視線と視線が交錯していた、
帰ってきたネットスラムは相変わらずロクでもない場所だったが、それでも先の場所よりはずっとマシだった。
ここはまだ生気がある。雑然としているが、ひたすらの虚無ではない。
無論居心地はよくないが――こうした場所は慣れている。
ごちゃごちゃとした街も、偽物の現実も、戦闘の緊張感も、全て慣れ親しんだものだ。

「……どういうことです、Mr.モーフィアス」
「動かない方がいい。お前が懐に銃を隠しているのは知っている」

慣れているからこそ、モーフィアスは口元に笑みを浮かべてみせた。
その手には刀が握られている。揺光から譲り受けた一太刀。美しい銘を持つそれは手に馴染み、ラニの首へとかけられている。
ラニは照り光る刃を横目に口を開く。

「これは裏切りと考えてもよろしいでしょうか? Mr.モーフィアス」
「裏切られる前に裏切っただけだ」

モーフィアスは淡々と述べる。

「お前はゲームに乗っているのだろう、ラニ?」
「……根拠の提示をお願いします」
「短い付き合いだったが、それでもお前の人となりは自ずと分かった。
 無駄を嫌う。成程その言葉通りだろう。お前の行動は非常にロジカルだ。
 そのことに嘘偽りはないだろう」

その言葉にラニは「褒め言葉として受け取っておきます」と頭を下げた。
その細い首筋に刃が今にも喰い込まんとする。

「だがお前はこうも言ったな。
 こういった探索クエストは複数人で行う方がずっと効率が良い、とも」
「ええ」
「それも正しいし、嘘はないだろう。
 だが、それは果たしてこのクエストに限ったことなのか? もしゲームからの脱出を考えているのだとしても、同行者を集うべきだ。
 にも関わらずお前は一人だった。これはおかしい。ロジカルなお前のことだ、全ての行動は論理的に説明が付く筈。
 ならば導き出される答えは一つ。前提が間違っていた――ゲームからの脱出ではなく、クリアを考えている、だ」
「その論理は穴がありますね。すぐに指摘できるだけでも三点は致命的な瑕疵があります。
 まさかそれだけ私に襲いかかっているのですか?」

ラニの言葉は平坦なままだった。命の危機が迫っていると言うのに一切動揺した様子が見られない。
本当に機械のような女だ。モーフィアスは率直にそんな印象を抱いた。

「まさか。ただ少し疑問に思っただけに過ぎない。私としても、その時点ではお前にさして警戒心を抱いていなかった。
 ただ、疑念が強まったのは、先程お前がデータを入手した時だ」

ラニが無言でモーフィアスを見返す。言葉の続きを待っているようだ。

「あの時……noitnetni.cyl_1を手に入れた時、一瞬だがお前のアイテムストレージが表示された」
「……なるほど」

――ラニのアイテムストレージには多くのアイテムがあった。
その量は明らかに初期支給のものだけではなかった。支給アイテムを早々譲り渡す参加者は居ないだろう。
ならば最も有力な可能性は……

「ウィンドウを公開設定にしていたのが仇となったな。お前としてはアイテムを自分で確保したかったのだろうが」
「ええ……たしかにそれはミスでした。クエストやあのエリアについて思考ソースを割き過ぎていましたね」

ラニは目を潜め語る。

「しかしそれだけでは私にも抗弁が可能です。
 このアイテムは私がアリーナで稼いだポイントで買ったもの……という可能性もあります」
「確かにそうだ。だから私はまだ確信していなかった。
 だから最後の最後にカマをかけた。それまで伏せていた同行者の存在を語ることで、お前の反応を見た。
 もしお前が本当にゲームに乗る気がないのであれば冷静に戦力増強を喜んだだろう。
 だがお前はあの時」

転送の瞬間のことを思い起こす。
モーフィアスの言葉を聞いたラニは、僅かにその瞳を揺らした。
その中に動揺の色が走ったのを、歴戦の戦士であるモーフィアスは見逃さなかった。

