ハザードは終わらない ◆0zvBiGoI0k
【壱】
魔人が刀を振り上げる。
切っ先は月の反射以外の光によって輝き出し大気を震わせる。
帯雷が散り、刀身には目に見えるだけの『力』が握る腕から伝わっていく。
雷という属性を帯びた魔力が伝わる銘(さき)は絶刀。世界の何よりも固き、折れず曲がらぬ絶対の刀。
鉋という出力先は魔人の流す呵責なき暴威に晒されながら、絶えぬままに形状の維持を果たしている。
切っ先は月の反射以外の光によって輝き出し大気を震わせる。
帯雷が散り、刀身には目に見えるだけの『力』が握る腕から伝わっていく。
雷という属性を帯びた魔力が伝わる銘(さき)は絶刀。世界の何よりも固き、折れず曲がらぬ絶対の刀。
鉋という出力先は魔人の流す呵責なき暴威に晒されながら、絶えぬままに形状の維持を果たしている。
下ろすと共に前方へ放たれる斬撃。
稲妻に変化した魔力は進行上の道を焼き、焦がし、滅しながら侵掠していく。
その技、人に非ず。魔人の業なり。
この世に出し修羅、英霊剣豪・黒縄地獄である。
稲妻に変化した魔力は進行上の道を焼き、焦がし、滅しながら侵掠していく。
その技、人に非ず。魔人の業なり。
この世に出し修羅、英霊剣豪・黒縄地獄である。
「ど、わぁっ!危ねェ!」
その直射上にあった円城は素早く反応した。
ナノロボに感染して以降異常続きの事態。図らずもナノホストとの戦いでの経験が身を助けた。
火炎放射や冷気放出、人体では再現できない現象すら引き起こすのがナノロボなのだと知っていた。
異常発達した聴覚が知らせた危険信号が、足を止めていれば全身を焦がされ死ぬのだと教えたのだ。
ナノロボに感染して以降異常続きの事態。図らずもナノホストとの戦いでの経験が身を助けた。
火炎放射や冷気放出、人体では再現できない現象すら引き起こすのがナノロボなのだと知っていた。
異常発達した聴覚が知らせた危険信号が、足を止めていれば全身を焦がされ死ぬのだと教えたのだ。
「な―――――――」
間一髪の円城だったが、死は円城を逃してなどいない。
雷条を放った直後、黒縄地獄はとっくに次手を指していた。
回避に目を離し、戻すまでの二秒に満たぬ時間。
その時点で円城の間合いは侵掠されていた。
刀を再度振り上げ、その刀身は円城の全身を捉え切ってある。
雷条を放った直後、黒縄地獄はとっくに次手を指していた。
回避に目を離し、戻すまでの二秒に満たぬ時間。
その時点で円城の間合いは侵掠されていた。
刀を再度振り上げ、その刀身は円城の全身を捉え切ってある。
疾い。あまりにも疾すぎる。
肉体が若返り大幅に身体能力が増強された権三よりもなお高速。
腕の風切り音を聴いた時には、もう目前に到達していた。
そも黒縄地獄にとって先の一撃は露払いに過ぎない。
小手調べの牽制、本命は自らの手による斬滅である。
肉体が若返り大幅に身体能力が増強された権三よりもなお高速。
腕の風切り音を聴いた時には、もう目前に到達していた。
そも黒縄地獄にとって先の一撃は露払いに過ぎない。
小手調べの牽制、本命は自らの手による斬滅である。
避けきれない。
運動能力も反射神経も置き去りにされた。
防げない。
勢いのかかった絶刀は肢体を両断するのに十分すぎる。
即ち死亡確定。円城周兎は英霊剣豪の捧ぐ贄に積まされる。
運動能力も反射神経も置き去りにされた。
防げない。
勢いのかかった絶刀は肢体を両断するのに十分すぎる。
即ち死亡確定。円城周兎は英霊剣豪の捧ぐ贄に積まされる。
「おや」
「な――――」
「な――――」
小さく、二つの声が漏れる。
仕留めたはずの一撃が防がれた事に。
死ぬるはずの一撃を防ぐ者が現れた事に。
仕留めたはずの一撃が防がれた事に。
死ぬるはずの一撃を防ぐ者が現れた事に。
「そちらから近づいて来てくれるとは都合がいい。
先にこちらの羽虫を潰してしまうつもりでしたが」
先にこちらの羽虫を潰してしまうつもりでしたが」
手首を掴まれ、眼下に振り下ろすのを阻まれる黒縄地獄。
眼の前で己を睨む、燃え盛る緋の瞳を喜悦に見据える。
眼の前で己を睨む、燃え盛る緋の瞳を喜悦に見据える。
掴むは女。掴まれるも女。
されどその迫力に、死の気配に、男と比べ些かの衰えもなし。
されどその迫力に、死の気配に、男と比べ些かの衰えもなし。
「私は彼の命を奪わせません。命を救うと決めたのですから。
私の命を捧げる気もまたありません。命を救う者が消えてしまうのですから」
私の命を捧げる気もまたありません。命を救う者が消えてしまうのですから」
漏れる言葉は相手ではなく己にこそ向けられた宣誓だ。
自己暗示のそれとも違った決意。気が違ったと見做されかねない狂気。
渦を巻いて回転するナイチンゲールの信念は、霊基の底に刻まれている。
自己暗示のそれとも違った決意。気が違ったと見做されかねない狂気。
渦を巻いて回転するナイチンゲールの信念は、霊基の底に刻まれている。
「無論、あなたも。
源頼光。司令官を我が子と見做し愛そうとする精神異常。
あなたの狂気(きず)は――――私が治す」
源頼光。司令官を我が子と見做し愛そうとする精神異常。
あなたの狂気(きず)は――――私が治す」
そう言って、掴む腕に渾身の力を込めて、黒縄地獄の骨を砕き折った。
同じカルデアの、顔馴染みのサーヴァントを相手に、容赦というものを一切なくした握撃。よく知るからこその平時通りの荒療治。
尺骨橈骨が割れ、神経が潰れる。潰れた肉がだらりと垂れ下がる。
精神に傷を持ち、治療を了承せず暴れまわるサーヴァントに対しては、まず無力化するに限る。
尺骨橈骨が割れ、神経が潰れる。潰れた肉がだらりと垂れ下がる。
精神に傷を持ち、治療を了承せず暴れまわるサーヴァントに対しては、まず無力化するに限る。
「で。それが、なにか?」
瞬間、走る閃き。
鮮血が舞い、視界が暗く変わり、反転する。
遅れて体が回る痛覚が、身に起きた状況を知らせる。
斬られた。真紅の服の袖が一文字に破れ、より濃い血に染まっている。
鮮血が舞い、視界が暗く変わり、反転する。
遅れて体が回る痛覚が、身に起きた状況を知らせる。
斬られた。真紅の服の袖が一文字に破れ、より濃い血に染まっている。
黒縄地獄との距離は遠ざかっていた。
顔面に向けた蹴足で無理矢理に転がされたのだ。
しかし頭部に当てるには接近しすぎていた。それも蹴り程度で拘束を緩めたりはしない。
顔面に向けた蹴足で無理矢理に転がされたのだ。
しかし頭部に当てるには接近しすぎていた。それも蹴り程度で拘束を緩めたりはしない。
「手首を折った程度で英霊剣豪(われら)を止められると思うとは――――ああ、なんて浅はかなのでしょう」
刀が握られたままの、折れ曲がった右腕。
銀の刀身は艷やかな朱に濡れていた、そのおぞましい事実。
関節のない上腕を鞭の要領で振り不意を突くなぞ、尋常な人の英霊が使う技にない。
それに留まらず、自由になった腕を元の位置にあてがえば、すぐさまに関節が繋がり元の機能を取り戻した。
銀の刀身は艷やかな朱に濡れていた、そのおぞましい事実。
関節のない上腕を鞭の要領で振り不意を突くなぞ、尋常な人の英霊が使う技にない。
それに留まらず、自由になった腕を元の位置にあてがえば、すぐさまに関節が繋がり元の機能を取り戻した。
「やるならせめて首を手折って千切りなさい。それで漸く『動きが止まる』です。
致命傷なぞ、死ぬ前に全て治ってしまいますよ?」
致命傷なぞ、死ぬ前に全て治ってしまいますよ?」
「――――そうですか。元より精神を病んでいる者と注視していましたが、そこまで病状が侵攻していたとは。
先程の触診で確信しました。あなたの体そのものがひとつの病巣となり、病原となっている」
先程の触診で確信しました。あなたの体そのものがひとつの病巣となり、病原となっている」
