス窓にそこそこ近い壁へと移動していた。隙があればそこから逃げる、ということだろう。
「全く、この状態でそんな人間を保護するなんて──」
「仕方ないだろ、大丈夫か爺さん──うっ」
「仕方ないだろ、大丈夫か爺さん──うっ」
その顔を覗き込んだ白銀は、思わず息を呑んだ。
その顔面は無惨に引っ掻かれ、血に塗れていた。この分だと片眼が潰れているかもしれない。
なんらかの治療器具があるところに連れていかなければ不味いかもしれない、という思考が頭をよぎるが、しかし背後から聞こえてくる剣呑な音はそもそも脱出すら困難であると伝えてくる。
とにかく最優先すべきは、この状況をどう打開したものか。
目の前の光景は、白銀には到底信じられないものが広がっていた。
黒い影の行動は、白銀から見ても以上
だが、そんな黒い影を圧倒していたのが、あの白い男だった。
超高速、目で追えないくらいの連打が、黒い影を何度も打ちのめす。
やはりそこから何事もなかったかのように影が立ち上がるが、しかし
その顔面は無惨に引っ掻かれ、血に塗れていた。この分だと片眼が潰れているかもしれない。
なんらかの治療器具があるところに連れていかなければ不味いかもしれない、という思考が頭をよぎるが、しかし背後から聞こえてくる剣呑な音はそもそも脱出すら困難であると伝えてくる。
とにかく最優先すべきは、この状況をどう打開したものか。
目の前の光景は、白銀には到底信じられないものが広がっていた。
黒い影の行動は、白銀から見ても以上
だが、そんな黒い影を圧倒していたのが、あの白い男だった。
超高速、目で追えないくらいの連打が、黒い影を何度も打ちのめす。
やはりそこから何事もなかったかのように影が立ち上がるが、しかし
「どうやら何処ぞの柱と似たような力の出し方をするようだが──呼吸もせずにこの猗窩座に挑むとは笑止!だがその鬼にも引けを取らない不死性は興味深いぞ!」
倒されても何度でも復活する黒い影を、まるでサンドバッグのように扱う男に、白銀の背筋が改めて冷えた。
確かにアレならば、再生するまでの間隙に自分や老人を殺すことなど造作もないだろう。そもそも、あのサンドバッグ殴りを何時飽きるかも分からない。
やはり、何らかの策を練らねば不味い。それも、出来るだけ早急に。
確かにアレならば、再生するまでの間隙に自分や老人を殺すことなど造作もないだろう。そもそも、あのサンドバッグ殴りを何時飽きるかも分からない。
やはり、何らかの策を練らねば不味い。それも、出来るだけ早急に。
「……どうやって脱出する?」
「さあ──一先ずアレの用意はしておきなさい。隙を見て叩き込めれば、多分一番楽に脱出できると思うけれど」
「さあ──一先ずアレの用意はしておきなさい。隙を見て叩き込めれば、多分一番楽に脱出できると思うけれど」
ああ、と思いながら、袋の中にあるそれへと意識を向ける。
使えば恐らくは両者ともに吹き飛ばせるが、しかし問題はどうやって当てるかだ。
片や、人知を超えた超高速での蹂躙をしている白鬼。
片や、今しがた顔面を砕かれ、しかし黒一色の首元から再び再生を試みる影。
ただでさえ白銀の視点では化け物であるアレを、果たしてどうしたものかと考え、
使えば恐らくは両者ともに吹き飛ばせるが、しかし問題はどうやって当てるかだ。
片や、人知を超えた超高速での蹂躙をしている白鬼。
片や、今しがた顔面を砕かれ、しかし黒一色の首元から再び再生を試みる影。
ただでさえ白銀の視点では化け物であるアレを、果たしてどうしたものかと考え、
──待て。黒一色の、首元?
思わず二度見するが、間違いない。
その影の化け物が再生する際、首元を注視したが──その首元は、黒一色だ。
それはつまり、あるはずのものがないということを意味していた。
その影の化け物が再生する際、首元を注視したが──その首元は、黒一色だ。
それはつまり、あるはずのものがないということを意味していた。
首輪。
本来ならどんな参加者でも着けている筈のそれが、黒い人間には存在しなかった、というだけ。
だが、それを見た白銀御行の、秀知院学園一の頭脳はすぐに回転した。
本来ならどんな参加者でも着けている筈のそれが、黒い人間には存在しなかった、というだけ。
だが、それを見た白銀御行の、秀知院学園一の頭脳はすぐに回転した。
「何故首輪が存在しない?」
「もう外した?違う。メルトリリスに聞いたBBという人間がする下手としては合致しない」
「ならば、もしや──参加者ではない?」
「もう外した?違う。メルトリリスに聞いたBBという人間がする下手としては合致しない」
「ならば、もしや──参加者ではない?」
そう。
殺し合いに参加しているという時点で無意識にアレが参加者だと思い込んでいた。
だが、そもそも参加者ではないとするなら。
アレは、なんだ?
殺し合いに参加しているという時点で無意識にアレが参加者だと思い込んでいた。
だが、そもそも参加者ではないとするなら。
アレは、なんだ?
「もし、これが、意図的なものであった場合」
「この人形の出現で、得をした、人間は──?」
「この人形の出現で、得をした、人間は──?」
あくまで、可能性の一つでしかなかった。
外にいる誰かが操っている可能性も、無作為に暴れまわっている可能性も到底否定はできない。
だが、確認はしておかなければいけないと、そう思った。
外れているなら良い。ただちょっと疑われるだけで済む。
だが、当たっている可能性がある以上──それが的中していれば、危険は今にも自分たちを喰らうだろう。
そうして、振り返った先で。
外にいる誰かが操っている可能性も、無作為に暴れまわっている可能性も到底否定はできない。
だが、確認はしておかなければいけないと、そう思った。
外れているなら良い。ただちょっと疑われるだけで済む。
だが、当たっている可能性がある以上──それが的中していれば、危険は今にも自分たちを喰らうだろう。
そうして、振り返った先で。
保護した、顔面を血に包んでいた男が、鏡に右手を向けながら光に包まれていた。
白銀の方が近かったから、分かる。
今にも収まろうとしている中で、先程と同じ緑の装束に身を包んだ老人。
その老人が、やはり先程と同じように、銃を持っていること。
そしてその銃を、メルトリリスへと剥けていること。
今にも収まろうとしている中で、先程と同じ緑の装束に身を包んだ老人。
その老人が、やはり先程と同じように、銃を持っていること。
そしてその銃を、メルトリリスへと剥けていること。
メルトリリスは、一手遅れていた。
光の気配に気付いて振り返ってはいたが、今から飛ぶにしても、今の足を怪我した彼女では間に合わない。
光の気配に気付いて振り返ってはいたが、今から飛ぶにしても、今の足を怪我した彼女では間に合わない。
だから。
──だから?
