獣達の夢 ◆Wott.eaRjU
ピリピリとした風が空を裂く。
灼熱から生まれ出たその風は触れるもの全てを焼かんとしていた。
炎の奔流。英霊の座に刻まれた存在が振るう魔力を基とするもの。
常人は言うに及ばず、人の理を外れた存在でさえ灼くことは容易であろう。
その炎はただ一振りにより薙ぎ払われ、刀をつたい塵となって空へ消えた。
灼熱から生まれ出たその風は触れるもの全てを焼かんとしていた。
炎の奔流。英霊の座に刻まれた存在が振るう魔力を基とするもの。
常人は言うに及ばず、人の理を外れた存在でさえ灼くことは容易であろう。
その炎はただ一振りにより薙ぎ払われ、刀をつたい塵となって空へ消えた。
「あらあらまあまあ——虫と思えばはぐれサーヴァントでしたか」
炎を裂き、顔を浮かばせるは平安の日本にて、幾多の怪異を討ち滅ぼした英雄こと源頼光。
ただし、そこに居るのはその源頼光の骸。一切塵殺の宿業を埋め込まれた、“英霊剣豪”が一騎——ライダー・黒縄地獄。
黒縄地獄は眼前の敵、薄緑色の長髪をなびかせる少女に対して笑う。
少女は黒縄地獄と同じく、人智を超えた存在であり、先程の炎を生み出したサーヴァント。
真名を清姫といった。
ただし、そこに居るのはその源頼光の骸。一切塵殺の宿業を埋め込まれた、“英霊剣豪”が一騎——ライダー・黒縄地獄。
黒縄地獄は眼前の敵、薄緑色の長髪をなびかせる少女に対して笑う。
少女は黒縄地獄と同じく、人智を超えた存在であり、先程の炎を生み出したサーヴァント。
真名を清姫といった。
「わたくし、これでも気を遣ったのですが——ええ、まあわたくしとしてはなんですが」
清姫には黒縄地獄のような戦場の逸話は持たない。
一人の男性を恋い焦がれ、恋い焦がれ、ただ恋い焦がれた。
しかし、男性はその恋に答えることはなく、彼女を遠ざけた。
一つの嘘。男性にとってはきっと大事とは捉えていなかったであろう言葉。
彼女はそれを信じて、裏切られて、悲観に暮れて、そして追った。
ただ、追って追って追って追って。
その先に手に入れたものは男性の心ではなく、総てを焼くための炎と醜い異形。
一人の男性を恋い焦がれ、恋い焦がれ、ただ恋い焦がれた。
しかし、男性はその恋に答えることはなく、彼女を遠ざけた。
一つの嘘。男性にとってはきっと大事とは捉えていなかったであろう言葉。
彼女はそれを信じて、裏切られて、悲観に暮れて、そして追った。
ただ、追って追って追って追って。
その先に手に入れたものは男性の心ではなく、総てを焼くための炎と醜い異形。
「やっぱり面倒なので、焼き払わせてくださいね。頼光さんでしたか……まあ、なんでもいいですけど。ますたぁさえいればいいのですから」
「ええ。しっかりと焼くことをすすめましょう。せいぜい、あなたのマスターがこの刀で斬り捨てられる前に」
「ええ。しっかりと焼くことをすすめましょう。せいぜい、あなたのマスターがこの刀で斬り捨てられる前に」
炎をまとう清姫が笑い、黒縄地獄は刀の構えにより応えた。
※
エリアC-3の一画でライダー・黒縄地獄と清姫は出会った。その出会いに作為はなく、ただの偶然であった。
それでもサーヴァントの存在である二人は、瞬時にお互いが自身と同様のものであると悟った。
清姫にとってマスターの無事が第一の目的であり、戦闘は避けられるものであれば避けたいと考えていた。
しかし、黒縄地獄の考えは違った。彼女はサーヴァントであるだけでなく、英霊剣豪の一騎。
黒縄地獄は英霊剣豪の装置として、この場に居る存在の殲滅が目的としている。
先刻は猗窩座ともう一人、新たな存在が現れ、消耗を増やさないために場を引いただけに過ぎない。
話を持ち掛けようとする清姫に対し、黒縄地獄は雷を纏った矢で返答し、現在に至った。
それでもサーヴァントの存在である二人は、瞬時にお互いが自身と同様のものであると悟った。
清姫にとってマスターの無事が第一の目的であり、戦闘は避けられるものであれば避けたいと考えていた。
しかし、黒縄地獄の考えは違った。彼女はサーヴァントであるだけでなく、英霊剣豪の一騎。
黒縄地獄は英霊剣豪の装置として、この場に居る存在の殲滅が目的としている。
先刻は猗窩座ともう一人、新たな存在が現れ、消耗を増やさないために場を引いただけに過ぎない。
話を持ち掛けようとする清姫に対し、黒縄地獄は雷を纏った矢で返答し、現在に至った。
「ああ、なんて下品な炎でしょうか」
黒縄地獄が刀を握り、前方へ踏み込む。その踏み込みは地を滑空するが如く軽やかに黒縄地獄の身体を跳ばした。
草木の揺れが踏み込みの速さを物語るかと思えば、握りしめた刀より無数の風が吹き荒れる。
目にも止まらぬ剣の切っ先の震えが炎を揺らし切り裂く。
生前に鳴らした、類まれな剣術の業に英霊剣豪の力が重なり剣の威力を生んだ。
清姫の放った炎が瞬く間に四散し、黒縄地獄はその体の勢いを殺さずに炎に飛び込む。
苦痛にゆがむ表情など見せることなく、ただ目の前の敵との距離を縮める。
しかし、そこには在るべき存在は見当たらない。
草木の揺れが踏み込みの速さを物語るかと思えば、握りしめた刀より無数の風が吹き荒れる。
目にも止まらぬ剣の切っ先の震えが炎を揺らし切り裂く。
生前に鳴らした、類まれな剣術の業に英霊剣豪の力が重なり剣の威力を生んだ。
清姫の放った炎が瞬く間に四散し、黒縄地獄はその体の勢いを殺さずに炎に飛び込む。