嗤う女怪の謎を、ナイチンゲールは組み付いた時の触診で看破した。
生前の体質が昇華したスキル、宝具によって格別再生力に優れたサーヴァントは存在するが、源頼光はその例に当てはまらない。
肉の構成が、内部の動きが、従来知る頼光のそれとまるで異なる構造をしてるのをナイチンゲールは見抜いたのだ。
生前の体質が昇華したスキル、宝具によって格別再生力に優れたサーヴァントは存在するが、源頼光はその例に当てはまらない。
肉の構成が、内部の動きが、従来知る頼光のそれとまるで異なる構造をしてるのをナイチンゲールは見抜いたのだ。
これが英霊剣豪。
世界の輪より弾き出されし恩讐の妖術師……否、否、その配下に身を修めていた、辺獄の名を携える陰陽師が編み出し外方の中の外方。
英霊の霊基を砕き、魂を腐敗させ、冒し、貶め、辱め凶悪なる獣に変じさせるおぞましき術法。
正気性格性質挟持全てを狂わせられた躰は既に骸。一切鏖殺と呼ばれる、宿業を埋められた英霊はその名通りの地獄を再現する機構と化す。
世界の輪より弾き出されし恩讐の妖術師……否、否、その配下に身を修めていた、辺獄の名を携える陰陽師が編み出し外方の中の外方。
英霊の霊基を砕き、魂を腐敗させ、冒し、貶め、辱め凶悪なる獣に変じさせるおぞましき術法。
正気性格性質挟持全てを狂わせられた躰は既に骸。一切鏖殺と呼ばれる、宿業を埋められた英霊はその名通りの地獄を再現する機構と化す。
「――――私は悔しい。このような病状を今になるまで放置していたとは」
ナイチンゲールの表情に浮かぶのは、おぞましきものへの畏怖ではなく、後悔だ。
こうなるまでに経過を見過ごした、外部からの感染を許した己の管理の甘さ。
こうなるまでに経過を見過ごした、外部からの感染を許した己の管理の甘さ。
「一刻の猶予もない。あなたに巣食い、あなたそのものとなった病理をこの場で切除します」
「切除とは、ふふっ、なんとおかしなことを。我ら英霊剣豪は血肉なき絡繰りに等しく。
肉を剥ごうが、骨を外そうが、臓を抜こうが、この霊格に届きは致しません」
「ならば解体します。肉という肉を裂き、骨という骨を砕き、腑分けした上で残る精神を治療します」
「切除とは、ふふっ、なんとおかしなことを。我ら英霊剣豪は血肉なき絡繰りに等しく。
肉を剥ごうが、骨を外そうが、臓を抜こうが、この霊格に届きは致しません」
「ならば解体します。肉という肉を裂き、骨という骨を砕き、腑分けした上で残る精神を治療します」
サーヴァントの召喚はカルデアでのみ執り行われるものではない。
各地の特異点で各々に召喚され、カルデアでの記憶を持ち越さない例が多い。
だがそんな知識は何の意味も持たなかった。
眼の前に傷つく患者がいる。
命を奪おうとしている。
そこにナイチンゲールが現界してるのなら、選択肢は、いいや、選ぶ余地もなくひとつきり。
各地の特異点で各々に召喚され、カルデアでの記憶を持ち越さない例が多い。
だがそんな知識は何の意味も持たなかった。
眼の前に傷つく患者がいる。
命を奪おうとしている。
そこにナイチンゲールが現界してるのなら、選択肢は、いいや、選ぶ余地もなくひとつきり。
「私は、あなたの全てを殺し、あなたの命を救ってみせる」
「おい、どこ見てんだよ」
鋼鉄の決意に見向きもせず、紫苑の装甲を纏う獣が牙を突き立てた。
犀の角を象った衝角を横あいから受けてよろめく。
不意打ちではあったが対応はできた。上腕に鈍い痛みが残るままに、敵手―――仮面ライダー王蛇へ向き直る。
不意打ちではあったが対応はできた。上腕に鈍い痛みが残るままに、敵手―――仮面ライダー王蛇へ向き直る。
「てめえ、なんて卑怯な真似を!」
「知るか。下らねえごたくはもううんざりなんだよ」
「知るか。下らねえごたくはもううんざりなんだよ」
狂気と紙一重のナイチンゲールの言葉を、凪にも等しく切り捨てた浅倉はベルトから新たにカードを引き抜いた。
「戦えよ。俺とも!」
新たな武器、赤鞭エビルウィップを取り出しナイチンゲールめがけて伸ばされる。
絡め取れば電流を流し肉を焼き千切る鞭は、標的に到着する前に別方向からの稲妻の剣気に弾かれた。
絡め取れば電流を流し肉を焼き千切る鞭は、標的に到着する前に別方向からの稲妻の剣気に弾かれた。
「お前……」
仮面の奥から黒縄地獄を睨む眼光は、野獣と呼んで遜色ない。
「邪魔するなよ。お前とはさっき戦った。まずはあいつからだ」
「ああそれは困りました。私が真っ先に殺すべきなのもカルデアの者らだというのに」
「知るか」
「ああそれは困りました。私が真っ先に殺すべきなのもカルデアの者らだというのに」
「知るか」
仲間割れ、ではない。聞こえた会話の内容から二人は既に戦っていたらしいと円城は理解する。
ならば、と思う。このまま二人で相争ってくれれば、これ以上傷を負わず逃げられる可能性もあるのではないかと。
ならば、と思う。このまま二人で相争ってくれれば、これ以上傷を負わず逃げられる可能性もあるのではないかと。
「別にあなたから先に潰してしまってもいいのですが―――ああ、じゃあこうしましょうか。
どちらが首を取るか早い者勝ち、ということで」
どちらが首を取るか早い者勝ち、ということで」
そんな円城の期待を、あざ笑うかのような提案がなされた。
「ほぉ……いいぜ、それで」
まさかの同意する浅倉。
浅倉にとって全ては敵であり、戦う相手。
だが相手を選ぶ選択肢は持っている。それがイライラが収まってるかどうかという、他人からすれば基準にならない基準であっても。
ライダーバトルでも、気分次第ではライダー同士で小さな戯れに済ませる時もあった。
浅倉にとって全ては敵であり、戦う相手。
だが相手を選ぶ選択肢は持っている。それがイライラが収まってるかどうかという、他人からすれば基準にならない基準であっても。
ライダーバトルでも、気分次第ではライダー同士で小さな戯れに済ませる時もあった。
故にこれは、ただ意見の一致。
狙った得物が同一で、どちらも譲る気がないから先に奪い合うという、獣の倫理。
この時この一瞬のみ、二者の間で結ばれた関係だった。
狙った得物が同一で、どちらも譲る気がないから先に奪い合うという、獣の倫理。
この時この一瞬のみ、二者の間で結ばれた関係だった。
「ナイチンゲールさん……!」
一人でも手こずった相手に、さらにもう一人加わった状態での再戦。
分が悪すぎるのは戦闘の達人ではない円城ですら分かる問題だ。
分が悪すぎるのは戦闘の達人ではない円城ですら分かる問題だ。
「早く離れなさい、ミスター円城。
最早ここは、あなたにとってはいるだけで命を縮める」
最早ここは、あなたにとってはいるだけで命を縮める」
なのにナイチンゲールは引く姿勢を見せようともせず、逡巡なく殿を引き受けると言った。
「なに言ってんだよ!あんたも一緒に……!」
「いいえ、退きません。退けません。
ここで逃げれば、彼らはまた新たな患者を生み出してしまう。
アレはこの場で隔離しなければならない。死という病原が広がるより前に」
「いいえ、退きません。退けません。
ここで逃げれば、彼らはまた新たな患者を生み出してしまう。
アレはこの場で隔離しなければならない。死という病原が広がるより前に」
順序の逆転は否めないが、対象はいずれも治療対象。
重症を超えて即時緊急治療が必要なほどの容態。
で、あれば。彼女が見過ごす道理はない。
不退転の背はなおも揺るがず。
どれほど狂的と言われようと、それがこの英霊の根幹たる信義。
重症を超えて即時緊急治療が必要なほどの容態。
で、あれば。彼女が見過ごす道理はない。
不退転の背はなおも揺るがず。
どれほど狂的と言われようと、それがこの英霊の根幹たる信義。
「あなたは声があった方の救援を。
