どうにもならない事があっても幸福な君を守ってあげる ◆7ediZa7/Ag
「どいてくれないかしら? 私はそこの草を毟りたいだけなのですけれど」
その時、善逸はこれほどまでに冷たい音がこの世にあるのかと、驚きに似た感情を抱いていた。
善逸は耳が良い。とてつもなく良い。
かつて寝てる間に人が話していたかを言い当て、気味悪がられたことさえある。
かつて寝てる間に人が話していたかを言い当て、気味悪がられたことさえある。
生き物すべてには音がある。
呼吸音。
心音。
血の巡る音。
呼吸音。
心音。
血の巡る音。
常人には区別のつかないであろう、それらの音。
善逸にはそれらの音をどういう訳か聞き分けることができた。
そして、それを注意深く聞けば、わかるのだ。
善逸にはそれらの音をどういう訳か聞き分けることができた。
そして、それを注意深く聞けば、わかるのだ。
相手が何を考えているのか。
相手が何を想っているのか。
相手が──どういう人間なのか。
相手が何を想っているのか。
相手が──どういう人間なのか。
「私、とても疲れているから、本当は休んでいたかったんですけれど、でも、どうしても抜いておかないといけない草があったら寝付けないでしょう?
ほら、こういうの、放っておくとどんどん増えていくものですし」
ほら、こういうの、放っておくとどんどん増えていくものですし」
そう言って、その女はうっすらと笑みを浮かべて見せた。
古風で品の良い和装を身に纏った女人だった。
長く伸びた髪にその細い身体を包む彼女からは、どこか儚げな雰囲気が漂ってくる。
古風で品の良い和装を身に纏った女人だった。
長く伸びた髪にその細い身体を包む彼女からは、どこか儚げな雰囲気が漂ってくる。
だが──その時の善逸はその女のことを、心の底から恐れていた。
彼はひどく耳が良い。
だからこそ──その女の音だってよくわかる。
だからこそ──その女の音だってよくわかる。
その音はおよその人間のものではない。
かといって鬼の音などでもない。
それは──刀の音だ。
そこに苛烈な感情はなく、善悪といった酒落臭い楔もない。
一たび振るわれればただ命を刈り取るだけの、澄んだ殺意が伝わってくる。
かといって鬼の音などでもない。
それは──刀の音だ。
そこに苛烈な感情はなく、善悪といった酒落臭い楔もない。
一たび振るわれればただ命を刈り取るだけの、澄んだ殺意が伝わってくる。
この女の音は──ただひたすらに恐ろしかった。
鬼の音ならばよかった。そんなものは聞き慣れている。
だがこの女の音は、今までに聞いたことのない冷たく、理解の及ばない音であった。
鬼の音ならばよかった。そんなものは聞き慣れている。
だがこの女の音は、今までに聞いたことのない冷たく、理解の及ばない音であった。
「く、草むしりって、何をする気だよ」
思わず善逸は前に出て、そう言っていた。
その手には刀──ではなく、野球のバットが握られている。
当然、本当は刀が欲しかった。こんな奇怪な場所で、己の相棒たる日輪刀がないことはもちろん不安だった。
その手には刀──ではなく、野球のバットが握られている。
当然、本当は刀が欲しかった。こんな奇怪な場所で、己の相棒たる日輪刀がないことはもちろん不安だった。
だがそんなものでもないよりはマシだった。
善逸は耳が良い。だからその女の恐ろしさも、見た目に反して恐ろしいほど強いことも悟っていた。
それでも彼は前に出て、問いかけていた。
だってその女の言う“草”が、何を意味するのか、彼はわかってしまったから。
善逸は耳が良い。だからその女の恐ろしさも、見た目に反して恐ろしいほど強いことも悟っていた。
それでも彼は前に出て、問いかけていた。
だってその女の言う“草”が、何を意味するのか、彼はわかってしまったから。
「千翼に何をする気だ!」
後ろに立つ五月も、当の千翼さえもまだピンと来ていない様子だった。
見た目だけならば、この女は華奢で見た目麗しい女性にしか見えないだろう。
だが善逸だけは違った。彼だけは会った瞬間、最大の警戒を持って女と相対していた。
見た目だけならば、この女は華奢で見た目麗しい女性にしか見えないだろう。
だが善逸だけは違った。彼だけは会った瞬間、最大の警戒を持って女と相対していた。
「あら、やっぱり間違ってなかったのですね」
善逸の言葉に、女は満足げに頷いた。
同時、ちひろ、とその音を確かめるように舌で転がしている。
同時、ちひろ、とその音を確かめるように舌で転がしている。
「そこの不快な草から“あまぞん”の臭いがするから、抜いておかないと──そう思って声をかけて、本当によかったです。
私、草むしりが趣味なので、そういうのは耐えられない性分なの」
私、草むしりが趣味なので、そういうのは耐えられない性分なの」
女が微笑んだ、その瞬間、善逸の視界は反転していた。
最大限、警戒していた。油断など全くしてなかった。
最大限、警戒していた。油断など全くしてなかった。
だが善逸のぐるりと世界が一回りするのを感じたのち、鈍い音とともに叩きつけられていた。
◇
乱雑に積まれた瓦礫に、善逸はその身を吹き飛ばされている。
「善逸君!?」
音を立てて沈んでいく善逸に対し、五月が困惑の声を上げるのが見えた。
薄暗がりの廃工場には四人の男女が集っている。
善逸、千翼、五月。
そして紆余曲折ありつつも行動を共にすることを選んだ三人の前にふらりと現れた女。
善逸、千翼、五月。
そして紆余曲折ありつつも行動を共にすることを選んだ三人の前にふらりと現れた女。
彼女が善逸を問答無用で吹き飛ばした──というのが、今目の前で起こった出来事のはずである。
鑢七実、という名を当然三人は誰一人として知らない。
その儚げな佇まいと──善逸を一瞬で放り投げたその力が、まったく結びつかない。
その儚げな佇まいと──善逸を一瞬で放り投げたその力が、まったく結びつかない。
「え? え? 何が起こったんです?」
五月の声が後ろから聞こえた気がする。
だから五月はまだその時点においても、今何が起こっているのか──自らがとてつもない何かに強襲されているという事実を飲み込めてはいないのだろう。
だから五月はまだその時点においても、今何が起こっているのか──自らがとてつもない何かに強襲されているという事実を飲み込めてはいないのだろう。
だが千翼はわかっていた。
目の前の女が純粋な殺意を持って襲いにきていると言うこと。
だからこそ彼はすぐにベルトを装着しようとするが──
目の前の女が純粋な殺意を持って襲いにきていると言うこと。
だからこそ彼はすぐにベルトを装着しようとするが──
「私、疲れているから、すぐ終わらせたいの」
七実は無感動な、それでいて千翼に対する不快感を滲ませた声で呟いた。
「虚刀流『蒲公英』」
その瞬間──今度は千翼の身体が吹き飛ばされていた。
虚刀流の技術と、彼女が会得していた凍空一族の怪力の組み合わせ。
腹部に走った衝撃。逆流する胃液。その勢いのまま──その身は吹き飛ばされ、地を這っていた。
ベルトもまた地面を擦るように転がっていく。
虚刀流の技術と、彼女が会得していた凍空一族の怪力の組み合わせ。
腹部に走った衝撃。逆流する胃液。その勢いのまま──その身は吹き飛ばされ、地を這っていた。
ベルトもまた地面を擦るように転がっていく。
千翼は悔しげに顔を歪め、ぐぅ、と腹部を抑えながらも顔を上げる。
常人ならば致命傷にもなりかねない一撃であったが、アマゾン細胞による驚異的な生命力を持つ千翼は生き延びていた。
鈍痛が視界を揺らすが、ここで意識を手放すわけにはいかない──それは死を意味する。
常人ならば致命傷にもなりかねない一撃であったが、アマゾン細胞による驚異的な生命力を持つ千翼は生き延びていた。
鈍痛が視界を揺らすが、ここで意識を手放すわけにはいかない──それは死を意味する。
「生きているのね。本当、しぶとさだけなら一級品なのかしら」
和装が風に揺れる中、冷たい嫌悪の眼差しで女人が千翼を見下ろしていた。
花のような儚い美しさすら感じられる彼女が、月光を背中に受けながら、彼女はそう語る。
花のような儚い美しさすら感じられる彼女が、月光を背中に受けながら、彼女はそう語る。
「“あまぞん”……とても厭な草ね。抜いてしまわないと」
アマゾン、とこの女は明確に言っている。
不思議なイントネーションだが、彼女はアマゾンという存在をひどく嫌悪し、同時に千翼がアマゾンであると見抜いているようだった。
くそ、と千翼は内心悪態を吐く。
ここでも──こんなところでも、自分は追われる身なのか。
不思議なイントネーションだが、彼女はアマゾンという存在をひどく嫌悪し、同時に千翼がアマゾンであると見抜いているようだった。
くそ、と千翼は内心悪態を吐く。
ここでも──こんなところでも、自分は追われる身なのか。
「あーもう!何!何!何だこの女!」
ドッと瓦礫を押しのけて少年、善逸が飛び出してきた。
「わっ」と後ろで五月の声がする。彼女は未だ状況にはついていけないようだった。
戦闘も何も知らない人間にしてみれば、その反応も仕方がないだろう。
だが善逸の方は違った。女の打撃をその身で受けていながらも、すでにバットを構え直し、すぐさま戦闘に戻ろうとしている。
「わっ」と後ろで五月の声がする。彼女は未だ状況にはついていけないようだった。
戦闘も何も知らない人間にしてみれば、その反応も仕方がないだろう。
だが善逸の方は違った。女の打撃をその身で受けていながらも、すでにバットを構え直し、すぐさま戦闘に戻ろうとしている。
「腹ぶち抜かれるかと思った!