苦痛にゆがむ表情など見せることなく、ただ目の前の敵との距離を縮める。
しかし、そこには在るべき存在は見当たらない。
「あら。あなたの雷こそ、ばちばちと……とても耳障りです」
見上げる黒縄地獄の視線の先に清姫の姿が見えた。
清姫はふわりと風に吹かれるような跳躍により、後方へ体を飛ばした。
サーヴァントの力の源を利用した魔力は、生前武芸に関しては一般の域を超えぬ清姫の身体を羽ばたくように動かせる。
そして清姫を囲むように四つの青白い炎が小さく灯り、一瞬のうちに彼女の頭程度の大きさに膨れた。
清姫は手に握った扇を口元に寄せ、舞う様に華奢な体をねじらせ、廻る。
四つの炎は一瞬清姫と同じように動き、やがて彼女の体を離れ飛んでいく。
向かう先は天ではなく、地上。黒縄地獄の双眸に吸い込まれるように空を切った。
清姫はふわりと風に吹かれるような跳躍により、後方へ体を飛ばした。
サーヴァントの力の源を利用した魔力は、生前武芸に関しては一般の域を超えぬ清姫の身体を羽ばたくように動かせる。
そして清姫を囲むように四つの青白い炎が小さく灯り、一瞬のうちに彼女の頭程度の大きさに膨れた。
清姫は手に握った扇を口元に寄せ、舞う様に華奢な体をねじらせ、廻る。
四つの炎は一瞬清姫と同じように動き、やがて彼女の体を離れ飛んでいく。
向かう先は天ではなく、地上。黒縄地獄の双眸に吸い込まれるように空を切った。
「気が合わないようですね。いえ、これはこれで——」
前方へ踏み込んだ体にいともたやすく静止をかけ、斜め上方へ黒縄地獄が跳ぶ。
静止は一瞬。常人には予想も出来ないほどの軌道で動く。
見る者にとって身体にかかる負担は予測も出来ないが、黒縄地獄に一切の怯みはなく、ただ風を切る音を捨て疾駆する。
刀を振るう。害にもならない羽虫を払うように、握った刀で清姫の炎を斬り捨てる。
そして宙に浮いた黒縄地獄の身体は地面に向かうことなく、そのまま清姫へ向かう。
英霊剣豪の強靭な身体能力はたとえ主催者により手が加えられていたとしても、人の常識には余る代物。
清姫の表情には少しの驚きの色が見て取れた。
そんな清姫を嘲笑うかのように黒縄地獄の身体は、清姫を越え漆黒の天を背負う。
両手に握りしは刀。決して折れぬ、一振りの絶刀で上段の構えを取る。
静止は一瞬。常人には予想も出来ないほどの軌道で動く。
見る者にとって身体にかかる負担は予測も出来ないが、黒縄地獄に一切の怯みはなく、ただ風を切る音を捨て疾駆する。
刀を振るう。害にもならない羽虫を払うように、握った刀で清姫の炎を斬り捨てる。
そして宙に浮いた黒縄地獄の身体は地面に向かうことなく、そのまま清姫へ向かう。
英霊剣豪の強靭な身体能力はたとえ主催者により手が加えられていたとしても、人の常識には余る代物。
清姫の表情には少しの驚きの色が見て取れた。
そんな清姫を嘲笑うかのように黒縄地獄の身体は、清姫を越え漆黒の天を背負う。
両手に握りしは刀。決して折れぬ、一振りの絶刀で上段の構えを取る。
「そちらも目障りですよ——醜い羽虫が」
強烈な一撃が清姫を襲うが、彼女は瞬時に扇で対抗する。
ただの扇ではなく、サーヴァントの魔力で構成された扇の性能は言うに及ばず。
しかし、相対する相手もまたサーヴァントであり、更には英霊剣豪の一騎。
ライダー・黒縄地獄——源頼朝の雷鳴とも言える一撃は生半可なものではない。
一撃の力が増す。徐々にではなく、息もつかぬ一瞬に。
増大した力の一端が清姫の視界を走り、彼女の全身をなぞるようにほとばしる。
ただの扇ではなく、サーヴァントの魔力で構成された扇の性能は言うに及ばず。
しかし、相対する相手もまたサーヴァントであり、更には英霊剣豪の一騎。
ライダー・黒縄地獄——源頼朝の雷鳴とも言える一撃は生半可なものではない。
一撃の力が増す。徐々にではなく、息もつかぬ一瞬に。
増大した力の一端が清姫の視界を走り、彼女の全身をなぞるようにほとばしる。
「ッ——!」
「さぁ、無様に散りなさい。その汚い魔力は、精々拾って上げましょう」
「さぁ、無様に散りなさい。その汚い魔力は、精々拾って上げましょう」
雷が爆発する。放出する魔力が轟雷となり、絶刀の刀身に帯びる。
先刻まで刀を受けていた清姫の扇は文字通り弾き飛ばされ、宙に舞った。
清姫は苦悶の表情を浮かべ、溜まらずに下方へ落ちていく。
そんな清姫を黒縄地獄は冷たい目で見降ろし——否、彼女の眼前に今まさに迫っている。
身体をしなやかに回し、両腕に握った刀を振りかぶり、清姫の身体に横殴りに叩き込む。
言いようのない音と嗚咽が響く。同時に、清姫の体は草林の中へ飛び込むように吸い込まれた。
先刻まで刀を受けていた清姫の扇は文字通り弾き飛ばされ、宙に舞った。
清姫は苦悶の表情を浮かべ、溜まらずに下方へ落ちていく。
そんな清姫を黒縄地獄は冷たい目で見降ろし——否、彼女の眼前に今まさに迫っている。
身体をしなやかに回し、両腕に握った刀を振りかぶり、清姫の身体に横殴りに叩き込む。
言いようのない音と嗚咽が響く。同時に、清姫の体は草林の中へ飛び込むように吸い込まれた。
※
「まったく……敵であれば邪魔なこと、この上ないですね」
衝撃にとばされそうになった意識を辿り、体を起こしながら清姫は思考する。
鋭く睨むはライダー・黒縄地獄と名前だけは名乗った、にっくき敵。
清姫にとって同じカルデアに所属するサーヴァントであり、特に親交があるわけではない。
