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  • 最終話 マイムマイム その四

vipac @Wiki

最終話 マイムマイム その四

最終更新:2006年07月31日 22:42

匿名ユーザー

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 もうジャンヌは油断したりしない。初期のような五十パーセントの戦闘プログラムのような手加減でなく、全身全霊をかけて殲滅する。
 三機の黒いACをレーザーで胴体から真っ二つにした。凝縮されていたエネルギーが箍を失ってはじけ飛び、巨大な光を生む。
 地を抉り、破壊の後だけが後に残って流れていく。
 時速三百キロメートル、結構なスピードだがジャンヌの出せる最高速度の五分の一ほどでしかない。
 向かってくるライフルの弾の一発も当たりたくないところだが、連続で襲い掛かる複数方向からの火線を全て避けきる事もできずに、幾つかの弾丸が装甲を打つ。
 貫通力の無い通常弾頭による攻撃故に分厚い装甲の表面を叩くだけだったが、デリケートな機械を衝撃で傷付けられる事を恐れたジャンヌはあくまでも回避を最優先する。
 ライフルに比べればかなり散発的だがグレネードの弾も多く飛び交い、ライフルよりもそっちに気が逸れそうになる。
 グレネード弾はライフル弾よりも弾が遅く、避けるのは簡単だが何発もとなると話も少しは変わってくる。ライフルの弾がたまに装甲を叩くのもなかなかの恐怖であるのに、グレネード等食らってしまっては致命傷になる。
 グレネード弾はジャンヌを追い込むように進行方向めがけて撃たれ、軌道変更を余儀なくされたジャンヌにはライフルの雨が降り注ぐ。
 的確な、理論的にでなく状況に応じた、戦闘において的確な狙い。効果的な打撃を寸分違わず狙ってくるAC達に恐怖のようなものを覚える。
 機械の分際で恐怖を覚えるなどけったいな事この上ないが、ジャンヌはそういう学習をする兵器として作り出された。人に近づく事で柔軟な戦闘行為が云々、などと仕様書に書かれていたのは自分でも覚えていた。
 下方には砲門が少なくジャンヌにとって唯一の死角だが、その代わりに装甲がかなり厚く、下からの攻撃では弱点の紋章を狙われる危険性が無い点については多少の余裕を持てる。
 ミサイルラックをわずらわしく思う。通常ミサイルの発射口が潰された所為でコンテナ上部が全くの役立たずになってしまい、積み込んだミサイルが重石になっているが、まだ左右合わせて四つも残ったコンテナミサイルを捨てるわけにも行かず、一体型のミサイルラックは今でもブースターの左右にぶら下がっている。
 ミサイルラックが無ければもっと複雑な軌道が描けるのに、それが出来ない。最後の武器、核弾頭は二発しかなく、こんなところで使ってしまうわけにも行かない。
 当初予想したよりもずっと苦しい戦いとなっている。少なくとも、ジャンヌが戦った事のあるどのAC部隊よりも強い。
 短距離レーダー内前方に敵を感知して、ジャンヌは意識の十パーセントを前に向ける。
 数は三機、さっき正面から打ち合いをやったばかりの四脚タイプとミサイルラックを潰したニ脚の紺色、それと改造ブレードを積んだ黒いヤツ。
 ジャンヌはリム達が撤退したかと思い、現在の戦力のみを相手にするつもりで戦っていたが、グレネードを積んだ黒いACよりも更に警戒すべきバレットライフ達の帰還により彼我戦力を再計算する。
 まだこちらに分があるはずだが、同等の部隊がまだ最低一つ残っている。無用に戦力を消耗させたくは無いが、仕方なしに急加速。コンテナ投下準備、レディー。
 コンテナミサイルがラックから滑り落ちて、更にジャンヌは軽くなる。機動力は少し上がったがそれでもまだラックが邪魔者だ。
 コンテナ内部FCSが感知した敵に片っ端からキャッチ、ホールド、FOX2。