死んだ!死んでた!修行してなかったら俺確実に死んでた!」
死んだ!死んでた!修行してなかったら俺確実に死んでた!」
とはいえ痛くない訳ではないらしい。
彼は腹を本当に痛そうに抑えつつも喚いている。
一瞬心配したが、これだけ大声で騒げるのならば命に別状はないだろう。
彼は腹を本当に痛そうに抑えつつも喚いている。
一瞬心配したが、これだけ大声で騒げるのならば命に別状はないだろう。
「あら。ちゃんと生きているのですね。
いい呼吸だわ。しっかり訓練してるのがわかります」
「くっ! こんな状況なのに褒められて結構嬉しい!」
「でも剣はふざけているのね。でもまぁ、変体刀の中にそういうお遊び染みたのも紛れてるのかしら」
「俺だってバットなんか振りたくないけど! でもないんだからしょうがないだろ!」
いい呼吸だわ。しっかり訓練してるのがわかります」
「くっ! こんな状況なのに褒められて結構嬉しい!」
「でも剣はふざけているのね。でもまぁ、変体刀の中にそういうお遊び染みたのも紛れてるのかしら」
「俺だってバットなんか振りたくないけど! でもないんだからしょうがないだろ!」
きいいい、と騒ぎ立ててつつも善逸は確かな足取りで千翼の隣、いや、少しだけ前へ立つ。
その様子は──千翼を守ろうとするかのようであった。
千翼はその姿に意外なほど驚きを感じていた。そのまっすぐな姿と、初めて会った時の彼の情けない姿が結びつかない。
その様子は──千翼を守ろうとするかのようであった。
千翼はその姿に意外なほど驚きを感じていた。そのまっすぐな姿と、初めて会った時の彼の情けない姿が結びつかない。
「お前……」
「わかってるよ! この女の方が、俺より強いことくらい!」
「わかってるよ! この女の方が、俺より強いことくらい!」
誰に問われる訳でもなく、善逸は口を開いていた。
「でもこの女が、千翼を殺そうとしていることだってわかる。
それに五月ちゃんだっている。
だったら俺がやらないと! ここには伊之助も、炭治郎もいないんだから!」
それに五月ちゃんだっている。
だったら俺がやらないと! ここには伊之助も、炭治郎もいないんだから!」
そう面と向かって啖呵を切る善逸の手は、震えてはいなかった。
初めて会った時のあの臆病な様子が演技であったとは思えない。
だから本心では恐れているのかもしれない。
だが、ここに立つ善逸は、それを決して周りには見せなかった。
初めて会った時のあの臆病な様子が演技であったとは思えない。
だから本心では恐れているのかもしれない。
だが、ここに立つ善逸は、それを決して周りには見せなかった。
「…………」
無言で千翼は立ち上がり、一歩前に出た。
その手にはベルト、アマゾンズドライバーがある。
それだけで善逸は察してくれたようだった。
一緒に──この女を退ける。
単体では強大な力を持つ女だが、連携をすれば切り抜けられるかもしれない。
それだけで善逸は察してくれたようだった。
一緒に──この女を退ける。
単体では強大な力を持つ女だが、連携をすれば切り抜けられるかもしれない。
「いくぞぉ!千翼!」
善逸が声をあげる。それはまるで己自身を鼓舞するかのような声で、千翼は、その声に不思議な感覚を覚えていた。
本当に久々に思える──隣に、味方が立っているなんて。
その事実を噛み締めながら、千翼は善逸と共に地面を蹴る──
「UWAAAAAAAAAAA」
──直前、廃工場の壁が音を立ててぶち抜かれていた。
それはスマートとは全く言い難い乱入の仕方だった。
錆びついた鉄板を力任せにぶち抜き──その赤い獣は突如として現れていた。
それはスマートとは全く言い難い乱入の仕方だった。
錆びついた鉄板を力任せにぶち抜き──その赤い獣は突如として現れていた。
「AAA..AAAAAA....探したよ」
千翼も、善逸も、七実でさえも、その闖入者に目を奪われた。
装甲のごとく硬質に活性化した赤い肌。理性の感じれらない白い眼。漏れ出る声には、強烈な戦意を滲ませている。
装甲のごとく硬質に活性化した赤い肌。理性の感じれらない白い眼。漏れ出る声には、強烈な戦意を滲ませている。
赤いアマゾン。
アマゾンアルファ
アマゾンアルファ
その乱入者は、周りをきょろきょろと見渡している。
この獣は目が見えていないのだ。そのことを暗に示すような動きであった。
だがその獣はたとえ見えてなくとも──己が追い求めるものはハッキリとその意識で掴んでいるようだった。
この獣は目が見えていないのだ。そのことを暗に示すような動きであった。
だがその獣はたとえ見えてなくとも──己が追い求めるものはハッキリとその意識で掴んでいるようだった。
「探したよ──お前が、千翼だな」
だから、獣はその名を呼んだ。
千翼。
この獣もまた、七実と同様に明確な敵意を持ってその名を告げていた。
千翼。
この獣もまた、七実と同様に明確な敵意を持ってその名を告げていた。
「…………」
そんな獣に対して、千翼はただ一言、短く返す。
父さん、と。
父さん、と。
◇
突然の乱入者、アマゾンアルファ、鷹山仁に対して善逸が声をあげていた。
「は? 父さん? この化け物が?