だから、己の命を投げ出すのか。
白銀御行は、そんなに大層な、誰かを守るような人間であったか?
三分もしないくらい前に、命の危険を感じて凍り付いたようなお前が、そんな勇ましいことを出来るのか?
白銀御行は、そんなに大層な、誰かを守るような人間であったか?
三分もしないくらい前に、命の危険を感じて凍り付いたようなお前が、そんな勇ましいことを出来るのか?
──眩しく焦がれたモノの為に、瞬く銀色に輝こうとするのなら、それは──ええ、きっと。善きものであってほしいと、私はそう思います
(その通りだよ)
(それが、白銀御行のなりたい、白銀御行だ)
(それが、白銀御行のなりたい、白銀御行だ)
そうして、白銀御行は躊躇なく、メルトリリスの前に身を躍らせた。
メルトリリスが気づいた時には、すべてが後の祭りだった。
光の中から出てきた、殺したはずの男。再び放たれた、今度は急所を正確に狙った銃弾。咄嗟に動かすには遅すぎた足。
そして──隣から飛び出して、己を庇った青年の姿。
光の中から出てきた、殺したはずの男。再び放たれた、今度は急所を正確に狙った銃弾。咄嗟に動かすには遅すぎた足。
そして──隣から飛び出して、己を庇った青年の姿。
「──ミユキ!」
保護した老体の男が、先程戦っていた緑の装束へと姿を変えていた。
先程確かに貫いた筈の胸の穴は跡形もなく、別人であることすら匂わせたが、しかしその気配はまず間違いなく先程戦っていた男と同じもの。
瞬時にまだ動く左脚を振るう、が、それをする前から既に男は目の前から飛びのいていた。
再び腰から何かを引き抜いた男が、着地と同時にそれをハンドガンへと差し込んだ。
先程確かに貫いた筈の胸の穴は跡形もなく、別人であることすら匂わせたが、しかしその気配はまず間違いなく先程戦っていた男と同じもの。
瞬時にまだ動く左脚を振るう、が、それをする前から既に男は目の前から飛びのいていた。
再び腰から何かを引き抜いた男が、着地と同時にそれをハンドガンへと差し込んだ。
<──Advent──>
そして、着地と同時、現れたのは緑の巨兵。
それがこれまでの何よりも危険なものであることは、二人にも理解できた。
止めなければならない。しかし、それには手が、否、足が足りない。
激痛に未だ身を捩り続ける白銀に、片足に貰った痛打のせいで未だ立ち上がれないメルトリリス。
辛うじて可能性があるのは片足を使って飛んでいくくらいだが、格好の的にしかならない。
猗窩座と名乗る先程の男は──そう思って振り返るが、しかし先程とは打って変わって黒い人影に押さえつけられていた。
抵抗の様子もなく、何かに取り付かれたかのように白銀をじっと見ている。
その事実にうすら寒いものを感じないではなかったが、しかしそこまでの気を彼に払っている余裕は二人ともなかった。
それがこれまでの何よりも危険なものであることは、二人にも理解できた。
止めなければならない。しかし、それには手が、否、足が足りない。
激痛に未だ身を捩り続ける白銀に、片足に貰った痛打のせいで未だ立ち上がれないメルトリリス。
辛うじて可能性があるのは片足を使って飛んでいくくらいだが、格好の的にしかならない。
猗窩座と名乗る先程の男は──そう思って振り返るが、しかし先程とは打って変わって黒い人影に押さえつけられていた。
抵抗の様子もなく、何かに取り付かれたかのように白銀をじっと見ている。
その事実にうすら寒いものを感じないではなかったが、しかしそこまでの気を彼に払っている余裕は二人ともなかった。
どうする。
メルトリリスの脳内を幾つもの選択肢が巡るが、結局は狙われることを覚悟で突っ込むしかないか。
そう考え、せめて左脚に全力を込めようとしたところで──彼女の動かない腕に、正確にはその周辺の感覚に、何かが押し付けられる感触がした。
メルトリリスの脳内を幾つもの選択肢が巡るが、結局は狙われることを覚悟で突っ込むしかないか。
そう考え、せめて左脚に全力を込めようとしたところで──彼女の動かない腕に、正確にはその周辺の感覚に、何かが押し付けられる感触がした。
そう。
白銀御行には、まだ、打つ手はあった。
あの支給品。メルトリリス自身が手の不自由さの為に使えないこと、そして白銀が使うには彼女の得手である接近戦のサポートとしては扱いづらいことから、元よりメルトリリスが苦戦した時の保険として用意していたもの。
懸念は二つある。
一つは、今いる屋内で万全に機能するかどうかということ。これに関しては、今移動するのが難しい自分たちが出来ることは何もない。故に成功を祈るしかない。
そして、もう一つは、ここからだとあの男への距離が遠すぎること。
だったら──
白銀御行には、まだ、打つ手はあった。
あの支給品。メルトリリス自身が手の不自由さの為に使えないこと、そして白銀が使うには彼女の得手である接近戦のサポートとしては扱いづらいことから、元よりメルトリリスが苦戦した時の保険として用意していたもの。
懸念は二つある。
一つは、今いる屋内で万全に機能するかどうかということ。これに関しては、今移動するのが難しい自分たちが出来ることは何もない。故に成功を祈るしかない。
そして、もう一つは、ここからだとあの男への距離が遠すぎること。
だったら──
そうして白銀は、己の持っていたデイバッグを押し付け。
何を、と驚愕の表情を浮かべる彼女へ、直前まで突っ込んでいた右手を──その手に握ったものを、思い切り振り抜いた。
何を、と驚愕の表情を浮かべる彼女へ、直前まで突っ込んでいた右手を──その手に握ったものを、思い切り振り抜いた。
「な──」
それが何を意味しているかを知っているメルトリリスの表情が凍り、そして次の刹那、彼女はその表情ごと凄まじい速度で空へと打ち出される。
──可楽の羽団扇。
上弦の肆、半天狗の分身の一体が持つその団扇は、人間一人なら軽く吹き飛ばす程の爆風を一瞬にして巻き起こす。
本来なら、状況が不利になった時に吹き飛ばすのは敵だけの予定だった。
だが、今佐藤がいるのは教会の外。ただでさえ距離がある上に、壁や長椅子の残骸、瓦礫などの邪魔が「風」という力を大きく減衰させる。
だから、白銀はメルトリリスを狙った。
確実に射程から逃がすには、それしかなかったから。
人間とは異なる足がかなり重いであろうことを考えると飛ばない可能性もあったのが唯一の心配だったが、どうやら上手くいったようだ。
上弦の肆、半天狗の分身の一体が持つその団扇は、人間一人なら軽く吹き飛ばす程の爆風を一瞬にして巻き起こす。
本来なら、状況が不利になった時に吹き飛ばすのは敵だけの予定だった。
だが、今佐藤がいるのは教会の外。ただでさえ距離がある上に、壁や長椅子の残骸、瓦礫などの邪魔が「風」という力を大きく減衰させる。
だから、白銀はメルトリリスを狙った。