 煙を吹くミサイルはしかし全ての敵を殲滅するには至らない。腕を犠牲に、頭を犠牲に。今、黒いACの群れは完全に避ける事をやめて、紙一重で避ける事に専念している。
 完全に一撃一撃のミサイルを避けようとして失敗して一機でも落ちてしまうぐらいならば、多少のリスクを払ってでも戦力自体の数は残そうという腹。
 もちろん、前方から襲い来る二機のACにもミサイルは当たらない。
 ヘヴンズレイはOBを展開して、ミサイル群の中を一気に駆け抜ける。紙一重など気にする必要も無く、全てのミサイルが機体を感知する前に駆け抜ける。正面からのミサイルは上昇し、ミサイル上部を蹴って更に飛ぶ。ミサイルは踏まれたところから真っ二つに折れ、爆発。
 後を追う様にバレットライフ。身軽な体を器用に回転させ、足に当たりそうなミサイルがあれば、足を回転させて交わす、天馬が空を翔るように自由自在に舞い、ミサイルを弄ぶ。
 ヘヴンズレイはあっという間にジャンヌの目前に迫り、OBを切って後ろのブースターを片方だけ起動させてバランスを崩した。
 ジャウザーは汗をたらして出力を調整し、正面から迫るジャンヌを睨む。一発でかいのをお見舞いするべく肩部武装を展開。凶悪なスラッグガンが抜き身で現れる。
 チャンスに至るまでの一瞬を呼吸ではかり、一息すってすったままにトリガーする。
 機体自体が斜めに傾いだ不自然なポーズのままスラッグガンが火を噴き、その反動で機体が飛び上がる。傾いた姿勢はその力で水平に正され、ジャウザーはブーストをキックして通り抜ける。
 十はくだらない鉄甲弾が正面からジャンヌに襲い掛かり、ジャンヌは紋章を守るように腕を腹の上で組む。鉄甲弾の十発如き防げない装甲ではないが、紋章をうたれるのは不味かった。
 直後に下方からの砲撃に身を晒され、上昇、右のスラスターと前のスラスターを一斉噴射、次に右四基、後ろ六基、左六基前三基の順。
 弾幕が弱まった頃に正面を切ってバレットライフが飛び出してくる。接近して例のマシンガンを撃つつもりだろうが、ジャンヌとはまだ距離が開いている。紋章両脇についたプラズマランチャーをノーロックで前に放って威嚇、それでも接近をやめないバレットライフには目測によるランチャーの連射と前方八基のレーザー砲による薙ぎ払い。
 リムは距離を測るのをやめて両手のトリガーを引き絞り、足元のペダルを調節しながら機体を傾ける。ブースターは一気に火を噴いたかと思えば火を小さく、そう思えば大きくし、跳ねながら光の線を飛び越え、側方移動を織り交ぜて回避に集中。
 前へ進むことが出来なくなり、ジャンヌは前部のスラスターに推進剤をぶち込んで後退する。
 フィンガーマシンガンの有効範囲を離れたところで全レーザー砲門を下方に向けて一斉発射。軌道をランダムにして、ピンチベックを追う。
 回避に専念し始める機体の照準はわずかながらにもいい加減になり、ジャンヌは高度を上げる。
 それを確認したピンチベックの半数が大地を踏みしめ、膝を曲げて一斉に飛び立つ。ブレードを展開して、最大推力で巨大なジャンヌに追いすがる。
 ジャンヌが回避に縛られて少しずつの上昇しかしないのに対して、射撃ばかり繰り返していたピンチベックはここぞとばかりに一気にジャンヌに接近し、三百六十度に展開、ジャンヌを空中で取り囲む。
 ある機体は左腕を振り上げて、ある機体は右わきの下に潜らせて、ある機体は腕を下げたまま接近する。
 ジャンヌはそのまま後退し、右前方部スラスターと左後方部スラスターを展開する。
 巨大な機体が体を振り回した事による余波がピンチベックの多くを吹き飛ばし、それでも向かってくる真西側の一機を六本あるブレードで狙う。
 ジャンヌはこの時点で飛び道具を持たないカラスを優先順位最低の敵として見ている。それはもちろん空を自在に飛び、カラスとその操者がなんと呼ばれているかを知らないからだ。
 鴉は死を呼ぶ鳥。不吉な黒の色、死体にたかり、時には他の鳥を食い荒らす。死神とも呼ばれれば真に鴉ともなり得るものだ。
