Alive A life ◆7ediZa7/Ag
──結局、また同じ、なのかな。
炎の熱と、身を貫く痛み、どこか遠くに聞こえる爆発音。
あらゆる感覚が曖昧で、どこかぼんやりとしていて、だが一つはっきりとしていることがあった。
あらゆる感覚が曖昧で、どこかぼんやりとしていて、だが一つはっきりとしていることがあった。
それは自分が今、死のうとしているということ。
わかっている。
これは確実に“アレ”であるということ。
決して助からない、一線を超えた致命傷を受けてしまったらしい。
これは確実に“アレ”であるということ。
決して助からない、一線を超えた致命傷を受けてしまったらしい。
彼が、城戸真司がそう確信できるのは──他でもない経験者であるからだ。
──結局、俺はまた……。
真司は少なくとも一度は死んだ人間であった。
ライダーバトルに巻き込まれて、数奇な運命を辿りつつも、彼は最後にはその身を散らした。
最後の最後に──自分の願いと欲望を自覚して、そしてそれゆえに誰かを守って、死んだのだと思う。
ライダーバトルに巻き込まれて、数奇な運命を辿りつつも、彼は最後にはその身を散らした。
最後の最後に──自分の願いと欲望を自覚して、そしてそれゆえに誰かを守って、死んだのだと思う。
真司は思う。
結局、何故自分が、蓮が、そして浅倉がこんな島に呼ばれたのかはわからない。
わからないまま蓮とまた出会い、そして同じように死のうとしている。
そのことを仕方ないと受け入れたくはない。
やっと会えて、やっと本当の意味で二人で戦えるようになって、その矢先にこれじゃあやりきれない。
当然そう思ってはいる。
結局、何故自分が、蓮が、そして浅倉がこんな島に呼ばれたのかはわからない。
わからないまま蓮とまた出会い、そして同じように死のうとしている。
そのことを仕方ないと受け入れたくはない。
やっと会えて、やっと本当の意味で二人で戦えるようになって、その矢先にこれじゃあやりきれない。
当然そう思ってはいる。
だが──
「……蓮。俺さ、やっぱり戦いを止めたいって、ここでも思ってたけど」
──一つ、以前の“死”と明確な相違点を挙げるとするならば、
「それと同じくらい、俺は、お前にも、生きていて欲しかったんだなんって」
それは、欲望であった。
城戸真司がこの戦いに参加するにあたって、新しく胸に秘めていたもの。
ただ彼がそうしたい、そうであってほしいと願っていたもの。
それが正義でないと知ったからこそ、この二度目の死は、真司にとって別の意味を持つのだ。
城戸真司がこの戦いに参加するにあたって、新しく胸に秘めていたもの。
ただ彼がそうしたい、そうであってほしいと願っていたもの。
それが正義でないと知ったからこそ、この二度目の死は、真司にとって別の意味を持つのだ。
「やっぱ、俺たちの戦いってさ──」
きっとこの言葉は誰にも届かないだろう。
そう想いながら、真司は最後の言葉を口にした。
真司が、蓮が、もしかすると浅倉も、結局同じような道を辿ったのかもしれない。
それでも、誰にも届かないのだとしても、言わなければならないことだった。
そう想いながら、真司は最後の言葉を口にした。
真司が、蓮が、もしかすると浅倉も、結局同じような道を辿ったのかもしれない。
それでも、誰にも届かないのだとしても、言わなければならないことだった。
◇
時計の針は、未来にしか進まない。
ぐるっと一周して元に戻ったように見えても、未来に進んでるんだ。
ぐるっと一周して元に戻ったように見えても、未来に進んでるんだ。
◇
──整えろ。
整えろ、整えろ。呼吸を整えろ。
全集中の常中。いま持てる全ての力で集中し、呼吸の精度を整えるんだ。
全集中の常中。いま持てる全ての力で集中し、呼吸の精度を整えるんだ。
視界が真っ暗になり、全身に焼けるような痛みが走る中、炭治郎は思い続ける。
自然と思い浮かぶのはあの列車での闘い──煉獄との最初で最後の共闘だ。
自然と思い浮かぶのはあの列車での闘い──煉獄との最初で最後の共闘だ。
あの時も自分は倒れ、動こうと必死に呼吸を整えていた。
そこに煉獄が現れ助言をしてくれた。彼だって闘いの直後だろうに、そんな様子は一切見せずにこう言った。
そこに煉獄が現れ助言をしてくれた。彼だって闘いの直後だろうに、そんな様子は一切見せずにこう言った。