ええ!? じゃあ味方なの──」
「AAAAAAAAAAA!」
ええ!? じゃあ味方なの──」
「AAAAAAAAAAA!」
その言葉がいい終わるよりも早く──仁は雄叫びをあげそのクローを振り払う。
ろくに視界も見えていないであろうで、気配を直感で感じ取って放ってだろう乱雑な一振り。
だが獣のごとき嗅覚によるものか、仁は千翼と善逸を捉え、猛然と襲いかかってくる。
ろくに視界も見えていないであろうで、気配を直感で感じ取って放ってだろう乱雑な一振り。
だが獣のごとき嗅覚によるものか、仁は千翼と善逸を捉え、猛然と襲いかかってくる。
「千翼──俺は」
一撃一撃を咄嗟の反応で避けながら、千翼は仁と相対する。
鷹山仁。この男がなぜここに来たのか。このあと彼が何を言おうとしているのか、千翼にはすでにわかっていた。
鷹山仁。この男がなぜここに来たのか。このあと彼が何を言おうとしているのか、千翼にはすでにわかっていた。
「俺は──お前を殺しに来た」
千翼にとって、仁とは紛れもなく血をわけた家族であり、親子である。
だが──いや、だからこそ、この父親は千翼を殺そうとまっすぐに向かってくるのだ。
そんなことはわかっている。だが──
だが──いや、だからこそ、この父親は千翼を殺そうとまっすぐに向かってくるのだ。
そんなことはわかっている。だが──
「はぁ!? お前! 千翼の親父なんだろ?
なんでそんなこと言ってんの!? そんなこと、あるか!」
なんでそんなこと言ってんの!? そんなこと、あるか!」
同じく攻撃を避けていた善逸が、バットを構えながら声を上げる。
「AAAAAAAA」
だが仁は彼の声など無視し、千翼に向かってその鋭利なクローを乱打する。
殺意を滲ませた雄叫びをあげ、命を刈り取らんと断続的な攻撃を放つ。
それを千翼はそれを必死に避けながら、必死に変身できる隙ができないかを伺う。
だがそれも簡単なことではない──自分の敵は、この男だけではないのだから。
殺意を滲ませた雄叫びをあげ、命を刈り取らんと断続的な攻撃を放つ。
それを千翼はそれを必死に避けながら、必死に変身できる隙ができないかを伺う。
だがそれも簡単なことではない──自分の敵は、この男だけではないのだから。
「あら、また“あまぞん”? 本当、この島にはよく生えているのね。この草が」
月明かりの中、音もなく七実がやってきていた。
千翼と仁の戦いに割り込むように現れた彼女は無手であったが、しかしその怪力は先ほど身を以て体感している。
ここで集中的に狙われていると、それこそ致命打になる。
千翼はそのことに気づき何とか対応しようとするが──
千翼と仁の戦いに割り込むように現れた彼女は無手であったが、しかしその怪力は先ほど身を以て体感している。
ここで集中的に狙われていると、それこそ致命打になる。
千翼はそのことに気づき何とか対応しようとするが──
「お父さん、ね。
親が子を殺すなんて──まぁ」
親が子を殺すなんて──まぁ」
幸か、不幸か。
もう一人の敵──鑢七実が狙っていたのは千翼だけではない。
彼女は“あまぞん”。その名を持つ者すべてを狙っている。
その中には当然、鷹山仁自体も含まれている。
もう一人の敵──鑢七実が狙っていたのは千翼だけではない。
彼女は“あまぞん”。その名を持つ者すべてを狙っている。
その中には当然、鷹山仁自体も含まれている。
「虚刀流“蒲公英”」
彼女が放ったのは単純な、しかしそれ故に強大な打撃であった。仁は瓦礫にその身を投げ、音を立てて沈み込んでいく。
彼女は己が吹き飛ばした仁を一瞬だけ見下ろし、次に、ずい、と千翼に顔を近づけて来た。
彼女は己が吹き飛ばした仁を一瞬だけ見下ろし、次に、ずい、と千翼に顔を近づけて来た。
「自分の子どもを殺そうとする父親……“あまぞん”の世界にもそのようなことはあるのですね。
それなりによくある話だと思いますが、まぁ頑張ってください」
それなりによくある話だと思いますが、まぁ頑張ってください」
その淡々と語られる彼女に対し、千翼は苛立たしげに声を上げ手で彼女を振り払おうとする。
だが当然のようにその手は避けられ、いつの間にか数メートルの距離が取られている。
だが当然のようにその手は避けられ、いつの間にか数メートルの距離が取られている。
「そのような境遇自体に対しては応援はしてあげますが、それはあくまで貴方の境遇に対してだけなので、くれぐれもお間違いのないよう。
不快な“あまぞん”である貴方は、私はここで抜いてしまおうかと思います。
ですから──」
「AAAAAAAAA!」
不快な“あまぞん”である貴方は、私はここで抜いてしまおうかと思います。
ですから──」
「AAAAAAAAA!」
と、そこで彼女の言葉を遮るように獣の咆哮が廃工場を揺らす。
仁がその身を起こしていた。
七実の一撃をまともに食らったはずであるが、しかし彼がその程度で止まるはずがない。
その白い眼で辺りを茫洋とうかがないながら──それでも千翼を追い求める意思だけはまったぐ揺らいでいないことがわかった。
仁がその身を起こしていた。
七実の一撃をまともに食らったはずであるが、しかし彼がその程度で止まるはずがない。
その白い眼で辺りを茫洋とうかがないながら──それでも千翼を追い求める意思だけはまったぐ揺らいでいないことがわかった。
「 “あまぞん”本当に気持ちの悪い草ね。早く抜いてしまわないと」
侮蔑と軽蔑、そして嫌悪を滲ませた声で、彼女は仁に告げる。
だが当の仁は七実にはさして興味がないようで、雄叫びを上げ、千翼へと向かってくる。
それに応じるかのように、すっ、と七実はその瞳を細め、
だが当の仁は七実にはさして興味がないようで、雄叫びを上げ、千翼へと向かってくる。
それに応じるかのように、すっ、と七実はその瞳を細め、
「忍法“爪合わせ”」
その爪を一気に成長させ、刃のごとく鋭利な武器として展開していた。
アマゾンアルファのクローに対し、爪には爪を、ということなのか、当たり前のように彼女はそんなことをやってのける。
それでも彼女はただの人間──なのだろうか。
アマゾンアルファのクローに対し、爪には爪を、ということなのか、当たり前のように彼女はそんなことをやってのける。
それでも彼女はただの人間──なのだろうか。
「なっなんだよ! お前ら! 何でそんな!」
その様を見ていた善逸が、理解できない、というように声を上げる。
バットを構える彼は、この場で一人無力な五月を守るように立ちながら、
バットを構える彼は、この場で一人無力な五月を守るように立ちながら、
「何でそんな!そこまで千翼を殺そうとできるんだよ!
片方は初めて会った奴で! 片方は実の父親なんだろ!
なのに!なんでそんな、絶対に殺してやろうって、そんなに深く思えるんだ!」
片方は初めて会った奴で! 片方は実の父親なんだろ!
