それぞれの視点で『ひとりごと』をつぶやきます。
SSシリーズになるかも?
トップバッターは、勿論『夢茶屋』の看板娘の彼です♪
ひとりごと
―ある日の若島津健―
朝一番の軽いランニングを済ましてしまうと、暇になってしまった。
寮の部屋(ちなみに旧寮)で俺、若島津健は暇を持て余していた。
気の早いインフルエンザが大流行で学校も部活も禁止。
さっきのランニングだって、目を盗んで行ってきたのだし。
暇。
サッカーないと、とても暇。
だって俺、サッカー馬鹿だし。
一応、強豪校の正GKやってるんだし。
しかも少々風邪気味。
部屋の炬燵で丸くなるしかない。
「あーひま。」
ついつい口に出すと、同室の日向さんが呆れた様に言った。
「なら勉強しろ。」
えーやだ。
と言い返そうとして、俺は少しむっとした。
だって日向さん、トレーニングウェアに着替えて出掛ける支度してるんだもん。
「ずるいっ。俺もいくっっ。」
日向さんが持ち込んだ(今は俺のお気に入りの)炬燵から出ようとすると、日向さんに睨まれた。
「お前は風邪気味だから駄目だろう?」
解ってるけど。
だって大好きなぬくぬくの炬燵より、サッカーの方がもっと大好きなんだもの。
膨れっ面の俺を溜め息まじりに見て、やれやれといった感じで日向さんが言った。
「ジム行くだけだ。帰りに何か土産持ってきてやるから我慢しろ。」
ふーん。
お土産かぁ。
日向さんの言葉に、少しだけ機嫌を直した俺に彼はクスリと笑った。
「ガキ。」
「ガキじゃないですっ。だいたい同じ年ですっっ。」
俺が言い返すと日向さんは"はいはい"と言いながら、手をひらひらさせて部屋を出て行った。
「いい子にして待ってろ。」
笑いを含んだ声と共に閉まった扉に、俺は思いっきりクッションを投げつけた。
「馬鹿猛虎っっ!!」
最近すっかり大人びて、何だかカッコイイのも天井知らずに増している日向さんに、前にも増して子供扱いされる様になってしまった。
日向小次郎。
私立東邦学園高等部二年生。
サッカー部主将。
言わずと知れた高校No.1FW。
異名は猛虎。
お日様と仲良しの日焼けした肌。
背も高くて。
がっしりとした、でもサッカーの為に無駄なく絞られた体。
うちのチームの軍師である島野からしたら、『まだデカイ。お前は巨人族か。だから重いのか。』と毒吐かれまくりなんだけど。
顔つきだって、とっても男らしくて精悍で。
子供の頃から女に間違われる様な、軟弱な俺とは大違い。
カリスマって言うのかな。
チームも日向さんを先頭に一丸となってる。
サッカー部じゃない奴からも尊敬されていて。
女子は勿論、男子にだって人気あるし。
そこまで思って、俺はどーんと落ち込んでしまった。
俺みたいな、ちんちくりんが一緒に居ていいのかな。
身長も、あんま伸びなくて。
GKとしては弱点。
しかもケガばっか。
筋肉も、あんま付かなくて嫌だし。
最近、少し悩んでる。
どこまで、あの人の背中を追っていけるんだろう。
ふわふわと柔らかいカーディガンの袖に顔を半分埋める様にして、俺は溜め息をついた。
お母さんが送ってくれた白いふわふわのカーディガン。
昔から、うちのお母さんは俺に可愛い格好をさせたがる。
派手なものは好きじゃないし出来れば男らしい服を送ってほしいけど、これは肌触りが柔らかくて気持ち良すぎて気に入ってしまった。
日向さんは『ウサギみたいだな。』と笑って。
いつもなら噴飯ものの、そのセリフが嫌じゃなかった。
あー嫌だな。
暇だと思考がとりとめもなくて、余分な事まで考えてしまいそう。
サッカーなくて暇で。
すこぅしネガティブな俺の耳に、ノックの音が響いた。
最終更新:2011年10月23日 20:54