──集中しろ、と。
そう、集中だ。
身体に走る破れた血管を見つけろ。そしてそれを止血しろ。
それができるだけの鍛錬はやってきた。
だからここで必要なのは祈ることじゃなく、集中すること、自分の力を出し切ること。
身体に走る破れた血管を見つけろ。そしてそれを止血しろ。
それができるだけの鍛錬はやってきた。
だからここで必要なのは祈ることじゃなく、集中すること、自分の力を出し切ること。
ハ、ハ、ハ、と声が漏れた。同時に身体のどこがで異音がする。同時に猛烈な痛みが走り意識が飛びそうになる。
が、その異音を聞いて炭治郎は安堵していた。
ああ、止血できた。これでまた動けるようになる。
が、その異音を聞いて炭治郎は安堵していた。
ああ、止血できた。これでまた動けるようになる。
──呼吸を極めれば様々なことができるようになる。何でもできるわけではないが。
──昨日の自分より確実に強い自分になれる。
──昨日の自分より確実に強い自分になれる。
煉獄の言葉。
その声はもう、随分と遠い日のように思える。
だが、はっきりと思い出せる。
彼にそんな言葉をもらった以上、自分はいま、あの時よりも強くなっていなくてはならない。
その声はもう、随分と遠い日のように思える。
だが、はっきりと思い出せる。
彼にそんな言葉をもらった以上、自分はいま、あの時よりも強くなっていなくてはならない。
その意思が、炭治郎をつなぎとめた。
闇の中に落ちてもおかしくなかった彼は、再び目を開けた。
闇の中に落ちてもおかしくなかった彼は、再び目を開けた。
「────」
そして、気がついた。
その身体を庇うように覆う、青年の存在を。
彼の背中には無数の瓦礫が突き刺さっていた。おびただしい血が流れ、その頭は力なく垂れていた。
その身体を庇うように覆う、青年の存在を。
彼の背中には無数の瓦礫が突き刺さっていた。おびただしい血が流れ、その頭は力なく垂れていた。
「──城戸さん?」
答えはなかった。
だがそれだけで炭治郎は悟った。
自分が、今度は一体誰に守られたのかを。
だがそれだけで炭治郎は悟った。
自分が、今度は一体誰に守られたのかを。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎 死亡】
◇
『いや、僕たち全然触れてなかったけど、D-7って禁止エリアだよね』『しかも一時間後』
『悠長に話してたら普通に爆死でドン!』『それで死ぬのは流石にどうかと思うな』
『そんなもん冗談じゃなくシュールギャグって奴だ』
『とはいえそんな適当な死に方したら逆に再登場フラグ立ちそうだよね』
『悠長に話してたら普通に爆死でドン!』『それで死ぬのは流石にどうかと思うな』
『そんなもん冗談じゃなくシュールギャグって奴だ』
『とはいえそんな適当な死に方したら逆に再登場フラグ立ちそうだよね』
隣で球磨川がまた訳のわからないことを言っているが、明はもはや反応する気にもなれなかった。
『それで僕らは必然的に移動することになった訳だけで』
『そうなると書かれてる行動指針的に』『南に行くことになるんだけど』
「な、なんだこれって……」
『その結果がこんな作画コストがヤベエ場面だとはね』
『そうなると書かれてる行動指針的に』『南に行くことになるんだけど』
「な、なんだこれって……」
『その結果がこんな作画コストがヤベエ場面だとはね』
風太郎も今回ばかりは球磨川に気を配る気にはなれないようだった。
禁止エリアを避けるためにも南に向かった三人が目にしたのは──崩壊するPENTAGONだった。
禁止エリアを避けるためにも南に向かった三人が目にしたのは──崩壊するPENTAGONだった。
PENTAGONというのは高層マンションであり、見上げるほど巨大だということは聞いていた。
それが爆破されていた。連鎖的に起こる爆弾がガラスを突き破り、地を揺るがし、豪風を巻き起こしながら倒れていく。
それが爆破されていた。連鎖的に起こる爆弾がガラスを突き破り、地を揺るがし、豪風を巻き起こしながら倒れていく。
『文章媒体でよかった』『週刊少年ジャンプでこんなんやったらアシスタントに刺されそうだよね』
『爆破される高層マンション! とか書くのは楽だけど、描くのは地獄だ』