なのに!なんでそんな、絶対に殺してやろうって、そんなに深く思えるんだ!」
そう言って彼はバットを振り払い、七実、そして仁の下へと果敢に挑んでいく。
その言葉にはこの場に立つ者、五月と──何より千翼を守ろうとする強い意思が感じられた。
その言葉にはこの場に立つ者、五月と──何より千翼を守ろうとする強い意思が感じられた。
「千翼! お前は逃げろ! 俺がこいつらを何とかするから、その間にずっと遠くに──」
その彼が言い放った、その瞬間だった。
轟音。
とてつもない音が、世界を揺らしていた。
その爆音は獣の叫びすらも覆い隠すほどのあまりにも巨大な音であり、つまるところそれは爆発音であった。
その爆音は獣の叫びすらも覆い隠すほどのあまりにも巨大な音であり、つまるところそれは爆発音であった。
「な? これ、ばくだ──」
善逸の声は途中までしか聞こえなかった。
工場の奥から強大な爆発が起こり、千翼を、仁を、七実を、善逸を、五月をすべてを飲み込むように破壊の嵐が押し寄せて来た。
工場の奥から強大な爆発が起こり、千翼を、仁を、七実を、善逸を、五月をすべてを飲み込むように破壊の嵐が押し寄せて来た。
◇
「やった──かな?」
炎上する廃工場を見上げ、皇城ジウは冷静な口調で呟いた。
その手元には四葉の支給アイテムである爆弾の起爆スイッチがある。
かつて無名街という街を盛大に爆破するために用意されたものらしい。その出自はどうでもいいが、強力な武器であることには間違いなかった。
千刀といい、あの四葉は非常に強力なアイテムを引いていたようだった。
まぁどちらも彼女は使う気はなかったようだが。
かつて無名街という街を盛大に爆破するために用意されたものらしい。その出自はどうでもいいが、強力な武器であることには間違いなかった。
千刀といい、あの四葉は非常に強力なアイテムを引いていたようだった。
まぁどちらも彼女は使う気はなかったようだが。
「これでまとめて片付けられたんなら楽だけど、どうかな」
状況をジウは淡々と分析する。
もともと彼はあの工場へ入り込む三人組を見かけ、手に入れた爆弾によって一斉に処理してしまおうと考えてた。
表向きは友好的に近づく──という線ももちろん考えたが、それもそれで面倒だ。
爆弾で一斉に処理できるのならばそれに越したことはないだろう。
もともと彼はあの工場へ入り込む三人組を見かけ、手に入れた爆弾によって一斉に処理してしまおうと考えてた。
表向きは友好的に近づく──という線ももちろん考えたが、それもそれで面倒だ。
爆弾で一斉に処理できるのならばそれに越したことはないだろう。
そう思ってのことだったが、あの三人の加えて何人かの参加者が工場へと入っていくのみえた。
それを見た時──ジウは自らにツキが巡ってきていることを感じていた。
より多くの参加者を巻き込めれば、それだけ愛月しのを生き残らせるという、彼の目的に近づくのだから。
それを見た時──ジウは自らにツキが巡ってきていることを感じていた。
より多くの参加者を巻き込めれば、それだけ愛月しのを生き残らせるという、彼の目的に近づくのだから。
──まったく、今回のゲームはついてるよ。なんだって、前はあんな……
ジウは爆煙を見上げながら、デイパックを引き上げ歩き出す。
その腰には千刀の一本が釣られている。
あの仮想空間で再現された幕末で数年の月日を過ごした彼にしてみれば、その重さは安堵を形作るものだ。
その腰には千刀の一本が釣られている。
あの仮想空間で再現された幕末で数年の月日を過ごした彼にしてみれば、その重さは安堵を形作るものだ。
──逃げ延びた死に損ないがいれば、トドメを刺しておこう。
直接の対決すら相手に許さず、一方的に相手を屠る。
非情とも言える行いだが、幕末の京都では日常的に行われていた行為だ。
学生という本来の身分としてはもちろん、皇城ジウの剣士としての部分も、この行いに対して何ら抵抗を抱いてはいなかった
非情とも言える行いだが、幕末の京都では日常的に行われていた行為だ。
学生という本来の身分としてはもちろん、皇城ジウの剣士としての部分も、この行いに対して何ら抵抗を抱いてはいなかった
だから暗い森を抜け、燃え盛る工場の近くまで赴き、そこに血まみれで倒れている人間達を見たときも、何ら感傷を抱きはしなかった。
「うぅ……」
黒い和装を身にまとった少年と、長い髪の少女が重なるように倒れ伏している。
少女の方は擦り傷等はあっても出血は見られなかったが、頭でも打ったのか呻き声を漏らしている。
一方で少年の方は重傷だった。頭から血を流し、ガラスの破片などが全身に刺さっている。
状況を見るに、爆発の瞬間に少女を庇ったのだろうか。
少女の方は擦り傷等はあっても出血は見られなかったが、頭でも打ったのか呻き声を漏らしている。
一方で少年の方は重傷だった。頭から血を流し、ガラスの破片などが全身に刺さっている。
状況を見るに、爆発の瞬間に少女を庇ったのだろうか。
「ふうん、生きているのか」
ジウはそんな彼らに対し、冷たい声を漏らした。
戦闘があったこともあり、爆弾の設置位置は彼らから離れた部分になってしまった。
それ故生き残る余地もできてしまったのだろう。
今度仕掛ける際はもう少し爆弾の使い方を考えなければな、とジウは冷静に考えていた。
戦闘があったこともあり、爆弾の設置位置は彼らから離れた部分になってしまった。
それ故生き残る余地もできてしまったのだろう。
今度仕掛ける際はもう少し爆弾の使い方を考えなければな、とジウは冷静に考えていた。
──でもまぁ、これで二人は確実に殺れる。
淡々とそう考えながら、ジウは無言で抜刀する。
その淀みない動作は長年の幕末生活での研鑽の賜物であった。
その淀みない動作は長年の幕末生活での研鑽の賜物であった。
「……お前か」
そうして二人の命を屠ろうとしたその時、少年がすっと立ち上がっていた。
少年──善逸は痛みで意識が明晰でないのか瞳を閉じている。
少年──善逸は痛みで意識が明晰でないのか瞳を閉じている。
「お前がやったのか」
しかしどういう訳だろうか。
その口調はハッキリとしていおり、見えていないだろうに、まっすぐとジウへと向けて語りかけている。
その口調はハッキリとしていおり、見えていないだろうに、まっすぐとジウへと向けて語りかけている。
「バット、か。どうやらそちらはツキに恵まれなかったようだね」
「お前からは──ひどく投げやりな音がする」
「何?」
「お前からは──ひどく投げやりな音がする」
「何?」
ロクな獲物もなく、自身は大怪我を負っていて、目の前には万全の状態の剣士がいる。
そんな状況だというのに、彼の語気には怯えは感じれなれなかった。
そんな状況だというのに、彼の語気には怯えは感じれなれなかった。
「お前がひどい目にあったのはわかる。そんなつらい音をしているんだ。
この世のすべてを恨むほど、どうしようもないことがあったんだろう。
でも──今のお前はただ投げやりになってるだけだ」
この世のすべてを恨むほど、どうしようもないことがあったんだろう。
でも──今のお前はただ投げやりになってるだけだ」
代わりにあるのは──静かな怒りだった。
「自分がされて嫌だったことは、人にしちゃいけない」
そう語りながら彼、善逸はバットで構えを取る。
その姿に対しジウは嘲笑をする。ロクな剣も手に入れることができなかったらしい彼が、あまりにも無様な姿に見えたからだ。
その姿に対しジウは嘲笑をする。ロクな剣も手に入れることができなかったらしい彼が、あまりにも無様な姿に見えたからだ。
「そうかいじゃあ──」
ここで死んでもらう──その言葉を、ジウは言い切ることができなかったからだ。
ドン、と力強く地を蹴る音がして、次の瞬間にはジウの視界はぐるりと一回りしていた。
ドン、と力強く地を蹴る音がして、次の瞬間にはジウの視界はぐるりと一回りしていた。
「なっ……!」
