禰豆子/業苦 ◆7ediZa7/Ag
誰もいない街が、月光に沈んでいる。
コンクリートで塗り固められた冷たい街は、青と白の狭間で揺れている。
コンクリートで塗り固められた冷たい街は、青と白の狭間で揺れている。
この島の片隅、そこには東都ドームと呼ばれる建築物を中心に街がある。
だがその街に人間は、誰一人としていなかった。
住民は去ったのか、はたまた最初からそんなものはいなかったのか、がらんとしたゴーストタウンがそこにはある。
だがその街に人間は、誰一人としていなかった。
住民は去ったのか、はたまた最初からそんなものはいなかったのか、がらんとしたゴーストタウンがそこにはある。
だが代わりに──鬼がいた。
和装を身にまとった幼い少女が、一人で蹲っている。
彼女、竈門禰豆子は見た目こそ年増もいかない少女であったが、人間と呼べる存在ではなかった。
彼女、竈門禰豆子は見た目こそ年増もいかない少女であったが、人間と呼べる存在ではなかった。
「……──」
その時、彼女は肉を貪っていた。
その手に握りしめたハンバーグを、彼女は食べていた。
食べては捨てようとし、その度に抗いがたい衝動に駆られて手が止まり、それを堪えるようにふらふらと歩き、またうずくまり──ひとかじり、肉を食べてしまう。
その手に握りしめたハンバーグを、彼女は食べていた。
食べては捨てようとし、その度に抗いがたい衝動に駆られて手が止まり、それを堪えるようにふらふらと歩き、またうずくまり──ひとかじり、肉を食べてしまう。
そんなことを繰り返しているうち、禰豆子は気づけば島の端まで来てしまっていたのだった。
口元には汚らしく肉やソースが付着し、表情はつらそうに歪んでいた。
口元には汚らしく肉やソースが付着し、表情はつらそうに歪んでいた。
だがそれでも──彼女は肉を貪ってしまった。
「────」
その口から、言葉にならない呻き声が漏れる。
それは嗚咽でもあり、獣のような唸り声でもあり、喜悦の声でもあった。
それは嗚咽でもあり、獣のような唸り声でもあり、喜悦の声でもあった。
これは食べてはダメなものなのだ。
先ほどの男、前園は風態こそ慇懃で丁寧であったが、その本性は悪質としか言いようがないものだった。
あの人間が与えてきた肉など、決して良きものであるはずがない。
先ほどの男、前園は風態こそ慇懃で丁寧であったが、その本性は悪質としか言いようがないものだった。
あの人間が与えてきた肉など、決して良きものであるはずがない。
なのに──目の前の肉が美味しくて堪らないのだ。
人肉のハンバーグと前園は言っていた。
それが何を意味するのか、禰豆子は十分理解していたし、食べてはいけないものだということもわかっている。
だがそれでも禰豆子は食べてしまう。
ひとかじり、またひとかじり、渡された肉を食べてしまっている。
それが何を意味するのか、禰豆子は十分理解していたし、食べてはいけないものだということもわかっている。
だがそれでも禰豆子は食べてしまう。
ひとかじり、またひとかじり、渡された肉を食べてしまっている。
ああ、肉はもうあと少ししかない。
では、じゃあその次は──
では、じゃあその次は──
「……君は」
──背後から声をかけられたことに気づき、禰豆子はビクリと肩をあげた。
見られてはマズイ、と奇妙な後ろめたさがその身を貫いた。
今更──どうしようもないというのに。
見られてはマズイ、と奇妙な後ろめたさがその身を貫いた。
今更──どうしようもないというのに。
肉を背中に隠し、禰豆子は声の主へと振り返った。
そこにいたのは線の細い、整った顔立ちをした青年だった。
そこにいたのは線の細い、整った顔立ちをした青年だった。
「その肉……そうか」
ああ、案の定──というべきか、青年は禰豆子が何を隠してのかわかってしまったらしい。
禰豆子はふるふると首を横に振る。
違う、という感情。生きないと、という感情。終わらせてほしい、という感情。
矛盾する想いがぐちゃぐちゃに入り乱れる。
その最中においてさえ、腹の奥底から湧き上がる食欲が収まることはなく、彼女の心中をより混沌としたものにさせていく。
禰豆子はふるふると首を横に振る。
違う、という感情。生きないと、という感情。終わらせてほしい、という感情。
矛盾する想いがぐちゃぐちゃに入り乱れる。