『見るのも地獄だけどね』
『あっ、でも、もうちょっと早くついてたら今頃天国って奴か』
『爆破される高層マンション! とか書くのは楽だけど、描くのは地獄だ』
『見るのも地獄だけどね』
『あっ、でも、もうちょっと早くついてたら今頃天国って奴か』
ただ、最後の言葉にだけは明も内心で同意していた。
間近まで行っていたら間違いなく瓦礫に押しつぶされていただろう。
少しでもタイミングがズレていたら有り得た話だった。そういう意味じゃ運が良いな、と明は冷静に判断する。
間近まで行っていたら間違いなく瓦礫に押しつぶされていただろう。
少しでもタイミングがズレていたら有り得た話だった。そういう意味じゃ運が良いな、と明は冷静に判断する。
「とりあえず上杉と球磨川、俺から離れないでくれよ」
明は背中に気を配りつつ、カチャ、とその手に握った日本刀を抜いた。
日本刀。本土に来てからは流石に触れる機会は減ったが、彼岸島にいた頃は最も手にしていた武器といってもいい。
手に馴染む重さを感じながら、明は目の前に迫ってきた瓦礫を、シャッ、と斬り裂いた。
日本刀。本土に来てからは流石に触れる機会は減ったが、彼岸島にいた頃は最も手にしていた武器といってもいい。
手に馴染む重さを感じながら、明は目の前に迫ってきた瓦礫を、シャッ、と斬り裂いた。
「……は?」
「あれだけの崩落だ。離れていても余波が来る。頭に気をつけろ」
「あれだけの崩落だ。離れていても余波が来る。頭に気をつけろ」
言いながら明は、爆風により飛んで来たコンクリート片や石を斬っていく。
『……おいおい、明ちゃん。何サクッと一行ですごいことやってるんだ』
『せめて三行ぐらい使って描写しなよ』
『僕らみたいなシュールギャグ漫画出身はともかく』『上杉くんにはちょっと刺激が強すぎるよ』
『せめて三行ぐらい使って描写しなよ』
『僕らみたいなシュールギャグ漫画出身はともかく』『上杉くんにはちょっと刺激が強すぎるよ』
球磨川の言葉を無視して、明は黙々と降って来る瓦礫を斬っていく。
ここから下手に動かなければこれ以上崩落に巻き込まれることはないだろう。
だが気になる点が一つあった。
ここから下手に動かなければこれ以上崩落に巻き込まれることはないだろう。
だが気になる点が一つあった。
「この爆発……狙って仕掛けた奴がいるな」
あれだけ巨大なビルだ。闇雲に爆弾を仕掛けたところで、こう派手に崩落することはない。
爆破の仕方からしても、明らかに狙って爆弾を設置し、タイミングを見計らって爆破を敢行した者がいる。
となれば──おそらくまだ近くにこの爆弾魔がいる。
爆破の仕方からしても、明らかに狙って爆弾を設置し、タイミングを見計らって爆破を敢行した者がいる。
となれば──おそらくまだ近くにこの爆弾魔がいる。
「……え?」
「こんな馬鹿げたゲームに乗ってる奴がいるってことだ」
「こんな馬鹿げたゲームに乗ってる奴がいるってことだ」
そろそろ土煙が晴れて来たか、そう判断した明は目を凝らす。
巨大なビルの倒壊により、連鎖的に破壊が巻き起こった街の惨状は元の街の原型が残らないほどだった。
アスファルトは裂け、鉄骨はひしゃげ、砕けたコンクリートが散乱する。
それは明にとってはある意味で見慣れた光景ではあった。
彼岸島で雅を取り逃がし、本土に渡った先に待っていたのは、ここと同じような地獄だった。
巨大なビルの倒壊により、連鎖的に破壊が巻き起こった街の惨状は元の街の原型が残らないほどだった。
アスファルトは裂け、鉄骨はひしゃげ、砕けたコンクリートが散乱する。
それは明にとってはある意味で見慣れた光景ではあった。
彼岸島で雅を取り逃がし、本土に渡った先に待っていたのは、ここと同じような地獄だった。
「──しまったっ」
その最中、明は苦痛の声を上げた。
風に煽られ舞い上がって来た小石が頰をかすめたらしい。触れると血が出ていた。
ここは壊れきった街ではない。現在進行で壊れつつある街なのだ。
ただ歩くだけでも危険がある──と考えているとき、
風に煽られ舞い上がって来た小石が頰をかすめたらしい。触れると血が出ていた。
ここは壊れきった街ではない。現在進行で壊れつつある街なのだ。
ただ歩くだけでも危険がある──と考えているとき、