何が起こったのか、ジウには全くわからなかった。
ただ何故か自分が吹き飛ばされ、地面に倒れ伏している。一方善逸がいつの間にか、自分の後ろに立っているのだ。
ただ何故か自分が吹き飛ばされ、地面に倒れ伏している。一方善逸がいつの間にか、自分の後ろに立っているのだ。
──斬られたのか、この僕が。
状況から彼は何が起こったかをすぐに類推する。
正確には斬られたのではない。善逸が持っていたのはバットであり、人を斬ることはできない。
だが腹部に走る鈍痛から、あれが真剣であれば間違いなく自分は死んでいたであろうことを確信する。
正確には斬られたのではない。善逸が持っていたのはバットであり、人を斬ることはできない。
だが腹部に走る鈍痛から、あれが真剣であれば間違いなく自分は死んでいたであろうことを確信する。
「────」
夜、月を背景に善逸の和装が風に吹かれ静かに揺れる。
今しがた彼がみせたのは、ジウが全く知らない剣術であった。
今しがた彼がみせたのは、ジウが全く知らない剣術であった。
雷の呼吸 壱ノ型──霹靂一閃
それは人と戦うための剣術ではない。
人を超越した怪──鬼を討つために長年継承されてきた鬼殺の剣術。
善逸が持つ、唯一にして最強の剣であった。
人を超越した怪──鬼を討つために長年継承されてきた鬼殺の剣術。
善逸が持つ、唯一にして最強の剣であった。
「──はぁ、はぁ」
血にまみれた善逸は、そこでようやく瞳を開けていた。
ジウは何とか身を起こそうとするが、しかしまともに一撃を食らったことで力が入らなかった。
ジウは何とか身を起こそうとするが、しかしまともに一撃を食らったことで力が入らなかった。
「い、五月ちゃん。それに、千翼──!」
そうこうしているうちに、はっと顔を上げた善逸が仲間と思しき者たちの名を挙げる。
血にまみれ、ボロボロになりながらも、彼らを助けようとする意思がそこには感じれられた。
血にまみれ、ボロボロになりながらも、彼らを助けようとする意思がそこには感じれられた。
「あら、生きていたのね」
だが──返ってきた答えは、冷たいものであった。
青き月光に照らされる中、その陶器のような肌は恐ろしいほどの美しさがあった。
その衣装にわずかに煤や綻びこそあれど、彼女のその身には傷一つ見られない。
その衣装にわずかに煤や綻びこそあれど、彼女のその身には傷一つ見られない。
鑢七実。
同じく爆発に巻き込まれていたはずの彼女が、当然のようにその場に現れていた。
同じく爆発に巻き込まれていたはずの彼女が、当然のようにその場に現れていた。
「忍法“足軽”。
重さを奪い、重力を無視した動きを可能にする忍法。
本当に便利で助かります」
重さを奪い、重力を無視した動きを可能にする忍法。
本当に便利で助かります」
「無傷、なのか──?」と倒れ臥すジウは思わず声を漏らしていた。
重さを奪う? 忍法? 一笑に付してしまいたいシュールな言葉の数々だったが、ラブデスター星人が見せた技術の数々を思えば、認めるしかない。
この女は爆風に対して、自らの重さを消すことで風に乗り、やり過ごして見せた、ということか。
重さを奪う? 忍法? 一笑に付してしまいたいシュールな言葉の数々だったが、ラブデスター星人が見せた技術の数々を思えば、認めるしかない。
この女は爆風に対して、自らの重さを消すことで風に乗り、やり過ごして見せた、ということか。
──クソっ、ヤバい状況だ。
襲撃に失敗した上に反撃に合い、しかも一人は完全に無傷な状況。
狩る側だったはずの自分が、一転して危機的な立場に置かれてしまっている。
狩る側だったはずの自分が、一転して危機的な立場に置かれてしまっている。
「あの“あまぞん”はいないみたいだけれど、どこに行ったのかしら?
雑草というものは、きちんと抜いておかないといくらでもポコポコと生えてくるものだから、ちゃんと死んだことを確認しないといけないわ」
「千翼は」
雑草というものは、きちんと抜いておかないといくらでもポコポコと生えてくるものだから、ちゃんと死んだことを確認しないといけないわ」
「千翼は」
満身創痍の善逸は、それでもなお戦意を揺らぐことはなかった。
武器というのにはあまりにも心もとないバットを構え、善逸は七実に対して啖呵を切っていた。
武器というのにはあまりにも心もとないバットを構え、善逸は七実に対して啖呵を切っていた。
「千翼はやらせない」
「あら、でも」
「あら、でも」
そんな善逸に対し、不思議そうに七実は言う。
「でもあの草……“あまぞん”は人間じゃないみたいですけれど、それでもいいのかしら?」
◇
千翼もまた、爆発を生き延びていた。
活性化したアマゾン細胞がもたらす驚異的な生命力によって、千翼はその命を永らえていた。
活性化したアマゾン細胞がもたらす驚異的な生命力によって、千翼はその命を永らえていた。
「う……」
しかし痛みがないわけではない。
運悪く倒れた瓦礫に巻き込まれた千翼は、断続的な鈍痛に苦しみながらも意識を必死に繋ぎ止める。
それから数分かけて瓦礫をその腕で強引に押しのけ、彼は立ち上がった。
運悪く倒れた瓦礫に巻き込まれた千翼は、断続的な鈍痛に苦しみながらも意識を必死に繋ぎ止める。
それから数分かけて瓦礫をその腕で強引に押しのけ、彼は立ち上がった。
変身はすでに解けている。
額についた玉のような汗をぬぐいながら、千翼はあたりを確認する。
額についた玉のような汗をぬぐいながら、千翼はあたりを確認する。
「……父さんは」
あの和装の女やアマゾンアルファ、鷹山仁。
彼らの狙いは明らかに千翼だった。アマゾンである自分を、その存在を許さないとでも言うように襲いかかってきた。
彼らの狙いは明らかに千翼だった。アマゾンである自分を、その存在を許さないとでも言うように襲いかかってきた。
──こんなところでも、俺は。
誰も彼もが命を奪うべく襲ってくる。
このゲームに呼ばれる前から続く、千翼が置かれた苦難の状況であった。
このゲームに呼ばれる前から続く、千翼が置かれた苦難の状況であった。
彼は単なるアマゾンではない。
アマゾンは本能的に食人を好む異形であるが、千翼はその中でも特に忌むべき存在として狙われてきた。
溶原性細胞。
それは人をアマゾンへと変貌させてしまう危険な細胞であり、その“オリジナル”こそ千翼であった。
放っておけば、人を次々とアマゾンへと変えてしまいかねない。実際、その細胞を悪用される形でアマゾンが世に溢れてしまっていた。
アマゾンは本能的に食人を好む異形であるが、千翼はその中でも特に忌むべき存在として狙われてきた。
溶原性細胞。
それは人をアマゾンへと変貌させてしまう危険な細胞であり、その“オリジナル”こそ千翼であった。
放っておけば、人を次々とアマゾンへと変えてしまいかねない。実際、その細胞を悪用される形でアマゾンが世に溢れてしまっていた。
だからこそ狙われていた。
千翼はこのゲームに呼ばれる前──父が、かつての同僚が、そしてただ一人の想い人が、すべてが彼を狙って襲いかかってきた。
千翼はこのゲームに呼ばれる前──父が、かつての同僚が、そしてただ一人の想い人が、すべてが彼を狙って襲いかかってきた。
「…………」
その時、廃工場には千翼以外の人間の姿は見えなかった。
炎は燃え盛り、爆破によって崩れた瓦礫が散乱しているが、そこに動くものは存在しない。
彼の敵はもちろん、同行者であった善逸や五月の姿も見えなかった。
炎は燃え盛り、爆破によって崩れた瓦礫が散乱しているが、そこに動くものは存在しない。
彼の敵はもちろん、同行者であった善逸や五月の姿も見えなかった。
──このまま、逃げてしまおうか。
そんな考えが、ふと千翼の脳裏に過った。
姿が見えないとはいえ、この辺りにまだ敵が残っている可能性は高い。
特に父、鷹山仁があの程度で死ぬとは到底思えなかった。
姿が見えないとはいえ、この辺りにまだ敵が残っている可能性は高い。