互いに存在を認知はしている程度。それでもあちらは自身について特別反応を示さない。
おそらくは自身を知らない源頼光であり、彼女にとっての自分もそうなのであろう。
何故、ライダー・黒縄地獄という聞き覚えのない名前を名乗っているかはわからないが——いいや、違う。
理解が出来ないわけではない。
そう、ただ単に、そんなことに興味はないのだから。
鋭く睨むはライダー・黒縄地獄と名前だけは名乗った、にっくき敵。
清姫にとって同じカルデアに所属するサーヴァントであり、特に親交があるわけではない。
互いに存在を認知はしている程度。それでもあちらは自身について特別反応を示さない。
おそらくは自身を知らない源頼光であり、彼女にとっての自分もそうなのであろう。
何故、ライダー・黒縄地獄という聞き覚えのない名前を名乗っているかはわからないが——いいや、違う。
理解が出来ないわけではない。
そう、ただ単に、そんなことに興味はないのだから。
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔…ますたぁの元に行くためには邪魔ですよ」
想うは自分を召還した、カルデアの魔術師、藤丸立香の事。
“ますたぁ”である彼の無事こそが最優先の目的であり、他は些細な事でしかない。
ああ、でもますたぁは違う考えなのだろう。
カルデアに呼ばれたサーヴァントを一人でも欠けないように救おうとするに違いない。
やさしいますたぁ。嘘はぜったいにつかないますたぁ。わたしのますたぁ。
でも、でも、でもたとえばそう、この清姫が無事に切り抜けるためならば。
愛するますたぁのサーヴァントが一騎、無惨に焼き尽くされても、きっとわかってくれるはずだから。
“ますたぁ”である彼の無事こそが最優先の目的であり、他は些細な事でしかない。
ああ、でもますたぁは違う考えなのだろう。
カルデアに呼ばれたサーヴァントを一人でも欠けないように救おうとするに違いない。
やさしいますたぁ。嘘はぜったいにつかないますたぁ。わたしのますたぁ。
でも、でも、でもたとえばそう、この清姫が無事に切り抜けるためならば。
愛するますたぁのサーヴァントが一騎、無惨に焼き尽くされても、きっとわかってくれるはずだから。
「だから、さっさと燃えちゃってくださいね」
清姫が翻すは再度浮かばせた扇。
扇の一振りにより生まれた赤白い炎を一直線に飛ばす。
狙いは黒縄地獄。細い両目がかすかに見開くように動いたのを清姫は自らの炎越しに見た。
黒縄地獄は離脱も、刀での切り払いも間に合わず、瞬く間に炎に包まれていく。
扇の一振りにより生まれた赤白い炎を一直線に飛ばす。
狙いは黒縄地獄。細い両目がかすかに見開くように動いたのを清姫は自らの炎越しに見た。
黒縄地獄は離脱も、刀での切り払いも間に合わず、瞬く間に炎に包まれていく。
「……さすがはサーヴァントとでも言いましょうか」
黒縄地獄に油断があったわけではない。
先刻の一撃には確かに手ごたえがあったが、サーヴァントの頑強な身体はやはり侮れない。
たとえ甲冑に身を包もうとも容易に切り捨てられる雑兵とは違うのだろう。
加えて清姫の魔力を伴った炎の速度もまた計り知れないものだった。
黒縄地獄といえども、放っておけば骨の髄まで焼き尽くされてしまう炎の勢いは今も健在。
刀で受けた炎を再度切り払い、次なる攻撃を加えようとする清姫の先手を取ろうとする。
その瞬間だった。この場で初めて感じた感覚。
先刻死合った鬼とはまた違う存在を黒縄地獄は感じ、清姫も同時に知覚した。
先刻の一撃には確かに手ごたえがあったが、サーヴァントの頑強な身体はやはり侮れない。
たとえ甲冑に身を包もうとも容易に切り捨てられる雑兵とは違うのだろう。
加えて清姫の魔力を伴った炎の速度もまた計り知れないものだった。
黒縄地獄といえども、放っておけば骨の髄まで焼き尽くされてしまう炎の勢いは今も健在。
刀で受けた炎を再度切り払い、次なる攻撃を加えようとする清姫の先手を取ろうとする。
その瞬間だった。この場で初めて感じた感覚。
先刻死合った鬼とはまた違う存在を黒縄地獄は感じ、清姫も同時に知覚した。
「——なんだ。楽しそうじゃねぇか」
派手な洋装のシャツを羽織り、茶色に染めた男が嗤う。
黒縄地獄と清姫に向かって、悠然と歩いている。
黒縄地獄は男の歩みを止めようとはしなかった。
恐れを抱いたわけではない。ただ、目の前の存在が一体なんであるかが気になった。
サーヴァントではない。独特の魔力反応を感じない。
程度はあれども下総の国で散々と切り捨てた雑兵のような、使命に殉ずる想いもない。
言葉では飾れない、もっと本能的な何かが。
男から感じるものは、そこにあるものは、ただ純粋な願い。
そこまで思考を走らせ、ああ、なるほどと黒縄地獄は得心した。
黒縄地獄と清姫に向かって、悠然と歩いている。
黒縄地獄は男の歩みを止めようとはしなかった。
恐れを抱いたわけではない。ただ、目の前の存在が一体なんであるかが気になった。
サーヴァントではない。独特の魔力反応を感じない。
程度はあれども下総の国で散々と切り捨てた雑兵のような、使命に殉ずる想いもない。
言葉では飾れない、もっと本能的な何かが。
男から感じるものは、そこにあるものは、ただ純粋な願い。
そこまで思考を走らせ、ああ、なるほどと黒縄地獄は得心した。
これは——ただの獣なのだと。
「俺も混ぜろ……変身!」
剣閃が走る。
※
