以前、同人誌用に書き下ろして発行せずに眠っていた小説です。
大幅に加筆修正しての、お披露目です。
淳健です。
苦手な人は回れ右!!
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完璧主義者の憂鬱
都内、某所。
最近出来たばかりの大型シティホテル。
大広間の入口には『全日本ユース祝勝会』と書かれた案内板が掲げられていた。
正月の選手権後、サッカー協会が企画した『海外チームとのトーナメント形式によるチャリティー試合』が終了し、見事優勝を勝ち取った面々を祝う為に関係者一同が集められたパーティーである。
選手、大会関係者、スポンサー、マスコミ等が会場にひしめき合っていた。
この大会の一番のスポンサーであるところの、三杉財閥の所有するホテルは建物、設備、料理どれを取っても西欧の一流ホテルに引けを取らない。
集まった人々は、大方満足であった。
しかし、会場の一角に不満気な一行がいた。
このパーティーの主役である筈の、全日本ユースの面々である。
所詮は大人達の思惑を含んだ『お付き合い』の場である。
高校生の彼等が退屈しない方がおかしいのだ。
「早く終わんないかなー。」
ウンザリしたと言った感じで反町一樹がぼやいた。
反町は、いかにも今時の高校生といった感じの印象だ。
「仕方ないよ。義務だし。」
たまたま隣に居た岬太郎の返事は、にべもない。
こちらは優し気な容姿をしているが、どうも口元が皮肉めいている。
『うぇぇ』と口の中で呟くと、反町は手にしたオレンジジュースを飲んだ。
途端に不味そうな顔になる。
ぬるくなっていたのに気付き、ウンザリした気分が増した様だ。
そんな反町を横目で見ている岬だって退屈の極みなのだ。
普段は反町が東邦学園、岬は南葛高校とライバル校同士だが全日本では勿論チームメイトである。
それでも二人で会話している姿は珍しい。
「……この後、二次会を用意させたから我慢してくれないか?。」
静かな、それでいて通る声に二人が振り向く。
声の主は三杉淳。
武蔵医大付属高校二年生。
すらりとした長身で、どこか貴族の様な浮世離れした端正な容姿。
全日本ユースの頭脳と言われる男だ。
(ちなみに反町と岬も同じく高校二年生である。)
三杉の視線は遠くを見つめたままだ。
"うわぁ……重症だねぇ。"
ぼうっとした三杉の様子に、反町はこっそり肩を竦めた。
三杉の視線の先には彼の想い人が居た。
肩を越す艶やかな黒髪を揺らし、いつも愛らしいと評される容貌を多少緊張に強張らせているのは苦手な人混みのせいなのか。
細身のしなやかな身体を、全日本ユースのお仕着せのスーツに包んでいる。
東邦学園高等部二年生になる若島津健が三杉の想いの相手だった。
当然と言った態度で隣を陣取る、同じ学校の日向小次郎に向かって、見上げる様にして何か喋っている。
長身と恵まれた体格を誇り、褐色の肌に鋭い眼光の威圧感すら湛えた猛虎と呼ばれる日向の表情が、健を見ている時だけ柔らかさを含むのが遠目でも解る。
"いつも日向の隣で……。"
それは酷い嫉妬だった。
久しぶりに見た健は、とても綺麗になっていた。
この間まで可愛らしいばかりだったのが、不思議な淡い翳りに縁どられた、それでいて内側から静かに輝く様な……。
もしかしたら日向の仕業なのだろうか。
健は既に日向と何らかの関係にあるのだろうか。
まさか……と三杉は頭を振った。
自分は、あんまりにも健を愛しすぎていて少しおかしくなっているのだ。気が付くと邪推ばかりしてしまう。
健が欲しいと今夜は何時にもまして思う。
自分を見失うほどに。
あれが欲しい。腕の中に搦め捕りたい。
こんな感情は全く三杉らしくなかった。
熱い視線の先には、他人に向かって微笑む健が居た。
何故か酷く傷付けられた様に、三杉は思った。
岬が言うところの『義務』を終了して、ユースのメンバーは最上階のスイートルームに集まっていた。
スイートらしい豪華な広々とした部屋で、メンバーは思い思いの格好で寛いでいる。
料理や飲み物、菓子類もたっぷり用意されていた。
大会での闘いを労っての二次会である。
協会の片桐からは『あまり羽目を外さぬように』との釘を刺されたのだが。
やっぱり持ち込んだ輩がいるのだ。
アルコールを。
「反町、それ僕にも頂戴。」
ふかふかの高級そうな絨毯に座り、ペットボトルに偽装した日本酒を飲んでいた反町に岬は近寄り言った。
「へぇ……イケる口?。」
意外そうな口ぶりで、それでも反町は差し出されたグラスに注いでやった。
「まぁね。」
岬は一口飲むと、途端に眉根を寄せた。
「うわぁ。安酒。」
貰ったものにも平気で文句を言うあたり、さすが岬太郎だ。
「なんだとぅ。大五郎をナメんなよっ!。」
応酬する反町も、口で言うほど気にしていない。
「飲まなきゃ、やってらんないよね。」
文句を言った割には、反町からペットボトルを奪って岬は二杯目を注いだ。
視線の先には、健と日向。
「何、岬は日向さん好きなの?。」
からかいを含んだ声で反町が言う。
「はぁ?!お前馬鹿じゃないの?一辺死んで来たら?。」
怒りと言うよりは呆れ口調で岬は返す。
優し気な容姿からは程遠い口の悪さ。
「ヒドイよねぇ。岬ちゃんは。相変わらず。」
悪口を気にもしていない反町が、ニヤニヤと笑いながら言う。
「僕が反町ごときに優しくする訳ないじゃん。」
当然と言わんばかりに岬が応え、グラスを開けた。
そのまま三杯目に突入する彼に、反町は呟く様に言った。
「岬が、本当に優しくすんのは健ちゃんだけだもんねぇ……。」
「当たり前。」
反町の呟きに岬は即答した。
そして反町のグラスに注いでやりながら、付け加えた。
「反町も、でしょ。」応えず、反町は苦く笑った。
"皆、狂ってんなぁ……。俺もだけどね。"
自嘲を含めて反町は思った。
反町の視線の先にも、健と日向。
皆、日向が羨ましくて仕方がないのだ。
己だけの守護天使を持っている彼を。
最終更新:2011年10月24日 10:31