悪鬼滅殺(1)◆ZbV3TMNKJw
「がああああああ!!」
ブンッ。
明の叫びと共に袈裟懸けに振るわれる刀を、雅は華麗に躱す。
「ハハハハハ、全く当たらないじゃないか明!」
「ほざけ!」
「ほざけ!」
常人ならば反応もできぬ速度と受けきれぬ力強さで振るわれる太刀も、吸血鬼の王からすればさほど脅威ではない。
明が剣を振るい、雅が躱すという膠着状態は崩れない。
そして、どちらの疲労が溜まりやすいかと問われればそれは一目瞭然だ。
明が剣を振るい、雅が躱すという膠着状態は崩れない。
そして、どちらの疲労が溜まりやすいかと問われればそれは一目瞭然だ。
「うおおおおおお!」
振り下ろした剣は、明も自覚しないほどだが、おお振りになり、隙を突いた雅は左手で剣の腹を叩き剣筋を逸らした。
「なっ」
驚き動きが止まる明に雅の掌底が振るわれる。
ごっ
額にかかる衝撃と共に後方へと吹き飛ばされる明。
「ぐあっ」
「ふんっ!」
「ふんっ!」
倒れた明に、雅は追撃のブーメランを放つ。
それを察知した明は、剣を盾にし、腹を滑らせ受け流した。
それを察知した明は、剣を盾にし、腹を滑らせ受け流した。
「嘗めるなよ雅...ッ!」
明は目を見開く。
ブーメランに気を取られた一瞬で雅の姿は消え失せていた。
ブーメランに気を取られた一瞬で雅の姿は消え失せていた。
(どこだ?どこだ雅!)
警戒心を高め、左右を確認する明。
「久しぶりにお前の血が飲みたくなったぞ、明」
ハー、ハー、と荒い息遣いと共に背後から声が聞こえる。
「み、雅!」
明が慌てて振り返るももう遅い。鋭利な歯がいくつも並んだ巨大な口腔が、明の首元へと襲い掛かる。
瞬間
ツルッ
「!!」
ガンッ
突如、雅の脚が浮遊感に襲われ、地面に勢いよく頭を打ち付けた。
「なんだここは!?滑るぞ!」
手を着き立ち上がろうとするも、地面が滑り立ち上がることが出来ない。
ひやりと手を伝う感触で理解する。
ひやりと手を伝う感触で理解する。
「氷!?これはあの人形が放った氷か!」
「雅ィィィィィ!!」
「雅ィィィィィ!!」
これを好機と見た明は、倒れる雅へと斬りかかる。
「チィッ!」
雅は舌打ちと共に氷に手を打ち付け手元の箇所だけ破壊、そのまま力を籠め身体を押し出し腹で氷を滑る。
振り下ろしを回避された明は、しかし慌てることなく雅へと追撃をかける。
天元の日輪刀は二刀一対。明は右手に持ったひと振りを投げ、雅の足に刺した。
無論、それだけではダメージは微々たるもの。本命はその後だ。
ここまで隠していた、日輪刀のもう一つの機能である爆発を行使する―――が、しかし。
振り下ろしを回避された明は、しかし慌てることなく雅へと追撃をかける。
天元の日輪刀は二刀一対。明は右手に持ったひと振りを投げ、雅の足に刺した。
無論、それだけではダメージは微々たるもの。本命はその後だ。
ここまで隠していた、日輪刀のもう一つの機能である爆発を行使する―――が、しかし。
「なっ!?」
不発。日輪刀は委細変わりなし。
クラゲアマゾンの時は問題なく爆発したというのになぜか。
クラゲアマゾンの時は問題なく爆発したというのになぜか。
(氷!この氷で爆薬が湿気ってやがるのか!)