黒縄地獄に執拗に斬りかかるは紫色の装甲に身を包んだ男。男の名は浅倉威といった。
神崎士郎により、ライダーデッキを渡された浅倉は本能の赴くままに闘い続けた。
浅倉にとってこの殺し合いも変わりはない。
参加者が70名に増え、主催者が変わっただけに過ぎない。
ただ、自身の苛立ちを殺せるような、闘いが出来ればなんでもいいのだから。
浅倉は会場に放置されていた鏡に身を映し、仮面ライダー王蛇に姿を変えた。
大蛇の牙をかたどった、ベノサーベルの禍々しい刀身を黒縄地獄の身体に突き立てんとする勢いで振りかぶる。
神崎士郎により、ライダーデッキを渡された浅倉は本能の赴くままに闘い続けた。
浅倉にとってこの殺し合いも変わりはない。
参加者が70名に増え、主催者が変わっただけに過ぎない。
ただ、自身の苛立ちを殺せるような、闘いが出来ればなんでもいいのだから。
浅倉は会場に放置されていた鏡に身を映し、仮面ライダー王蛇に姿を変えた。
大蛇の牙をかたどった、ベノサーベルの禍々しい刀身を黒縄地獄の身体に突き立てんとする勢いで振りかぶる。
「——大振りなっ」
しかし、黒縄地獄の身体にベノサーベルは届かない。
最小の身の動きで黒縄地獄は王蛇の剣をかいくぐり、彼との距離を詰める。
予想以上の黒縄地獄の俊敏さに王蛇は一瞬動きを止めてしまう。
好機を逃す黒縄地獄ではない。剣による突きを一度、二度三度と一瞬の内に無数の剣撃を放つ。
王蛇は後方へ身体を揺らすが、彼の動きよりも黒縄地獄の方が一手以上は速い。
最小の身の動きで黒縄地獄は王蛇の剣をかいくぐり、彼との距離を詰める。
予想以上の黒縄地獄の俊敏さに王蛇は一瞬動きを止めてしまう。
好機を逃す黒縄地獄ではない。剣による突きを一度、二度三度と一瞬の内に無数の剣撃を放つ。
王蛇は後方へ身体を揺らすが、彼の動きよりも黒縄地獄の方が一手以上は速い。
「がっ!」
だが、黒縄地獄が感じた手ごたえは浅いの一言。
後方へ吹き飛ばされる王蛇の装甲を貫き、無数の血しぶきが散るものの致命傷とは程遠い。
おそらくは目で見えていたわけではないのだろう。
例えるなら危険を察知した獣が本能的に体を動かしたようなもの。
そこに理屈はない。しかし、余計な迷いもなく合理的とも言える。
黒縄地獄は自身の目の前にいる男ならばと確信に近い見立てがあった。
思わず笑みが零れる。ああ、なんて可笑しいのだろうか。
すぐに体勢を立て直した男が視界に入り——彼もまた嗤っていた。
後方へ吹き飛ばされる王蛇の装甲を貫き、無数の血しぶきが散るものの致命傷とは程遠い。
おそらくは目で見えていたわけではないのだろう。
例えるなら危険を察知した獣が本能的に体を動かしたようなもの。
そこに理屈はない。しかし、余計な迷いもなく合理的とも言える。
黒縄地獄は自身の目の前にいる男ならばと確信に近い見立てがあった。
思わず笑みが零れる。ああ、なんて可笑しいのだろうか。
すぐに体勢を立て直した男が視界に入り——彼もまた嗤っていた。
「いいな……てめぇは闘いがいがある」
「あらあら、随分とお気に召したようで」
「あらあら、随分とお気に召したようで」
吼える。男が——いや餓えた獣が。
きっと誰の称賛も必要としない。ただ己のためだけに闘う一匹の獣が。
たとえ鎧に身を包み、姿は変えても、在り方そのものにはなんら変わりがない一匹の獣を。
同じく獣になりさがった獣である、自身が討ち滅ぼさんとする。
獣同士の闘いとはなんて醜く、浅ましい。しかし、これほどまでに自身に相応しい事はない。
これが可笑しいと思える自分もまた壊れているのだろう。
きっと誰の称賛も必要としない。ただ己のためだけに闘う一匹の獣が。
たとえ鎧に身を包み、姿は変えても、在り方そのものにはなんら変わりがない一匹の獣を。
同じく獣になりさがった獣である、自身が討ち滅ぼさんとする。
獣同士の闘いとはなんて醜く、浅ましい。しかし、これほどまでに自身に相応しい事はない。
これが可笑しいと思える自分もまた壊れているのだろう。
「ちょっと、わたくしもいることをお忘れなく」
しかし、次なる剣閃を振るわんとする黒縄地獄は瞬時に横へ飛び退く。
王蛇の側方から清姫が魔力により生成した炎による衝撃波を放っていた。
身体を跳ばした黒縄地獄はすでに刀は手に取っておらず、代わりに一本の弓を持っている。
黒縄地獄が地に足をついた時には彼女の弓からは無数の矢が放たれている。
矢が進むは前方。ベノサーベルを持ち、悠然と構える王蛇と、こちらに向かう清姫に対して。
だが、無数の矢が王蛇、清姫を共に撃ち貫くことはなかった。
王蛇の側方から清姫が魔力により生成した炎による衝撃波を放っていた。
身体を跳ばした黒縄地獄はすでに刀は手に取っておらず、代わりに一本の弓を持っている。
黒縄地獄が地に足をついた時には彼女の弓からは無数の矢が放たれている。
矢が進むは前方。ベノサーベルを持ち、悠然と構える王蛇と、こちらに向かう清姫に対して。
だが、無数の矢が王蛇、清姫を共に撃ち貫くことはなかった。
「そんなもの、子供騙しにすぎませんよ」
王蛇の頭上をふわりと飛び越え、清姫が息を吹いた。
ただの息ではない。青白い、サーヴァントの魔力で生成された超高熱の炎であった。
黒縄地獄の矢は清姫が吹き出した炎に触れた瞬間に燃え尽きていた。
黒縄地獄は苦虫を潰したような表情をかすかに浮かべる。
おそらくは武芸に秀でたものではないにせよ、相手はサーヴァント。
