ハザード&レスキュー ◆5A9Zb3fLQo
爆発音と共に少女の首が吹き飛んだ。
悪意に満ちた声を合図に命が理不尽に奪われる。
想起したのは彼の父。
正義感溢れる父もまた、一人の悪意によってその命を、信念を踏みにじられ死んでいった。
想起したのは彼の父。
正義感溢れる父もまた、一人の悪意によってその命を、信念を踏みにじられ死んでいった。
地面に落ち、ごろりと転がった少女の生首と視線が合う。
想起したのは彼の母。
口煩くも暖かった母もまた、一人の悪意によってその命を、尊厳を踏みにじられ死んでいった。
想起したのは彼の母。
口煩くも暖かった母もまた、一人の悪意によってその命を、尊厳を踏みにじられ死んでいった。
ギリ、という音を鋭敏な聴覚が拾い上げてから、その出所が自身の歯軋りであることに気付く。
暗い記憶のフラッシュバックを経て、その瞳に宿るのは憎悪の黒と憤怒の赤。燃え盛る二色の光。
暗い記憶のフラッシュバックを経て、その瞳に宿るのは憎悪の黒と憤怒の赤。燃え盛る二色の光。
こんな真似をする奴を許してたまるか。
ビジョンが消え視界が殺し合いの会場に戻ってもなお、円城周兎は激情を隠さぬ表情のまま虚空を睨み付けていた。
◆◇◆
「前園……! あのクズ野郎もここにいるのか!」
デイパックに収められていた参加者名簿、自身の名の次に記載されていた"前園甲士"という因縁の男の名前を目にし、周兎は怒りを露にする。
彼と彼の家族を滅茶苦茶にし、直接的に父を、間接的に母を殺害した諸悪の根元。
それが今、この殺し合いの場に自分と同じ様に首輪をつけて存在しているというのだ。
名簿を持つ手に自然と力が入り、用紙にくしゃりと皺ができる。
あの男を生かしておく訳にはいかない。
つい先ほど、ここに呼び出される前に亡き母の作ったピーマンの肉詰めを涙ながらに食べていた事を思い出す。
よもやこんなにも早くに復讐の機会が訪れるとは思っていなかった彼の瞳に、殺意を伴った剣呑な光が灯る。
だがその感情は次に記載されていた名前を見て驚愕へと切り替わる。
彼と彼の家族を滅茶苦茶にし、直接的に父を、間接的に母を殺害した諸悪の根元。
それが今、この殺し合いの場に自分と同じ様に首輪をつけて存在しているというのだ。
名簿を持つ手に自然と力が入り、用紙にくしゃりと皺ができる。
あの男を生かしておく訳にはいかない。
つい先ほど、ここに呼び出される前に亡き母の作ったピーマンの肉詰めを涙ながらに食べていた事を思い出す。
よもやこんなにも早くに復讐の機会が訪れるとは思っていなかった彼の瞳に、殺意を伴った剣呑な光が灯る。
だがその感情は次に記載されていた名前を見て驚愕へと切り替わる。
「なんで死んだ筈の権三の名前が載ってやがるんだ?」
今之川権三。周兎同様にナノロボに適合した結果、脳力を身につけた元老人にして特級の危険人物。
だが、権三は先の前園によって殺された筈である。それが何故、ここにいるのか。
あの時、権三の死を確認したのは誰あろう周兎本人である。
ナノロボの核を抜き取ったという前園の発言、そもそもの前園の目的からして偽装死というのは考えづらい。
で、あるならばこの名簿に書かれた権三は一体何者だというのか
だが、権三は先の前園によって殺された筈である。それが何故、ここにいるのか。
あの時、権三の死を確認したのは誰あろう周兎本人である。
ナノロボの核を抜き取ったという前園の発言、そもそもの前園の目的からして偽装死というのは考えづらい。
で、あるならばこの名簿に書かれた権三は一体何者だというのか
先ほどのBBからの悪趣味な開始宣言を思い出す。
曰く、"どんな願いでも叶う"。
曰く、"死者の蘇生"。
もしも、彼女の言った内容が真実であったとしたならば? 聖杯とやらで先だって権三を蘇生させたと言うのならば?