ラニとしては、自分一人ならば何とかなると踏んでいたのだろう。
ある程度クエストを進めた後、不意打ちに自分を討つ。そんな計画を練っていたに違いない。
だがそれも集団が大きくなれば難しくなる。

ラニは刀を向けられたまま、そのガラス細工のような瞳をモーフィアスに向け、

「……なるほど、理には適っていますね」
「それにお前は自分がゲームに乗っていないとは一言も口にしていないからな。
 お前の言葉は全て嘘ではなかった。ただ本当のことを語っていないだけだ」
「……一つ尋ねますが、同行者の存在は本当ですか?」
「事実だ。伏せていたことに他意はない。いやなかった。
 偶然カードとして使えるようになっただけだ」

ラニはしばらく無言だった。
目線を僅かに下げ、首筋に当たる刃を見た。
周りではスラムの住民が相も変わらず意味不明な言葉を喚き散らしている。

「……認めましょう。貴方の言う通り、私はこのゲームのクリアを目指しています。
 運営について探ってもいますが、目標はあくまで正規の手段による優勝です」

ラニは顔を上げ告げた。
モーフィアスの腕に力が籠められる。少しでも不審な動きを見せれば躊躇なく刃を放つ心づもりでいた。

「ですが、貴方の言葉には一点間違いがあります」

ラニは目を瞑り、その手を胸に当てた。

「貴方は言いましたね。私の行動は全て論理的に説明がつくと」

そしてゆっくりと目を開き――

「それは違います。
 私は……私にも理解できない感情(なかみ)を求めて動いている」

――その背後に巨躯が現れた。
それが屈強な武人のものであると分かった次の瞬間、モーフィアスの身体は吹き飛ばされていた。






「……来ないね」

約束の時刻になってもモーフィアスは姿を現さなかった。
時間にして一時間と少し、少し余裕を持って集合場所である鳥居に戻ってきたのだが、モーフィアスはそこに居なかった。
まさか時間を間違えているということもあるまい。彼はその手のことに関しては厳しく執り行う人物であるように思えた。

「何かあったのかな?」

ロックマンが心配そうに呟く。
揺光もまた不安げに辺りを伺った。
雑然とした風景に溶け込むように耳を澄ませる。気配を探る。ここは自分の知る『現実』なのだから違和感には自分が気づくべき――

「■■■■■■■■■■■ーーー!」

耳を澄ませるまでもなくその咆哮はエリアに響き渡った。
理性の感じられないその雄叫びはプレイヤーでなくモンスターのそれに聞こえた。
急いで揺光は駆け出していた。が、ロックマンはそれより一足早く声の下に向かっている。

「あっちはモーフィアスが行っていた方だ」
「うん、そうだ。たぶん何かあったんだ!」

駆けながら二人は言葉を交わす。
ロックマンは元より双剣士である揺光も高い敏捷を誇るPCだ。
それに、と思い彼女は己の腕を見る。そこでは銀の刃がきらりと光っている。

(今度はアタシも戦える)

そう自分を鼓舞しつつ彼女は駆けた。
そして彼らが辿り着いたときそこには、

「■■■■■■■■■■」

狂気に塗りつぶされた声を張る武人が槍を構えていた。
中華風の鎧を纏った男は巨大な槍を軽々と振り回している。触覚のように伸びる頭部の飾りがふるふると揺れた。

その様に揺光は息を呑んだ。
何故ならその姿はまさしく、彼女が好きな『三国志』の中でも屈指の知名度を誇る武将であったのだから。
そうして彼女は確信した。目の前の相手が『三国志』最強の武将――呂布であると。