未だ真名も把握していない相手であり、他に隠し手があっても不思議ではない。
黒縄地獄は再度、地を蹴り飛ばし後方へ跳ぶ。
ただの息ではない。青白い、サーヴァントの魔力で生成された超高熱の炎であった。
黒縄地獄の矢は清姫が吹き出した炎に触れた瞬間に燃え尽きていた。
黒縄地獄は苦虫を潰したような表情をかすかに浮かべる。
おそらくは武芸に秀でたものではないにせよ、相手はサーヴァント。
未だ真名も把握していない相手であり、他に隠し手があっても不思議ではない。
黒縄地獄は再度、地を蹴り飛ばし後方へ跳ぶ。
「なんだ、お前は?」
「うるさいですねぇ……名前であれば知りたいなら、あとで教えてあげます」
「うるさいですねぇ……名前であれば知りたいなら、あとで教えてあげます」
サーヴァントが持つ絶大な威力ともいえる宝具は逸話が具現化したもの。
真名を伝えるという事は自身の手の内を開かせることとにも等しい。
ただ、清姫は奇しくも黒縄地獄と同じく目の前の王蛇をサーヴァントとは異なる存在と認識した。
魔力反応の類を全く感知させないことが大きな理由の一つ。
鏡に身を映したかと思うと奇妙な鏡像をまとい、一瞬の内に姿を変える力には一抹の危険を覚えたが。
清姫はこの場で一番の危険因子と判断した、黒縄地獄の排除に繋がる手段を選択した。
黒縄地獄はマスターをも斬り捨てると宣言しており、放置は出来ない。
加えて黒縄地獄の力は何らかの制限がかかっているようだが強大である。
一人で劣るとは決して思わないが、それでも一人よりも二人の方が手傷は少ないだろう。
真名を伝えるという事は自身の手の内を開かせることとにも等しい。
ただ、清姫は奇しくも黒縄地獄と同じく目の前の王蛇をサーヴァントとは異なる存在と認識した。
魔力反応の類を全く感知させないことが大きな理由の一つ。
鏡に身を映したかと思うと奇妙な鏡像をまとい、一瞬の内に姿を変える力には一抹の危険を覚えたが。
清姫はこの場で一番の危険因子と判断した、黒縄地獄の排除に繋がる手段を選択した。
黒縄地獄はマスターをも斬り捨てると宣言しており、放置は出来ない。
加えて黒縄地獄の力は何らかの制限がかかっているようだが強大である。
一人で劣るとは決して思わないが、それでも一人よりも二人の方が手傷は少ないだろう。
そのため、この場ではなによりも手数がほしい。
また、目の前の男はまず真っ先に黒縄地獄に斬りかかった。
言葉が通じないわけでもなく、助けに対してそれなりの反応も得られた。
ならばこの男は、きっとわざわざ孤立を招くような真似はしないだろう。
もし、裏切るような素振りがあれば、真っ先に自身が燃やし尽くしてしまえばいい
また、目の前の男はまず真っ先に黒縄地獄に斬りかかった。
言葉が通じないわけでもなく、助けに対してそれなりの反応も得られた。
ならばこの男は、きっとわざわざ孤立を招くような真似はしないだろう。
もし、裏切るような素振りがあれば、真っ先に自身が燃やし尽くしてしまえばいい
「だから、今はわたくしに手をかしなさい。あいつを放っておくことは危険——」
自分であれば出来るはずだと、清姫はそう考えていた。
「邪魔だ」
清姫の言葉が言い終わる前に、彼女の胸にはベノサーベルが深々と突き刺さる。
嗚咽と共に見開かれた清姫の目には偽りの仮面に隠れた浅倉の表情は見ることが出来ない。
この男は何を——と一瞬思うが、清姫は自身の誤りに気付く。
この男には何もない。数の有利を考える頭がないわけではない。ただ、必要ないのだろう。
薄れゆく意識の清姫を尻目に王蛇は右足を使い、ベノサーベルを清姫の身体から強引に引き抜く。
蹴り跳ばされる清姫から血しぶきを浴びながら王蛇は首を回し、仮面の口を腕で拭う。
嗚咽と共に見開かれた清姫の目には偽りの仮面に隠れた浅倉の表情は見ることが出来ない。
この男は何を——と一瞬思うが、清姫は自身の誤りに気付く。
この男には何もない。数の有利を考える頭がないわけではない。ただ、必要ないのだろう。
薄れゆく意識の清姫を尻目に王蛇は右足を使い、ベノサーベルを清姫の身体から強引に引き抜く。
蹴り跳ばされる清姫から血しぶきを浴びながら王蛇は首を回し、仮面の口を腕で拭う。
「楽しいな。やはりライダーの力はいい」
王蛇はベノサーベルを投げ捨て、代わりに蛇の形を模した紫色の杖を構える。
ベノバイザー——王蛇の力の源であり、幾多のライダーを葬った必殺の一撃をもたらすもの。
ベノバイザーの頭部部分が上方へスライドする。
手慣れた動作で王者はカードデッキからカードを引き抜く。
しかし、王蛇の手がふいに止まる。
ベノバイザー——王蛇の力の源であり、幾多のライダーを葬った必殺の一撃をもたらすもの。
ベノバイザーの頭部部分が上方へスライドする。
手慣れた動作で王者はカードデッキからカードを引き抜く。
しかし、王蛇の手がふいに止まる。
「そろそろ……お遊びはおしまいにしましょう」
黒縄地獄が再び刀を携え、構えをとっている。その構えから王蛇は本能で理解した。
今までとは違う一撃がくるのだと。奥の手ともいえるものなのだろう。
そして王蛇の感覚に痛いほど呼びかけてくる気配がもう一つあった。
今までとは違う一撃がくるのだと。奥の手ともいえるものなのだろう。
そして王蛇の感覚に痛いほど呼びかけてくる気配がもう一つあった。
「さすがのわたくしも……ここまでやられて黙っていられません——転身火生三味!」