予想外の事態にうろたえかけるが、しかしすぐに切り替え、飛び掛かり、残りのもう一振りで斬りかかる。
脚から刀を抜きつつ、再び腕で身体を押し出し滑り躱す雅。
脚から刀を抜きつつ、再び腕で身体を押し出し滑り躱す雅。
カンッ。
雅の身体で隠れていた岩に打ち付けられる日輪刀。
ポキッ。
打ち所が悪く、日輪刀の先端が欠ける。
クルクル。
あまりの力強さで打ち付けられた為、折れた先端が回転しながら宙を舞う。
プスッ。
「うぐっ!」
その先端が明の肩口に刺さり、思わぬ痛みに襲われた明は咄嗟に目を瞑り歯を食いしばった。
「明さん!」
炭治郎が明を心配し視線をやる。
早くも恐れていた事態が起こってしまった。
眼前の氷人形は、驚くべきことに、炭治郎の相手をしながら明たちの方へも徐々に氷を放っていたのだ。
早くも恐れていた事態が起こってしまった。
眼前の氷人形は、驚くべきことに、炭治郎の相手をしながら明たちの方へも徐々に氷を放っていたのだ。
(マズイ、明さんの戦いの邪魔になっている!早くこいつを斬るんだ!)
ドラグレッダーと共に、結晶ノ御子へと斬りかかる炭治郎。そんな彼らにも構わず御子は氷を放ち彼らを遠ざける。
氷に耐えて斬りかかろうにも、相手も木偶の坊ではない。
炭治郎の刃が届く前に回避されてしまう。
だが、いまの炭治郎に出来るのは刀を扱う接近戦だけだ。近づかなければ防戦一方でしかない。
氷に耐えて斬りかかろうにも、相手も木偶の坊ではない。
炭治郎の刃が届く前に回避されてしまう。
だが、いまの炭治郎に出来るのは刀を扱う接近戦だけだ。近づかなければ防戦一方でしかない。
(あああああ駄目だ、何度やっても突破できない。なにか打つ手はないのか!?)
攻めあぐねる炭治郎たち。
しかし、その状況を打破する機会が訪れる。
しかし、その状況を打破する機会が訪れる。
『血鬼術 散り蓮華』
大粒の氷の華が炭治郎たちに降り注ぐ。
(受けきれるか...駄目だ、数が多すぎる!避け...足場も氷だらけで動きづらい!せめて少しでもダメージを減らせ!)
刀を振り、せめて致命的な怪我だけでも減らそうとする炭治郎。
ゴウッ。
その炭治郎の眼前で、氷の華は炎に包まれた消え失せた。
パチクリと目を瞬かせる炭治郎は、ぎこちなく炎の出所を探る。
自分の隣だ。つまり、出所はドラグレッダー。
その証拠に、彼の口元には炎の残照がある。
自分の隣だ。つまり、出所はドラグレッダー。
その証拠に、彼の口元には炎の残照がある。
氷に対しての炎。これほど相性がいいものがありながらここまで使わなかったのは理由がある。
まず、炭治郎はドラグレッダーが攻撃用の炎を吐けることなど知らなかった。
加えて、いまのドラグレッダーはライダーデッキのある正当な契約ではなく、単に己の意思で着いていっているに過ぎない、言わば偽の契約。
本来のデッキの所有者である真司であれば、簡単な指示だけでもそれに従っただろう。
だが、デッキがない以上は行動の選択権はドラグレッダーにある。
炭治郎からの指示が無く、まだ温存していたため、炭治郎が明確に危機に陥ったいまになってようやく火炎弾を放ったのだ。
まず、炭治郎はドラグレッダーが攻撃用の炎を吐けることなど知らなかった。
加えて、いまのドラグレッダーはライダーデッキのある正当な契約ではなく、単に己の意思で着いていっているに過ぎない、言わば偽の契約。
本来のデッキの所有者である真司であれば、簡単な指示だけでもそれに従っただろう。
だが、デッキがない以上は行動の選択権はドラグレッダーにある。
炭治郎からの指示が無く、まだ温存していたため、炭治郎が明確に危機に陥ったいまになってようやく火炎弾を放ったのだ。
つまり、ドラグレッダーがなにをできるのかが分かれば戦術は大幅に広がるということだ。
「もう一度お願いします!あの攻撃を溶かすように!」
放たれる氷の雨に放たれる火炎弾は、あっさりと氷を消し去っていく。
(いける!あとは俺が斬ることが出来ればあいつを倒せる!)