ご安心を。あなたの元へ危害を向かわせはしません。
私は、決して、患者を見捨てはしない」
ご安心を。あなたの元へ危害を向かわせはしません。
私は、決して、患者を見捨てはしない」
ここからは殺し合いではなく狩り。
どちらが先に旨い肉にかじりつけるかの奪い合い。
生存のためでなく、生を充足し死を遂げるがための地獄演舞。
どちらが先に旨い肉にかじりつけるかの奪い合い。
生存のためでなく、生を充足し死を遂げるがための地獄演舞。
「さあ、では鬼事を始めましょう。
言っておきますが、一人たりとも逃がしはしません。カルデアのサーヴァント、そこの少年、隣の騎兵。
し損じなく、撃ち漏らしなく、皆平等に殺して差し上げます」
言っておきますが、一人たりとも逃がしはしません。カルデアのサーヴァント、そこの少年、隣の騎兵。
し損じなく、撃ち漏らしなく、皆平等に殺して差し上げます」
並び立つ二体の魔人と獣は、待ち受ける肉の味に舌舐めずりし、獲物へと飛びかかった。
【弐】
嵐が、巻き起こっていた。
円城周兎は、そうと表現する他に目前の戦いを言い表せなかった。
爆発音と共に陥没する地面。
空中に四散する街の部品。
拳で、刀で、銃弾で、爆弾で、蛇が、稲妻が、炎が、殺意が、信念が、乱れ飛び交錯し蹂躙する。
空中に四散する街の部品。
拳で、刀で、銃弾で、爆弾で、蛇が、稲妻が、炎が、殺意が、信念が、乱れ飛び交錯し蹂躙する。
サーヴァント。英霊剣豪。仮面ライダー。
常軌を逸した、超常の頂に迫る戦徒の領域は円城の及ぶところになかった。
近づけば全身が吹き飛び、巻き込まれれば飲み込まれる。余波だけで人体が爆裂四散すること必至だ。
常軌を逸した、超常の頂に迫る戦徒の領域は円城の及ぶところになかった。
近づけば全身が吹き飛び、巻き込まれれば飲み込まれる。余波だけで人体が爆裂四散すること必至だ。
二対一。
余程の実力差がない限り、数の利で勝る側が有利なのは万事における鉄則だ。
そして先程の戦いぶりを観察した円城の見立てでは、ナイチンゲールと浅倉の能力の差は大きくない。
圧倒するわけではないが、拘束に留められる程度は有利に立ち回れていた。円城の援護が加われれば倒せるだろうと踏んでいた。
余程の実力差がない限り、数の利で勝る側が有利なのは万事における鉄則だ。
そして先程の戦いぶりを観察した円城の見立てでは、ナイチンゲールと浅倉の能力の差は大きくない。
圧倒するわけではないが、拘束に留められる程度は有利に立ち回れていた。円城の援護が加われれば倒せるだろうと踏んでいた。
だがそこに乱入した一騎。黒縄地獄を名乗る女武者で均衡は崩れた。
あれは埒外だ。化物だ。
ナノロボで強化された聴覚で捉えた筋肉の動き。骨の軋。心臓の鼓動。
それらが円城と比較にならない密度で詰まっているのを否応なしに理解させられた。
数の上での有利など計算のうちにも入らない。円城が加勢したところで粗挽き肉が焦げ付きでお出しされるだけだ。
あれは埒外だ。化物だ。
ナノロボで強化された聴覚で捉えた筋肉の動き。骨の軋。心臓の鼓動。
それらが円城と比較にならない密度で詰まっているのを否応なしに理解させられた。
数の上での有利など計算のうちにも入らない。円城が加勢したところで粗挽き肉が焦げ付きでお出しされるだけだ。
いまナイチンゲールは円城を逃さんがため二人を一度に相手している。
いかに人の身ならぬ英霊とはいえ、この二騎を前にして抗し切れるものではない。
実力で上回られ、数ですら逆転したいま、勝てる見込みは思案することすら絶望する。
なのに戦いの音は一向に止んでいない。
何故なら―――最も攻めているのはナイチンゲールだからだ。
いかに人の身ならぬ英霊とはいえ、この二騎を前にして抗し切れるものではない。
実力で上回られ、数ですら逆転したいま、勝てる見込みは思案することすら絶望する。
なのに戦いの音は一向に止んでいない。
何故なら―――最も攻めているのはナイチンゲールだからだ。
激闘を物語るのが嵐であれば、彼女はその只中を疾駆する駿馬だった。
ナイチンゲールは王蛇と黒縄地獄の両者に間断なく攻め続けている。
斬り伏せんと払う絶刀を避けたと思えば、脇に飛び込む王蛇めがけて突進し拳を叩きつけ。
怯む王蛇を連打で打ち据えた次には、黒縄地獄にペッパーボックスピストルの銃弾を浴びせていた。
その足は一秒足りとも止まらない。戦場を蹂躙しているのは紛れもなく彼女だった。
ナイチンゲールは王蛇と黒縄地獄の両者に間断なく攻め続けている。
斬り伏せんと払う絶刀を避けたと思えば、脇に飛び込む王蛇めがけて突進し拳を叩きつけ。
怯む王蛇を連打で打ち据えた次には、黒縄地獄にペッパーボックスピストルの銃弾を浴びせていた。
その足は一秒足りとも止まらない。戦場を蹂躙しているのは紛れもなく彼女だった。
二人の間で連携ができていないのも一因だろう。
共闘などという生易しい関係ではないし、援護の心積もりなど微塵も持っていない。
浅倉も黒縄地獄も、隙あらば互いの首を掻こうと画策しながらナイチンゲールと戦っている。
ならばこれはニ対一ではなく、変則的な三人制の乱戦の状況。
重点して狙われているナイチンゲールが動けば二人は殺さんと牙を向け、同時に対の牙にも注視しなければならない。
その隙を見逃さず、突風の速さで的確に攻撃を挟んでいるのだ。
共闘などという生易しい関係ではないし、援護の心積もりなど微塵も持っていない。
浅倉も黒縄地獄も、隙あらば互いの首を掻こうと画策しながらナイチンゲールと戦っている。
ならばこれはニ対一ではなく、変則的な三人制の乱戦の状況。
重点して狙われているナイチンゲールが動けば二人は殺さんと牙を向け、同時に対の牙にも注視しなければならない。
その隙を見逃さず、突風の速さで的確に攻撃を挟んでいるのだ。
「けどあんな戦い方……すぐに体力が尽きちまうぞ……!」
圧しつつあるよう見える状況にも、円城の不安は拭えない。
聴こえるのだ。彼には。ナイチンゲールの心音と筋肉の悲鳴を。
休みのない全力の戦闘。あれは完全に『その先』を度外視した戦法だ。
いうなればフルマラソンをスタート地点から全力疾走しているのに等しい暴挙ではないか。
聴こえるのだ。彼には。ナイチンゲールの心音と筋肉の悲鳴を。
休みのない全力の戦闘。あれは完全に『その先』を度外視した戦法だ。
いうなればフルマラソンをスタート地点から全力疾走しているのに等しい暴挙ではないか。
何故そうまでして猛撃を繰り返すのか、その理由も円城は痛い程理解している。
自分を、逃がすためだ。
敵の標的はナイチンゲールだけではない全ての参加者だ。
彼女が斃れれば次は円城。そして付近にいる参加者に手当たり次第に襲いかかる。
だから少しでも自分が遠くまで逃れられるよう、ナイチンゲールは相手に自分以外の相手をする余裕を与えさせないために無謀な突撃を敢行しているのだ。
自分を、逃がすためだ。
敵の標的はナイチンゲールだけではない全ての参加者だ。
彼女が斃れれば次は円城。そして付近にいる参加者に手当たり次第に襲いかかる。
だから少しでも自分が遠くまで逃れられるよう、ナイチンゲールは相手に自分以外の相手をする余裕を与えさせないために無謀な突撃を敢行しているのだ。
魔力で構成された仮初めの肉体は原理上、魔力さえあればどれだけの無茶な行為も成り立つ。
だが、その構造は人体を模してあり、動けば当然それだけ摩耗も生じる。
まして魔力の補給もなく、回復の間もない連続戦闘。保有量の擦り減りは避けられない。
だが、その構造は人体を模してあり、動けば当然それだけ摩耗も生じる。
まして魔力の補給もなく、回復の間もない連続戦闘。保有量の擦り減りは避けられない。
給油もないまま走り続ける車はいったいいつまでガソリンが保つ?