「……やはり同行者の件は事実だったのですね」

呂布に寄りそうように立つ少女がそう冷静に呟いていた。
その視線の先には肩で息をするモーフィアスの姿があった。

「お前たちか、すまない。敵を連れてきてしまった。
 奴の名ははラニ。ゲームに乗っている。隣のチャイニーズは恐らく奴のスキルだろう」

息は乱れていたが、彼の言葉には淀みがなく、また焦りもなかった。
ロックマンは無言で頷く。スカーフが揺れ、その視線がじっと少女――ラニへと注がれた。
戦う、のか。揺光は呂布を見上げごくりと息を呑んだ。
先程までとは違った緊張感がある。正直に言うと、少しだけ喜びも混じっている。
呂布。呂布である。彼がまとう激烈な威圧感はポリゴンのチャチなものではなく、圧倒的なリアリティを持ってそこに居る。
そんな存在と直に相対できる、戦える――というのはこんな時だと言うのに心躍った。

「揺光ちゃん、危なかったら隠れててね」

そんな感慨を遮るようにロックマンが言った。
揺光はむ、と声を漏らす。反駁の代わりに一歩前に出て戦意を示した。

「……バーサーカー」

ラニがそう呼びかけると、呂布は咆哮し、そして戦いの火蓋が切られた。
その圧倒的な膂力で槍を振り回す呂布に対し、ロックマンと揺光は敏捷を生かした立ち回りを見せる。
シャドースタイルと双剣士、火力こそないが共に回避に優れたスタイルである。

「削三連!」

双剣を装備しアーツが使用可能になった揺光が舞うように剣を振るう。
無論恐怖があるが故に時節動きが硬くなるが、そこはロックマンがフォローする。
そのコンビネーションに呂布は上手く対処できないでいた。

……本来の彼ならばいざしらず、バーサーカーとして召喚された彼には技が欠けている。
その為大雑把な立ち回りしかできず、速度で勝る二人を捉えることができなかった。
それを補うのがマスターであるラニの役割であるが、彼女は今サポートをする余裕がなかった。

「投降しろ、ラニ。お前の銃は当たらない」
「……拒否します」

モーフィアスはラニへと刀を向けている。
対するラニは白い装飾に彩られた銃――DG-0の引き金に指をかけている。
距離は数メートル。普通ならば銃を持つラニが有利なのだろうが、しかしモーフィアスはマトリックス内での銃撃に対する対処法を心得ていた。
それ故に自信を滲ませラニへと迫る。握る刀身が黄昏の光を受け橙に染まった。

「お前の負けだ。私の同行者が到着するまでに勝負をつけられなかった以上、ここからの逆転はない」
「状況の不利は認めます。しかし投降は尚早だと判断します」

そう言って彼女は引金を引き――

「そうか、残念だ」

銃弾が発射される前に、モーフィアスがラニを押し倒していた。
「くっ」と悔しげに漏らすラニ。ジャンクデータの山に倒れ込んだ身体に、モーフィアスは刀を添えた。

「まずはあのチャイニーズをひっこめろ。話を聞かせてもらおう。
 武装解除を拒否できる立場にないことは分かっているな?」

モーフィアスが冷徹に言い放つ。
見上げるラニの瞳は変わらずガラス細工のように偽物染みていて――

「助けてください! 私は今悪質なプレイヤーに襲われています」

その声を聞いたとき、それまで冷静にことを運んでいたモーフィアスが初めて戸惑いを見せた。
が、すぐにその意図を推しはかる。突然叫びを上げたラニ……彼女が狙っているのは、

「そこのお前たち」

鋭い一声が差し込まれた。
ラニへの警戒をしつつも振り向くと、そこには三人の参加者の姿があった。
漆黒の鋭角的なマシンを中心に、褐色肌の剣士、緑衣を纏う青年、彼らはみなモーフィアスに視線を注いでいる。
横目でロックマンたちを伺う。既に呂布の姿は消え、彼らは武器を持って立ち尽くしている。

ラニの狙い、それは第三者を巻き込むことか。
近くに居た彼らの存在にラニは気付いていたのだろう。あるいは先の探索の際に既に見つけていたのかもしれない。
そしてタイミングを計らって彼らを呼びつけた。外観だけ見れば、今の自分たちは少女を集団で襲っている、ということになる。
モーフィアスはラニを見返した。その表情に感情の揺れは一切見られない。