勝機は見えた。炭治郎の脳内で最適解が模索される。
「ほう。あの小僧、勝機を掴んだか」
そんな炭治郎を見て、雅は嗤う。
やはり戦いはどんな形であれ変化があってこそだと。
やはり戦いはどんな形であれ変化があってこそだと。
「明よ。せっかくこんな場所で会えたのだ。ここはひとつ、今までにない戦い方をしようではないか」
「なに?」
「なに?」
眉を顰める明に、雅は笑みを携えながらデイバックに腕を突っ込む。
無造作に取り出されたソレに、明は息を呑む。
無造作に取り出されたソレに、明は息を呑む。
ガトリング銃。人を滅ぼすのには充分すぎるほどの兵器。
「てめえ!雅!」
「お前ならばものともしないだろうが、せいぜい楽しませろ明!」
「お前ならばものともしないだろうが、せいぜい楽しませろ明!」
雅の邪悪な笑みと共に、引き金に指がかけられた。
引き金が引かれる、その刹那。
トッ、と雅の傍に影が舞い降りた。
完全に不意を突かれた雅は、腹部にはしる衝撃に思わず手を緩め、続く顎下からの衝撃に地面を転がる。
そして離れたガトリングを手に、影は明へと向き直る。
完全に不意を突かれた雅は、腹部にはしる衝撃に思わず手を緩め、続く顎下からの衝撃に地面を転がる。
そして離れたガトリングを手に、影は明へと向き直る。
あまりにも鮮やかな奇襲に、雅も明も呆気にとられ思考も行動も置き去りにされていた。
それは明も知る人物だった。
下手人の正体を明が口にする前に、引き金は引かれた。
それは明も知る人物だった。
下手人の正体を明が口にする前に、引き金は引かれた。
ただし、銃身が向けられていたのは明ではなく。
「よけろ炭治郎!!!」
彼と対極の位置で戦っていた炭治郎だった。
☆
明の叫びが耳に届いた時には既に遅かった。
ドラグレッダーと共に接近しながらの火炎弾で氷を溶かし、既にヒノカミ神楽・『火車』で氷人形の背後に飛びドラグレッダーと挟み撃ちにしていた最中であり、炭治郎は体勢を変えることが出来なかった。
辛うじて視線だけ振り返るも、降り注ぐ弾丸の雨に、もはや避けることも受けることもできない。
迫る脅威に成すすべもなく―――放たれた強力な熱気に押し倒される。
火炎弾。ドラグレッダーが新たに放ったソレは、炭治郎を弾き飛ばし地面に倒す。
そのダメージこそはあれど、炭治郎へ直撃するはずだった弾丸は彼の身体を掠めるに留まる。
ドラグレッダーと共に接近しながらの火炎弾で氷を溶かし、既にヒノカミ神楽・『火車』で氷人形の背後に飛びドラグレッダーと挟み撃ちにしていた最中であり、炭治郎は体勢を変えることが出来なかった。
辛うじて視線だけ振り返るも、降り注ぐ弾丸の雨に、もはや避けることも受けることもできない。
迫る脅威に成すすべもなく―――放たれた強力な熱気に押し倒される。
火炎弾。ドラグレッダーが新たに放ったソレは、炭治郎を弾き飛ばし地面に倒す。
そのダメージこそはあれど、炭治郎へ直撃するはずだった弾丸は彼の身体を掠めるに留まる。
そして、弾丸の雨は氷の人形と赤き龍へ降り注いだ。
氷人形と共に身体を砕かれていく龍へと手を伸ばす。
だが、炭治郎がなにか行動に移す前に弾丸の雨は止み、駆け寄った時にはもう遅い。
だが、炭治郎がなにか行動に移す前に弾丸の雨は止み、駆け寄った時にはもう遅い。
装甲のほとんどを破壊され倒れ伏す赤き龍を抱き、思い知らされる。
また自分は助けられたのだと。
☆
ギリギリ、とガトリングと刀身が競り合う。
ガトリングが放たれたのに少し遅れ、明が斬りかかりどうにか追撃を止めていた。
下手人は明も知る男だった。
ガトリングが放たれたのに少し遅れ、明が斬りかかりどうにか追撃を止めていた。
下手人は明も知る男だった。
「テメェ!クソジジイ!!」
「一緒にいてくれてよかったよ。きみにもリベンジマッチをしたいと思ってた」
「一緒にいてくれてよかったよ。きみにもリベンジマッチをしたいと思ってた」
名前は知らないが、温和な笑みを浮かべた謎の老人―――つまりは佐藤。
鍔迫り合いの中、明は不安と疑念に駆られていた。
鍔迫り合いの中、明は不安と疑念に駆られていた。
どうなっている。確かにこいつはかなり不死身に近い存在だった。
だが、こいつは炭治郎に首を切られ身体すら燃やされたはずだ。
恐らく、万全の雅ですら再生が困難なほどに。
だがなぜ。なぜこの男はこうも五体満足でいられる!?