『まぁ近くになんか敵がいるってのはわかったけど』
『それでどうすんの?』『目的だったPENTAGONはぶっ倒れちゃったけど』
『ラブコメしようにもヒロインいないし』『とりあえず雑にバトルで展開を繋ぐかい?』
『それでどうすんの?』『目的だったPENTAGONはぶっ倒れちゃったけど』
『ラブコメしようにもヒロインいないし』『とりあえず雑にバトルで展開を繋ぐかい?』
ぐい、と唐突にやってきた球磨川の手が明の頰に触れ、反射的に距離を取ろうとして──気が付いた。
血が止まっている。
先ほど不注意でついてしまった傷が完全になくなっていた。
血が止まっている。
先ほど不注意でついてしまった傷が完全になくなっていた。
「おい、待て球磨川。今お前何をした」
『えー何のことかなぁ?』『一行で石を切れるんだから、描写なしで怪我治ってたって問題ないだろう』
『えー何のことかなぁ?』『一行で石を切れるんだから、描写なしで怪我治ってたって問題ないだろう』
はぐらかすように言う球磨川だったが、そこに敵意はないと判断した明は首を降る。
「──ハ、まぁいいさ。今更、そんな手品で驚いてられないか」
『うん、そうだね』『僕のことは手品先輩と呼ぶといいさ』『せっかく週刊ヤングマガジンと週刊少年ジャンプと奇跡のコラボだ』
『うん、そうだね』『僕のことは手品先輩と呼ぶといいさ』『せっかく週刊ヤングマガジンと週刊少年ジャンプと奇跡のコラボだ』
明は無視して周りを窺った。
この状況、下手に動くことも危険だが、それ以上に爆弾魔が近くにいる中、突っ立っている訳にもいかなかった。
どうにか街から脱出していきたいが──と考える中、
この状況、下手に動くことも危険だが、それ以上に爆弾魔が近くにいる中、突っ立っている訳にもいかなかった。
どうにか街から脱出していきたいが──と考える中、
「あ、アレ──」
と、そこで声を上げたのは風太郎だった。
彼が指差した先に、奇妙な人型がいた。
いたというか、歩いていた。
それは人の輪郭だけはあるが、あるのは輪郭だけで、その中はぼんやりとした黒が蠢いているような造形であり、端的に言えば異形である。
彼が指差した先に、奇妙な人型がいた。
いたというか、歩いていた。
それは人の輪郭だけはあるが、あるのは輪郭だけで、その中はぼんやりとした黒が蠢いているような造形であり、端的に言えば異形である。
「邪鬼やアマルガムなんかじゃないな……」
明の脳裏に咄嗟にいくつかの異形の可能性が思い浮かぶが、どうにも様子は違う。
おそらくこの島で最初に遭遇したクラゲのバケモノのような、未知の異形。
おそらくこの島で最初に遭遇したクラゲのバケモノのような、未知の異形。
そう素早く捉え、明は警戒の態勢を取る。
が、当の異形の方は明たちにまったく気づく様子もなく、またどこかに消えていった。
何かを手にしているようだったが、遠目にはそれが何かまではわからなかった。
が、当の異形の方は明たちにまったく気づく様子もなく、またどこかに消えていった。
何かを手にしているようだったが、遠目にはそれが何かまではわからなかった。
「宮本さん、どうします?」
風太郎が困惑を滲ませた声で尋ねてきたが、首を振る。
だが、行動はすでに固まっていた。
だが、行動はすでに固まっていた。
「──追おう」
「え? アレをですか?」
「ああ、事情はわからないが、あんなバケモノが街を闊歩しているんだ。
この街全体に爆弾が仕掛けられている可能性もある。下手に逃げることの方が危険だ」
「え? アレをですか?」
「ああ、事情はわからないが、あんなバケモノが街を闊歩しているんだ。
この街全体に爆弾が仕掛けられている可能性もある。下手に逃げることの方が危険だ」
元を断つ。その意を持って、明は歩き出した。
「ま、待ってくださいよ」と風太郎が後を追って来る。
「ま、待ってくださいよ」と風太郎が後を追って来る。
「そ、そんな、ここでまた、その、闘うってのか? 正気じゃ──」
「何かあった時のために頭だけは隠しておけ。その辺に落ちてる鉄板とかでも気休めぐらいにはなる」
「何かあった時のために頭だけは隠しておけ。その辺に落ちてる鉄板とかでも気休めぐらいにはなる」
明は爆破の余波で道に落ちていたフライパンを拾い、ほら、とそのまま風太郎に渡した。