「その少女の言葉は本当か?」

緊張の滲ませた言葉が黒のマシンより放たれた。
その外見と裏腹にその声は少女のそれだ。しかしその声色は戦士のそれだ。

幸いなのは、彼らが冷静な集団だったということだ。
直情的にラニの言葉を信じるのではなく、あくまで状況を確認してから事態に介入しようとしている。
モーフィアスは務めて冷静に口を開く。

「Hey」

だがそれを遮るように一対の白い影が躍り出た。
白で塗り固めた異様な姿。モーフィアスはすぐにそれが己の知る敵だと気付いた。

「こいつらか!」

緑衣の青年が忌々しげに叫んだ。どうやらこの敵、ツインズと交戦していたらしい。
その最中にこの場に居合わせてしまった――状況がさらに複雑化する。

ツインズの一方がモーフィアスへと襲いかかる。奴は数時間前と同じく大鎌を持っており、実体化した瞬間、振りかぶった巨大な刃が見えた。。
仕方なく彼はラニの拘束を解き、その一撃を受け止める。甲高い金属音が悲鳴のように響いた。
もう一方のツインズは揺光へと襲いかかっている。ロックマンも加わって応戦しているが、突然の事態に上手く立ち回れていないようだ。
そして闖入者たる三人もこの状況でどう動くか考えあぐねているようだった。

「バーサーカー」

その言葉にモーフィアスははっとする。
混沌した状況。この場で最も自由に動けるのは――

「……コード・ゴッドフォース・クロウラー」

その一声で、スラムは閃光に呑まれた。









データの瓦礫を払いのけモーフィアスは立ち上がった。
スーツについた埃を振り払いのけ顔を上げる。
ラニの従者が放った一撃はあの混沌とした場を全て呑み込んでいた。

「モーフィアス!」

呼びかける声に振り向くと、かろうじて無事だったビルの上にロックマンが立っている。
その手には揺光を抱えている。咄嗟に彼女を抱えて飛び去ったのだろう。
両手で抱えられる形になった揺光は顔を紅潮させている。

「大丈夫だったか? ロックマン」
「うん、僕と揺光ちゃんは大丈夫だよ」
「私も大丈夫だ。ダメージがない訳ではないが、しかし直撃してはいない」

元よりダメージを与えようと放った一撃ではないのだろう。ラニの攻撃は非常に大雑把だった。

「……ラニには逃げられたか」

が、状況を切り抜けるにはあれで十分だった訳だ。
あの場に居たものは皆一撃を避けることで精いっぱいで、彼女の同行にまで注意を払うことができなかった。

「あの人たち……黒いナビたちも居ないね」
「ああ、状況が状況だったからな。一度距離を取ったのだろう」

モーフィアスは思案顔で顎を撫でた。
あの場でラニを逃してしまったのは痛い。彼女の冷静な分析力が敵となるのは今後の展開に不安を与えた。
途中で現れた別の陣営ともグレーの関係のままだ。何とか友好的に接触したいものだが……

更に言えば探索クエストも終わっていない。
対象のアイテムはラニが持って行ってしまった。取り戻す方法も考えなくてはならない。
複雑化していく状況に、モーフィアスはふぅと息を吐いた。
ネットスラムの空は変わらず黄昏のままだ。陽が落ちることはあるのだろうか。

「あのさ、そろそろ下ろしてくれない?」

ふとそこで揺光が呟いた。
その声色は僅かに震え、思春期の少女らしい羞恥を滲ませていた。


[B-10/ネットスラム/午前]

【ロックマン@ロックマンエグゼ3】
[ステータス]:HP80%
[装備]:なし
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3(本人確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止め、熱斗の所に帰る
1:モーフィアス、揺光と行動する。
2:ネットスラムの探索。
[備考]
※プロトに取り込まれた後からの参加です。
※アクアシャドースタイルです。
※ナビカスタマイザーの状態は後の書き手さんにお任せします。
※.hack//世界観の概要を知りました。
※マトリックスの世界観を知りました。