全開にしたアクセルを緩めないままどこまでカーブで曲げられる?
全開にしたアクセルを緩めないままどこまでカーブで曲げられる?
―――消滅・自壊は必定。
生物であれば動けなくなれば止まるが、肉体を形作る魔力まで回せばサーヴァントは消え去る瞬間まで駆動できるのだ。
生物であれば動けなくなれば止まるが、肉体を形作る魔力まで回せばサーヴァントは消え去る瞬間まで駆動できるのだ。
ナイチンゲールから受けたサーヴァントの説明を、円城はまだ理解しきれていない。
しかしこの状況が命を削る状況であるのは、聴こえる音から察せられた。
このまま続ければ、遠からず彼女は命を落とすと。
しかしこの状況が命を削る状況であるのは、聴こえる音から察せられた。
このまま続ければ、遠からず彼女は命を落とすと。
「けど、どうする――――――?」
円城は馬鹿ではない。
頭は悪いが、戦いには天性のセンスを持っている。
無策で突っ込んでもむざむざ死にに行くだけで邪魔になると弁えている。
頭は悪いが、戦いには天性のセンスを持っている。
無策で突っ込んでもむざむざ死にに行くだけで邪魔になると弁えている。
ナノロボによって強化された肉体。
特筆される聴力。
再生力。
骨銃(ボーン・ガン)
特筆される聴力。
再生力。
骨銃(ボーン・ガン)
不意を撃てば僅かに気を逸らせるだろう。しかしその後ナイチンゲールとで最低どちらか一方を打倒できるのか。
他方が円城に矛先を変えたとして果たして防ぎきれるか。自信はない。
他方が円城に矛先を変えたとして果たして防ぎきれるか。自信はない。
「ッそうだ支給品……こいつがあれば」
素の力が足りなければ、手札を足せばいい。
バッグから目当ての品を掴み引きずり出す。明らかに中身を無視した質量だが気にする余裕はない。
円城には使いこなせず死蔵するしかなかったアイテムが、この攻防撃の短い間でこその使い道がある。
バッグから目当ての品を掴み引きずり出す。明らかに中身を無視した質量だが気にする余裕はない。
円城には使いこなせず死蔵するしかなかったアイテムが、この攻防撃の短い間でこその使い道がある。
「言うこと聞かずに悪いけどよ、ナイチンゲールさん。
誰かのために戦ってる、それも女性を見捨てて逃げるなんてのは男じゃねえぜ……!」
誰かのために戦ってる、それも女性を見捨てて逃げるなんてのは男じゃねえぜ……!」
円城は決断する。逃げずに立ち向かう選択肢を取る。
多分、相当激怒されるだろうが、それでも決めた。
声の主ももちろん心配だが、誰よりもまず助けたい対象が、手が届く先にそこにいるのだから。
多分、相当激怒されるだろうが、それでも決めた。
声の主ももちろん心配だが、誰よりもまず助けたい対象が、手が届く先にそこにいるのだから。
王蛇がはじめてナイチンゲールの攻めの範囲から逃れる。
大抵は刀捌きと稲妻でいなした黒縄地獄に比べ、王蛇の装甲には幾つもの亀裂と破損がある。
効率よく人体を破壊する術を極めた連撃を防ぎ切るだけの技量は浅倉は持ち合わせてはいない。
訪れた微妙な変化のタイミング。
根拠はない。勝負勘に委ねて身を乗り出すまで。
大抵は刀捌きと稲妻でいなした黒縄地獄に比べ、王蛇の装甲には幾つもの亀裂と破損がある。
効率よく人体を破壊する術を極めた連撃を防ぎ切るだけの技量は浅倉は持ち合わせてはいない。
訪れた微妙な変化のタイミング。
根拠はない。勝負勘に委ねて身を乗り出すまで。
「今だ!」
轟く爆音。鉄の黒馬の嘶きが場に震撼し戦輪を回す。
「うおおおおおおおおおめっちゃ速えエエエ!」
バイクの騎乗経験のない円城に機微なドライビングテクニックを望むべくもない。
テレビで見る仕草を見よう見真似で再現してみただけであり、前に進めただけでも僥倖というべきだった。
距離は十分ある。ここから加速すればかなりの速度になるはず。
必要なのはただ速さ。円城にとってはここから本格的な賭けだ。
テレビで見る仕草を見よう見真似で再現してみただけであり、前に進めただけでも僥倖というべきだった。
距離は十分ある。ここから加速すればかなりの速度になるはず。
必要なのはただ速さ。円城にとってはここから本格的な賭けだ。
迫りくる二輪駆動に、誰よりも強く反応したのは黒縄地獄だった。
正確にいえば、バイク自体にはなんの思いも抱かない。
そこに乗る少年が自爆同然に突っ込んでくるのも些事でしかない。
見ているのはただ一点。
少年が右腕に握って突き出す、荒々しい造りの刀だけだ。
正確にいえば、バイク自体にはなんの思いも抱かない。
そこに乗る少年が自爆同然に突っ込んでくるのも些事でしかない。
見ているのはただ一点。
少年が右腕に握って突き出す、荒々しい造りの刀だけだ。
「―――――――――虫。こんな時にでも湧いて出ますか」
無用の殺意が迸る。
絡繰りでも命でもなく鬼の握る無銘の骨刀にのみ専心した斬撃。
バイクの制御に腐心する円城に避ける術もなく、呆気なく武器を取り落とす。
仕掛けた円城も預かり知らぬ、骸となった英霊に残留していた執心は、結果として円城の策を成功に導いた。
絡繰りでも命でもなく鬼の握る無銘の骨刀にのみ専心した斬撃。
バイクの制御に腐心する円城に避ける術もなく、呆気なく武器を取り落とす。
仕掛けた円城も預かり知らぬ、骸となった英霊に残留していた執心は、結果として円城の策を成功に導いた。
「そいつは囮だぜーーー!」
握り拳で広げ出す無手の左。
助走をつけて殴りつける気は毛頭ない。バイクを使ったのは間合いに入り込むまでに撃ち落とされないため。
伸ばした腕は発射台にして弾丸そのもの。
指先を凝固するのではなく、上腕部から先全てを武器にした、捨て身の一撃。
助走をつけて殴りつける気は毛頭ない。バイクを使ったのは間合いに入り込むまでに撃ち落とされないため。
伸ばした腕は発射台にして弾丸そのもの。
指先を凝固するのではなく、上腕部から先全てを武器にした、捨て身の一撃。
「喰らえ、骨小銃(ボーン・ライフル)!!」
弾き出す真の骨刀。
宿主のアドレナリンにより活性化されたナノロボが、五指を一気に硬化させダイアモンドの砲弾を形成する。
破壊力は如何にすれば生み出せる?
重く、硬く、大きい物体を高速でぶつければいい。それこそが最適解。
宿主のアドレナリンにより活性化されたナノロボが、五指を一気に硬化させダイアモンドの砲弾を形成する。
破壊力は如何にすれば生み出せる?