曰く、"どんな願いでも叶う"。
曰く、"死者の蘇生"。
もしも、彼女の言った内容が真実であったとしたならば? 聖杯とやらで先だって権三を蘇生させたと言うのならば?
「まさか、死んだ人間が甦ったっていうのかよ……!」
あまりにも荒唐無稽な仮説。
だが、虎内らと共に自宅にいた自分を一瞬の内にこの島へと拉致し、知らぬ間に首輪を装着するといった芸当をやってのけた相手である。何が起きても不思議ではない。
だが、虎内らと共に自宅にいた自分を一瞬の内にこの島へと拉致し、知らぬ間に首輪を装着するといった芸当をやってのけた相手である。何が起きても不思議ではない。
「そう言えば宮本武蔵だの沖田総司だのテレビや本で見た名前もあるな……まさか、こいつらも本物なのか?」
伝説の武芸者、幕末の剣豪、近代看護師の祖、そして小説や伝承に語られる存在まで名簿には名前が載っている。無論だが現代ではとうに故人になっている者ばかりだ。
前園らの名を見る前に彼ら彼女らの名を確認していた周兎は同姓同名の人物と判断していたが、もしもこれが本人であるとしたら?
本当に、死んだ人間が生き返るのだとしたら?
前園らの名を見る前に彼ら彼女らの名を確認していた周兎は同姓同名の人物と判断していたが、もしもこれが本人であるとしたら?
本当に、死んだ人間が生き返るのだとしたら?
殺され、生首になった母の姿が脳裏を過る。
母を生き返らせられることが可能だとしたら?
ナノロボの流失から起こった一連の事件を無かった事に出来るのだとしたら?
そもそも父が前園に殺されたことを未然に防ぐことが出来るのだとしたら?
母を生き返らせられることが可能だとしたら?
ナノロボの流失から起こった一連の事件を無かった事に出来るのだとしたら?
そもそも父が前園に殺されたことを未然に防ぐことが出来るのだとしたら?
あり得たかもしれない今よりも幸福なIFの数々。
それが、この殺し合いで勝ち抜くことが出来れば可能かもしれない。
それが、この殺し合いで勝ち抜くことが出来れば可能かもしれない。
ならば。
この手を汚すだけで、それすらも全てチャラに出来るのだとすれば。
ドッ、ドッ、と早鐘の様に鼓動が速く短く音を刻む。
寒くも暑くもないというのに湧き出た一筋の汗が頬を伝う。
ドッ、ドッ、と早鐘の様に鼓動が速く短く音を刻む。
寒くも暑くもないというのに湧き出た一筋の汗が頬を伝う。
願いを叶えるに足るだけの動機はある。
人を殺すだけの力は持っている。
人の命を奪う経験など疾うに済ませている。
人を殺すだけの力は持っている。
人の命を奪う経験など疾うに済ませている。
ならば。
ならば。
奇跡に縋るだけの動機も、実力も、経験も自身に備わっているのならば。
「俺は……」
黒い灯が男の目に灯る。
『たのもしいな。周兎が大人になったら父さんと 一緒に悪者を捕まえよう』
『よしよし、たくさん食べて大きくなれ~~~~♪』
「俺は、父さんや母さんを殺した奴らと同じになんてならねえ。人を殺すことを何とも思わねえ悪党どもは、一人残らず俺の手でぶっ潰してやる……!」
ありし日の父と母の姿を思い浮かび、怒り混じりの気勢を吐く。
瞳に灯った憎悪の火が向かう相手は、この殺し合いを開催したBBと、彼女の口車に乗り人を殺すことに決めたまだ見ぬ殺人者に向けられたもの。
父との約束が、理不尽に家族を奪われた悲しき記憶がある限り、周兎の心の芯が揺らぐことなどない。
瞳に灯った憎悪の火が向かう相手は、この殺し合いを開催したBBと、彼女の口車に乗り人を殺すことに決めたまだ見ぬ殺人者に向けられたもの。
父との約束が、理不尽に家族を奪われた悲しき記憶がある限り、周兎の心の芯が揺らぐことなどない。
そう、己の方針を口にし、決意表明をしたまさにその時だった。
周兎の視界に写っていた和風の城、その天守閣にあたる部分が勢いよく爆ぜたのだ。
周兎の視界に写っていた和風の城、その天守閣にあたる部分が勢いよく爆ぜたのだ。