特に父、鷹山仁があの程度で死ぬとは到底思えなかった。
それに善逸たちだって、ここで会ったばかりの人間にすぎなかった。
千翼がアマゾン──危険な怪物であると知れば、彼らもまた敵になるのかもしれなかった。
千翼がアマゾン──危険な怪物であると知れば、彼らもまた敵になるのかもしれなかった。
そんなことを考えてしまった。
だからこそ千翼は一瞬動きを止めたが、
だからこそ千翼は一瞬動きを止めたが、
「うああああああああ」
遠くで叫び声が聞こえ、千翼ははっと声をあげた。
それは善逸の声であった。
その雄叫びは己を奮い立たせるときに発するものだ。
彼は戦っている。同じく生き延びたらしい彼は、すぐ近くで戦っているのだ。
その雄叫びは己を奮い立たせるときに発するものだ。
彼は戦っている。同じく生き延びたらしい彼は、すぐ近くで戦っているのだ。
「…………」
その声を聞き、彼は己のベルト、アマゾンズドライバーを握りしめ、葛藤の表情を浮かべた。
だがそれもわずかな間のことだった。
「クソ」と吐き捨てるように言い、彼は駆け出していた。
だがそれもわずかな間のことだった。
「クソ」と吐き捨てるように言い、彼は駆け出していた。
「アマゾンッ!」
千翼は支給されていたベルト、ネオアマゾンズドライバーにインジェクターを装填する。
そして──爆裂。
猛然と吹き上がる水しぶき。空気を揺らす高熱の衝撃波。全身の細胞が暴れ出し、その形を変えていく。
白靄のようなヴェールを経て──千翼は変身する。
そして──爆裂。
猛然と吹き上がる水しぶき。空気を揺らす高熱の衝撃波。全身の細胞が暴れ出し、その形を変えていく。
白靄のようなヴェールを経て──千翼は変身する。
──あの声、まだ近くにいるはず。
ヴェールが晴れた先に現れた青い影。
ベルトによってアマゾン細胞を活性化させた、千翼のもう一つの姿。
アマゾンズネオへと変身を遂げた彼は、猛然と戦場へ、善逸たちが戦っている場所へと向かうのだった。
ベルトによってアマゾン細胞を活性化させた、千翼のもう一つの姿。
アマゾンズネオへと変身を遂げた彼は、猛然と戦場へ、善逸たちが戦っている場所へと向かうのだった。
そこでは──
「知ってるよ! アイツが、人間じゃないことぐらい!」
◇
そこでは──血塗れの善逸が、七実に対して声を張り上げていた。
「そんなことは最初からわかってる!
アイツが人間じゃないってことぐらい!会った瞬間にはもうわかってる。
だって人間はあんな音はしないから」
アイツが人間じゃないってことぐらい!会った瞬間にはもうわかってる。
だって人間はあんな音はしないから」
息はひどく荒く、頭から血を垂らしている。
今にも倒れしまいそうな満身創痍の身体で、それでも彼は確かな戦意で敵と相対していた。
今にも倒れしまいそうな満身創痍の身体で、それでも彼は確かな戦意で敵と相対していた。
「アイツ、会った時からずっと腹が減ってたんだ。俺にはわかる。
本当は──ずっと腹が減ってるんだ、アイツ。俺たちを食べたいって、ずっと心の底では思ってたんだ」
本当は──ずっと腹が減ってるんだ、アイツ。俺たちを食べたいって、ずっと心の底では思ってたんだ」
戻ってきた千翼に気がついている様子はない。
それでも彼は語っている。
力強く、まっすぐと。
それでも彼は語っている。
力強く、まっすぐと。
「それでもアイツは我慢していた。
きっとこれまで、ずっとひどい目に遭ってきたんだろう。痛い目に遭わされてきたんだろう。
そんな音が──つらい音がアイツからはするんだ。
この世のすべてを憎んで、投げやりになってもおかしくないのに──でも、アイツは俺たちを食べようとしなかった!」
きっとこれまで、ずっとひどい目に遭ってきたんだろう。痛い目に遭わされてきたんだろう。
そんな音が──つらい音がアイツからはするんだ。
この世のすべてを憎んで、投げやりになってもおかしくないのに──でも、アイツは俺たちを食べようとしなかった!」
そう善逸は、目の前に立つ美しも強大な敵に言い放つのだった。
「そう、いい耳をしているのですね、貴方」
「そうだ──」
「そうだ──」
その言葉と同時に、善逸はバットを振りかぶる。
「──だから、お前は引っ込んでいろ!」
そしてその言葉と同時に彼は必死に七実へと向かっていく。
彼は逃走を選ばないのは千翼のためだけではない。その後ろに、五月がいるからだろう。
彼女を抱えて逃げることは叶わない。だから、ここで彼女と相対する。
だからこそ彼は突撃を選んだし、七実もまた、それを静かに迎え撃つことを選んだ。
彼は逃走を選ばないのは千翼のためだけではない。その後ろに、五月がいるからだろう。
彼女を抱えて逃げることは叶わない。だから、ここで彼女と相対する。
だからこそ彼は突撃を選んだし、七実もまた、それを静かに迎え撃つことを選んだ。
「──善逸!」
その瞬間を見ていたからこそ、千翼はその名を呼んでいた。
同時に千翼もまた駆け出している。腕部のブレードを展開し、声をあげてそこに突進していく。
同時に千翼もまた駆け出している。腕部のブレードを展開し、声をあげてそこに突進していく。
「虚刀流奥義“鏡花水月”」
──だが間に合わなかった。
千翼が全力で駆け抜けてなお、そこには厳然たる距離があり、二人の攻防はあまりにも速かった。
虚刀流最速の技である鏡花水月を放ち、そしてそれを正面から受けた善逸は当然のごとく血の海に沈んでいた。
月明かりの中、赤い赤い血が花のように咲いた。
一目で致死量とわかるおびただしい量の血をぶちまけながら、善逸はその身を枯らした。
虚刀流最速の技である鏡花水月を放ち、そしてそれを正面から受けた善逸は当然のごとく血の海に沈んでいた。
月明かりの中、赤い赤い血が花のように咲いた。
一目で致死量とわかるおびただしい量の血をぶちまけながら、善逸はその身を枯らした。
「────」
千翼は言葉にならない叫びを上げ、ブレードをきらめかせながら突進する。
「あら、そんなところにいたの」
「ああああああ!」
「ああああああ!」
返り血に濡れた七実は、横から現れた千翼に対し平坦な口調で言った。
「獣のような太刀筋、とても剣士とは呼べないわ」
「うるさい!」
「うるさい!」
どれだけ千翼が力任せに刃を振るっても当たらない。
まるでブレードの方が七実を避けているかのような感覚さえ覚える。
まるでブレードの方が七実を避けているかのような感覚さえ覚える。
七実の向こう側に、善逸の死体が見える。
つい先ほどまで生きていたはずの彼は、もはやもうただの肉塊と化している。
その言葉を噛みしめるように想いながら、千翼に必死に己がやるべきことを考えた。
つい先ほどまで生きていたはずの彼は、もはやもうただの肉塊と化している。
その言葉を噛みしめるように想いながら、千翼に必死に己がやるべきことを考えた。
「うわぁああ!」
その叫びとともに千翼はブレードを振り払う。
大振りな一撃。当たるはずもなく、七実は当然のようにそれを避けていた。
大振りな一撃。当たるはずもなく、七実は当然のようにそれを避けていた。
だが、距離はできていた。
そのことを確認した瞬間、千翼は思考を切り替える。
地を蹴り──地面に倒れる少女、五月をかつぎあげる。
そのことを確認した瞬間、千翼は思考を切り替える。
地を蹴り──地面に倒れる少女、五月をかつぎあげる。
──俺は、生きないと。
善逸が守った彼女の重さを感じつつ、千翼は必死にくらい森の中を駆け抜けた。
あの女から逃げて、そうして生き残る。
その想いを胸に彼は必死に駆け出していた。
あの女から逃げて、そうして生き残る。
その想いを胸に彼は必死に駆け出していた。
【吾妻善逸@鬼滅の刃 死亡】
◇
「……私としたことが、逃してしまったわ」
猛然と疾駆していく青い獣の背中を眺めながら、七実は一人声を漏らした。
彼女に見逃す・追わない、というつもりはなかった。