重く、硬く、大きい物体を高速でぶつければいい。それこそが最適解。
今度こそ間に合わなかった。
絶刀は払いに使い、なにより近付かせ過ぎた。
咄嗟の超反応で弾と顔の間に左腕を差し込めたのは積み重ねた武錬の為せる業だが、今のみは円城の気迫が鬼を超える。
盾にした腕をものともせず、骨小銃は黒縄地獄の脳天、美しい容の鼻から上の先を落ちた柘榴の如く吹き飛ばした。
絶刀は払いに使い、なにより近付かせ過ぎた。
咄嗟の超反応で弾と顔の間に左腕を差し込めたのは積み重ねた武錬の為せる業だが、今のみは円城の気迫が鬼を超える。
盾にした腕をものともせず、骨小銃は黒縄地獄の脳天、美しい容の鼻から上の先を落ちた柘榴の如く吹き飛ばした。
「ってぇ……。肉を切らせて骨を断つならぬ、骨を飛ばして首を断つってな……!」
勢いを殺せずバイクから転げ落ちながら、残った右手で渾身のブイサインを決める。
これで、逆転。
頭蓋を割り、脳漿を飛び散らせた。脳はナノロボを宿す部位であるナノホスト共通の急所。
相手はナノホストではないが、そもそも脳を壊されれば生き物は死ぬ。大して違いはないだろう。
これで、逆転。
頭蓋を割り、脳漿を飛び散らせた。脳はナノロボを宿す部位であるナノホスト共通の急所。
相手はナノホストではないが、そもそも脳を壊されれば生き物は死ぬ。大して違いはないだろう。
「ナイチンゲールさん、今のうちだせ!そいつが逃げる前に決着を――――――」
「…………御見事」
美しい声で、褒められた。
花咲く乙女のような、子を思う母のような、向けられた男は天にも昇る気持ちになる、深い情感のこもった声だった。
花咲く乙女のような、子を思う母のような、向けられた男は天にも昇る気持ちになる、深い情感のこもった声だった。
けとあり得ない。この声が聞こえるはずがない。
だってこれは、いま死んだはずの女の―ー―ー―
だってこれは、いま死んだはずの女の―ー―ー―
「ええ、ええ、そう褒めるしかないでしょうとも。
英霊でもなく、魔術師でもない身でこの骸の首を落とすだなんて。素晴らしい一手でしたよ。感動すら覚えます」
英霊でもなく、魔術師でもない身でこの骸の首を落とすだなんて。素晴らしい一手でしたよ。感動すら覚えます」
立っていた。
円城の骨小銃で倒れ伏す女が、撃たれた姿のままで、平然と己の足で。
円城の骨小銃で倒れ伏す女が、撃たれた姿のままで、平然と己の足で。
じゅわ、じゅわ、と音を立てて。
砕かれた頭蓋と皮膚を復元させる、ビデオの逆回しにした光景を見せて。
砕かれた頭蓋と皮膚を復元させる、ビデオの逆回しにした光景を見せて。
「ですが、無意味。無意味です。総て」
賛美は嗤いに。
劣化も進化もしない依然と代わり映えのない太刀筋が煌めく。
ナイチンゲールの手も間に合わず、腰から下の半身を置き去りにして、円城の体は宙に飛んだ。
劣化も進化もしない依然と代わり映えのない太刀筋が煌めく。
ナイチンゲールの手も間に合わず、腰から下の半身を置き去りにして、円城の体は宙に飛んだ。
【参】
失敗したと、まずはじめに抱いた感想はそんなものだった。
脳が壊れても復活するなんて、そんなの反則すぎるだろう。
せめてそう、狙いは首にするべきだった。
主催者のBBが言うには、首輪には爆弾が仕掛けられている。最初に見せしめにされた女の子のようにいつでも爆破できるのだと。
参加者の反抗を防ぐために爆弾なら、誰であれ死ぬようにできていなければならない。
そこに衝撃を与えれば、どんな不死身の再生力を持った相手でも殺せたかもしれない。
判断を間違えた。おかげでこっちが致命傷を食らっちまった。
せめてそう、狙いは首にするべきだった。
主催者のBBが言うには、首輪には爆弾が仕掛けられている。最初に見せしめにされた女の子のようにいつでも爆破できるのだと。
参加者の反抗を防ぐために爆弾なら、誰であれ死ぬようにできていなければならない。
そこに衝撃を与えれば、どんな不死身の再生力を持った相手でも殺せたかもしれない。
判断を間違えた。おかげでこっちが致命傷を食らっちまった。
体が動かない。
手足がついている感覚がない。
動かせるのは右腕ぐらいのもので、ああ、左腕は飛ばすのに使って、両足は腰ごと斬り飛ばされたんだったなと、他人事のように呑気に認識した。
酷く苦しいが、不思議と痛みは感じなかった。
体内のアドレナリンがナノロボを活性化させるって、確か大廻さんが言ってた気がする。それが痛みを和らげているのか。
だが骨を再生する時はめちゃくちゃ痛いし、糖分が足りなきゃ頭痛だってする。
じゃあこれは、痛みを感じる機能自体が死んでしまってることなのか。
手足がついている感覚がない。
動かせるのは右腕ぐらいのもので、ああ、左腕は飛ばすのに使って、両足は腰ごと斬り飛ばされたんだったなと、他人事のように呑気に認識した。
酷く苦しいが、不思議と痛みは感じなかった。
体内のアドレナリンがナノロボを活性化させるって、確か大廻さんが言ってた気がする。それが痛みを和らげているのか。
だが骨を再生する時はめちゃくちゃ痛いし、糖分が足りなきゃ頭痛だってする。
じゃあこれは、痛みを感じる機能自体が死んでしまってることなのか。
失われた手足の部位から、モコモコと新しい肉体が生えようと動いているのがわかる。
けどタブレットもないのにすぐに再生できたりはしない。栄養を取らなきゃ二時間経ったってこのままだ。
それに…………………スゲー、眠い。
この眠りは……マズいとわかる。ここで寝たら二度と起きれなくなるやつだ。
死、という単語が脳裏をよぎり、寒気をもたらす。
ここで死ぬのか、俺は。
拡声器を使った誰かを襲ってる権三を止められず。
父さんを殺した仇である前園も殺せない。
この殺し合いを止めてやることも、もうできない。
けどタブレットもないのにすぐに再生できたりはしない。栄養を取らなきゃ二時間経ったってこのままだ。
それに…………………スゲー、眠い。
この眠りは……マズいとわかる。ここで寝たら二度と起きれなくなるやつだ。
死、という単語が脳裏をよぎり、寒気をもたらす。
ここで死ぬのか、俺は。
拡声器を使った誰かを襲ってる権三を止められず。
父さんを殺した仇である前園も殺せない。
この殺し合いを止めてやることも、もうできない。
――――――悔しい。
怒りが沸々と湧いてくる。
殺し合いで好き勝手に暴れて人を殺し回るような連中を。
そいつらを倒せない俺自身の弱さを。
怒りが沸々と湧いてくる。
殺し合いで好き勝手に暴れて人を殺し回るような連中を。
そいつらを倒せない俺自身の弱さを。
悪党をぶっ潰すんじゃねえのかよ。
この力で守るって決めたのに。
ここで、俺は終わりかよ。
「――――――、―――――――――!」
耳が無意識に拾った声に、首を傾けた。
目でロックオンすれば、より鮮明に声が聴こえる。
目でロックオンすれば、より鮮明に声が聴こえる。
「―――いま目が合いましたね!そのまま意識を保ち続けなさい!」
ナイチンゲールさんの声だ。
あの人はまだ生きていた。戦っていた。
俺が生きてるのに気づいて、傍に駆け寄ろうとしていた。
あの人はまだ生きていた。戦っていた。
俺が生きてるのに気づいて、傍に駆け寄ろうとしていた。
だが、できない。
鎧の男、浅倉と武者の女、黒縄地獄に阻まれて俺のところまでたどり着けない。
あれからどれぐらい時間が経ったのか。ナイチンゲールさんの全身はボロボロだった。
なのに彼女は真正面から突っ込むのを止めない。
助けるべき患者が、目の前にいるのだから。
鎧の男、浅倉と武者の女、黒縄地獄に阻まれて俺のところまでたどり着けない。
あれからどれぐらい時間が経ったのか。ナイチンゲールさんの全身はボロボロだった。
なのに彼女は真正面から突っ込むのを止めない。
助けるべき患者が、目の前にいるのだから。
「すぐあなたの元まで辿り着き、その傷を治します。
死ぬことは、決して許しません、私が治し、救うまで!」
死ぬことは、決して許しません、私が治し、救うまで!」
「―――――――――――――――――――――」