確実に射程から逃がすには、それしかなかったから。
人間とは異なる足がかなり重いであろうことを考えると飛ばない可能性もあったのが唯一の心配だったが、どうやら上手くいったようだ。
そして、その代償として。
白銀御行はもう、立ち上がることも、逃げることもできなかった。
腹部から流れ出る血と共に、己の命も流れ出ていくようで。
白銀御行はもう、立ち上がることも、逃げることもできなかった。
腹部から流れ出る血と共に、己の命も流れ出ていくようで。
「……しの、みや…………」
どうだろう。
気張ってみた結果がこれだ。
気張ってみた結果がこれだ。
ああ、そうだ。
四宮を最初に見た時のことを、思い出す。
誰かの為に、泥塗れ、ならぬ血塗れになれる男。
もし仮に、その姿が、美しいものであるのなら。
四宮を最初に見た時のことを、思い出す。
誰かの為に、泥塗れ、ならぬ血塗れになれる男。
もし仮に、その姿が、美しいものであるのなら。
俺は、美しいものになれただろうか。
俺は、四宮の隣に立てる俺に、なれていただろうか。
俺は、四宮の隣に立てる俺に、なれていただろうか。
そんな、愚にもつかないことばかりが、ずっと思考を巡っていた。
そして。
「それじゃあ、派手にいってみようか」
<──Final Advent──>
絶望の音が、響き渡った。
■
発射と同時に背後の壁を蹴り壊し、掃射によって倒壊しつつある教会から脱出する。
このまま全身を押し潰されてもよかったが、死の制限は何があるか分からない。どうせなら避けられる死は避けておいた方がいいだろう。
自己保存本能ではなく、初めてプレイするゲームの残機を気にするような感覚で、佐藤は死から逃れることにした。
このまま全身を押し潰されてもよかったが、死の制限は何があるか分からない。どうせなら避けられる死は避けておいた方がいいだろう。
自己保存本能ではなく、初めてプレイするゲームの残機を気にするような感覚で、佐藤は死から逃れることにした。
最初に変身を続けた状態で戦っていたのは、単に身体能力が増強される、または武器を自由に呼び出せるなどの仮面ライダーゾルダの力だけが理由ではなかった。
佐藤にとってもう一つ重要だったのは、この変身によって己の顔が隠れることだ。
国に潜む亜人や国民そのものへのメッセージを送る生放送で、自分の顔、そして「自分が亜人であること」は大々的に知れ渡っている。
故に、顔を晒せば自分が亜人であるという前提を晒した上での戦闘になる。
勿論それはいつもと変わらないし、そのくらいの方が刺激になるという考えもある。だが、折角ならばこの事実を有効活用するのも悪くない。……活かしきる為にIBMで顔面を傷つけたせいで今は片目が見えないが、まあしばらくはそれでもいいだろう
極論、どっちでも良いのだ。策を弄してくる相手と正面からぶつかるのも、そもそも策を用意させず倒すのも。
それがどちらも闘争である以上、えり好みせずにただ楽しむ……それが、佐藤という男の性だった。
──尤も、三人が亜人のことなど知らない別の世界の住人だった以上、不死という観点を隠すために顔を覆う、というのは元より的はずれな狙いではあったのだが。
佐藤にとってもう一つ重要だったのは、この変身によって己の顔が隠れることだ。
国に潜む亜人や国民そのものへのメッセージを送る生放送で、自分の顔、そして「自分が亜人であること」は大々的に知れ渡っている。
故に、顔を晒せば自分が亜人であるという前提を晒した上での戦闘になる。
勿論それはいつもと変わらないし、そのくらいの方が刺激になるという考えもある。だが、折角ならばこの事実を有効活用するのも悪くない。……活かしきる為にIBMで顔面を傷つけたせいで今は片目が見えないが、まあしばらくはそれでもいいだろう
極論、どっちでも良いのだ。策を弄してくる相手と正面からぶつかるのも、そもそも策を用意させず倒すのも。
それがどちらも闘争である以上、えり好みせずにただ楽しむ……それが、佐藤という男の性だった。
──尤も、三人が亜人のことなど知らない別の世界の住人だった以上、不死という観点を隠すために顔を覆う、というのは元より的はずれな狙いではあったのだが。
ついでに言うなら、今使った必殺技の予備動作の長さを知ることができたのも幸運だった。
今回は初めて使った故に勝手が分からなかったが、召喚というフェイズを挟む上で絶大な威力に比例するような待機時間の長さが生まれるのは若干のネックだ。
今回はIBMと併用したが、そう何度も使える手ではない。今後はこれを使う時はその時間を稼ぐ方法も考えた上で使用しないといけないだろう。
今回は初めて使った故に勝手が分からなかったが、召喚というフェイズを挟む上で絶大な威力に比例するような待機時間の長さが生まれるのは若干のネックだ。
今回はIBMと併用したが、そう何度も使える手ではない。今後はこれを使う時はその時間を稼ぐ方法も考えた上で使用しないといけないだろう。
「しかし、派手で良いからねえこれ。花火みたいだね」
そして、そんなことを考えつつも、彼はまるで見た目通りの温和な性格であるかのように、崩れていく教会を振り返る。
自分が起こしたその崩壊も、まるで日常の一部であるかのように見なして。
それは、言うなれば彼にとって戦闘と日常の境界線が極めて低い──いや、ほぼ同一であることの現れなのだろう。
彼にとっての闘争とは、残機の限り戦い続けるゲームとそう変わらないのだから。
自分が起こしたその崩壊も、まるで日常の一部であるかのように見なして。
それは、言うなれば彼にとって戦闘と日常の境界線が極めて低い──いや、ほぼ同一であることの現れなのだろう。
彼にとっての闘争とは、残機の限り戦い続けるゲームとそう変わらないのだから。
「たーまやー」
そんなことを一人呟きながら、佐藤は再び歩き始める。
その先でもきっと、彼のやることは変わらないだろう。
今背後で倒れていく教会のように、彼の周囲は、どんな時も彼自身が引き起こす戦乱によって燃え続けるのだから。
その先でもきっと、彼のやることは変わらないだろう。
今背後で倒れていく教会のように、彼の周囲は、どんな時も彼自身が引き起こす戦乱によって燃え続けるのだから。
【E-3・教会跡付近/1日目・黎明】
【佐藤@亜人】
[状態]:顔面に引っ掻き傷
[装備]:ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品一式、日本刀@現実
[思考・状況]
基本方針:ゲームに乗る。
1.いやあ、いいねえこれ。
[備考]
※少なくとも原作8巻、ビル攻防戦終了後からの参戦
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています。
※IBMを使用しました。使用に関する制限は後の書き手さんにお任せします。