「なにィ~~~~っ!?」
突然の事態に混乱しながらも視界を天守閣へと合わせ、聴覚を研ぎ澄ます。
何が起こったのかは不明だが、天守閣がひとりでに吹き飛ぶなどということはあり得ない。
つまりそれが意味することは、彼が目の当たりにした光景は何者かによって人為的に引き起こされたものであるということだ。
人間技とは思えぬ大破壊に、思わず権三の顔が思い浮かぶ。
桁外れの膂力を手にした権三ならあの程度の芸当が行えても不思議ではない。
仮に権三の仕業でないのならば、権三に並ぶ実力を持った人間がいるということでもあり、警戒しなければならないだろう。
何が起こったのかは不明だが、天守閣がひとりでに吹き飛ぶなどということはあり得ない。
つまりそれが意味することは、彼が目の当たりにした光景は何者かによって人為的に引き起こされたものであるということだ。
人間技とは思えぬ大破壊に、思わず権三の顔が思い浮かぶ。
桁外れの膂力を手にした権三ならあの程度の芸当が行えても不思議ではない。
仮に権三の仕業でないのならば、権三に並ぶ実力を持った人間がいるということでもあり、警戒しなければならないだろう。
「クソっ! 流石に遠すぎて細かな音までは拾えねえか!」
これが視認しやすい距離であれば単一指向性を持つ進化した聴力によって、よりピンポイントな音源――例えば天守閣を吹き飛ばした主――を拾い上げることが出来ただろう。
だが、遠目に見える城、加えて細かく目印になるような物は見当たらないという状況では音を拾い上げる対象範囲は拡大せざるを得ず、結果として彼の耳に入ってくるのは崩落する城の轟音や破砕音ばかりで本命の音はかき消されてしまった。
毒づきながらも周兎の足は城へと向かっていく。
果たして間に合うか。彼が到着する頃には全てが手遅れになっているかもしれない。だからといってそれが見過ごしていい理由になるだろうか? 彼の中では答えは否だ。
一縷の望みを賭けて周兎は走る。
走って、走って、走ったその先に、1つの人影が見えた。
だが、遠目に見える城、加えて細かく目印になるような物は見当たらないという状況では音を拾い上げる対象範囲は拡大せざるを得ず、結果として彼の耳に入ってくるのは崩落する城の轟音や破砕音ばかりで本命の音はかき消されてしまった。
毒づきながらも周兎の足は城へと向かっていく。
果たして間に合うか。彼が到着する頃には全てが手遅れになっているかもしれない。だからといってそれが見過ごしていい理由になるだろうか? 彼の中では答えは否だ。
一縷の望みを賭けて周兎は走る。
走って、走って、走ったその先に、1つの人影が見えた。
一人の女性の姿があった。
いたる所が乾いてドス黒くなった血に染まり所々すり切れた服、誇りと煤に塗れた髪や肌。
本来ならばそれは見るものに痛々しいイメージを与える姿である。
だが、周兎は、否、周兎でなくても彼女の姿を見た者は真っ先に抱くイメージはそれではないだろう。
その表情に弱々しさはなく、歩みはあまりにも堂々としており、そしてその瞳には狂気的とも形容出来るであろうギラリとした強固な意思の光。
鬼気迫るその姿は他者に大小の差こそあれ恐怖を抱かせる。
故に周兎は思わず骨銃の銃口、即ち構えた人差し指を向けていた。
いたる所が乾いてドス黒くなった血に染まり所々すり切れた服、誇りと煤に塗れた髪や肌。
本来ならばそれは見るものに痛々しいイメージを与える姿である。
だが、周兎は、否、周兎でなくても彼女の姿を見た者は真っ先に抱くイメージはそれではないだろう。
その表情に弱々しさはなく、歩みはあまりにも堂々としており、そしてその瞳には狂気的とも形容出来るであろうギラリとした強固な意思の光。
鬼気迫るその姿は他者に大小の差こそあれ恐怖を抱かせる。
故に周兎は思わず骨銃の銃口、即ち構えた人差し指を向けていた。
◆◇◆
「つまり、人体に入り込んだ医療用ナノマシンによる副作用。先ほど私に向けて射出した貴方の右第二指部の未節骨はそれに由来するものと?」