【揺光@.hack//G.U.】
[ステータス]:HP60%
[装備]:最後の裏切り@.hack//
[アイテム]:不明支給品0~3、平癒の水@.hack//G.U.×3、ホールメテオ@ロックマンエグゼ3、基本支給品一式
[思考]
基本:この殺し合いから脱出する
1:ロックマン、モーフィアスと行動する。
2:ネットスラムの探索。
[備考]
※Vol.3にて、未帰還者状態から覚醒し、ハセヲのメールを確認した直後からの参戦です
※クラインと互いの情報を交換しました。時代、世界観の決定的なズレを認識しました。
※ハセヲが参加していることに気付いていません
※ロックマンエグゼの世界観を知りました。
※マトリックスの世界観を知りました。
※バーサーカーの真名を看破しました。

【モーフィアス@マトリックスシリーズ】
[ステータス]:軽い打撲、疲労(中)
[装備]:あの日の思い出@.hack//
[アイテム]:不明支給品0~2、基本支給品一式
[思考]
基本:この空間が何であるかを突き止める
1:(いるならば)ネオを探す
2:トリニティ、セラフを探す
3:ネオがいるのなら絶対に脱出させる
4:揺光、ロックマンと共にネットスラムを探索する。
5:探索クエストを進める。ラニを警戒。
[備考]
※参戦時期はレヴォリューションズ、メロビンジアンのアジトに殴り込みを掛けた直後
※.hack//世界の概要を知りました。
※ロックマンエグゼの世界観を知りました。





「えーと、ありゃあどういう状況だったんだ?」

今しがた巻き込まれた戦闘から逃れた後、アーチャーが頭をかき分け言った。
その顔には困惑が浮かんでいる。
ブラックローズもまた腕を組み「うーん……」と考える素振りを見せている。

「確かに少し判別がつきづらいな。
 少女の言葉の真偽を確かめておきたかったが……」

デュエルアバターから観戦用のアバター――黒雪姫と切り替えた彼女は先の状況を思い起こす。
あの白いPKを追ってこのエリア、ネットスラムに辿り着いた訳だが、その途中で助けを呼ぶ声を聞きつける。
そこで急いで駆け付けたところ、そこでは少女が三人のプレイヤーに襲われている様だった。
それだけならば状況は単純だったのだが、

「だけど確かあの女はマスターだった筈だぜ。月海原学園でも見かけた覚えがある」
「ああ、それに最後に見せたあの一撃、恐らくあれはサーヴァントによるものだろう」

少女が単なる弱者でないことは読み取れた。
だとすれば彼女が襲った側で返り討ちにあっていた、という可能性もあり得る。

「じゃあ問題はアレが悪い奴らから逃げる為の苦し紛れの一撃だったのか、それとも計算高いもんだったかってことな訳ね」

ブラックローズが言った。
アレ、というのは少女の放った最後の一撃のことだろう。
今の自分たちでは少女の行動原理を判別することができない。

自分たちが少女を見失ったのはあの一撃――恐らくは宝具によるものだ――のせいだ。
逃げおおせることまで計算に入れていたのか、それともただ生き残ることだけを狙ったものだったのか。

「……難しいな、人を信じるということは」

考えを巡らしながら黒雪姫はぽつりと呟いた。
その言葉にアーチャーもブラックローズも沈黙する。
人を信じること、その難しさは少し前に痛感した。犠牲を伴って。

幸いにも自分たちはこうして互いを信じることができた。
では今度は――

「む? おや君たちは」

ふとそこでしわがれた声がした。
振り向くと、そこには等身の低い老人のアバターがあった。

「タルタルガじゃない! 何でここに……ってそういえばここネットスラムだったわね」

ブラックローズが驚きの声を上げる。タルタルガと呼ばれた老人はくつくつと喉を鳴らした。
どうやら知り合いらしかった。このエリアは彼女がよく知る場所らしいので、NPCにも見覚えがあるのだろう。
タルタルガと呼ばれた住民はブラックローズに笑いかけた後、しかし黒雪姫の方を見た。

「君はもしかして黒雪姫、と呼ばれる人間ではないか?
 話は聞いておる。そうか、すれ違ったか……」

名前を言い当てられ黒雪姫は身を硬くする。
どうして名を知っている。そしてすれ違った、とは?