※ゾルダに変身している間はIBMも強化されるようです。
[状態]:顔面に引っ掻き傷
[装備]:ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品一式、日本刀@現実
[思考・状況]
基本方針:ゲームに乗る。
1.いやあ、いいねえこれ。
[備考]
※少なくとも原作8巻、ビル攻防戦終了後からの参戦
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています。
※IBMを使用しました。使用に関する制限は後の書き手さんにお任せします。
※ゾルダに変身している間はIBMも強化されるようです。
■
吹き飛ばされた彼女は、立ち上がるや否や全力で駆け戻っていた。
脚はまだ治っていなかったが、先程まで使っていたバイクが律義に袋の中に入っていたのは僥倖だった。
故に、全力でそれを飛ばした。
元は彼女がいた方角から、ひときわ大きな爆音が聞こえてきたとわかっていても──それでも、ただ走って。
脚はまだ治っていなかったが、先程まで使っていたバイクが律義に袋の中に入っていたのは僥倖だった。
故に、全力でそれを飛ばした。
元は彼女がいた方角から、ひときわ大きな爆音が聞こえてきたとわかっていても──それでも、ただ走って。
そして、舞い戻ったそこに、白銀御行の姿はなかった。
反対にあったのは、辛うじてうず高く盛られた瓦礫の山で。
勿論、白銀御行が生きていた痕跡すらも、そこには何一つ残っていなかった。
反対にあったのは、辛うじてうず高く盛られた瓦礫の山で。
勿論、白銀御行が生きていた痕跡すらも、そこには何一つ残っていなかった。
「……なによ」
別に、そこまで思い入れがあるわけじゃない。
まだ三時間しか行動を共にしていない人間に、アルターエゴである自分がそこまでの思い入れを抱くことはない。
まだ三時間しか行動を共にしていない人間に、アルターエゴである自分がそこまでの思い入れを抱くことはない。
ただ。
──あのマスターさん、本当に最後まで貴女を庇ったわ!
思い出しただけだ。
同じように目の前で散った、一人の青年のことを。
同じように目の前で散った、一人の青年のことを。
勿論、比較なんてするつもりはない。
白銀御行は白銀御行であり、そして彼は彼だ。
たった三時間しか触れてない白銀と、私を見つけて、手を引いてくれた、あの輝かしき思い出の中の人と混同するなんてちゃんちゃらおかしい。
白銀御行は白銀御行であり、そして彼は彼だ。
たった三時間しか触れてない白銀と、私を見つけて、手を引いてくれた、あの輝かしき思い出の中の人と混同するなんてちゃんちゃらおかしい。
それでも。
「──水面下で足を動かす白鳥は、まだ歌なんて歌う気はないのに」
自分を庇ってくれた人間を、悼むくらいはしたい、と。
「…………それでも。ありがとう、ミユキ。そして、ごめんなさい」
彼の隣にいて、彼の隣に舞い戻る為に羽ばたいたこの心は、それを望むのだから。
それくらいは、しようと思った。
それくらいは、しようと思った。
【E-3・教会跡前(佐藤が去ったあと)/1日目・黎明】
【メルトリリス@Fate/Grand Order】
[状態]:損傷(両手)、右足損傷(大、満足な行動不可)
[道具]:基本支給品一式×2(自分のものと白銀のもの)、ランダム支給品0~2(確認済み)、ジャングレイダー@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:繋いだ心は、今も離れない
1:……………
2:この殺し合いにいる藤丸立香とは共には行けない。だけど再び道が交わることがあれば力を貸すくらいはいい。
[備考]
※『深海電脳楽土 SE.RA.PH』のメルトリリスです。
※損傷は修復されてますが完全ではありません。休み無く戦い続ければ破損していくでしょう。
※出逢っているのは『男の藤丸立香』です。
※『女の藤丸立香』については、彼とは別の存在であると認識していますが、同時にその魂の形がよく似ているとも感じています。
※藤丸立香、中野三玖、若殿ミクニ、猛田トシオと情報交換をしました。
[状態]:損傷(両手)、右足損傷(大、満足な行動不可)
[道具]:基本支給品一式×2(自分のものと白銀のもの)、ランダム支給品0~2(確認済み)、ジャングレイダー@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:繋いだ心は、今も離れない
1:……………
2:この殺し合いにいる藤丸立香とは共には行けない。だけど再び道が交わることがあれば力を貸すくらいはいい。
[備考]
※『深海電脳楽土 SE.RA.PH』のメルトリリスです。
※損傷は修復されてますが完全ではありません。休み無く戦い続ければ破損していくでしょう。
※出逢っているのは『男の藤丸立香』です。
※『女の藤丸立香』については、彼とは別の存在であると認識していますが、同時にその魂の形がよく似ているとも感じています。
※藤丸立香、中野三玖、若殿ミクニ、猛田トシオと情報交換をしました。
■
「そうだよ、白銀御行」
「お前は十分頑張った。泥の中に真っ先に飛び込める、あの時の■■のようになれただろう」
「だから、もういいんだよ、白銀御行」
「お前の努力は報いられるべきだ。お前の存在は認められるべきだ。お前の愛は受け入れられるべきだ」
「だから、お前には、その努力に見合った力を与えてやろう」
「お前を報いない存在など、踏み躙ってしまえばいい」
「お前を認めない存在など、思い知らせてやればいい」
「お前を愛さない存在など、拒絶してしまえばいい」
「お前を認めない存在など、思い知らせてやればいい」
「お前を愛さない存在など、拒絶してしまえばいい」
「そうして、お前は立つんだ。お前に報いてくれる、認めてくれる、受け容れてくれる■■の隣に」
「今のお前なら、努力に見合った力を与えられたお前なら、対等──いや、それどころか上回っていると言ってもいいだろう」
「今のお前なら、努力に見合った力を与えられたお前なら、対等──いや、それどころか上回っていると言ってもいいだろう」
「だから、安心しろ。安心して」
告白しよ
「そして、喰らおう」
「そして、喰らおう」
■
まず最初に何をするべきか、鬼舞辻無惨は考えた。
やるべきことは少なくない。
BBと名乗るアレを殺す方法。鬼よりは下等だが、日光を克服した生物である先程のアレの解析。この忌まわしい首輪についての考察。それに、日中の行動を如何するか。
考えれば考える程、やらなければならないことが多い。
その全てを──元からいる配下の鬼があるとはいえ──己がこんな場所でやらされているのかと思えばまた沸々と怒りが沸いてくるが、突如として降って沸いた日光への希望はそんな憤怒を幾らか抑えてくれる程には喜ばしいものだった。