「はい」
「俄かには信じがたい話ですが、貴方の右第二指がリアルタイムで再生する様をこの目で確認した以上、疑いようがありませんね」
「はい」
「俄かには信じがたい話ですが、貴方の右第二指がリアルタイムで再生する様をこの目で確認した以上、疑いようがありませんね」
げんなりした様子の周兎を気にも留めず先ほど彼が対峙していた女性、フローレンス・ナイチンゲールは掴んだ周兎の右腕の先端、言い換えれば右手人差し指をしげしげと眺めながら淡々とした口調で会話を打ち切った。
何が起こったのか? 顛末はこうだ。
何が起こったのか? 顛末はこうだ。
尋常ではない気配を纏いこちらへと猛進するナイチンゲールに向けて、周兎は一度止まる様に言った。だが、ナイチンゲールはそれを拒否し「私には止まっている暇などない」と進む足を止めなかった。
その姿勢に対し警告を兼ね牽制の骨銃をナイチンゲールの足元に射出した周兎。彼の目論見通りにナイチンゲールは足を止めた。しかし、そこから先の展開は周兎が予想できるものではなかった。
足を止めたナイチンゲールの視線が足元を穿った銃弾から、その射出元へと移る。骨を射出し肉と皮のみでペラペラになった右人差し指へと。
瞬間、怒号が響く。
その姿勢に対し警告を兼ね牽制の骨銃をナイチンゲールの足元に射出した周兎。彼の目論見通りにナイチンゲールは足を止めた。しかし、そこから先の展開は周兎が予想できるものではなかった。
足を止めたナイチンゲールの視線が足元を穿った銃弾から、その射出元へと移る。骨を射出し肉と皮のみでペラペラになった右人差し指へと。
瞬間、怒号が響く。
「貴方は! 自分の体を傷つけて何をしているのですか!」
周兎からの停止命令を拒絶した時の淡々とした調子とは180度真逆の剣幕でナイチンゲールが叱りつける。呆気に取られた周兎だが彼女はそんな彼の態度を無視し、早期治療が必要であると告げながら足早に周兎の元まで詰め寄っていく。
同時に彼女の人となりを図る為に聴覚をナイチンゲールの心音や脈拍を拾い上げる様ロックオンしていたことで、周兎は”自身の体を傷つけるという行為に激昂した”こと、そして“自分の骨銃を撃った後の指を治療しようとしている”ことに対して彼女が至極本気であると読み取った。
これにより、ナイチンゲールを警戒する理由を失った周兎であったが、その代償として今度は骨銃を撃ったばかりの右人差し指を切除しようとするナイチンゲールを説き伏せて”治療行為”を阻止する必要に駆られ、そして現在に至るという訳である。
同時に彼女の人となりを図る為に聴覚をナイチンゲールの心音や脈拍を拾い上げる様ロックオンしていたことで、周兎は”自身の体を傷つけるという行為に激昂した”こと、そして“自分の骨銃を撃った後の指を治療しようとしている”ことに対して彼女が至極本気であると読み取った。
これにより、ナイチンゲールを警戒する理由を失った周兎であったが、その代償として今度は骨銃を撃ったばかりの右人差し指を切除しようとするナイチンゲールを説き伏せて”治療行為”を阻止する必要に駆られ、そして現在に至るという訳である。
(人の話を全然聞かねー人だったが、これで一応なにがあったか聞くことが……)
「ですが、射出した直後に傷口から細菌が入り込み感染症を招く可能性もあります。自衛手段とはいえこのような場所で安易な使用は控える様に。では私はこれで」
「ええっ!?」
「ですが、射出した直後に傷口から細菌が入り込み感染症を招く可能性もあります。自衛手段とはいえこのような場所で安易な使用は控える様に。では私はこれで」
「ええっ!?」
どうにか執成すことが出来、内心で胸を撫で下ろす周兎。
天守閣から落下したにしては負傷の度合いが軽くは見えるがそれでも汚れ具合などから見て彼は目の前の女性が先の騒動に居合わせた人物だとふんでいた。もし違ったとしても彼女をボロボロの姿に変えた何者かがいる筈である。”悪党を許さない”という彼のスタンスとしても危険人物がいるのであれば情報は把握しておきたい。ようやくその為の会話の準備が終わったと、そう認識していた。