ああそうだ。
俺も、そういう風に生きたかったんだ。
俺も、そういう風に生きたかったんだ。
誰かのために頑張って、街の皆を守っていく。
刑事の父さんにずっと憧れていた。理想の大人の姿を子供の頃から見ていた。
そんな父さんが殺されて、気丈な母さんが崩れ落ちるのを眺めるしかなかった時。
何もできなかった自分が、悔しくて仕方なかった。
刑事の父さんにずっと憧れていた。理想の大人の姿を子供の頃から見ていた。
そんな父さんが殺されて、気丈な母さんが崩れ落ちるのを眺めるしかなかった時。
何もできなかった自分が、悔しくて仕方なかった。
もうあんな思いはしたくねえ。
俺は力を手に入れた。
偶然で手に入れた、死ぬかも知れない危うい力だが、自分の意志で制御して、正しいことに使っていくと誓った。
力はある。意志はまだ折れてない。
俺は力を手に入れた。
偶然で手に入れた、死ぬかも知れない危うい力だが、自分の意志で制御して、正しいことに使っていくと誓った。
力はある。意志はまだ折れてない。
「だったら、こんなとこで寝転がってる場合じゃねえだろ……!」
あるはずだ。まだできることが。
必死に周囲を見回し、すぐ傍に転がっていたソレの存在に気づいた。
必死に周囲を見回し、すぐ傍に転がっていたソレの存在に気づいた。
「こいつは……」
それは、さっき骨小銃で脳天と一緒に吹き飛ばされて転がっていた、黒縄地獄の左腕だった。
あいつの体はとっくに元に戻ってる。頭も再生するなら当然だ。
末端からボロボロと炭みたいに崩れて、いまにも消えてなくなりそう。
あいつの体はとっくに元に戻ってる。頭も再生するなら当然だ。
末端からボロボロと炭みたいに崩れて、いまにも消えてなくなりそう。
「クソッ、権三の真似なんてしたくねえが……」
背に腹は変えられまい。
唯一残った右腕に意識を総動員して残骸に手を伸ばす。
スローな動作で苦労しながら口元まで持っていき、滴り落ちる血液を喉に落とした。
唯一残った右腕に意識を総動員して残骸に手を伸ばす。
スローな動作で苦労しながら口元まで持っていき、滴り落ちる血液を喉に落とした。
不味い。不味すぎる。
こんなのを美味そうに飲む権三はぜってえイかれてる。
不快感を脳裏の怨敵にぶつけて宥め、どうにか飲み干す。
僅かだが、体に自由が戻った気がする。
こんなのを美味そうに飲む権三はぜってえイかれてる。
不快感を脳裏の怨敵にぶつけて宥め、どうにか飲み干す。
僅かだが、体に自由が戻った気がする。
「おまけに、コイツだ……!」
気休めに回復した勢いで、制服の胸ポケットに入れていた小瓶を取り出す。
ナイチンゲールさんの支給品。魔術髄液とかいうアンプルの十本セットを一本だけ譲り受けていた。
首に打ち込み、赤色の薬品が流れていく。ビクリと、内蔵の奥底から痙攣する。
ナイチンゲールさんの支給品。魔術髄液とかいうアンプルの十本セットを一本だけ譲り受けていた。
首に打ち込み、赤色の薬品が流れていく。ビクリと、内蔵の奥底から痙攣する。
効果は保証できない。復活できるかわからない。起こる現象は未知数だ。
いいぜ。博打上等だ。
何もせずに死ぬぐらいなら、やれることは全部やりきってからの方がマシに決まってる。
いいぜ。博打上等だ。
何もせずに死ぬぐらいなら、やれることは全部やりきってからの方がマシに決まってる。
「ぐあ、ぐああああああああああああ!」
体内からの、猛烈な灼熱。
激痛に身をよじる。
幻肢痛というのか。手足は四分の三も無いというのに、上下に両足をばたつかせている錯覚が襲いかかる。
激痛に身をよじる。
幻肢痛というのか。手足は四分の三も無いというのに、上下に両足をばたつかせている錯覚が襲いかかる。
いや――――――足はある!
ブヨブヨに溶けて膨れ上がった形だが、そこには確かに腰と繋がった脚部があった。
左手も、元からあった右腕も同じように膨れ上がっていく。
ブヨブヨに溶けて膨れ上がった形だが、そこには確かに腰と繋がった脚部があった。
左手も、元からあった右腕も同じように膨れ上がっていく。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
感じるものは、痛み。
そしてそれを超える、身体の内側から焼き焦がすような熱さ。
自分の中の大事なものが溶けて、熔けて、融けていく。
だが構うな。考えるべきは、やるべきことは、ただひとつだけ。
そしてそれを超える、身体の内側から焼き焦がすような熱さ。
自分の中の大事なものが溶けて、熔けて、融けていく。
だが構うな。考えるべきは、やるべきことは、ただひとつだけ。
立て。
立て。
立て。
立って、戦え!
立て。
立て。
立って、戦え!
【肆】
「ああ……?なんだそりゃあ」
敵が、表れた異物を認識する。
ナイチンゲールに向けていた意識を割いて、身の丈を超える巨人となった円城周兎を見上げた。
ナイチンゲールに向けていた意識を割いて、身の丈を超える巨人となった円城周兎を見上げた。
「ああ―――なんと醜いのでしょう。
まさか、虫どもより生き汚い化生がいるとは」
まさか、虫どもより生き汚い化生がいるとは」
体内に取り込んだ英霊剣豪の血。
一時的に疑似的な魔術回路を形成する魔術髄液の投与。
ふたつの要素は本来受け入れられないナノロボの栄養判定と繋がり、爆発的な変化を遂げていた。
それは、最早暴走といって差し支えない。
熱暴走に陥ったナノロボの核は狂ったように培養したナノロボ達に指令を送り、元来の用途であった細胞の再生機能すら破壊していった。
一時的に疑似的な魔術回路を形成する魔術髄液の投与。
ふたつの要素は本来受け入れられないナノロボの栄養判定と繋がり、爆発的な変化を遂げていた。
それは、最早暴走といって差し支えない。
熱暴走に陥ったナノロボの核は狂ったように培養したナノロボ達に指令を送り、元来の用途であった細胞の再生機能すら破壊していった。
「そのような肉塊では自害すら叶わぬでしょう。
慈悲です。潔く散華なさい」
慈悲です。潔く散華なさい」
数段越しに込められた魔力を絶刀に流し稲光が奔る。
真名解放に届かずとも、黒縄地獄に打てる最大威力。
避ける動作もなく諸共に喰らうが、円城の巨体は消えない。
どころか裂雷は破壊を呼び起こしことなく、膨張する肉の内へ内へと吸い込まれていく。
盾にして雷を浴びる、基部が千切れた腕を中心に。
真名解放に届かずとも、黒縄地獄に打てる最大威力。
避ける動作もなく諸共に喰らうが、円城の巨体は消えない。
どころか裂雷は破壊を呼び起こしことなく、膨張する肉の内へ内へと吸い込まれていく。
盾にして雷を浴びる、基部が千切れた腕を中心に。
「その雷があんたから出てるものなら、同じ体のパーツなら受け止められるだろ……!」
事はそう単純なわけはない。
だが機能崩壊の折に併せて円城の極まった強烈な意志が決め手になり、ナノロボの指令権は現在円城の支配下にあった。
黒縄地獄の腕を肉体と繋げ、体内の血を介して、雷を体内に送り留められるよう造り変えられるほどに。
だが機能崩壊の折に併せて円城の極まった強烈な意志が決め手になり、ナノロボの指令権は現在円城の支配下にあった。
黒縄地獄の腕を肉体と繋げ、体内の血を介して、雷を体内に送り留められるよう造り変えられるほどに。
「あんだだけは助けるぜ、ナイチンゲールさん」
「何を――――――――――――」
「何を――――――――――――」
円城は視線をナイチンゲールに向ける。
細胞の中を余すことなく駆け巡る雷条に体感を超える激痛を味わいながらも、表情は穏やかだった。
彼女が生き残れば、多くの人を守れる。きっと希望を生み出せる。
細胞の中を余すことなく駆け巡る雷条に体感を超える激痛を味わいながらも、表情は穏やかだった。
彼女が生き残れば、多くの人を守れる。きっと希望を生み出せる。
「そしてお前らだけはコ・ロ・ス……っ!」
「何をしているのですか、あなたは!!」
「何をしているのですか、あなたは!!」
締め切った限界を、ここに解き放つ。