だが、こいつは炭治郎に首を切られ身体すら燃やされたはずだ。
恐らく、万全の雅ですら再生が困難なほどに。
だがなぜ。なぜこの男はこうも五体満足でいられる!?
その不安を突き、佐藤は膝をおりまげ上体を逸らし、明の体勢を前のめりに崩す。
そのまま脚で明の身体を持ち上げ投げ飛ばした。
咄嗟に体勢を立て直す明に向けられる銃口、そして引かれる引き金。
そのまま脚で明の身体を持ち上げ投げ飛ばした。
咄嗟に体勢を立て直す明に向けられる銃口、そして引かれる引き金。
「くっ!」
明は二刀の刀で迫りくる弾丸を次々に弾いていく。
「驚いた。弾丸ってそんな風に弾けるものなんだ」
沖田のように洗練されていない、どちらかといえば大雑把な太刀筋でありながら、彼のような神業的な技術を振るう明の剣術に佐藤は素直に関心する。
だが、徐々に頬や服を掠めていく姿に、佐藤はやはり無敵ではないと確信し、そのまま銃撃を継続。
だが、徐々に頬や服を掠めていく姿に、佐藤はやはり無敵ではないと確信し、そのまま銃撃を継続。
「待て。貴様、私の玩具を返してもらおうか」
佐藤の肩を掴み止めたのは雅。
突然の乱入に加え、使おうと思っていた武器すら奪われたのだ。
その顔から笑みは消え明らかに不機嫌になっていた。
突然の乱入に加え、使おうと思っていた武器すら奪われたのだ。
その顔から笑みは消え明らかに不機嫌になっていた。
無論、威圧感溢れるその睨みも佐藤には関係ない。
ゴッ。
構わず、雅の顔面に裏拳を放つ。
怯まず佐藤へと殴り掛かる雅の腕を掴み、背負い投げの要領で脳天から地面へと叩きつける。
怯まず佐藤へと殴り掛かる雅の腕を掴み、背負い投げの要領で脳天から地面へと叩きつける。
「ぐあっ!」
血を流し悲鳴を上げる雅の腹部に佐藤は銃口を押し当て、躊躇いなく引き金を引いた。
飛び散る肉片と夥しい流血にも佐藤は顔色ひとつ変えはしなかった。
飛び散る肉片と夥しい流血にも佐藤は顔色ひとつ変えはしなかった。
「さてと」
雅はこれで死んだ、と佐藤は改めて明と少し離れた炭治郎へと振り返る。
悠然と歩み寄る佐藤、その右腕に走る痛み。
思わず動きを止め、右腕を確認してみる。
悠然と歩み寄る佐藤、その右腕に走る痛み。
思わず動きを止め、右腕を確認してみる。
「あれえ?」
佐藤の右腕は穴だらけになり、血もとめどなく流れ出ていた。
怪我の感触からして、撃たれたのかと理解する。
怪我の感触からして、撃たれたのかと理解する。
「すごいねえ、そんなことできるんだ」
己の右腕と、ゆらりと立ち上がる雅を交互に見返し、佐藤は変わらず笑顔で雅を讃えた。
「きみはなんなんだい?私たちとはまた違うようだけど」
「私は吸血鬼だ。人間を糧にし、人間を支配する優れた種族の王。それが私だ。そういう貴様はなんだ?」
「亜人さ」
「聞いたことが無いが...なるほど面白そうだ」
「私は吸血鬼だ。人間を糧にし、人間を支配する優れた種族の王。それが私だ。そういう貴様はなんだ?」
「亜人さ」
「聞いたことが無いが...なるほど面白そうだ」
二人は変わらぬ笑みを浮かべながら歩み寄っていく。
一人は愉悦に歪み。一人は温和で柔らかく。
対照的な笑みであれど、その根底は同じ。
一人は愉悦に歪み。一人は温和で柔らかく。
対照的な笑みであれど、その根底は同じ。
『コイツと戦うのは面白そうだ』
そして、互いに拳を握りしめ、吸血鬼と亜人の殴り合いが始まった。
☆