 他の鳥の羽を剥ぐカラス、その存在を考慮しないある意味時代遅れのジャンヌは、高度を上げ始めた時点で、ピンチベックがわざわざブレード攻撃を仕掛けて来たのにもかかわらずカラスに気をやっていなかった。
 ジャンヌはレーダーを誤認している。吹き飛ばされたと思っていた、前方一機は先ほど東から戻ってきた一機と唯一合流していた機体だったのだ。
 短距離レーダーで近いやつから順に補足していたジャンヌはそれに気付いていない。バランスを崩したのはピンチベックだけで、その後ろに引っ付いていたカラスはそのままブーストを起動している。
 西の一機に切りかかった時点でやっと気付いたジャンヌは、それでも迷うわけには行かず、前方の機体に三本の左腕を突きたて、ブレード起動。
 カラスは一気にジャンヌに接近し、ジャンヌのブースターに着地しようとしたが、ジャンヌがケツを振った時にタイミングをずらしてしまい、右ミサイルラックの上に着地。しかし止まれない、止まっちゃならない、最大限要努力。
「おおおおおおお!」
 カラスは日光を起動。本物の日光を間近に見たことのあるジャンヌにはそれは日光には見えなかったが、それでも十分な威力があった。
 日光を足元の地、ミサイルラックに突き立てて、一気に走る。ブーストは起動せず、全力で音を立てて走る。引っ張られたブレードがミサイルラックの中を熱でかき乱して、傷跡からは火と風が吹き出す。
 かなりの距離を走り、カラスは体をねじって一気にジャンヌの本体を切り上げようとしたその時、ジャンヌが切り捨てたピンチベックが爆発し、光が赤の装甲板と黒の装甲板を照らし、青のアイカメラと赤のアイカメラが輝いた。
 手持ち無沙汰のジャンヌの右腕は無造作に後方を薙ぎ、それは日光とかち合って、双方同時に消滅する。
 ENを日光に吸い尽くされそうになったカラスはこれ以上ここにいられない。やられないための即時撤退のため三本の腕をかいくぐってジャンヌの前方に一気に跳躍。
 ジャンヌは右のミサイルラックが潰された事によって、かなりバランスを崩す。風力の抵抗などを考えても、いや、今まで散々邪魔に思ってきたものだ、ほとんど迷わずにミサイルラックに残った一基のコンテナを捨てて、ミサイルラックとブースターの付け根のジョイントを解除する。
 今、ジャンヌのいる高度にはバランスを立て直している最中のピンチベックが七機とカラスが一匹。
 百発のミサイルがそれだけの相手に一気に牙をむく。当然のようにまた三機のピンチベックが落ち、四機のピンチベックは運良くミサイルの機動を見切り、安全な落下コースを手に入れる。
 カラスは後方から寄ってくるミサイルを気配だけで察知して、ブーストを機動。半円を描き、空気を舐めるように飛ぶミサイルのニ撃を回避。体を傾けて前に飛び、下からのアッパーをいくつも避けて両手を伸ばす。わずかな空気をつかんで少し上昇しながら、直線機動の弾頭をかわして自由落下する。
 カラスの跳躍はなかなか勢いがあり、ジャンヌは更なる機動性を得て百八十度転進して前進しながら下方に攻撃するせいで、カラスは見る見るうちに距離を離される。
 しかし今のノブレスにそっちを心配する余裕はない。脚の限界強度をもうとっくの昔に超えていて、次の着地で立てなくなってしまうかもしれない。落下の勢いを殺すべくブーストを起動するがそこだめのようなエネルギーではほとんど意味がない。
 宗派は違うが、ノブレスは手の平を合わせて祈りながら落ちるだけ。


 町まで後たった三十キロしかない。そろそろ絞った電波なら警告を届かせる事ができるかもしれないと思って、カドルは通信をオンして慎重に電波を飛ばす角度と強さを計算し始める。
 乱数を交えた不確定なものなので、範囲の特定までにかなり時間がかかりそうだった。
 カドルはレイヴンとして戦いに行った者達がジャンヌに勝てるとは元より思ってはいない。
 不確定数の多すぎる超古代兵器同士の夢の競演、完全に破壊のためにだけ作られた兵器と兵器の完全なる融合体。