その最中においてさえ、腹の奥底から湧き上がる食欲が収まることはなく、彼女の心中をより混沌としたものにさせていく。
それでも──仮に青年が禰豆子を攻撃してきた場合、それでも彼女は身を守るために反撃しただろう。
どれほど死にたいと思っても、その命を誰かに渡してしまうことは、ダメだとわかっていたから。
どれほど死にたいと思っても、その命を誰かに渡してしまうことは、ダメだとわかっていたから。
「君は人を食べたの?」
その声は静かなものだった。
静かに、そして鋭い口調で彼は禰豆子に問いかける。
静かに、そして鋭い口調で彼は禰豆子に問いかける。
禰豆子はその問いに己の汚れた手のひらを見て、顔を歪ませたのち、頷いた。
「じゃあ君は──人を殺したの?」
先と似て非なる問いかけ。
悠の口調は決して変わっていない。
だが禰豆子は、その問いかけこそが、この身の分水嶺になるだと直感していた。
悠の口調は決して変わっていない。
だが禰豆子は、その問いかけこそが、この身の分水嶺になるだと直感していた。
禰豆子はただ──首を振った。
それは事実であったし、願望でもあった。
その身の奥底から溢れ出てくる感覚にいやいやとするように、彼女は目を瞑り、首を横に振っていた。
それは事実であったし、願望でもあった。
その身の奥底から溢れ出てくる感覚にいやいやとするように、彼女は目を瞑り、首を横に振っていた。
「──そう」
その様子を見て、悠は何かを察したようだった。
街が静まり返る。人間が誰もいない夜の街の中、月明かりに照らされた二人の異形はただ静かに視線を交わした。
街が静まり返る。人間が誰もいない夜の街の中、月明かりに照らされた二人の異形はただ静かに視線を交わした。
「わかった。じゃあ落ち着いて」
そこで青年は、ふっと口調を緩め、手を差し伸べてきた。
禰豆子はしばしその瞳を揺らしていたが、迷った末にその手を取ろうとする。
だが血と肉に汚れた己に掌に逡巡したのだろう。
禰豆子はしばしその瞳を揺らしていたが、迷った末にその手を取ろうとする。
だが血と肉に汚れた己に掌に逡巡したのだろう。
「大丈夫」
青年──水澤悠はそう穏やかに告げて、彼女の手を掴み取った。
◇
──アマゾン、ではないみたいだ。
悠は一人考え柄、誰もいなくなった街をバイクで疾駆する。
獣のごとき駆動音をあげる漆黒のハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】。
高性能なハーレーを手塩にかけてカスタムしたであろうことがわかる一台であり、これならば多少の悪路も無視してこの島を駆け回ることができるだろう。
このマシンを使い、千翼やイユ、仁たちが互いに出会う前に駆けつけなければならない。
そう強い想いで悠はハンドルグリップを握り込んだ。
獣のごとき駆動音をあげる漆黒のハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】。
高性能なハーレーを手塩にかけてカスタムしたであろうことがわかる一台であり、これならば多少の悪路も無視してこの島を駆け回ることができるだろう。
このマシンを使い、千翼やイユ、仁たちが互いに出会う前に駆けつけなければならない。
そう強い想いで悠はハンドルグリップを握り込んだ。
加えて、まだ考えるべきことがある。
──この島にはアマゾン以外の異形がいる。
先ほど交戦した清姫や、今背中に乗せている禰豆子。
共にアマゾンではなかった。だが、人間でもない。
場合によっては、それが人を喰らうものになるという意味では、アマゾンに近しい存在であることは間違いなかった。
共にアマゾンではなかった。だが、人間でもない。
場合によっては、それが人を喰らうものになるという意味では、アマゾンに近しい存在であることは間違いなかった。
「──……」
その背中には少女、禰豆子が身を寄せるように眠っている。
いや、眠ろうとしている。眠ることで衝動を抑えてようとしているらしいが、なかなか寝付けないでいるらしかった。
時折もぞもぞと身体を動かす彼女に対し、あえて悠は何も言いはしなかった。
いや、眠ろうとしている。眠ることで衝動を抑えてようとしているらしいが、なかなか寝付けないでいるらしかった。