雅と佐藤の戦いが始まろうとする最中、明は体勢を立て直す為に炭治郎とドラグレッダーを連れ、近場の物陰に身を隠した。
「落ち着け炭治郎」
「...ハイ。大丈夫です」
「...ハイ。大丈夫です」
明から見ても炭治郎の顔には怒りが満ちており冷静さを失いつつある。
無理もない。よりにもよって自分が倒したと思った相手に仲間を瀕死の目にあわされたのだから。
だからこそ、ここで急かず心を落ち着けなければならない。
無理もない。よりにもよって自分が倒したと思った相手に仲間を瀕死の目にあわされたのだから。
だからこそ、ここで急かず心を落ち着けなければならない。
だが、現実は悪いことが重なるものだ。
炭治郎は見つけてしまった。
自分たちが隠れている物陰の向かい側に座り込む人影を。
先ほど別れた同行者―――上杉風太郎を。
自分たちが隠れている物陰の向かい側に座り込む人影を。
先ほど別れた同行者―――上杉風太郎を。
「あ...明さん...炭治郎...」
「上杉...ッ!」
「上杉...ッ!」
駆け寄り、風太郎の姿を見て、二人は絶句する。
至る所に着けられた切り傷。折られた左手の指。削がれた左耳。潰された喉。包帯の巻かれた足の腱。
彼は別れた時とは比べ物にならないほど傷つき息も絶え絶えだった。
それこそ、明たちのように激戦でも繰り広げたかのように。
至る所に着けられた切り傷。折られた左手の指。削がれた左耳。潰された喉。包帯の巻かれた足の腱。
彼は別れた時とは比べ物にならないほど傷つき息も絶え絶えだった。
それこそ、明たちのように激戦でも繰り広げたかのように。
「悪い...炭治郎...明さん...」
「喋るな、傷が開く」
「大丈夫...見た目ほどじゃない...俺が死んだら、ゲホッ、意味が無くなるから...死にはしない程度に痛めつけられただけだ...」
「喋るな、傷が開く」
「大丈夫...見た目ほどじゃない...俺が死んだら、ゲホッ、意味が無くなるから...死にはしない程度に痛めつけられただけだ...」
咳き込み、途切れながらも風太郎は言葉を紡いでいく。
「あいつの目的は...明さんたちへの...リベンジだ...俺は...二人を逃がさない...ための...餌...」
「......」
「......」
炭治郎は歯を噛み締め、額に青筋を浮かべ、射殺さんばかりの形相で佐藤を睨みつける。
「だ、駄目だ...二人とも、いまのうちに離れろ...!」
いまにも斬りかかりに行きそうな炭治郎を必死に制止する。
「お...俺のことは気にするな...!俺はこの様ならどうせ死ぬ...!だから、二人は、一花たちの方に...!」
「ハッ」
「ハッ」
明がふっ、と頬を緩める。
「上杉。お前の言いたいことはわかる。だがな、もともと俺は雅を逃がすつもりはないんだよ。それは炭治郎も同じだ。あのジジイをこれ以上野放しにするつもりはない」
「あ、あいつらの同士討ちを狙えば」
「奴らは不死身だ。恐らく、飽きて途中で戦闘を止めるのが関の山だろう。それに、どうやったかは知らんが、雅には首輪が無い。恐らく、身体のどこかにはあるのだろうが...ジジイがそこを突いて雅を殺せるとは到底思えない」
「あ、あいつらの同士討ちを狙えば」
「奴らは不死身だ。恐らく、飽きて途中で戦闘を止めるのが関の山だろう。それに、どうやったかは知らんが、雅には首輪が無い。恐らく、身体のどこかにはあるのだろうが...ジジイがそこを突いて雅を殺せるとは到底思えない」