だが、肝心のナイチンゲールは検診を終えた医師の様な台詞を告げたかと思えば、一人どこかへと去ろうとする。その自由振りに思わず驚愕の声が周兎から漏れた。
天守閣から落下したにしては負傷の度合いが軽くは見えるがそれでも汚れ具合などから見て彼は目の前の女性が先の騒動に居合わせた人物だとふんでいた。もし違ったとしても彼女をボロボロの姿に変えた何者かがいる筈である。”悪党を許さない”という彼のスタンスとしても危険人物がいるのであれば情報は把握しておきたい。ようやくその為の会話の準備が終わったと、そう認識していた。
だが、肝心のナイチンゲールは検診を終えた医師の様な台詞を告げたかと思えば、一人どこかへと去ろうとする。その自由振りに思わず驚愕の声が周兎から漏れた。
「まだ何か? 先ほど伝えた通り私には最優先でやらねばならないことがありますので、あまり時間を取りたくはないのですが」
「俺にだって用はあるんだよ。アンタさっきまであの城の近くにいなかったか? 俺はさっき天守閣が吹き飛んだのを見て様子を見に来たんだ。もし何か知ってることがあれば教えてくれよ」
「俺にだって用はあるんだよ。アンタさっきまであの城の近くにいなかったか? 俺はさっき天守閣が吹き飛んだのを見て様子を見に来たんだ。もし何か知ってることがあれば教えてくれよ」
顔だけを振り向いて周兎の反応に対応するナイチンゲールであったが、周兎の用を聞くと思案する様に微かに俯く。そこから顔を上げるまでに要する時間は短かった。
ナイチンゲールが体の向きを周兎の向き合うものに変える。それは、周兎と会話するつもりであるという意志の表れだ。
ナイチンゲールが体の向きを周兎の向き合うものに変える。それは、周兎と会話するつもりであるという意志の表れだ。
「いいでしょう。あれの感染症が貴方にも移る可能性はあります。では、私の体験の一部始終を貴方に伝えます」
ナイチンゲールは語る。周兎が目撃した天守閣の崩壊、またその原因となった鬼との邂逅を。
童磨と名乗る人より生じた人食いの怪物の存在とその戦闘能力。
ともすればその童磨を怪物の身へと変じさせた存在がこの地に呼び出されている可能性。
まるで漫画や映画のような荒唐無稽な話を聞かされ、周兎は唖然とした顔になる。
ナノロボに感染して僅か2日の間にごく一般的で平穏な日常とは異なる経験をした周兎であったが、そんな彼であっても冗談にしか聞こえない内容であった。
だが、ナイチンゲールが嘘をついていないことは彼女の心音から理解できてしまう。これにより残った可能性は彼女が狂人でありそのような妄想を信じ切っているか、全てが真実であるかの二択だ。
童磨と名乗る人より生じた人食いの怪物の存在とその戦闘能力。
ともすればその童磨を怪物の身へと変じさせた存在がこの地に呼び出されている可能性。
まるで漫画や映画のような荒唐無稽な話を聞かされ、周兎は唖然とした顔になる。
ナノロボに感染して僅か2日の間にごく一般的で平穏な日常とは異なる経験をした周兎であったが、そんな彼であっても冗談にしか聞こえない内容であった。
だが、ナイチンゲールが嘘をついていないことは彼女の心音から理解できてしまう。これにより残った可能性は彼女が狂人でありそのような妄想を信じ切っているか、全てが真実であるかの二択だ。
「鬼、というよりもその特性は吸血鬼に近いでしょう。私の同僚にも数名ですが鬼がいます。そして吸血鬼も。あの出鱈目な再生力はどちらかといえば後者に寄っています」
「いや、どんな職場だよ」
「もっとも頸を落とせば死亡するという話をしていましたので伝承にある吸血鬼とも異なる別種の症状と言えるでしょうが」
(本当に人の話を聞かねーな! いや、あんたが嘘を言ってないっていうのは分かってるけどさ!)