やるべきことは少なくない。
BBと名乗るアレを殺す方法。鬼よりは下等だが、日光を克服した生物である先程のアレの解析。この忌まわしい首輪についての考察。それに、日中の行動を如何するか。
考えれば考える程、やらなければならないことが多い。
その全てを──元からいる配下の鬼があるとはいえ──己がこんな場所でやらされているのかと思えばまた沸々と怒りが沸いてくるが、突如として降って沸いた日光への希望はそんな憤怒を幾らか抑えてくれる程には喜ばしいものだった。
そんな中で、無惨が一先ず優先するべきだと判断したのは、話を聞けばすぐに分かるものからだった。
ヒントは多ければ多いほど良い。特に、無くなる確率がより高いものならば尚更。
ヒントは多ければ多いほど良い。特に、無くなる確率がより高いものならば尚更。
累。
死んだ筈の鬼。
鬼殺隊の柱によって殺された下弦の鬼。
まずは奴の検分をして、どのように生き返ったかを調べるべきだろう。
奴は下弦だ。只の人間ならばすぐに殺せるだろうが、柱や上弦、それに猗窩座と一応は渡り合ったあの女などが犇めいているというのなら、果たしてどの程度生き延びることが出来るか分かったものではない。
死んだ筈の鬼。
鬼殺隊の柱によって殺された下弦の鬼。
まずは奴の検分をして、どのように生き返ったかを調べるべきだろう。
奴は下弦だ。只の人間ならばすぐに殺せるだろうが、柱や上弦、それに猗窩座と一応は渡り合ったあの女などが犇めいているというのなら、果たしてどの程度生き延びることが出来るか分かったものではない。
ならば、まずは奴から情報を聞き出すべきだろう。
そんなことを考えながら、無惨は累のいる南方へと歩を進めていた。
最初からこっちに降りてくれば良かった。猗窩座がいる方向とわざわざ反対に向かったのが間違いだったが、そのおかげであの忌々しくも可能性を示唆する木偶に会えたことを考えれば一応──本当に一応──採算は取れているだろう。
そうしてゆっくりと歩を進めていると、その先に、煙の上がる建造物が見えた。
先程まで猗窩座がいた場所だろうから、奴の戦闘の跡か。猗窩座自身は既に東へ向かっているようだが。
そんなことを考えた無惨の鼻腔に、ふと。、嗅ぎ慣れた匂いが漂ってくる。
濃厚な、人の血の匂いだった。
そんなことを考えながら、無惨は累のいる南方へと歩を進めていた。
最初からこっちに降りてくれば良かった。猗窩座がいる方向とわざわざ反対に向かったのが間違いだったが、そのおかげであの忌々しくも可能性を示唆する木偶に会えたことを考えれば一応──本当に一応──採算は取れているだろう。
そうしてゆっくりと歩を進めていると、その先に、煙の上がる建造物が見えた。
先程まで猗窩座がいた場所だろうから、奴の戦闘の跡か。猗窩座自身は既に東へ向かっているようだが。
そんなことを考えた無惨の鼻腔に、ふと。、嗅ぎ慣れた匂いが漂ってくる。
濃厚な、人の血の匂いだった。
「ふむ」
どうやら、先程と同じように無様な闘いぶりを晒し、一人も殺せていない、なんてことはなかったらしい。まさかとは思うが、流石に今回もしくじったようなら処遇を考えねばなるまい。
本当に猗窩座が殺した訳ではないという事実を知らない無惨が、そう考えつつ匂いの下を辿ると。
本当に猗窩座が殺した訳ではないという事実を知らない無惨が、そう考えつつ匂いの下を辿ると。
「なるほど」
果たして、そこには一人の男が倒れていた。
年齢は十代の半ば程か。制服を着ていることから書生だろうか。
腹から漏れ出た血や、瓦礫に所々押し潰された身体が、それでもまだ僅かな命が残っていることを物語るように弱弱しく上下する。
もう少し瓦礫が多ければ完全に押し潰されていたであろうが、彼は本来倒壊している建物からはかなり離れており、瓦礫もまばらだった。何らかの偶然に助けられ、ここまで吹き飛んだか。
だがどちらにしろ、もう少しで息絶えるし、無惨がここに来た以上生きていても何も関係はなかった。
人肉があるのなら、と、いつものように喰らおうとして──ふと、それを取りやめる。
ここで喰らって血肉にする、なるほどそれはいつものことだ。
だが、まだこの袋をはじめとして、他の下等な人間たちの駆除といった、この無惨が行う程でもない雑事が残っている。
無論、配下の鬼も上弦が二体に下弦が一体はいるが、どいつもこいつも動きが鈍い。上弦の参である猗窩座でさえこの人間一人以外に誰を殺せたか怪しいものだ。
鬼と似た生物を始めとする実験体を早くかき集め、それ以外を食料として処理しなければならないのに、柱などがいつまでものさばっているようならおちおち潜伏場所すら決められない。
年齢は十代の半ば程か。制服を着ていることから書生だろうか。
腹から漏れ出た血や、瓦礫に所々押し潰された身体が、それでもまだ僅かな命が残っていることを物語るように弱弱しく上下する。
もう少し瓦礫が多ければ完全に押し潰されていたであろうが、彼は本来倒壊している建物からはかなり離れており、瓦礫もまばらだった。何らかの偶然に助けられ、ここまで吹き飛んだか。
だがどちらにしろ、もう少しで息絶えるし、無惨がここに来た以上生きていても何も関係はなかった。
人肉があるのなら、と、いつものように喰らおうとして──ふと、それを取りやめる。
ここで喰らって血肉にする、なるほどそれはいつものことだ。
だが、まだこの袋をはじめとして、他の下等な人間たちの駆除といった、この無惨が行う程でもない雑事が残っている。
無論、配下の鬼も上弦が二体に下弦が一体はいるが、どいつもこいつも動きが鈍い。上弦の参である猗窩座でさえこの人間一人以外に誰を殺せたか怪しいものだ。
鬼と似た生物を始めとする実験体を早くかき集め、それ以外を食料として処理しなければならないのに、柱などがいつまでものさばっているようならおちおち潜伏場所すら決められない。
ならば。
左手を少し高く上げ、その付け根を逆の手で軽く引き裂く。
途端に溢れ出す血を、そっと死にかけの男の上へと垂らす。
びくり。
男の身体が震えたかと思うと、呻き声と共に男がゆっくりと動き出す。
巨大な傷口が塞がったかと思うと、段々とその身体が生気を取り戻していき──やがて、ゆっくりと立ち上がった。
これで良い。
本来ならみだりに鬼を増やすことは願い下げだが、状況が状況だ。太陽克服の為ならばまだ許せる。
左手を少し高く上げ、その付け根を逆の手で軽く引き裂く。
途端に溢れ出す血を、そっと死にかけの男の上へと垂らす。
びくり。
男の身体が震えたかと思うと、呻き声と共に男がゆっくりと動き出す。
巨大な傷口が塞がったかと思うと、段々とその身体が生気を取り戻していき──やがて、ゆっくりと立ち上がった。
これで良い。