安心させるかのように、風太郎の頭に、ぽん、と手が置かれる。
そこには、風太郎が今までの明からは感じられなかった温もりが何故か感じられた。
そこには、風太郎が今までの明からは感じられなかった温もりが何故か感じられた。
「まだ動けるな?炭治郎」
「はい。俺はまだ折れていない。戦えます」
「ハッ、頼もしい相棒だ」
「はい。俺はまだ折れていない。戦えます」
「ハッ、頼もしい相棒だ」
滾る闘志はそのままに、散っていった者たちに報いる為、鬼殺の戦士二人は再び戦場へと駆けだした。
☆
グシャリ。
雅の拳が佐藤の顔を潰し、地面に打ち倒す。
脳まで破壊されたのだ。専門家が見なくても即死だと判断できるだろう。
なんだこんなものか?
あまりの呆気なさに落胆しかける雅だが、しかしそれは杞憂というものだった。
ぐじゅり、となにかが蠢くような音が鳴ると共に、佐藤の頭部は傷一つなく再生。どころか、撃たれた腕やかすり傷、あますことなく万全な状態になっていた。
そのまま立ち上がり、再び戦闘態勢をとる。
雅の拳が佐藤の顔を潰し、地面に打ち倒す。
脳まで破壊されたのだ。専門家が見なくても即死だと判断できるだろう。
なんだこんなものか?
あまりの呆気なさに落胆しかける雅だが、しかしそれは杞憂というものだった。
ぐじゅり、となにかが蠢くような音が鳴ると共に、佐藤の頭部は傷一つなく再生。どころか、撃たれた腕やかすり傷、あますことなく万全な状態になっていた。
そのまま立ち上がり、再び戦闘態勢をとる。
「なるほど素晴らしい。再生能力に限れば私や鬼の王にも劣らんかもしれん。だが、それだけだ。それだけでは私には勝てんよ」
「そうかい。それは楽しみだ」
「そうかい。それは楽しみだ」
佐藤は両拳を握りしめ、格闘家のように構え、対する雅は、構えもなく、無造作に拳を振るう。
一撃受ければ致命的。そんな攻撃にも、しかし佐藤は恐怖も焦燥もなく、冷静に攻撃を捌いていく。
一撃受ければ致命的。そんな攻撃にも、しかし佐藤は恐怖も焦燥もなく、冷静に攻撃を捌いていく。
佐藤の拳がパシリ、と雅の胸を軽く叩き、上体が崩れた隙を狙い、雨のように佐藤のジャブが放たれる。
ダメージは少ないとはいえ、弾かれれば体勢は崩れてしまう。
為すすべもなく、雅は佐藤の拳をその身に受け続け、ラッシュの締めのアッパーカットにより、雅はそのまま仰向けに倒れた。
ダメージは少ないとはいえ、弾かれれば体勢は崩れてしまう。
為すすべもなく、雅は佐藤の拳をその身に受け続け、ラッシュの締めのアッパーカットにより、雅はそのまま仰向けに倒れた。
相手は人間よりも遥かに強靭な吸血鬼。
その存在を肉弾戦において地面に転がせるのは、亜人の不死身性関係なく、佐藤の力だ。
己の圧倒的な暴力にものを振るわせる雅や、彼ら異形の者を倒す為に鍛え上げられた明や炭治郎の技術では培われない、対人においての経験、軍隊的格闘・戦闘技術。
それこそが、亜人の特性以上に、佐藤を真に脅威たら占めるのだ。
その存在を肉弾戦において地面に転がせるのは、亜人の不死身性関係なく、佐藤の力だ。
己の圧倒的な暴力にものを振るわせる雅や、彼ら異形の者を倒す為に鍛え上げられた明や炭治郎の技術では培われない、対人においての経験、軍隊的格闘・戦闘技術。
それこそが、亜人の特性以上に、佐藤を真に脅威たら占めるのだ。
「う~ん、吸血鬼なんて初めてだけど、これならあのお侍さんの方が手ごわかったかな」
「...ハハハ、失望させてしまったか?では信頼を取り戻さねばな」