ふらりと立ち上がった清姫が自身の宝具を開放し、その姿を一匹の大蛇に変えていた。
青白い炎の大蛇が王蛇、黒縄地獄の前に現れ、今にも跳びかからんとしている。
前方の黒縄地獄と後方の清姫に挟まれる形となった王蛇に退路はない。
だが、当の王蛇は黒縄地獄と清姫に軽く一瞥をくれたあとに——口を開く。
青白い炎の大蛇が王蛇、黒縄地獄の前に現れ、今にも跳びかからんとしている。
前方の黒縄地獄と後方の清姫に挟まれる形となった王蛇に退路はない。
だが、当の王蛇は黒縄地獄と清姫に軽く一瞥をくれたあとに——口を開く。
「ハーッハッハッハハァ—!面白い……これでこそ退屈しない!ライダーになった甲斐があるもんだ!!」
王蛇は、浅倉はただただ歓喜した。
何物にも満たされず、常に心をかき乱す苛立ちがどうしようもなく我慢できなかった。
己の中で常に力が暴発し、人間社会の籠は浅倉にとってあまりにも窮屈になっていた。
だが、神崎士郎によりカードデッキを与えられ、仮面ライダーとなったことで変わった。
抑えきれなかった彼の暴力がいかんなく奮えるようになったことで浅倉を囲む世界の色は変わった。
そしてそれはこの殺し合いでも変わらない。
たとえ人智を越えた存在であるサーヴァント2騎の、宝具開放に囲まれる形となっても浅倉に恐怖という感情は微塵もなかった。
だからこそ、浅倉は、王蛇は迷いなく切ることが出来る。
一度は止めた手が動き、一枚のカードをベノバイザーに入れた
何物にも満たされず、常に心をかき乱す苛立ちがどうしようもなく我慢できなかった。
己の中で常に力が暴発し、人間社会の籠は浅倉にとってあまりにも窮屈になっていた。
だが、神崎士郎によりカードデッキを与えられ、仮面ライダーとなったことで変わった。
抑えきれなかった彼の暴力がいかんなく奮えるようになったことで浅倉を囲む世界の色は変わった。
そしてそれはこの殺し合いでも変わらない。
たとえ人智を越えた存在であるサーヴァント2騎の、宝具開放に囲まれる形となっても浅倉に恐怖という感情は微塵もなかった。
だからこそ、浅倉は、王蛇は迷いなく切ることが出来る。
一度は止めた手が動き、一枚のカードをベノバイザーに入れた
——FINAL VENT——
ベノバイザーから電子音声が流れ、王蛇の背後に紫色の大蛇、ベノスネーカーが出現する。
同時に体勢をかがめ、前方へ疾走する王者のあとを追う様にベノスネーカーが走る。
ベノスネーカーの背後からは大蛇に姿を変えた清姫もまた追いつつ、口元に溜めた炎を吐き出す。
魔力によって高められた、超高熱の灼熱がベノスネーカーごと王蛇を襲う。
同時に体勢をかがめ、前方へ疾走する王者のあとを追う様にベノスネーカーが走る。
ベノスネーカーの背後からは大蛇に姿を変えた清姫もまた追いつつ、口元に溜めた炎を吐き出す。
魔力によって高められた、超高熱の灼熱がベノスネーカーごと王蛇を襲う。
「——天網恢恢!」
更に前方からは黒縄地獄が刀身から雷鳴を轟かせながら、雷の魔力を解き放つ。
本来は自身の分身と共に放つ宝具ではあるものの、威力は絶大そのもの。
本来は自身の分身と共に放つ宝具ではあるものの、威力は絶大そのもの。
「ハッ!」
しかし、王蛇は止まらない。
後方へ跳躍し、ベノスネーカーの顔の前で宙を返る。
既にベノスネーカーは清姫の炎によって身体のほとんどが燃えつくされており、辛うじて形を保っているに過ぎない。
だが、王蛇は自身の契約モンスターが朽ちることをまだ許してはいない。
何故なら楽しみはこれからなのだから。
ベノスネーカーの口元から毒燐が放出されると同時に、清姫の炎がベノスネーカーだけでなく王蛇にも回り始める。
後方へ跳躍し、ベノスネーカーの顔の前で宙を返る。
既にベノスネーカーは清姫の炎によって身体のほとんどが燃えつくされており、辛うじて形を保っているに過ぎない。
だが、王蛇は自身の契約モンスターが朽ちることをまだ許してはいない。
何故なら楽しみはこれからなのだから。
ベノスネーカーの口元から毒燐が放出されると同時に、清姫の炎がベノスネーカーだけでなく王蛇にも回り始める。
「ハアアアアアアァァ!!」
ベノスネーカーの毒燐による加速、そして清姫の炎をその身に受けながら王蛇は自身のファイナルベントを放つ。
相対する天網恢恢の雷を両足により文字通り蹴り裂きながら進む王蛇。
裂かれながらも雷は確実に王蛇の装甲だけでなく、後方のベノスネーカーと清姫の身体をも食い破っていく。
それでも、王蛇は止まらない。
餓えた獣を満たすには純粋な闘いしかなく、それこそが——浅倉の果てなき希望。
相対する天網恢恢の雷を両足により文字通り蹴り裂きながら進む王蛇。
裂かれながらも雷は確実に王蛇の装甲だけでなく、後方のベノスネーカーと清姫の身体をも食い破っていく。
それでも、王蛇は止まらない。
餓えた獣を満たすには純粋な闘いしかなく、それこそが——浅倉の果てなき希望。
「まさか、これほどとは——」
絶刀で受け止める黒縄地獄を衝撃が襲った。
※
エリアC-3東部を走る黒縄地獄が一人思う。
支給された絶刀を使い、王蛇のファイナルベントの威力を抑え、致命傷は避けたが消耗はあった。
先刻出会った鬼のこともあり、サーヴァント以外の存在も侮れない者は多いと黒縄地獄は改めて認識する。
まだ殺し合いは始まったばかりであり、宝具の最大開放は元より考えてはいなく、一部のみの開放に留めていた。