「詳しくは言えんがの。しかしまぁこれも何かの縁じゃろう。
 説明くらいはしてやろう。このエリアで行われておる、過去を掘り起こすクエストについてな」


『黒薔薇騎士団』

【ブラック・ロータス@アクセル・ワールド】
[ステータス]:HP50%/デュエルアバター 、令呪一画
[装備]:なし
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:バトルロワイアルには乗らない。
1:ブラックローズ、アーチャーと共に行動する。
2:ネットスラムを探索する。
3:褐色の少女(ラニ)及び黒人(モーフィアス)らを警戒。
[サーヴァント]:アーチャー(ロビンフッド)
[ステータス]:ダメージ(中)、魔力消費(大)
[備考]
時期は少なくとも9巻より後。

【ブラックローズ@.hack//】
[ステータス]:HP30%
[装備]:紅蓮剣・赤鉄@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考]
基本:バトルロワイアルを止める。
1:黒雪姫、アーチャーと共に行動する。
2:ネットスラムを探索する。
3:褐色の少女(ラニ)及び黒人(モーフィアス)らを警戒。
※時期は原作終了後、ミア復活イベントを終了しているかは不明。




「何とか撤退には成功しましたか」

ラニはあくまで平坦な口調で呟いた。
状況を盾にして逃げ延びた訳だが、幾つかの幸運が重なった結果だ。
モーフィアスを利用するところまでは上手く行っていたが、しかし詰めを誤ってしまった。

「……クエストの進行自体は順調ですが」

言ってラニはアイテムストレージに目を走らせる。
そこでは【セグメント1】【noitnetni.cyl_1】と特殊なアイテムが並んでいる。

これは明らかに異質なものだ。最終的に優勝を目指すにせよ調査の必要があるだろう。
無論このクエストの正体もだ。

「……っ」

そこで気配を感じたラニは急いで振り向いた。
周りでは廃ビルが立ち並び非常に視界が悪い。どこからやってくるかを判別するのは難しいが――

「貴方たちは」

その攻撃は二方向からやってきた。
二対の白い影。ツインズ。異様な姿をした彼らは今しがた乱入してきたPKたちだ。
どうやら彼らに補足されていたらしい。ラニは仕方なしにバーサーカーの霊体化を解き戦闘態勢に入る。

「■■■■■■■■■■」

咆哮と共に呂布が現れ槍を放つ。ツインズたちは幽体となりその一撃をやり過ごす。
そうして距離を取った彼らとラニは相対する。
形としては二対二の形となり、緊張の糸がぴんと張りつめる。

倒せるだろうか。ラニは冷静に分析する。
恐らくこの敵はアサシンに似た能力だ。初撃を防ぐことに成功した以上、正面からの対戦で負けることはないだろう。
が、こちらは連戦で消耗している。負けることにはないせよ、できれば戦闘自体を避けたかった。

「……提案があります」

ラニは徐に口を開いた。
ツインズを見据え、冷静に告げる。

「貴方は優勝を狙うプレイヤーであると判断しました。
 そこで提案です。私と同盟を結びませんか?」
「…………」
「見たところ貴方たちには決定打が欠けています。戦闘で負けることはないにせよ、勝負を決める一手……圧倒的な火力が不足しています。
 しかし私なら、バーサーカーならばそれを補うことができます」

同時にそれはラニにもメリットのある話ではあった。
先のモーフィアス陣営との一戦。個々の戦闘力では圧倒していも、多勢に無勢では追い込まれてしまう。
しかしそれも彼らと同盟を結ぶことが出来れば変わる。対である彼らを戦力に組み込めば、数の面では対等に立てる。
今後あの陣営とぶつかることがあっても互角以上に戦える筈だ。