「い、いやこんなんじゃ何も意味が……」
『大丈夫だぜ、上杉くん』『僕がついている』
『なんといっても上杉くんと僕は連載開始当初からずっと一緒だった相棒じゃないか』
『死亡表記が出るときまでずっと一緒だって約束しただろ?』
『大丈夫だぜ、上杉くん』『僕がついている』
『なんといっても上杉くんと僕は連載開始当初からずっと一緒だった相棒じゃないか』
『死亡表記が出るときまでずっと一緒だって約束しただろ?』
当然のようにいた球磨川は、さして怖がる様子もなく風太郎に絡んでいた。
『おっと何だい? その失礼な眼差しは』『僕みたいな過負荷がいた方が不安かい?』『そりゃないぜ、フー太』
「何時から俺とお前はそんな気易い仲になったんだ……」
「何時から俺とお前はそんな気易い仲になったんだ……」
風太郎が頭を押さえながら言った。
ものすごく好意的に解釈するならば、過度の緊張を解きほぐす球磨川なりの話術なのかもしれないが、おそらく違うだろう。
明は内心で少し呆れつつ、異形が消えていった方へと歩いていった。
再度の爆発はなかったが、ところどころ崩れ落ちる建物があり、ある程度気をつけて歩く必要があった。
ものすごく好意的に解釈するならば、過度の緊張を解きほぐす球磨川なりの話術なのかもしれないが、おそらく違うだろう。
明は内心で少し呆れつつ、異形が消えていった方へと歩いていった。
再度の爆発はなかったが、ところどころ崩れ落ちる建物があり、ある程度気をつけて歩く必要があった。
そしてその先に──
「うん? 別の人も来てくれてたのかい?」
ハンチング帽を被った初老の男がいた。
◇
男、佐藤の名を当然ながら明たちは知らない。
今しがた“セレモニー”での戦闘を終え、佐藤が装備を整え直したところに彼らはちょうどやってきた。
IBMはミラーワールドを経由して動いていたため、それを追って彼に遭遇するのは本来非常に低い確率だった。
今しがた“セレモニー”での戦闘を終え、佐藤が装備を整え直したところに彼らはちょうどやってきた。
IBMはミラーワールドを経由して動いていたため、それを追って彼に遭遇するのは本来非常に低い確率だった。
IBMを見失い、互いに遭遇することなくすれ違う、というのが、もっともあり得た筈の可能性だった。
だが、こういった局面で鬼札/ジョーカーを引いてしまうのが、過負荷たる球磨川であり、宮本明という人間だった。
だが、こういった局面で鬼札/ジョーカーを引いてしまうのが、過負荷たる球磨川であり、宮本明という人間だった。
「やぁ、君たちも“セレモニー”に来てくれていたのかな?」
そうして手を振る佐藤は、いかにも好々爺という風情であった。
今はIBMも消えているため、明たちが見た異形と佐藤を結びつける直接的なものはなかった。
だが──
今はIBMも消えているため、明たちが見た異形と佐藤を結びつける直接的なものはなかった。
だが──
『おっとここでボスキャラ登場』『先制パンチだ!』『死ね!』
「おお! 球磨川!お前何やってんだ!」
「おお! 球磨川!お前何やってんだ!」
球磨川は一切の探りを入れることなく、何時の間にかその手に握っていた螺子を思いっきり投げつけていた。
そして添えられる風太郎の叫び。巨大な螺子が突き刺さる佐藤の身体。はらりと落ちるハンチング帽。
そして添えられる風太郎の叫び。巨大な螺子が突き刺さる佐藤の身体。はらりと落ちるハンチング帽。
『ええ……上杉くん。何を怒ってるんだい?』
『ボスキャラ相手に僕みたいなのが敵う訳ないだろう』『ならせめてとりあえず不意打ちするのは仕方がないじゃない』
『僕は悪くない』
「何馬鹿なこと言ってんだ! まだ相手がどういう人かもわかってないのに──」
『そして追撃だ!』『どうせ形態変化持ってるんだろ!このボスジジイ!』
「無視して追加で攻撃するな!」
『ボスキャラ相手に僕みたいなのが敵う訳ないだろう』『ならせめてとりあえず不意打ちするのは仕方がないじゃない』
『僕は悪くない』
「何馬鹿なこと言ってんだ! まだ相手がどういう人かもわかってないのに──」
『そして追撃だ!』『どうせ形態変化持ってるんだろ!このボスジジイ!』
「無視して追加で攻撃するな!」
風太郎が球磨川の胸ぐらを掴みながら迫っているが、明はその間、何も口を挟まなかった。