「...ハハハ、失望させてしまったか?では信頼を取り戻さねばな」
むくり、と何事もなく立ち上がる雅に、佐藤はポカンと口を開ける。
殴打による雅の傷は、皮膚の細胞が蠢き瞬く間に治癒していた。
殴打による雅の傷は、皮膚の細胞が蠢き瞬く間に治癒していた。
「驚いた。きみは死ななくても再生できるんだね」
思わず漏れた佐藤の呟きに、雅の眉がピクリと動く。
「生物は死ねば終わりだ。だから人間は不死を求め生き永らえようとする。それは貴様もそうだろう」
「いやあ、私は楽しめればいいかなぁ」
「...ハッ、違いない。生において京楽を忘れるほど愚かなことはない」
「いやあ、私は楽しめればいいかなぁ」
「...ハッ、違いない。生において京楽を忘れるほど愚かなことはない」
ヌッ、と雅はブーメランを取り出し構える。
「卑怯とは言うまい。やはり私は手で弄べるものがあった方が調子がいいのでな」
「もちろんさ。それで楽しませてくれるならそっちの方がいい」
「もちろんさ。それで楽しませてくれるならそっちの方がいい」
互いに構え、一呼吸の後に同時に駆け出す。
振りおろされる雅のブーメラン。それを屈み躱し、懐に潜り込む佐藤。
振りおろされる雅のブーメラン。それを屈み躱し、懐に潜り込む佐藤。
トッ。
ザ ン ッ
―――その両者の腕を切断した、明の奇襲。
「明!」
「ガアアアアアア!」
「ガアアアアアア!」
咆哮と共に地面へと振り下ろされる、明の太刀。
ボボンッ。
本来の持ち主である宇随天元の音の呼吸、壱の型『轟』にも似たその太刀筋は、日輪刀を爆発させ、明を含む三人を煙に巻いた。
「くっ、ちょこざい!」
視界が爆炎に覆われたことで、斬られた腕を回収しつつ後退し、距離を置く雅。
ヌッ。
その煙の中から、刀を振り上げた明が姿を現した。
ギ ン ッ。
刃とブーメランが交叉する。
「何度も言わせるなよ雅。お前の相手はあのジジイじゃねェ。俺なんだよ」
「その笑み...昔を思い出すぞ、明」
「その笑み...昔を思い出すぞ、明」
再び、明と雅の斬りあいが再開した。
一方、佐藤は煙に紛れつつ、ガトリング銃で己の頭を破壊し、蘇生すると共に斬られた腕も治していた。
「うまいこと分断されちゃったなぁ。ということは、君が相手をしてくれるんだね」
煙が晴れた先に立ちはだかっていた炭治郎は、油断なく刀を構え、佐藤を睨みつけていた。
「俺は竈門炭治郎。お前の名前はなんだ」
「?」
「?」
突然の名乗りに佐藤は首を傾げるも、聞かれたのなら答えてやるべきだろうと笑顔で返す。
「佐藤。私の名前は佐藤だよ」
「佐藤...城戸さんと沖田さん、球磨川さんは俺や皆を守ろうとして命を散らした。上杉さんや赤き龍も守るために戦いお前に傷つけられた」
「佐藤...城戸さんと沖田さん、球磨川さんは俺や皆を守ろうとして命を散らした。上杉さんや赤き龍も守るために戦いお前に傷つけられた」
炭治郎の腕に力が籠っていく。
彼らとはまだ会って数時間程度の関係だ。
だが、それでもこの殺し合いをどうにかしたいと願う同志であり、力なき者を守り悪鬼を討つ為に共に戦った仲間だ。
そんな彼らを、己の我欲で踏みにじり唾をかける悪鬼がここにいる。生き残りたいという衝動すらなく悪意をまき散らす生物がここにいる。
斬らねばならない。これ以上、その悪意に巻き込まれる人を増やさない為に。
彼らとはまだ会って数時間程度の関係だ。