「…………」
しばらく沈黙があった。
ラニの言葉を検分しているのだろう。重い沈黙が流れる。

そして長いとも短いともつかない時間を置き、ツインズはその鎌を下ろした。
承諾、ということだろう。

「……では、よろしくお願いします」

そう言って彼らは結束した。
冷静に、冷徹に、機械的に判断を下し、彼らは結びついた。

(これで戦力面では問題ないでしょう。あとは情報面、Mr.モーフィアスもクエスト攻略に乗り出す筈です。
 となればこれからこのクエストは新たな局面を迎える……エリアワード、引いてはnoitnetni.cyl争奪戦です。
 そしてあの場に居たもう一つ陣営の動きも読めません)

ラニが呼びつけたネットスラムもう一つの陣営。
サーヴァント一騎を抱えていた彼らの動向は読めない。呼びかけに答えたことからゲームに乗り気という訳ではないだろうが……

(モーフィアス陣営と結託されることだけは避けねばなりませんね。
 理想は協力関係を結ぶことですが……最悪でも三つ巴には持ち込むべきでしょう)


【ラニ=Ⅷ@Fate/EXTRA】
[ステータス]:魔力消費(中)/令呪三画 600ポイント
[装備]: DG-0@.hack//G.U.(一丁のみ)
[アイテム]:疾風刀・斬子姫@.hack//G.U.、セグメント1@.hack//、不明支給品0~5、
      ラニの弁当@Fate/EXTRA、基本支給品一式、図書室で借りた本 、noitnetni.cyl_1
[思考]
1:師の命令通り、聖杯を手に入れる。
 そして同様に、自己の中で新たに誕生れる鳥を探す。
2:岸波白野については……
3:ネットスラムの探索クエストを進める。モーフィアス陣営を警戒。
4:ツインズと同盟。
[サーヴァント]:バーサーカー(呂布奉先)
[ステータス]:HP70%
[備考]
※参戦時期はラニルート終了後。
※他作品の世界観を大まかに把握しました。
※DG-0@.hack//G.U.は二つ揃わないと【拾う】ことができません。

【ツインズ@マトリックスシリーズ】
[ステータス]:健康
[装備A]:大鎌・棘裂@.hack//G.U.
[装備B]:なし
[アイテム]:不明支給品0~2、基本支給品一式
[思考]
1:生き延びる為、他者を殺す
2:揺光に苛立ち(片割れのみ)
3:ラニと同盟。
[備考]
※二人一組の存在であるが故に、遠く離れて別行動などはできません。



[備考]
※現在ネットスラムでは探索クエストが進行しています。
※エリアにカオスゲート(R:2)が配置され、そこに特定ワードを入力することで別エリアに飛ぶことができます。
 その際に正解のエリアであればその先にミステリーデータ(青)がありnoitnetni.cylを入手できます。
※ワード自体はネットスラムのNPCから推測することができるようになっています。
※もし外れであった場合、どこに飛ばされるのかは不明です。
※またnoitnetni.cylが幾つあり、集めた結果何が起こるのかも明示されていません。


075:対主催生徒会活動日誌・5ページ目(考案編) 投下順に読む 077:秘密のプロテクトエリアをつぶせ!
075:対主催生徒会活動日誌・5ページ目(考案編) 時系列順に読む 081:xxxx
053:now reading ラニ=Ⅷ 089:信じて進むしか生きられない
066:夢見る蝶を追いかけて ロックマン 089:信じて進むしか生きられない
066:夢見る蝶を追いかけて 揺光 089:信じて進むしか生きられない
066:夢見る蝶を追いかけて モーフィアス 089:信じて進むしか生きられない
068:黒と白の果て(緑もいるけど) ブラック・ロータス 089:信じて進むしか生きられない
068:黒と白の果て(緑もいるけど) ブラックローズ 089:信じて進むしか生きられない
068:黒と白の果て(緑もいるけど) ツインズ 089:信じて進むしか生きられない

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最終更新:2014年11月16日 22:01