湧き出すのは溜めに溜められた一撃。少年にとって、最後にして究極に位置するカウンターパンチ。
十億分の一単位から創造される、生命力の爆縮そのもののエネルギー。
湧き出すのは溜めに溜められた一撃。少年にとって、最後にして究極に位置するカウンターパンチ。
十億分の一単位から創造される、生命力の爆縮そのもののエネルギー。
太陽が昇り空からの光が地を照らす刻。
地より広がる光が、世界を白く染めていく―――――――――。
地より広がる光が、世界を白く染めていく―――――――――。
「もし地球が滅亡して私達二人だけになったら」
「この『ハートと生命の木』の前で待ち合わせしよう」
記憶の淵から、そんな言葉を思い出した。
ある日幼馴染と交わした、叶うわけのない未来。他愛のない口約束。
何故思い出したのかはわからない。
答える時間も、機能もとうにない。
だからせめて、思いだけは失くさないように。
散り散りになっていく自我の欠片の全てを使って、あの日の彼女と同じ答えを返した。
「ああ、約束だ」
【円城周兎@ナノハザード 死亡】
【伍】
「なんともはや、思った以上に物の怪が蠢く場所ですね。
私のようなモノを世に招く以上は至極当然ですが、なればこそ首を落とせなかったのが口惜しくてなりません」
私のようなモノを世に招く以上は至極当然ですが、なればこそ首を落とせなかったのが口惜しくてなりません」
黒縄地獄は健在だった。
円城の命を捧げた豪雷を以てしても、英霊剣豪を消滅させるには至らなかった。
骸の奥に巣食う宿業を取り払うこと叶わなかった。
体の各所を閃光に焼かれ、四散する骨の弾丸を刺されながらも死の洗礼を乗り越えた。
円城の命を捧げた豪雷を以てしても、英霊剣豪を消滅させるには至らなかった。
骸の奥に巣食う宿業を取り払うこと叶わなかった。
体の各所を閃光に焼かれ、四散する骨の弾丸を刺されながらも死の洗礼を乗り越えた。
「まあ足が手に入っただけでもよしとしましょう。
鉄の馬というのもいいですね。京極のように主の意に従わぬ粗相をすることもないのですから」
鉄の馬というのもいいですね。京極のように主の意に従わぬ粗相をすることもないのですから」
跨っている黒い車体に手を這わす。
あの攻防では円城の機転に一杯食わされた形だが、接近を一気に可能にしたバイクの性能も目に留まるものだった。
地域一帯を支配していたグループ・MUGENに屈しなかった最強の兄弟の保有する、丹念な改造が施された愛車。
その名も所以も知る由もないが、要らぬ手間や消耗もせず移動するには都合がいいと回収していたのだ。
堕ちたる英霊剣豪といえどサーヴァントの残滓に残った騎乗スキルは、未知の機械も長年の愛馬同然に操り使いこなす。
あの攻防では円城の機転に一杯食わされた形だが、接近を一気に可能にしたバイクの性能も目に留まるものだった。
地域一帯を支配していたグループ・MUGENに屈しなかった最強の兄弟の保有する、丹念な改造が施された愛車。
その名も所以も知る由もないが、要らぬ手間や消耗もせず移動するには都合がいいと回収していたのだ。
堕ちたる英霊剣豪といえどサーヴァントの残滓に残った騎乗スキルは、未知の機械も長年の愛馬同然に操り使いこなす。
殺戮を齎す英霊剣豪に、自在に戦場を駆ける騎馬が揃った。
地獄は終わらない。
地獄は終わらない。
【D-2/1日目・早朝】
【源頼光@Fate/Grand Order】
[状態]:健康。中度の疲労。全身に火傷・刺傷(再生中)
[装備]:絶刀・鉋@刀語、弓矢@Fate/Grand Order 、ハーレー・ダビッドソン(雅貴)@HiGH&LOW
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針: 英霊剣豪として一切合切を粛正する。
1. カルデアのサーヴァントを排除する。
2.もう一体の鬼については状況を見て判断。
[状態]:健康。中度の疲労。全身に火傷・刺傷(再生中)
[装備]:絶刀・鉋@刀語、弓矢@Fate/Grand Order 、ハーレー・ダビッドソン(雅貴)@HiGH&LOW
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針: 英霊剣豪として一切合切を粛正する。
1. カルデアのサーヴァントを排除する。
2.もう一体の鬼については状況を見て判断。
[備考]
※源頼光ではなく、英霊剣豪七番勝負のライダー・黒縄地獄としての参戦です。
※源頼光ではなく、英霊剣豪七番勝負のライダー・黒縄地獄としての参戦です。
【ハーレー・ダビッドソン(雅貴)@HiGH&LOW】
円城周兎に支給。
雨宮兄弟の兄、雅貴が使っていたバイクで、映画ではこれで縦横無尽のアクションを繰り広げた 。
原型がわからないほどカスタムされてるので正確な機種は不明。
カスタム費用を合わせて1000万円ほどだとか。
円城周兎に支給。
雨宮兄弟の兄、雅貴が使っていたバイクで、映画ではこれで縦横無尽のアクションを繰り広げた 。
原型がわからないほどカスタムされてるので正確な機種は不明。
カスタム費用を合わせて1000万円ほどだとか。
【陸】
浅倉威もまた、爆散の戦場から離脱して身を保っていた。
文字も形も鏡合わせの反転世界。
ミラーワールドを用いた逃走は、脱走犯である浅倉にとって手慣れた常套手段だ。
文字も形も鏡合わせの反転世界。
ミラーワールドを用いた逃走は、脱走犯である浅倉にとって手慣れた常套手段だ。
常軌を逸した戦いの執念を持つ浅倉だが、その一方戦いの結果にはさほど拘らない。
倒せるのが一番気が晴れる決着だが、生死には自他含め頓着がない。極論、戦い続けられればそれで彼は満足するのだ。
状況から撤退を選ぶのも、取る場面は少ないが選択肢としてはありだ。
倒せるのが一番気が晴れる決着だが、生死には自他含め頓着がない。極論、戦い続けられればそれで彼は満足するのだ。
状況から撤退を選ぶのも、取る場面は少ないが選択肢としてはありだ。
「こんなだったか?ここは。まあ、どうでもいいが」
景色が反転している以外現実世界と差異のないミラーワールドだが、しかしこの空間は妙に暗かった。
それにどことなく息苦しい。脱出に海に飛び込んだこともある浅倉はそれが水の中にいるのに似た感覚だと気づいた。
浅倉の興味を引くものではない以上、外に出たらすぐ忘れる程度の感慨でしかなかったが。
それにどことなく息苦しい。脱出に海に飛び込んだこともある浅倉はそれが水の中にいるのに似た感覚だと気づいた。
浅倉の興味を引くものではない以上、外に出たらすぐ忘れる程度の感慨でしかなかったが。
「うるせえな。さっさと出てやるよこんなとこ」
首元からけたたましく鳴るアラームに、ようやく収まっていた苛々が再発する。
通常ミラーワールドでは人間は短い時間しか存在できず消滅する。
その時間を延長するのが仮面ライダーなのだが、主催側にとってそれは不公平であるという判断か。
この世界にいる限り、変身してようがしてまいが即刻首輪を爆破するという警告なのだろう。
誰にも殺されずつまらない死に方をするのも御免な浅倉は異質な空間に未練もなく現実世界に戻った。
通常ミラーワールドでは人間は短い時間しか存在できず消滅する。
その時間を延長するのが仮面ライダーなのだが、主催側にとってそれは不公平であるという判断か。
この世界にいる限り、変身してようがしてまいが即刻首輪を爆破するという警告なのだろう。
誰にも殺されずつまらない死に方をするのも御免な浅倉は異質な空間に未練もなく現実世界に戻った。
変身を解き、戦いの空気が冷えてくれば腹が減った。
取り出した棒状のものをスナック感覚でかじる。
鎧に刺さっていた、円城の飛ばした骨だった。ヤモリを焼き、貝を殻ごと噛み、泥すら飲む悪食にとっては適当な感触代わりでしかない。
取り出した棒状のものをスナック感覚でかじる。
鎧に刺さっていた、円城の飛ばした骨だった。ヤモリを焼き、貝を殻ごと噛み、泥すら飲む悪食にとっては適当な感触代わりでしかない。
「……不味いな」