「いや、どんな職場だよ」
「もっとも頸を落とせば死亡するという話をしていましたので伝承にある吸血鬼とも異なる別種の症状と言えるでしょうが」
(本当に人の話を聞かねーな! いや、あんたが嘘を言ってないっていうのは分かってるけどさ!)
鬼や吸血鬼が同僚にいるという非現実的な台詞に周兎が思わずツッコミをいれるが、それに反応も返事を見せる素振りもなく、一方的にナイチンゲールの話は続いていく。
その様に閉口する周兎。
先ほどの釈明こそ聞いてくれたが、それはあくまで彼女の言葉に対する返答であったからだろう。基本的に目の前の女性は人の話を聞かない、そう改めて周兎は認識した。
その様に閉口する周兎。
先ほどの釈明こそ聞いてくれたが、それはあくまで彼女の言葉に対する返答であったからだろう。基本的に目の前の女性は人の話を聞かない、そう改めて周兎は認識した。
「ですので、貴方も十分に注意を。虹の瞳に赤い髪をした成人男性です。もし遭遇したのであれば直ちに逃走をするように。他の方に出会った場合もこの情報は最優先で共有をお願いします」
「気をつけなきゃいけない奴は分かった、それで、あんたはこれからどうするんだよ?」
「助けられる命を助け、救うべき命を救います。具体的には傷病者の救護活動を主眼とし医療施設に向かう予定でした。私の力だけで傷病者を癒すのは限界がありますし、医療品は確保出来るだけ確保しておきたいので」
「なら、東にある病院か。あんたヤケに医療関係に詳しそうだけど医者か何かなのか?」
「看護師です」
「看護師……」
「気をつけなきゃいけない奴は分かった、それで、あんたはこれからどうするんだよ?」
「助けられる命を助け、救うべき命を救います。具体的には傷病者の救護活動を主眼とし医療施設に向かう予定でした。私の力だけで傷病者を癒すのは限界がありますし、医療品は確保出来るだけ確保しておきたいので」
「なら、東にある病院か。あんたヤケに医療関係に詳しそうだけど医者か何かなのか?」
「看護師です」
「看護師……」
周兎の脳裏にナース服姿のナイチンゲールが浮かぶ。
白衣の天使、というには彼女の狂戦士めいた一面を見ているためか「似合わない」という感想が口から出てきそうになるが、それをすんでのところで飲み込んだ
白衣の天使、というには彼女の狂戦士めいた一面を見ているためか「似合わない」という感想が口から出てきそうになるが、それをすんでのところで飲み込んだ
「それでは私はこれで、当分は病院にいますのでもし負傷者がいれば直ちに向かう様に情報提供をしていただければ助かります」
「いや、俺もあんたに着いていくぜ」
「はい?」
「いや、俺もあんたに着いていくぜ」
「はい?」
周兎の声にナイチンゲールが怪訝な表情を浮かべる。
遭遇してから初めてその鉄面皮が崩れたことに、周兎は他の表情も出来たのかと内心驚きつつも言葉を紡ぐ。
遭遇してから初めてその鉄面皮が崩れたことに、周兎は他の表情も出来たのかと内心驚きつつも言葉を紡ぐ。
「俺は殺し合いに乗った悪党どもを叩き潰そうとは思ってたが正直行く宛てはなかったしな。人助けをしたいって言ってるあんたは多分いい人なんだと思う。折角殺し合いに乗ってない同士でもあるし俺にも何か手伝わせてくれよ」
それは周兎の本心だった。
基本的に彼は善性の人間である。多少突き放したところこそあれど亡き父の影響か正義感は強い。
「悪党どもを叩き潰す」という漠然とした目的しか持っていなかった周兎であったが、”人助け”というシンプルな目的は彼にとって分かりやすくかつ受け入れ易いものだった。
人助けをする。そのうえで悪党は叩き潰す。
脳力を使っての戦闘以外にこの状況の打開方法を持たない周兎に取れる最善の行動だ。