だが、それでもこの殺し合いをどうにかしたいと願う同志であり、力なき者を守り悪鬼を討つ為に共に戦った仲間だ。
そんな彼らを、己の我欲で踏みにじり唾をかける悪鬼がここにいる。生き残りたいという衝動すらなく悪意をまき散らす生物がここにいる。
斬らねばならない。これ以上、その悪意に巻き込まれる人を増やさない為に。
「俺はお前を許さない...佐藤、これ以上、罪なき命をお前の欲に踏みにじらせはしない!!」
「いいね。それじゃあ改めて、リベンジマッチと行こうか」
「いいね。それじゃあ改めて、リベンジマッチと行こうか」
かくして、吸血鬼と修羅、亜人と鬼狩りの殺し合いは幕を開けた。
「あー、壊されちゃったなぁ」
上弦の弐、童磨は日陰に身を隠しつつ、残念がるように声を落とした。
放った結晶ノ御子が、耳飾りをした鬼狩りの少年と接触したまではよかったが、奇襲で破壊されてしまった為に、戦況の把握が不可能になってしまった。
本来ならば一体壊されたところで追加の御子を放てばよいだけなのだが...
放った結晶ノ御子が、耳飾りをした鬼狩りの少年と接触したまではよかったが、奇襲で破壊されてしまった為に、戦況の把握が不可能になってしまった。
本来ならば一体壊されたところで追加の御子を放てばよいだけなのだが...
(なんで戻らないかなぁ?)
童磨は己の術に違和感を感じていた。
本来、結晶ノ御子の製造限度は5体ではないが、しかしこの首輪による制限なのか、今は最大で5体までしか出すことが出来ない。
しかも、佐藤に破壊されてから産み出せる数が1体減ったのを実感した。
出さずとも、無理やり理解させるような感覚で解らせられた。
本来、結晶ノ御子の製造限度は5体ではないが、しかしこの首輪による制限なのか、今は最大で5体までしか出すことが出来ない。
しかも、佐藤に破壊されてから産み出せる数が1体減ったのを実感した。
出さずとも、無理やり理解させるような感覚で解らせられた。
(あのまま放っておいてもいいけれど、せっかく見つけた鬼狩りの少年もいるしなぁ)
主、無惨は耳飾りをつけた鬼狩り、竈門炭治郎を特に警戒しており、見つけ次第殺せと命じていた。
見たところ、戦闘員の四人の中で一番非力であるためあのまま放っておいても一番に命を落としそうだが、万が一のこともある。
見たところ、戦闘員の四人の中で一番非力であるためあのまま放っておいても一番に命を落としそうだが、万が一のこともある。
「もう一体送っとこ」
数秒の後、童磨は御子を産み出し再び戦場へと向かわせた。
童磨は己の命に執着できない。
戦闘において己が有利にことを運ぶのも、己の保身ではなく、鬼として教祖としてより多くの人間を救う為に過ぎない。
故に、多少、己が不利になるとしても合理的に判断しそちらが有意義ととれば、迷いなく実行できるのだ。
戦闘において己が有利にことを運ぶのも、己の保身ではなく、鬼として教祖としてより多くの人間を救う為に過ぎない。
故に、多少、己が不利になるとしても合理的に判断しそちらが有意義ととれば、迷いなく実行できるのだ。
(俺が使える御子はあの子を壊されたら三体になるけど、さてどうなるかな)
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 命ノゼンマイ | 雅 | 悪鬼滅殺(2) |
| 佐藤 | ||
| 竈門炭治郎 | ||
| 宮本明 | ||
| 上杉風太郎 | ||
| 獣性目掛けて銃声は鳴る | 童磨 |