自身は英霊剣豪としての宿業を全うするために存在している。
一切塵殺を遂行するための装置でしかない。
支給された絶刀を使い、王蛇のファイナルベントの威力を抑え、致命傷は避けたが消耗はあった。
先刻出会った鬼のこともあり、サーヴァント以外の存在も侮れない者は多いと黒縄地獄は改めて認識する。
まだ殺し合いは始まったばかりであり、宝具の最大開放は元より考えてはいなく、一部のみの開放に留めていた。
自身は英霊剣豪としての宿業を全うするために存在している。
一切塵殺を遂行するための装置でしかない。
しかし、ふと思う。
清姫と名乗ったサーヴァントはマスターを探している様子だった。
十中八九カルデアのマスターのことであり、清姫はカルデアに召還されたサーヴァントだろう。
人理を守るために己の力を奮うことが許された存在。
うらやましいとさえも思う。しかし、一切塵殺を担う英霊剣豪は違う。
そもそも清姫と自身を比べてしまうことすらもおかしい。
英霊剣豪はものの道理を弁える機能はついていなく、己の在り方について考えることもない。
英霊となる前から壊れている自分は、きっと英霊剣豪としても壊れてしまっているのだろう。
清姫と名乗ったサーヴァントはマスターを探している様子だった。
十中八九カルデアのマスターのことであり、清姫はカルデアに召還されたサーヴァントだろう。
人理を守るために己の力を奮うことが許された存在。
うらやましいとさえも思う。しかし、一切塵殺を担う英霊剣豪は違う。
そもそも清姫と自身を比べてしまうことすらもおかしい。
英霊剣豪はものの道理を弁える機能はついていなく、己の在り方について考えることもない。
英霊となる前から壊れている自分は、きっと英霊剣豪としても壊れてしまっているのだろう。
「あの子が居れば、私をすぐにでも殺してくれるのでしょうね……」
いつも心配をさせる愛しいわが子の存在がこの場には居ないことが悔やんでしまうのだから。
※
地面に横たわる清姫の身体は少しずつ金色の粒子が漏れていた。
それはサーヴァントとしての現世での現界が近い時が間際に迫る合図。
短時間での宝具の連続使用、そして連戦による身体部位の損傷、黒縄地獄の宝具そして王蛇による一撃。
すでに清姫に魔力は残されていなかった。
それはサーヴァントとしての現世での現界が近い時が間際に迫る合図。
短時間での宝具の連続使用、そして連戦による身体部位の損傷、黒縄地獄の宝具そして王蛇による一撃。
すでに清姫に魔力は残されていなかった。
「おい」
不意に声をかけられ、目をやると全身が焼けただれた男が視界に入った。
おそらくは自分の宝具と黒縄地獄の攻撃による負傷なのだろう。
軽くはない痛手を与えたようであれば、少しは気が晴れるかもしれない。
だが、自分とますたぁの出会いはこの男によりもう叶いそうにもない。
もう一撃くらいはくれてやってもいいがきっとその前に止めを刺されるのだろう。
清姫は半ば覚悟を決め、両目を閉じようとする。
おそらくは自分の宝具と黒縄地獄の攻撃による負傷なのだろう。
軽くはない痛手を与えたようであれば、少しは気が晴れるかもしれない。
だが、自分とますたぁの出会いはこの男によりもう叶いそうにもない。
もう一撃くらいはくれてやってもいいがきっとその前に止めを刺されるのだろう。
清姫は半ば覚悟を決め、両目を閉じようとする。
「——お前、名前を教えると言っただろう。言ってみろ」
一瞬、清姫は浅倉が何を言っているかはわからなかった。
だが、清姫はすぐに理解する。
先刻、即座に剣を突き立てられたことも理解出来た。
この男には自分など眼中にもなく、きっとあの黒縄地獄自体にも興味はない。
男にとってきっと、闘えることが全てなのだろう。
だからこそ他者に対する罪悪を感じることもなく、この期に及んで名前などの話を蒸し返すことが出来る。
怒りを通り越して呆れすらも覚えるが、一つ好ましいと思えることがあった。
それは浅倉の行動には嘘はなかったことに尽きる。
言ってしまえば彼は闘い、名前を教えると言われたのでただその権利を行使しようとしているだけだ。
その行動に他者を省みることはなく、ひどく独善的ではあるが、清姫はそこを責める気にはならなかった。
彼女も自身とますたぁ以外にこの世界に興味はなく、その二つのためにならばどんなことでも出来ると考えるのだから。
だが、清姫はすぐに理解する。
先刻、即座に剣を突き立てられたことも理解出来た。
この男には自分など眼中にもなく、きっとあの黒縄地獄自体にも興味はない。
男にとってきっと、闘えることが全てなのだろう。
だからこそ他者に対する罪悪を感じることもなく、この期に及んで名前などの話を蒸し返すことが出来る。
怒りを通り越して呆れすらも覚えるが、一つ好ましいと思えることがあった。
それは浅倉の行動には嘘はなかったことに尽きる。
言ってしまえば彼は闘い、名前を教えると言われたのでただその権利を行使しようとしているだけだ。
その行動に他者を省みることはなく、ひどく独善的ではあるが、清姫はそこを責める気にはならなかった。
彼女も自身とますたぁ以外にこの世界に興味はなく、その二つのためにならばどんなことでも出来ると考えるのだから。
(ああ、ますたぁ……今度こそ、あなたを守りたかったのに……)
意識は少しずつ消えていく一方で、最愛の人への想いは燃え盛るように募っていく。
一度は惚れた相手を憎んで、恨んで、そして怒りで焼き尽くした自分。