時折もぞもぞと身体を動かす彼女に対し、あえて悠は何も言いはしなかった。
悠は彼女が何を喰らっていたか一目見た瞬間には見抜いていたし、彼女がその結果湧き出る“ある衝動”に必死に抗っていることもわかっていた。
そして──その抵抗が、長くは続きはしないことも。
生きる限り、その衝動に抗うことはできない。この5年間戦いに身を投じてきた悠は、そのどうしようもない事実を何度も目の当たりにしていた。
そして──その抵抗が、長くは続きはしないことも。
生きる限り、その衝動に抗うことはできない。この5年間戦いに身を投じてきた悠は、そのどうしようもない事実を何度も目の当たりにしていた。
──いずれ彼女は我慢できなくなる
彼女は今、必死に人であろうとしている。
彼女のの内なる戦いが続く限り、悠は彼女を守るつもりだった。
だが──彼女が衝動に敗けたその瞬間、悠はその命を刈り取る。
彼女のの内なる戦いが続く限り、悠は彼女を守るつもりだった。
だが──彼女が衝動に敗けたその瞬間、悠はその命を刈り取る。
「──……ぅ」
寝付けない禰豆子の苦しげな呻き声が聞こえる。
きっと──決定的な瞬間がそう遠く内に訪れるだろうと、悠は確信していた。
きっと──決定的な瞬間がそう遠く内に訪れるだろうと、悠は確信していた。
【B-1・街/1日目・黎明】
【水澤悠@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:やや空腹
[装備]:悠のアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ、ハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】@HiGH&LOW
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:狩るべきものを狩り、守りたいものを守る
1:人を喰う、あるいは殺したモノを狩る
2:仁より先に千翼、イユ、クラゲアマゾンを殺す
3:明という人物に鮫島の最後を伝える
4:禰豆子が衝動に敗けたその瞬間、その命を刈り取る
[備考]
[状態]:やや空腹
[装備]:悠のアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ、ハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】@HiGH&LOW
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:狩るべきものを狩り、守りたいものを守る
1:人を喰う、あるいは殺したモノを狩る
2:仁より先に千翼、イユ、クラゲアマゾンを殺す
3:明という人物に鮫島の最後を伝える
4:禰豆子が衝動に敗けたその瞬間、その命を刈り取る
[備考]
【竈門禰豆子@鬼滅の刃】
[状態]:健康、鬼
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:不明。
1:ねたい。でもねれない。ただ、たべたい
[備考]
※人肉を食いました。
[状態]:健康、鬼
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:不明。
1:ねたい。でもねれない。ただ、たべたい
[備考]
※人肉を食いました。
※ハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】@HiGH&LOW
悠に支給
雨宮兄弟の弟、広斗が使っていたバイクで、映画ではこれで縦横無尽のアクションを繰り広げた
カスタム費用を合わせて1000万円ほどだとか。
悠に支給
雨宮兄弟の弟、広斗が使っていたバイクで、映画ではこれで縦横無尽のアクションを繰り広げた
カスタム費用を合わせて1000万円ほどだとか。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 獣が嗤うこの街で | 竈門禰豆子 | Determination Symphony(前編) |
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