もちろん逃げゆく獣を追い詰め“狩って”しまおうと考えていたが、
彼女に見逃す・追わない、というつもりはなかった。
もちろん逃げゆく獣を追い詰め“狩って”しまおうと考えていたが、
「やっぱり、休んだ方がよかったようね」
七実はそこで──ガクリ、と膝をつく。
彼女は決して追わなかったのではない。追えなかったのだ。
彼女は決して追わなかったのではない。追えなかったのだ。
鑢七実。
虚刀流七代目当主である鑢七花の姉にして、“例外的に強い”存在。
虚刀流の修行を許されなかった身でありながら、その誰よりも強かったイレギュラー。
“例外”であったが故に、彼女もまた、実の父に殺しにきたことがある。
虚刀流七代目当主である鑢七花の姉にして、“例外的に強い”存在。
虚刀流の修行を許されなかった身でありながら、その誰よりも強かったイレギュラー。
“例外”であったが故に、彼女もまた、実の父に殺しにきたことがある。
「…………」
七実は額の汗を拭う。
彼女の唯一の弱点、それはその虚弱な身体にあった。
過剰なほどの生命力を持つアマゾンとは対照的に、七実自身の身体は弱く、体力・持久力は明確な弱点だった。
かつてはそれを変体刀が一つ、悪刀『鐚』にて補っていたが、それを失った今、彼女は長く戦うことはできない。
彼女の唯一の弱点、それはその虚弱な身体にあった。
過剰なほどの生命力を持つアマゾンとは対照的に、七実自身の身体は弱く、体力・持久力は明確な弱点だった。
かつてはそれを変体刀が一つ、悪刀『鐚』にて補っていたが、それを失った今、彼女は長く戦うことはできない。
事実、先ほどの戦闘も千翼や善逸、仁がまとめて敵となっていれば、倒れているのは七実の方かもしれなかった。
「でも変わらないわ……あの“あまぞん”とかいう不快な草はどうせ抜いてしまうんだから」
逃げゆく青い獣に対し、七実は確かな殺意を滲ませながら、そう呟いた。
◇
戦場からもう一人、息荒く逃げようとしている少年がいた。
「ハァ、ハァ、ハァ……なんだ、なんだアレは」
皇城ジウ。
善逸に一撃で伏されていた彼は、千翼と七実の戦闘の陰に隠れる形で必死に逃げていた。
善逸に一撃で伏されていた彼は、千翼と七実の戦闘の陰に隠れる形で必死に逃げていた。
爆弾を仕掛け、参加者を一網打尽にする。
その作戦は完全にうまく行っていたはずだった。
にも関わらず彼は今惨めな敗走に甘んじている。
その作戦は完全にうまく行っていたはずだった。
にも関わらず彼は今惨めな敗走に甘んじている。
「クソ。迂闊だった、ここはラブデスター実験とは違うんだ」
先のゲームにおいて、基本的に物理的な暴力は“抜け道”のようなものだった。
あくまでラブデスター実験は、あの異星人が愛を計るための実験であったが、このゲームは違う。
より直接的な殺し合いなのだ。
あくまでラブデスター実験は、あの異星人が愛を計るための実験であったが、このゲームは違う。
より直接的な殺し合いなのだ。
──参加者の中にファウストやレイディみたいな奴らがいるのか……クソ、戦略をまた考えないと。
爆弾を使っても無傷で生き残るようなのが参加者に当たり前のようにいる。
その事実を噛み締めながら、ジウはもう一つの懸案事項を考える。
その事実を噛み締めながら、ジウはもう一つの懸案事項を考える。
──あの顔、四葉の姉妹か。
先ほどの襲撃で出会った少女の顔にジウは覚えがあった。
他でもない数時間前に彼が殺害した少女、中野四葉と瓜二つの顔をしていたからだ。
五つ子、と彼女は言っていたし、同じ顔の参加者がいること自体はさして驚くべきことではない。
ただ、こんな近くにいるとは思っていなかったが。
他でもない数時間前に彼が殺害した少女、中野四葉と瓜二つの顔をしていたからだ。
五つ子、と彼女は言っていたし、同じ顔の参加者がいること自体はさして驚くべきことではない。
ただ、こんな近くにいるとは思っていなかったが。
──顔を見られたか? 意識を失っていたようだし、忘れてくれているといいんだが。
ジウとしては、場合によっては集団に潜り込み、毒を使って参加者を殺害するプランも考えていた。
その際、ゲームに積極的なことを周りに知られてしまうことはマズイ。
その際、ゲームに積極的なことを周りに知られてしまうことはマズイ。
──あの女と、青い奴だけは殺さないと。
問題はあの少女が中野姉妹の誰であったかジウには判別がつかないことだが──とにかく優先して殺すべきなのは間違いない。
その想いを胸に、ジウは必死に森を駆け抜けていた。
その想いを胸に、ジウは必死に森を駆け抜けていた。
◇
廃工場に、ひゅううううう、と風が吹いていた。
爆弾による炎が散発的に残る中、ガラス片、錆びついた鉄板、破壊された重機などが散乱している。
爆弾による炎が散発的に残る中、ガラス片、錆びついた鉄板、破壊された重機などが散乱している。
千翼も、五月も、七実も、善逸も、ここに集ったものはすでに姿を消している。
誰もが去ったその場所で──
誰もが去ったその場所で──
「ちひろぉ」
──瓦礫の山の中に、赤い腕が生えていた。
「ふふふ、ははははははは!」
赤い獣は、ゆっくりと身を起こす。
獣のごとき、理性の感じられない笑い声をあげながら、アマゾンアルファ、鷹山仁は立ち上がっていた。
爆発に巻き込まれ、身動きが一時的に取れなくなっていた仁だが、千翼同様、アマゾンはその程度で倒れるような存在ではない。
獣のごとき、理性の感じられない笑い声をあげながら、アマゾンアルファ、鷹山仁は立ち上がっていた。
爆発に巻き込まれ、身動きが一時的に取れなくなっていた仁だが、千翼同様、アマゾンはその程度で倒れるような存在ではない。
「あーあ、千翼、本当に……お前は」
久方ぶりに再開した己の息子。あの顔を思い出しながら、彼はとあることに気づいていた。
「お前からは──七羽さんの匂いがする」
その事実が何を意味するのか。
仁はわかっていたし、それ故に絶対に成し遂げるべきこともあった。
仁はわかっていたし、それ故に絶対に成し遂げるべきこともあった。
「千翼──お前は俺が殺す」
そう茫洋と呟きながら、仁は歩き出す。
ただ一人、ふらついた足取りで。
ただ一人、ふらついた足取りで。
【D-6/一日目・黎明】
※【「超」世界のバット@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!】がどこかに転がっています
※【「超」世界のバット@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!】がどこかに転がっています
【鷹山仁@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:盲目に近い状態
[装備]:仁のアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:全ての『アマゾン』を狩る、『人間』を守る
1.千翼を殺す
2.殺し合いからの脱出
[備考]
※参戦時期は2期7話の千翼達との邂逅前。
※盲目に近い状態なので文字を読むことなどはかなり厳しいです。
[状態]:盲目に近い状態
[装備]:仁のアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:全ての『アマゾン』を狩る、『人間』を守る
1.千翼を殺す
2.殺し合いからの脱出
[備考]
※参戦時期は2期7話の千翼達との邂逅前。
※盲目に近い状態なので文字を読むことなどはかなり厳しいです。
【鑢七実@刀語】
[状態]:疲労(大)、割と不機嫌、返り血
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2~8(確認済み、衣類系は無し)
[思考・状況]
基本方針:適当にぶらつく。細かいところをどうするかはその時々で判断。