まるで言うなれば獣。狂うように闘ったこの男とあのサーヴァントのように。
獣の本性を見せることが怖かった。嫌われてしまうのではないか。
また、嘘をつかれて嫌われてしまうのではないか。
また、私は醜い竜の姿で、愛する人を殺してしまうのではないか。
だけども、あの人は、ますたぁはそんな自分を見て言ってくれた。
——格好いい、頼もしい、と。
なんてひどい。乙女に向けたものとして褒められた言葉ではないのに。
だけども、そのますたぁの言葉には嘘はなかった。
あの時も、自分のことを見捨てないと強く言い放ったますたぁ。
ああ、それなのに。
あなたのためならば、大嫌いな嘘でさえも自らのものに出来ると思えたのに。
今はもう、この唇を重ねられないなんて——
一度は惚れた相手を憎んで、恨んで、そして怒りで焼き尽くした自分。
まるで言うなれば獣。狂うように闘ったこの男とあのサーヴァントのように。
獣の本性を見せることが怖かった。嫌われてしまうのではないか。
また、嘘をつかれて嫌われてしまうのではないか。
また、私は醜い竜の姿で、愛する人を殺してしまうのではないか。
だけども、あの人は、ますたぁはそんな自分を見て言ってくれた。
——格好いい、頼もしい、と。
なんてひどい。乙女に向けたものとして褒められた言葉ではないのに。
だけども、そのますたぁの言葉には嘘はなかった。
あの時も、自分のことを見捨てないと強く言い放ったますたぁ。
ああ、それなのに。
あなたのためならば、大嫌いな嘘でさえも自らのものに出来ると思えたのに。
今はもう、この唇を重ねられないなんて——
黄金色の粒子が天に登り、そこには何もなくなった。
※
先刻の闘いは浅倉にとって悪いものではなかった。
ライダーとはまた違い、カードの力を使わずに雷や炎の力をあそこまで奮う存在は面白い。
雷の女はまだ余力も残していたようであり、また会うこともあれば楽しめるだろう。
だが、それでも浅倉の表情は険しい。
ライダーとはまた違い、カードの力を使わずに雷や炎の力をあそこまで奮う存在は面白い。
雷の女はまだ余力も残していたようであり、また会うこともあれば楽しめるだろう。
だが、それでも浅倉の表情は険しい。
「……なんだってんだ」
名前を教えると言った、炎の女はたった今姿を消した。
特別、女の名前が知りたかったわけではない。
ただ、もらえるものであればもらっておこうと思っただけだ。
だからこそ、女がたとえ死のうが浅倉にとっては闘える相手が減ったという事実に過ぎない。
しかし、自分を無視して消えたことは気に食わなかった。
特別、女の名前が知りたかったわけではない。
ただ、もらえるものであればもらっておこうと思っただけだ。
だからこそ、女がたとえ死のうが浅倉にとっては闘える相手が減ったという事実に過ぎない。
しかし、自分を無視して消えたことは気に食わなかった。
「イライラするんだよ……!」
苛立ちながら浅倉はその場をあとにする。
他者の存在を傷つけ、壊し、殺すことはたやすいのに。
満たされない己の心を抱えながら、浅倉は次の闘いを求めていく。
他者の存在を傷つけ、壊し、殺すことはたやすいのに。
満たされない己の心を抱えながら、浅倉は次の闘いを求めていく。
【清姫@Fate/Grand Order 死亡】
【C-3/東部/1日目・深夜】
【源頼光@Fate/Grand Order】
[状態]:健康。中度の疲労。
[装備]:絶刀・鉋@刀語、弓矢@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針: 英霊剣豪として一切合切を粛正する。
1. 鬼を二体確認したが、今戦うのは難しい。
【源頼光@Fate/Grand Order】
[状態]:健康。中度の疲労。
[装備]:絶刀・鉋@刀語、弓矢@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針: 英霊剣豪として一切合切を粛正する。
1. 鬼を二体確認したが、今戦うのは難しい。
[備考]
※源頼光ではなく、英霊剣豪七番勝負のライダー・黒縄地獄としての参戦です。
※源頼光ではなく、英霊剣豪七番勝負のライダー・黒縄地獄としての参戦です。
【C-3/南部/1日目・深夜】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[状態]:全身に火傷
[装備]:王蛇のカードデッキ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針: いつも通りに闘う
1. 移動する
[備考]
※メタルゲラス、エビルダイバーと契約後の参戦
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[状態]:全身に火傷
[装備]:王蛇のカードデッキ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針: いつも通りに闘う
1. 移動する
[備考]
※メタルゲラス、エビルダイバーと契約後の参戦
| 前話 | お名前 | 次話 |
| BEAST INSIDE | 清姫 | Eliminated |
| Debut | 浅倉威 | NEXT HUNT |
| 鬼と鬼と鬼 | 源頼光 | ARMOUR ZONE |