本来ならみだりに鬼を増やすことは願い下げだが、状況が状況だ。太陽克服の為ならばまだ許せる。
やがて、血を与えられた人間──いや、鬼が、小さく唸りを上げ始める。
己の権能に制限が与えられていないことに、無惨の怒りは少しなりを潜める。
だが、その唸りは収まらず、傷の修復も中々進まない。
権能の問題ではない。己の権能がそんなに脆弱であるわけがない。ただでさえ飢えている上に、傷が大きすぎたというそれだけの理由だろう。
本来ならこの鞄を開けさせる予定だったが、復活までは長くかかりそうだ。
思い通りにならないことに再び怒りがこみ上げるが、せっかく血を分けた存在を使い潰すことはそれはそれで業腹だった。
日光が差し込むまでには再生も終わるだろうことから、此奴はこのまま放置することにした。その後、蜘蛛山の中腹に潜伏することくらいは訳もないだろう。
後は適当に誰かを喰らうのを待ち、最終的には実験体に使ってやるとしよう。
己の権能に制限が与えられていないことに、無惨の怒りは少しなりを潜める。
だが、その唸りは収まらず、傷の修復も中々進まない。
権能の問題ではない。己の権能がそんなに脆弱であるわけがない。ただでさえ飢えている上に、傷が大きすぎたというそれだけの理由だろう。
本来ならこの鞄を開けさせる予定だったが、復活までは長くかかりそうだ。
思い通りにならないことに再び怒りがこみ上げるが、せっかく血を分けた存在を使い潰すことはそれはそれで業腹だった。
日光が差し込むまでには再生も終わるだろうことから、此奴はこのまま放置することにした。その後、蜘蛛山の中腹に潜伏することくらいは訳もないだろう。
後は適当に誰かを喰らうのを待ち、最終的には実験体に使ってやるとしよう。
そうして、鬼舞辻無惨は再び歩き出す。
彼の隣には、誰も居ない。誰も要らない。
彼は、限りなく完璧に近い生物なのだから。
彼の隣には、誰も居ない。誰も要らない。
彼は、限りなく完璧に近い生物なのだから。
【E-3・教会以南/1日目・黎明】
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、極度の興奮
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:あの忌々しい太陽を克服する。
1.この状況は気に食わないが、好機でもある。
2.配下の鬼に有象無象の始末は任せる。
3.配下の鬼や他の参加者を使って実験を行いたい。
[備考]
※刀鍛冶の里編直前から参戦しているようです。
※鬼化は、少なくとも対象が死体でない限り可能なようです。
[状態]:健康、極度の興奮
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:あの忌々しい太陽を克服する。
1.この状況は気に食わないが、好機でもある。
2.配下の鬼に有象無象の始末は任せる。
3.配下の鬼や他の参加者を使って実験を行いたい。
[備考]
※刀鍛冶の里編直前から参戦しているようです。
※鬼化は、少なくとも対象が死体でない限り可能なようです。
■
蜘蛛山、南西のふもとにて。
猗窩座は、己が吹き飛んできた方向へと今一度舞い戻ろうとしていた。
理由の一つとしては、袋を落としてしまったらしいこと。尤もらしい道具などはともかく、人肉なども入っていたので失うには惜しい。
それに、先の男──鬼ではないようだったが、不死性を持っていた可能性のある──と再び戦うのも悪くない。状況が状況だったが故にこうして離脱したが、日が昇るまで奴と殴りあうのも一興だろう。
そんなことを考え歩を進めつつも、しかし。
猗窩座は、己の胸を焦がす苛立ちが隠せないでいた。
猗窩座は、己が吹き飛んできた方向へと今一度舞い戻ろうとしていた。
理由の一つとしては、袋を落としてしまったらしいこと。尤もらしい道具などはともかく、人肉なども入っていたので失うには惜しい。
それに、先の男──鬼ではないようだったが、不死性を持っていた可能性のある──と再び戦うのも悪くない。状況が状況だったが故にこうして離脱したが、日が昇るまで奴と殴りあうのも一興だろう。
そんなことを考え歩を進めつつも、しかし。
猗窩座は、己の胸を焦がす苛立ちが隠せないでいた。
あの時。
緑の巨獣が現れた時点で立ち尽くしていた自分を、黒い影が取り押さえていた状況。
再び振り払ってやろうとしたが、しかし何らかの理由で力が上がっていた為に今度は容易ではなかった。恐らくは本体なのであろう男が珍妙な恰好に変身していたのを見るに、それに付随した強化だったのだろう。
そこから猗窩座が解放された時には、あの巨大な獣による銃火器の乱射が始まっていた。
壊れ行く教会とその瓦礫の中をすり抜けてなお飛んでくる異様な量の弾薬は、そこから一人で凌ぐにはあまりに膨大すぎた。
如何に鬼の身体と言えど、これを全て受けきるのは再生にも時間がかかりすぎる、と判断した猗窩座が瞬時に導いた最適解。
それは、男が持っていた半天狗の扇を使うことだった。
本来の持ち主でもなかったし、自分に向けて扇ぐ、というのは半天狗であろうとやっていなかっただろうので、成功するかは駆けだったが、どうやら上手くいったらしい。
どこまで飛ぶかも分からなかったが、少なくとも逃げるにはちょうど良い距離を稼げた。
──その行動が結果的に白銀をも吹き飛ばし、彼の肉体の保護に繋がったことを、彼は知る由はない。
緑の巨獣が現れた時点で立ち尽くしていた自分を、黒い影が取り押さえていた状況。
再び振り払ってやろうとしたが、しかし何らかの理由で力が上がっていた為に今度は容易ではなかった。恐らくは本体なのであろう男が珍妙な恰好に変身していたのを見るに、それに付随した強化だったのだろう。
そこから猗窩座が解放された時には、あの巨大な獣による銃火器の乱射が始まっていた。
壊れ行く教会とその瓦礫の中をすり抜けてなお飛んでくる異様な量の弾薬は、そこから一人で凌ぐにはあまりに膨大すぎた。
如何に鬼の身体と言えど、これを全て受けきるのは再生にも時間がかかりすぎる、と判断した猗窩座が瞬時に導いた最適解。
それは、男が持っていた半天狗の扇を使うことだった。
本来の持ち主でもなかったし、自分に向けて扇ぐ、というのは半天狗であろうとやっていなかっただろうので、成功するかは駆けだったが、どうやら上手くいったらしい。
どこまで飛ぶかも分からなかったが、少なくとも逃げるにはちょうど良い距離を稼げた。
──その行動が結果的に白銀をも吹き飛ばし、彼の肉体の保護に繋がったことを、彼は知る由はない。
「あの鬼といい、最初の輩といい──鬼殺の柱以外にも、随分と手練れが多いらしい」
そう呟きつつも、その表情は晴れてはいなかった。
原因は分かり切っている。
原因は分かり切っている。
──何故だ。
──何故、あの時俺は立ち尽くしていた?