「…………」
その理由はただ一つ。
『まぁまぁ冷静に考えて見なよ、上杉くん』
『こんな滅茶苦茶な街の中心で』『無傷のおじさんがニッコニコで笑ってたら』
『こんな滅茶苦茶な街の中心で』『無傷のおじさんがニッコニコで笑ってたら』
ニッ、とそこで球磨川は歯を見せて笑って、
『──どう考えてもソイツがボスってもんだぜ』
明もほぼ同じ考えに至っていたからだった。
無論、球磨川の論は詭弁であるが、しかし直感的に佐藤の危険性を感じ取っていた。
無論、球磨川の論は詭弁であるが、しかし直感的に佐藤の危険性を感じ取っていた。
故に──次の瞬間の砲撃にも明は対応することができていた。
再び街に轟く爆発音。
「伏せろ!」と明は叫びをあげ、爆発をしゃがんでやり過ごした。
再び街に轟く爆発音。
「伏せろ!」と明は叫びをあげ、爆発をしゃがんでやり過ごした。
「うーん、ちょっと外したなぁ」
ハンチング帽を被り直しながら佐藤はそうぼやく。
突き刺さっていた螺子がごみのようにこぼれ落ちる中、その横で巨大な影が立っていた。
突き刺さっていた螺子がごみのようにこぼれ落ちる中、その横で巨大な影が立っていた。
「“君”の使い方ももう少し慣れないとね」
ミラーモンスター、マグナ・ギガ。
現在、ゾルダを操る佐藤に付き従うミラーモンスターであり、それ自体が独自の意思を持つ。
佐藤が変身していない状態であっても、彼との関係が良好なうちは付き従ってくれるだろう。
現在、ゾルダを操る佐藤に付き従うミラーモンスターであり、それ自体が独自の意思を持つ。
佐藤が変身していない状態であっても、彼との関係が良好なうちは付き従ってくれるだろう。
無論、明はそんなことは知らない。
だが肩部から硝煙をあげる異形のバッファローを見て、それが明確に敵であることを判断する。
その瞬間、明は地を蹴り一気に駆けていった。
だが肩部から硝煙をあげる異形のバッファローを見て、それが明確に敵であることを判断する。
その瞬間、明は地を蹴り一気に駆けていった。
キンッと金属音が響き渡った。
「おお、君もまたサムライかい? 流行ってるのかな、この島で」
明の手により猛然と振り払われた日本刀を、佐藤もまた手にしていた刀で受け止めていた。
──一目でわかる、名刀だな。
押し合いつつ明は相手の刀の質を看破する。
とはいえこちらも支給された日本刀は相当な代物だった。
そして少なくとも剣の腕であればこちらが優っている。
とはいえこちらも支給された日本刀は相当な代物だった。
そして少なくとも剣の腕であればこちらが優っている。
ジャッ、と砂を踏む音がして、次の瞬間には明は佐藤の右腕を斬り落としていた。
その間に一秒もかからない。普通の相手であれば、これで終わりだが。
その間に一秒もかからない。普通の相手であれば、これで終わりだが。
明の鋭敏な感覚が、何かの気配を捉える。
それを察知した明は、トッ、と後方へと飛びのく。
瞬間、そこにはきらめく装甲を身に纏った“もう一人”が現れ、砲撃をウチはなっていた。
揺れる視界。あと少しでもそこに残っていたのなら、明の身体は今頃木っ端微塵になっていただろう。
それを察知した明は、トッ、と後方へと飛びのく。
瞬間、そこにはきらめく装甲を身に纏った“もう一人”が現れ、砲撃をウチはなっていた。
揺れる視界。あと少しでもそこに残っていたのなら、明の身体は今頃木っ端微塵になっていただろう。
「やるねぇ、さっきのサムライもだけど、剣で対抗しようとしても普通に斬られちゃうなぁ」
やっぱり本職は違うなぁ、と朗らかにぼやきながら、佐藤は残った手で落ちた日本刀を拾い上げている。
その後ろには、あのバッファロー型の異形と、黒い粒子を漂わせる装甲服の何かが立っていた。
その後ろには、あのバッファロー型の異形と、黒い粒子を漂わせる装甲服の何かが立っていた。
ハッ、と明は不敵に笑ってみせる。
あのバッファロー以外に、この男が少なくとももう一体バケモノをつき従えていることはわかっていた。
漂う粒子を見るに、おそらくあの装甲服が、街中で見かけた黒い異形だ。
そしてその二体をつき従えるこの男は、さながら邪鬼に対する邪鬼使いのような立ち位置なのだろう。
あのバッファロー以外に、この男が少なくとももう一体バケモノをつき従えていることはわかっていた。