後は、ナイチンゲールの了承を待つばかりである。
基本的に彼は善性の人間である。多少突き放したところこそあれど亡き父の影響か正義感は強い。
「悪党どもを叩き潰す」という漠然とした目的しか持っていなかった周兎であったが、”人助け”というシンプルな目的は彼にとって分かりやすくかつ受け入れ易いものだった。
人助けをする。そのうえで悪党は叩き潰す。
脳力を使っての戦闘以外にこの状況の打開方法を持たない周兎に取れる最善の行動だ。
後は、ナイチンゲールの了承を待つばかりである。
「そういうことであれば、手を貸していただきます。医療物資の輸送であればより多くの人出があった方が効率的ですから」
そこまで淡々と言い切るナイチンゲール。
終始堅い調子を崩さない彼女に対し周兎は内心で苦笑を浮かべる
だが、そんなナイチンゲールの表情が不意に、ほんの僅かに綻んだ。
終始堅い調子を崩さない彼女に対し周兎は内心で苦笑を浮かべる
だが、そんなナイチンゲールの表情が不意に、ほんの僅かに綻んだ。
「この様な場ですし、個々人で優先すべき事情というものがあります。ですので私だけで事を為そうかと考えていました。感謝しますミスター。貴方の善意は必ずこの地で救いを待つ全ての病める人の救いとなるでしょう」
微かに微笑み、柔らかい表情を浮かべたナイチンゲール。
だが、それも一瞬だけだ。周兎が言葉を失っていたほんの数秒の間に、ナイチンゲールの表情はまたいつもの鉄面皮に戻る。
まるで、先ほどの数秒かの光景が彼の見た幻であったかのように。
だが、それも一瞬だけだ。周兎が言葉を失っていたほんの数秒の間に、ナイチンゲールの表情はまたいつもの鉄面皮に戻る。
まるで、先ほどの数秒かの光景が彼の見た幻であったかのように。
「そ、そう言えば自己紹介もしてなかったな。俺は円城周兎って言うんだ。あんたは?」
「フローレンス・ナイチンゲールと言います。それでは改めてよろしく、ミスター円城」
「え?」
「フローレンス・ナイチンゲールと言います。それでは改めてよろしく、ミスター円城」
「え?」
ナイチンゲールの自己紹介に間の抜けた声で答えてしまう周兎。
数十分前に目を通していた名簿を思い出す。権三が蘇生した可能性を考察していた際に紐づいて覚えていた名前の一つ。それがフローレンス・ナイチンゲールだ。
近代看護師の祖である歴史上の偉人。そして目の前のフローレンス・ナイチンゲールを名乗る女性も自称看護師。偶然の一致、としては出来過ぎた話だろう。
数十分前に目を通していた名簿を思い出す。権三が蘇生した可能性を考察していた際に紐づいて覚えていた名前の一つ。それがフローレンス・ナイチンゲールだ。
近代看護師の祖である歴史上の偉人。そして目の前のフローレンス・ナイチンゲールを名乗る女性も自称看護師。偶然の一致、としては出来過ぎた話だろう。
「フローレンス・ナイチンゲールってあの?」
「指示語が不明瞭ですが、貴方が想定しているものが歴史上の特定人物を指しているのだと仮定するのであればそのフローレンス・ナイチンゲールです」
「……マジかよ」
「色々と特殊な事情がありますがそれについては道すがら説明しましょう。私同様にここに拉致された知人もいますし彼ら彼女らについても共有すべきでしょうね。代わりに貴方の知人がいた場合は共有をお願いします」
「指示語が不明瞭ですが、貴方が想定しているものが歴史上の特定人物を指しているのだと仮定するのであればそのフローレンス・ナイチンゲールです」
「……マジかよ」
「色々と特殊な事情がありますがそれについては道すがら説明しましょう。私同様にここに拉致された知人もいますし彼ら彼女らについても共有すべきでしょうね。代わりに貴方の知人がいた場合は共有をお願いします」