1:七花を探す。とがめに関しては保留。
2:アマゾンに不快感。さっきの少年(千翼)は殺す
[備考]
※参戦時期は死亡後ですが、体の状態は悪刀・鐚を使用する前の病弱状態です。
※自分が生きているのはアマゾン細胞によるものではないかという可能性を考えています。
また、その想像に対して強い不快感を感じています。
※見稽古によって善逸の耳の良さ・呼吸法を会得しています
[状態]:疲労(大)、割と不機嫌、返り血
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2~8(確認済み、衣類系は無し)
[思考・状況]
基本方針:適当にぶらつく。細かいところをどうするかはその時々で判断。
1:七花を探す。とがめに関しては保留。
2:アマゾンに不快感。さっきの少年(千翼)は殺す
[備考]
※参戦時期は死亡後ですが、体の状態は悪刀・鐚を使用する前の病弱状態です。
※自分が生きているのはアマゾン細胞によるものではないかという可能性を考えています。
また、その想像に対して強い不快感を感じています。
※見稽古によって善逸の耳の良さ・呼吸法を会得しています
【皇城ジウ@ラブデスター】
[状態]:健康
[装備]:千刀・『�綮』@刀語
[道具]:基本支給品一式、救急キット@Fate/Grand Order、ネクタール・ボンボン@Fate/Grand Order、無名街爆破セレモニーで使用された爆弾@HiGH&LOW、ランダム支給品0~1(前述のものと合わせて支給品が合計3つ以下に見える状態)
[思考・状況]
基本方針:しのを生き残らせる
1:しのを優勝させるために皆殺す
2:さっきの青い獣(千翼)は殺す
3:顔を見られたかもしれない四葉と同じ顔の女(中野姉妹)を殺す
[備考]
※参戦時期は細川ひさこの仮想空間(新選組のやつ)から帰還してミクニを殺害するまでの間です。
※中野四葉から彼女の知り合いについて話を聞きました。少なくとも林間学校以降の時系列のものです。
[状態]:健康
[装備]:千刀・『�綮』@刀語
[道具]:基本支給品一式、救急キット@Fate/Grand Order、ネクタール・ボンボン@Fate/Grand Order、無名街爆破セレモニーで使用された爆弾@HiGH&LOW、ランダム支給品0~1(前述のものと合わせて支給品が合計3つ以下に見える状態)
[思考・状況]
基本方針:しのを生き残らせる
1:しのを優勝させるために皆殺す
2:さっきの青い獣(千翼)は殺す
3:顔を見られたかもしれない四葉と同じ顔の女(中野姉妹)を殺す
[備考]
※参戦時期は細川ひさこの仮想空間(新選組のやつ)から帰還してミクニを殺害するまでの間です。
※中野四葉から彼女の知り合いについて話を聞きました。少なくとも林間学校以降の時系列のものです。
【無名街爆破セレモニーで使用された爆弾@HiGH&LOW】
中野四葉に支給された爆弾。
一つの起爆装置で複数の爆弾を爆破させることができる。
爆弾は複数支給されており、まだ残りがある様子。
中野四葉に支給された爆弾。
一つの起爆装置で複数の爆弾を爆破させることができる。
爆弾は複数支給されており、まだ残りがある様子。
……そうして千翼は逃げた。
七実や仁がいた場所から、必死に彼は逃げた。
森を抜け、いつしか周りがアスファルトで舗装された街になっても、彼は駆け続け──そして倒れた。
森を抜け、いつしか周りがアスファルトで舗装された街になっても、彼は駆け続け──そして倒れた。
「……うぅ」
と膝をつき、額の汗を拭う。
背中には少女、五月の身体がある。
千翼は彼女の身体を背負って全力疾走してきたが、そのこと自体はさして苦ではなかった。
アマゾンの体力を持ってしてみれば、少女一人を背負うことは問題ない。
問題なのは──
背中には少女、五月の身体がある。
千翼は彼女の身体を背負って全力疾走してきたが、そのこと自体はさして苦ではなかった。
アマゾンの体力を持ってしてみれば、少女一人を背負うことは問題ない。
問題なのは──
「──お腹が、空いた」
空腹であった。
それは細胞すべてが叫びを上げている、
食え、食らえ、食べてしまえ、と千翼の身を飢えが貫いている。
それは細胞すべてが叫びを上げている、
食え、食らえ、食べてしまえ、と千翼の身を飢えが貫いている。
その衝動を必死に押さえ込むように、千翼は腹を抑えていた。
幸い、あの女が追ってくる様子はなかった。生きているだろう仁の姿も見えない。
逃げることはできた──だが、これからどうするべきか。
幸い、あの女が追ってくる様子はなかった。生きているだろう仁の姿も見えない。
逃げることはできた──だが、これからどうするべきか。
絶望的な気持ちが胸を支配しそうになったその時、視界の隅に何かが引っかかった。
「……え?」
千翼は思わず声を漏らしていた。
それは、間違っても生きているものなどではなかった。
引き裂かれ、血を撒き散らし、ただの肉塊へと堕した何か。
引き裂かれ、血を撒き散らし、ただの肉塊へと堕した何か。
今まで何度も見てきた光景だった。
善逸だって──こうなってしまった。
善逸だって──こうなってしまった。
「あ──」
だが──それでも、千翼は目の前の存在が信じることができなかった。
目が見開かれ、視界がぐるりと回る。喉奥から食欲以外の何かが溢れてくる。
目が見開かれ、視界がぐるりと回る。喉奥から食欲以外の何かが溢れてくる。
千翼は、震える指先で、つい先ほど命だった筈のものに触れた。
「──イユ」
その先には、彼のよく知る少女の──残骸があった。
【E-6(イユの死体の前)/1日目・黎明】
【千翼@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:ひどい空腹、全身に軽傷
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:──
1:──
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
[状態]:ひどい空腹、全身に軽傷
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:──
1:──
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
【中野五月@五等分の花嫁】
[状態]:全身に軽傷、気を失っている
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、マンジュウでわかるFGO@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない。
1:意識不明
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
[状態]:全身に軽傷、気を失っている
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、マンジュウでわかるFGO@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない。
1:意識不明
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 空腹の音 | 吾妻善逸 | Eliminated |
| 千翼 | 慟哭で本能もそう喰らい尽くせよ | |
| 中野五月 | ||
| Anfang | 鷹山仁 | COME RAIN OR SHINE |
| やがてのあしたに星がふる | 鑢七実 | 姉弟 |
| メルティ・スイートハートとビターステップ | 皇城ジウ | 皇城ジウは知らない |