漂う粒子を見るに、おそらくあの装甲服が、街中で見かけた黒い異形だ。
そしてその二体をつき従えるこの男は、さながら邪鬼に対する邪鬼使いのような立ち位置なのだろう。
「なら、アンタを倒せば止まるはずだな……」
明はもはやこの男が一連の爆破を引き起こしたことを疑っていなかった。
腕を斬られて何ら取り乱さないその様を見れば──目の前の男が吸血鬼と同類の存在であると察するのは容易だった
腕を斬られて何ら取り乱さないその様を見れば──目の前の男が吸血鬼と同類の存在であると察するのは容易だった
明は日本刀を握る。
後ろのお供二体を引き剥がし、その隙に佐藤を討つ。
そう思い、さらに一歩出ようとして──
後ろのお供二体を引き剥がし、その隙に佐藤を討つ。
そう思い、さらに一歩出ようとして──
『横から失礼』『何真面目なバトル展開しようとしてるんだい』
『全員轢いてしまえばいいだろう』
『全員轢いてしまえばいいだろう』
──横殴りに突っ込んできた巨大なトラックが、佐藤を含めた三体の異形に一気に追突した。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
遅れて響き渡る風太郎の叫び声。どうやら運転しているのは彼らしかった。
そしてさらに追突したトラックは爆発する。
炎上する車体の中から、よろり、と二人の影が立ち上がって着た。
そしてさらに追突したトラックは爆発する。
炎上する車体の中から、よろり、と二人の影が立ち上がって着た。
楽しげに笑って出てくる球磨川に対して、明は一瞬少し笑ってしまった。
デイパックからサイズに合わないものが出てくるのは知っていたが、なるほどこんな手があるとは。
先ほど球磨川が見せた“手品”ありきの攻撃という訳だった。唆されて敢行させられたらしい風太郎には同情するが。
デイパックからサイズに合わないものが出てくるのは知っていたが、なるほどこんな手があるとは。
先ほど球磨川が見せた“手品”ありきの攻撃という訳だった。唆されて敢行させられたらしい風太郎には同情するが。
『でかした!って言ってあげるといいぜ』『やったか!?とかは間違いなく言っちゃダメだよ』
『っていうか多分まだ──』
『っていうか多分まだ──』
と、そこでさらにタァン、と短い銃声が走った。
そして球磨川は胸から血を流しながら『あ、やっぱり?』と漏らしながら倒れていく。
そして球磨川は胸から血を流しながら『あ、やっぱり?』と漏らしながら倒れていく。
炎の中再び這い上がってきた佐藤は倒れる球磨川の首根っこを掴み上げながら、笑っていた。
「なるほど、ちょっと面白いね、君の身体」
『一目見た瞬間にわかったぜ、ご同業』
『一目見た瞬間にわかったぜ、ご同業』
球磨川は胸に手を当てたかと思うと、次の瞬間にはその傷は消え去っていた。
そして同様に、車で衝突されたというのに佐藤にも目立った外傷は存在していない。
そして、斬った筈の腕まで再生していた。そんな佐藤に対して、球磨川の声が響き渡る。
そして同様に、車で衝突されたというのに佐藤にも目立った外傷は存在していない。
そして、斬った筈の腕まで再生していた。そんな佐藤に対して、球磨川の声が響き渡る。
『同業だ』『でも同型じゃない』『同類ですらない』『同情するほどに』
『僕らの仲間になるにはね』『今をときめく思春期の痛さがないとダメなんだ』
「うん、似て非なる再生みたいだ。興味が出てきた」
『僕らの仲間になるにはね』『今をときめく思春期の痛さがないとダメなんだ』
「うん、似て非なる再生みたいだ。興味が出てきた」
次の瞬間、再び球磨川の身体に銃弾が炸裂していた。
「球磨川ァーーー!」
目まぐるしく状況が動く中、風太郎の叫び声が炎上する街に響き渡った。
明は再び日本刀とともに佐藤へと迫る。
先ほどどこかからか弾丸が飛んできていたが、銃弾など狙い澄ませる状況でなければ早々当たるものではない。
それは向こうも知っているのか、すぐさま球磨川を放り投げ、佐藤は再び日本刀を抜いていた。
明は再び日本刀とともに佐藤へと迫る。
先ほどどこかからか弾丸が飛んできていたが、銃弾など狙い澄ませる状況でなければ早々当たるものではない。