再び周兎は閉口することになる。
脈拍にも心音にも変化はない。つまり、彼女は同姓同名などではなく歴史上のフローレンス・ナイチンゲールであることは真実だ。
脈拍にも心音にも変化はない。つまり、彼女は同姓同名などではなく歴史上のフローレンス・ナイチンゲールであることは真実だ。
この後、彼は宮本武蔵や沖田総司といった名簿に載っている歴史上の偉人が全て彼女の同僚であるという説明を受け頭を抱えることになるのだが、それはまた、別のお話しのことである。
【C-3/1日目・深夜】
【フローレンス・ナイチンゲール@Fate/Grand Order】
[状態]:軽傷(処置済)、肺に裂傷及び壊死(処置済)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:救う。殺してでも。
1:傷病者を探し、癒やす。 その準備の為にも病院に向かう
2:童磨は次に会ったなら必ず治療する。
3:ミスター円城と情報交換をする。
4:『鬼化』を振り撒く元凶が、もし居るのなら───
[備考]
※参戦時期はカルデア召喚後です。
※宝具使用時の魔力消費量が大きく増加しています。
※円城周兎からナノロボについて簡単な説明を受けました。
※沖田総司をカルデアに召喚された沖田総司であると認識しています。
[状態]:軽傷(処置済)、肺に裂傷及び壊死(処置済)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:救う。殺してでも。
1:傷病者を探し、癒やす。 その準備の為にも病院に向かう
2:童磨は次に会ったなら必ず治療する。
3:ミスター円城と情報交換をする。
4:『鬼化』を振り撒く元凶が、もし居るのなら───
[備考]
※参戦時期はカルデア召喚後です。
※宝具使用時の魔力消費量が大きく増加しています。
※円城周兎からナノロボについて簡単な説明を受けました。
※沖田総司をカルデアに召喚された沖田総司であると認識しています。
【円城周兎@ナノハザード】
[状態]:健康、ナノタブレットを1錠服用済
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:悪党は叩き潰す
1:ナイチンゲールを手伝い、病院に向かう。
2:ナイチンゲールと情報交換をする。
3:前園、権三に最大限警戒する。また、前園は殺す。
[備考]
※原作22話終了後、母親が死亡してピーマンの肉詰めを食べた後からの参戦
※あと数時間の内にナノタブレットを3錠以上服用すると頭が爆発して死亡する可能性があります。
※ナイチンゲールから童磨、および鬼滅の刃出典の鬼についての情報を入手しました。
[状態]:健康、ナノタブレットを1錠服用済
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:悪党は叩き潰す
1:ナイチンゲールを手伝い、病院に向かう。
2:ナイチンゲールと情報交換をする。
3:前園、権三に最大限警戒する。また、前園は殺す。
[備考]
※原作22話終了後、母親が死亡してピーマンの肉詰めを食べた後からの参戦
※あと数時間の内にナノタブレットを3錠以上服用すると頭が爆発して死亡する可能性があります。
※ナイチンゲールから童磨、および鬼滅の刃出典の鬼についての情報を入手しました。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| Debut | 円城周兎 | ARMOUR ZONE |
| 「救う」ということ | フローレンス・ナイチンゲール |