だが噛みごたえはある。しばらくは食感を楽しめればいい。次に戦う相手を見つけるまでの気を紛らわせられるぐらいにはなるだろう。
悪夢(ドゥームズデイ)は終わらない。
胸に懐く、闘争という希望が果てぬ限り。
胸に懐く、闘争という希望が果てぬ限り。
【D-3/1日目・早朝】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[状態]:全身に火傷、全身にダメージ
[装備]:王蛇のカードデッキ 、円城の骨
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:いつも通りに闘う
1. とりあえず骨食ってから考える。
[備考]
※メタルゲラス、エビルダイバーと契約後の参戦
※清姫の霊核を食べたことによりベノスネーカーが清姫の能力の一部を得ています。
※それを受けて王蛇のスペックも向上しています。
[状態]:全身に火傷、全身にダメージ
[装備]:王蛇のカードデッキ 、円城の骨
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:いつも通りに闘う
1. とりあえず骨食ってから考える。
[備考]
※メタルゲラス、エビルダイバーと契約後の参戦
※清姫の霊核を食べたことによりベノスネーカーが清姫の能力の一部を得ています。
※それを受けて王蛇のスペックも向上しています。
※ミラーワールドにいる場合はごく短時間で首輪の警告音が鳴ります。それでも居続ければ爆発するでしょう。
※ミラーワールド自体が未知の現象が起きてるようです。
※ミラーワールド自体が未知の現象が起きてるようです。
【漆】
「―――私は、私の無力さを悔やみます」
声は懺悔にも似て、死を痛む歌に聞こえる。
「貴方が命を捨て、その結果として私は生きている。その不合理は認められません」
家々も地面も平らになった地面。
そこに人知れず立つオブジェを、なんと表現したものか。
そこに人知れず立つオブジェを、なんと表現したものか。
それは天より落ちた雷が結晶化したようであり。
地に根を張り大葉を生やす樹木、海より生えるサンゴ礁の化石のようである。
見る者にとっては天使の彫像にも見えるだろう。
地に根を張り大葉を生やす樹木、海より生えるサンゴ礁の化石のようである。
見る者にとっては天使の彫像にも見えるだろう。
ナイチンゲールは違うものを見た。
心の象徴と知恵の象徴。
人に神に与えられた最大の恩寵。
生命だ。
心の象徴と知恵の象徴。
人に神に与えられた最大の恩寵。
生命だ。
自らを火薬と爆ぜようとする円城を前に、ナイチンゲールは一も二もなく飛び込んだ。
宝具を解禁してでも自爆行為を阻止しようとし、しかし開帳より先に光が身を包み、記憶が一時断絶した。
再び気づけばこの骨の枝葉に包まれるように囲まれた状態だった。
宝具を解禁してでも自爆行為を阻止しようとし、しかし開帳より先に光が身を包み、記憶が一時断絶した。
再び気づけばこの骨の枝葉に包まれるように囲まれた状態だった。
一帯を更地に変える大破壊の中心にいながら、ナイチンゲールの身には火傷のひとつも見当たらない。
むしろ二騎の悪鬼に浴びせられた無数の傷も癒えているかのようですらあった。
むしろ二騎の悪鬼に浴びせられた無数の傷も癒えているかのようですらあった。
如何なる原理があって自分だけが無傷であるかを図ることはできない。
ただ、厳然たる事実がそこにはあるのみである。
ただ、厳然たる事実がそこにはあるのみである。
「私の命を救うために、あなたは命を捧げたというのですね」
夜は明けても、鋼鉄の熱は冷めることなく。
流れる血を止め、ひとつでも多くの命を救うため。
止まらぬ災厄を止めさせるために、看護師は進軍を再開する。
流れる血を止め、ひとつでも多くの命を救うため。
止まらぬ災厄を止めさせるために、看護師は進軍を再開する。
……その前に、ほんの少しだけ彼女は立ち止まった。
あらゆる権力に、組織に、病に、立ち止まることのない少陸軍省は瞳を閉じる。
姿勢を正し、像に向かって静かに鎮魂を祈る。
彼女自身がどれだけ否定しようとそれは、世界中の人々が思い浮かべる、白衣の天使の姿だった。
あらゆる権力に、組織に、病に、立ち止まることのない少陸軍省は瞳を閉じる。
姿勢を正し、像に向かって静かに鎮魂を祈る。
彼女自身がどれだけ否定しようとそれは、世界中の人々が思い浮かべる、白衣の天使の姿だった。
【C-3/1日目・早朝】
【フローレンス・ナイチンゲール@Fate/Grand Order】
[状態]:魔力消費(大)
[道具]:基本支給品一式、魔術髄液@Fate/Grand Order(9/10)、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:救う。殺してでも。
0:……。
1:目の前の病に侵された者たちを治療する。
2:傷病者を探し、救助する。今は拡声器の少年の生死を確認したい。
3:童磨は次に会ったなら必ず治療する。
4:『鬼化』を振り撒く元凶が、もし居るのなら───
[備考]
※参戦時期はカルデア召喚後です。
※宝具使用時の魔力消費量が大きく増加しています。
※円城周兎からナノロボについて簡単な説明を受けました。
※沖田総司をカルデアに召喚された沖田総司であると認識しています。
※情報交換により前園、権三の情報を得ました。
※ナノロボの暴走による爆発に巻き込まれましたが、現時点では影響は不明です。
[状態]:魔力消費(大)
[道具]:基本支給品一式、魔術髄液@Fate/Grand Order(9/10)、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:救う。殺してでも。
0:……。
1:目の前の病に侵された者たちを治療する。
2:傷病者を探し、救助する。今は拡声器の少年の生死を確認したい。
3:童磨は次に会ったなら必ず治療する。
4:『鬼化』を振り撒く元凶が、もし居るのなら───
[備考]
※参戦時期はカルデア召喚後です。
※宝具使用時の魔力消費量が大きく増加しています。
※円城周兎からナノロボについて簡単な説明を受けました。
※沖田総司をカルデアに召喚された沖田総司であると認識しています。
※情報交換により前園、権三の情報を得ました。
※ナノロボの暴走による爆発に巻き込まれましたが、現時点では影響は不明です。
【魔術髄液@Fate/Grand Order】
ナイチンゲールに支給。
ただの人間を魔術師に仕立て上げる霊薬。
脊髄に打ち込むことで僅かな刻の間、疑似的な魔術回路を形成する。
十本セットで支給された。再臨もスキル上げもできない微妙な量。
ナイチンゲールに支給。
ただの人間を魔術師に仕立て上げる霊薬。
脊髄に打ち込むことで僅かな刻の間、疑似的な魔術回路を形成する。
十本セットで支給された。再臨もスキル上げもできない微妙な量。
【骨刀(無銘)@Fate/Grand Order】
円城周兎に支給。
茨木童子の武器。鬼の骨から切り出した業物の刀。
戦闘の爆発に巻き込まれ紛失してるでしょう。にゃんとぉ!
円城周兎に支給。
茨木童子の武器。鬼の骨から切り出した業物の刀。
戦闘の爆発に巻き込まれ紛失してるでしょう。にゃんとぉ!
※C-3の更地になった一帯にハートとリンゴの生命の木@ナノハザードに似たオブジェが立っています。
ナノロボでできているのか、円城の肉体なのか、会場の影響はあるのか、全ては不明です。
ナノロボでできているのか、円城の肉体なのか、会場の影響はあるのか、全ては不明です。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| ARMOUR ZONE | 円城周兎 | Eliminated |
| フローレンス・ナイチンゲール | チカラの限り生きていくのだ | |
| 浅倉威 | 終わりのない戦い | |
| 源頼光 | FILE04「辻斬り出没!首狩り武者」 |