それは向こうも知っているのか、すぐさま球磨川を放り投げ、佐藤は再び日本刀を抜いていた。
「上杉! お前は下がってろ!」
佐藤の後ろで球磨川が倒れていることを除けば先ほどと同じ構図。
やはり刀では明が優っているのか、あっさりと佐藤の腕から日本刀を弾き飛ばすことに成功する。
やはり刀では明が優っているのか、あっさりと佐藤の腕から日本刀を弾き飛ばすことに成功する。
「くっ──やっぱそっちも湧いてくるか」
だが──先と同じように佐藤の後ろで変化があった。
マグナ・ギガと、装甲服の異形がそれぞれがその身を結んでいた。
車での派手な衝突を受けようとも、まったくの無傷らしかった。
明は歯がゆい想いを抱えつつも、後ろへと下がる。十字砲火に晒されれば逃げ道はない。
マグナ・ギガと、装甲服の異形がそれぞれがその身を結んでいた。
車での派手な衝突を受けようとも、まったくの無傷らしかった。
明は歯がゆい想いを抱えつつも、後ろへと下がる。十字砲火に晒されれば逃げ道はない。
「とりあえずこの彼だけは“実験”用に確保しておこうかな」
言いながら佐藤の背中で、装甲服が球磨川へ弾丸を撃ち放っていた。
タンタンタン、とリズムを刻むように一定の周期で球磨川を撃ち続けている。
球磨川に再生能力があるのなら常に攻撃すればいい、という心算らしかった。
タンタンタン、とリズムを刻むように一定の周期で球磨川を撃ち続けている。
球磨川に再生能力があるのなら常に攻撃すればいい、という心算らしかった。
「くっ、球磨川」
下がっていた風太郎が目を覆うように言った。
明は彼の前に立ちつつ、この布陣をどう崩すべきか思考を回転させていた。
明は彼の前に立ちつつ、この布陣をどう崩すべきか思考を回転させていた。
──どうする、あの爺さんには近づければ勝てるが、お供まで手が回らない。
だがかといって離れれば完全に向こうの間合いとなってしまう。
銃撃や爆弾といった装備がある以上、こちらから打つ手がなくなってしまうのだ。
銃撃や爆弾といった装備がある以上、こちらから打つ手がなくなってしまうのだ。
『おいおい、明ちゃんに上杉くん。何深刻な顔をしてるんだ』
そんな最中、声をあげたのは球磨川だった。
口元から血を流し、定期的に弾丸を打ち込まれ、そこに至っても彼はその饒舌な口を閉じようとしていなかった。
口元から血を流し、定期的に弾丸を打ち込まれ、そこに至っても彼はその饒舌な口を閉じようとしていなかった。
一方佐藤は球磨川の言葉には何も興味がないのか、弾き落とされた日本刀を拾おうとしている。
その間にも、球磨川の言葉は続いていた。
その間にも、球磨川の言葉は続いていた。
『週刊少年ジャンプを読まなかったのかい?』
『おっと、週刊ヤングマガジンの方がここは適切か』『コラボだってこと忘れてた』
『おっと、週刊ヤングマガジンの方がここは適切か』『コラボだってこと忘れてた』
球磨川は言った。
『ジャンプ読者の僕はもちろん知ってるんだぜ』『週刊ヤングマガジンじゃわからないけど』
『週刊少年ジャンプじゃ、こんな時には──』
『週刊少年ジャンプじゃ、こんな時には──』
その瞬間、駆け抜ける小柄な影があった。
燃え盛る街の中、彼は迷わずその戦場に飛び込み、そして──それを奪い取っていった。
燃え盛る街の中、彼は迷わずその戦場に飛び込み、そして──それを奪い取っていった。
『──颯爽と助けがやってくるんだぜ』
現れたのは、少年である。
彼は一見して傷だらけであった。
衣服は焦げ、露出した肌からは生々しい傷が垣間見えた。
だがその眼差しには揺るぎない意思がり、顔を上げ、毅然と刀を抜いていた。
衣服は焦げ、露出した肌からは生々しい傷が垣間見えた。
だがその眼差しには揺るぎない意思がり、顔を上げ、毅然と刀を抜いていた。
『舐めんなよ、週刊少年ジャンプ』
少年が握りしめるのは、佐藤から奪い返した刀であった。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| ボスバトル | 佐藤 | Alive A life neo |
| 竈門炭治郎 | ||
| 城戸真司 | Eliminated | |
| 別問題なんだよ | 宮本明 | Alive A life neo |
| 球磨川禊 | ||
| 上杉風太郎 |