──何故、あの時俺は立ち尽くしていた?
自分があの時立ち尽くしたのは、
そしてそうすれば、あの半天狗の道具に頼るような
それが出来なかったのは、あの弱い男に目を奪われていたからだ。
そしてそうすれば、あの半天狗の道具に頼るような
それが出来なかったのは、あの弱い男に目を奪われていたからだ。
奴は弱かった。
五体満足であるにも関わらず、左足に重傷を負ったあの女よりも弱そうに見える程には。
鬼である自分が軽く腕を振るえば、それだけで首が飛ぶような、弱弱しい存在。ただそれだけでしか、なかったはずだ。
五体満足であるにも関わらず、左足に重傷を負ったあの女よりも弱そうに見える程には。
鬼である自分が軽く腕を振るえば、それだけで首が飛ぶような、弱弱しい存在。ただそれだけでしか、なかったはずだ。
だが。
そんな奴が、己が死ぬことが分かっていながら、女を庇い。
そして最後には、そんな相手を、命の限り逃がした。
そんな奴が、己が死ぬことが分かっていながら、女を庇い。
そして最後には、そんな相手を、命の限り逃がした。
──なんだ?
──何故そのようなことが、こんなにも気に障る?
──何故そのようなことが、こんなにも気に障る?
弱くてちっぽけで、つまらない存在。
鬼狩りの剣士ですらない、ただの人間。
そんな奴がしていた、あの、いかにも誰かを守れて嬉しかったと言わんばかりの表情が、どうしようもなく彼の気に障った。
鬼狩りの剣士ですらない、ただの人間。
そんな奴がしていた、あの、いかにも誰かを守れて嬉しかったと言わんばかりの表情が、どうしようもなく彼の気に障った。
そうだ、あの表情だ。
あの表情が、何よりも己の胸中を掻き回す。
どうしても原因が掴めない、そんな
あの表情が、何よりも己の胸中を掻き回す。
どうしても原因が掴めない、そんな
「──誰だ?」
そんなことを考えている最中でも、気配を感じるだけの余裕はあった。
だが、その気配は人間ではなく、さっきの女達や仮面の男などと同じ謎の気配でもない。
その気配は──間違いなく、同族のもの。
だが、その気配は人間ではなく、さっきの女達や仮面の男などと同じ謎の気配でもない。
その気配は──間違いなく、同族のもの。
「……貴様、は」
果たして、そこから出てきたのは自分と同じ鬼。
いや。そうなのだが、そうではない。その飢えきった表情を見ればわかる。
いや。そうなのだが、そうではない。その飢えきった表情を見ればわかる。
──こいつは今さっき、同じ鬼へと成った存在。
先程から怒りを募らせていた、己が一瞬殴るのを躊躇ったその男が、鬼として今自分の目の前にいた。
■
──俺は、強くなった。
肉を喰らって取り戻した理性で最初に思ったことは、それだった。
人間だった頃とは比べ物にならないくらい、自分の身体に力が満ちているのが分かる。
人間だった頃とは比べ物にならないくらい、自分の身体に力が満ちているのが分かる。
鬼としての意識を得た時には、再生の苦しみと飢えで発狂するかと思った。
動ける程度に回復してから、飢えにかまけて少しでも人肉の匂いがする方を辿ってくれば、そこには自分以外の鬼が落とした袋があった。
それを破り、人肉を喰らうことで、理性を取り戻していたところに──先程見た、あの鬼がやってきた。
動ける程度に回復してから、飢えにかまけて少しでも人肉の匂いがする方を辿ってくれば、そこには自分以外の鬼が落とした袋があった。
それを破り、人肉を喰らうことで、理性を取り戻していたところに──先程見た、あの鬼がやってきた。
「──多少、理性を取り戻したか」
そう呟く鬼の、自分とは到底異なる覇気に、思わず跪く。
「あのお方が血を分けた、というのであれば、貴様もまたこの場にいる人間どもを滅ぼせと仰せつかったか」
同じ存在になった今なら分かる。
目の前にいるのは、自分より強い鬼だ。
上弦の参。あのお方が作った鬼の内、三番目に強いという証明。
目の前にいるのは、自分より強い鬼だ。
上弦の参。あのお方が作った鬼の内、三番目に強いという証明。
──ああ、気にくわない。
どうせこいつも、強いからって俺を見下しているのだろう。
ああ、そうだ。
誰も彼も、何も持っていない人間は見下す。何かを持っていなければ、そもそも路傍の石としか思わない。何もかも、
ああ、そうだ。
誰も彼も、何も持っていない人間は見下す。何かを持っていなければ、そもそも路傍の石としか思わない。何もかも、
ああ。
だが、自分も、遂に力を得る機会に恵まれた。
だが、自分も、遂に力を得る機会に恵まれた。
人を喰らえば、自分は強くなれる。
分かるのだ。この新しい肉体が、そう告げている。
人を喰らい、取り込むことで、ようやく己自身が強くなることが出来る。
虚飾で取り繕うことのない、ありのままの自分が強くなる機会に、ようやく恵まれたのだ。
分かるのだ。この新しい肉体が、そう告げている。
人を喰らい、取り込むことで、ようやく己自身が強くなることが出来る。
虚飾で取り繕うことのない、ありのままの自分が強くなる機会に、ようやく恵まれたのだ。
そうだ。
だから、喰らえ。
喰らうことで、そうして強くなることで、誰からも認められる己になれ。
だから、喰らえ。
喰らうことで、そうして強くなることで、誰からも認められる己になれ。
そうすれば。
俺は認められるのだろう。
俺は■■の隣に立てるのだろう。
俺は──きっと、愛されるのだろう。
俺は認められるのだろう。
俺は■■の隣に立てるのだろう。
俺は──きっと、愛されるのだろう。
そんなことを考えていた時だった。
『うるせえ バァカ!!』
それは、北の方角から聞こえてきた。
本来なら遠すぎて聞こえなかったであろう、だが鬼の聴覚だからこそ聞き取れた、なんらかの道具で拡大された人の叫び。
見れば、目の前の鬼もまた、それを聞き取っていたようだった。
本来なら遠すぎて聞こえなかったであろう、だが鬼の聴覚だからこそ聞き取れた、なんらかの道具で拡大された人の叫び。
見れば、目の前の鬼もまた、それを聞き取っていたようだった。
「……人が、集まりそうだな」
呟く。
鬼になったからといって、彼のクレバーさそのものが失われたわけではない。
この場で拡声器などという代物を使えばどうなるか、元秀知院学園最高の頭脳は簡単に答えを導くことができた。
勿論、弱い人間が応援を呼ぶような、馬鹿が集まるような放送ではない。逃げろという警告から察するに殺人鬼がいることを示唆する内容であるから、保身に走るような人間はむしろ来ないだろう。
だが、反対に義憤に駆られた参加者や、そんな殺人鬼であろうと己の敵ではないという──自分たちのような──人間は寄ってくるだろうから、人を喰らうには格好の場所なのには変わらない。
そうでなくとも、その近辺から逃げ出した奴の肉も食えるだろうし、後は恐らくは死んだであろう声の主のの肉も忘れずに食っておきたい。
今はえり好みせず、ひたすら肉を食うことが強くなるための近道だ。そのための努力は惜しむまい。
無論、そのくらいは猗窩座にも理解できた。
鬼になったからといって、彼のクレバーさそのものが失われたわけではない。
この場で拡声器などという代物を使えばどうなるか、元秀知院学園最高の頭脳は簡単に答えを導くことができた。
勿論、弱い人間が応援を呼ぶような、馬鹿が集まるような放送ではない。逃げろという警告から察するに殺人鬼がいることを示唆する内容であるから、保身に走るような人間はむしろ来ないだろう。
だが、反対に義憤に駆られた参加者や、そんな殺人鬼であろうと己の敵ではないという──自分たちのような──人間は寄ってくるだろうから、人を喰らうには格好の場所なのには変わらない。
そうでなくとも、その近辺から逃げ出した奴の肉も食えるだろうし、後は恐らくは死んだであろう声の主のの肉も忘れずに食っておきたい。
今はえり好みせず、ひたすら肉を食うことが強くなるための近道だ。そのための努力は惜しむまい。
無論、そのくらいは猗窩座にも理解できた。
「あのお方に貢献できそうだ。行くぞ」
目の前の男がそう言って駆け出すのに、当然のようについていく。
かつて白銀御行だった存在は、今やその愛も、愛を求める心すらも歪ませて。
聞こえてきた声が、かつてその手で助けた後輩であることにすら気づかないまま──怪なる鬼と化していた。
かつて白銀御行だった存在は、今やその愛も、愛を求める心すらも歪ませて。
聞こえてきた声が、かつてその手で助けた後輩であることにすら気づかないまま──怪なる鬼と化していた。
そうして、鬼がふたり、夜を往く。
片や、最早狂い果てた外道の所業を以て、歪みきった愛情で己への愛を求めようとする鬼。
片や、守れなかった愛を既に何処かへと置き去りにして、ただ狂気に皮を被せただけの鬼。
片や、最早狂い果てた外道の所業を以て、歪みきった愛情で己への愛を求めようとする鬼。
片や、守れなかった愛を既に何処かへと置き去りにして、ただ狂気に皮を被せただけの鬼。
共に花火を見ていたはずの、隣りあうものの顔も忘れた、鬼がふたり。
隣りあって、夜を往く。
隣りあって、夜を往く。
【D-4・那田蜘蛛山の麓/1日目・黎明】
【猗窩座@鬼滅の刃】
[状態]:全身に負傷、回復中
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、可楽の羽団扇@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針: 強さを求める。
1.無惨様のために動く。
2.鬼殺隊、それに童磨か……。
3.新たな鬼に対して──?
4.声の方へ向かう。
[備考]
※煉獄さんを殺した以降からの参戦です。
【猗窩座@鬼滅の刃】
[状態]:全身に負傷、回復中
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、可楽の羽団扇@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針: 強さを求める。
1.無惨様のために動く。
2.鬼殺隊、それに童磨か……。
3.新たな鬼に対して──?
4.声の方へ向かう。
[備考]
※煉獄さんを殺した以降からの参戦です。
【白銀御行@かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~】
[状態]:鬼化、軽い飢餓
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:この力を振るって、■■の隣に。■■に■される、自分に。
1:無惨様の役に立つ。
2:声の方へ向かう。
[備考]
※奉心祭の準備を視野に入れるぐらいの時期。
※無惨の血によって鬼化しました。どれだけの血が与えられたかは後続の書き手さんにお任せします。
[状態]:鬼化、軽い飢餓
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:この力を振るって、■■の隣に。■■に■される、自分に。
1:無惨様の役に立つ。
2:声の方へ向かう。
[備考]
※奉心祭の準備を視野に入れるぐらいの時期。
※無惨の血によって鬼化しました。どれだけの血が与えられたかは後続の書き手さんにお任せします。
【可楽の羽団扇@鬼滅の刃】
十二鬼月の上弦の肆・半天狗の分裂体である可楽が持っている団扇。扇ぐことで人間程度なら簡単に吹き飛ばせる程の強風を起こすことができる。
十二鬼月の上弦の肆・半天狗の分裂体である可楽が持っている団扇。扇ぐことで人間程度なら簡単に吹き飛ばせる程の強風を起こすことができる。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| センチメンタルクライシス | 白銀御行 | あけないたたかい |
| メルトリリス | 君の知らないものばかり | |
| 不死身の怪物 | 佐藤 | 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? |
| 鬼と鬼と鬼 | 猗窩座 | あけないたたかい |
| 鬼は泥を見た。鬼は星を見た。 | 鬼舞辻無惨 | 始まりと終わりどっちが強いのか実験だよ実験 |