 簡易人格プログラム兼武装統括プログラム「ジャンヌダルク」を積んだ「粉砕者」。正式な兵器名称は知らず、無粋な名で呼ぶことしか出来ないが、もし知っていてもカドルはその名前は呼ばないだろうと思う。
 所詮はプログラムでしかないから。人為的に争う事を目的として設定された、純粋に不純な破壊だけを繰り返す兵器など人間の愚鈍の塊でしかない。
 破壊と争いは人間の本能が呼び覚ます種類の極自然な行為だが、ジャンヌダルクはその自然を人為的に生み出す事を前提とした兵器だ。
 人の心の齟齬が生み出す争いに何も解せぬ第三者が口出しをする、それ自体が不自然な行為だ。
 ジャンヌが生まれた超古代においてですら不自然であったに違いない。兵器としては優秀だったろうが、それは心があることをしょっ引いての話だ。心までを計算に入れればジャンヌは古代ですら何故争うかを知らない愚者でしかないはずだ。
 ましてこの現代に口出しするなど馬鹿げている。過去の亡霊が自らの存在を肯定するためにする事はすべからく不自然でしかなく、それは排除するべきものなのだ。
 自らを肯定するためにそこにあったものを否定してはならない。絶対の法則性を乱すジャンヌはここにあるべきものじゃない。
 それでもジャンヌは絶対的な力を持ってそこにいるのだ、ピンチベック十七機とファシネイターの後方五十キロを飛んでいる。
 世界にとって毒でしかありえない核を二つも携えて、無限の圧倒的熱量を伴ってそこにある。あってはならないものがこの世で最も大きな毒を抱えて現在を否定しにかかっている。
 核の脅威がそこにある限り多分自分達に勝ち目は無いのだろうと思う。
 カドルはさらにプログラムを分岐させるつもりでいる。十六機中九機の自己行動処理を後一時間以内に予定し、核を消費させる目的で回避に専念させる。
 陽動と核の脅威の排除を視野に入れた行動にはレイヴン達の賛同を得られなかったが、それでもレイヴン達はカドル自身に対する負担を減らす役には立っている。
 無駄にはしない彼らの命。最初に自分だけのものだったジャンヌダルク破壊の意思は今、五人の人間に伝わった。
 それによる戦いで誰かが死ねば、その命はきっとカドルが殺したも同然だ。カドルはその命の責任の所在を不明瞭にしないためにも絶対に勝たねばならない。
 勝つためのプランを組み立てて、時限式のプログラムをラン。
 自分を犠牲にすることすら疎んではならない。
「カドル、聞こえてるか?」
 完全に内部処理に集中していた処理機構が物質的な振動に揺り起こされ、初めて意識を外に向けた。多少の雑音をはさんで、発声。
「……ア、   ジナイーダ、何か言った?」
 通常の通信ならありえない音だ。耳につっかえる音が通信機の向こうから聞こえてきたジナイーダは耳を少々疑った。
 それから通信機を叩く。接触回線を開いての会話だから雑音が混じるはずは無い以上、雑音は機械自体の故障か聞き違いか。
「少しフライングだが……だけどこう、引っかかるんだ。一体何があった? なんであんな事が……?」
 猫すら殺す好奇心、それでもジナイーダはそれを殺しきれずについ問うた。戦いの後に聞くつもりでいたが、この戦いそのものの存在があまりにも曖昧で空気をつかむような話。理由すら分からずに戦える気がジナイーダにはしなくなってきていた。
 いやな事は遠回しにするクセが昔からカドルにはある。自分が既にこの世に存在しない事をジナイーダは一体どう受け止めるのかが怖くて話したくない。
 話してしまえば思い出まで風に吹かれて散ってしまいそうな気がする。ジナイーダの記憶に沈殿した矛盾と埃がその下にある彼女自身を、半年以前の記憶を守っているのだろうと知れば、カドルは物怖じせずにいられない。
 消えてしまうまでに真実を知らせたい。しかし知らせることに対する不安が拭えない。板ばさみになって息苦しくなった。
『それは、』
 言いよどんで処理が遅れて、義務感の後押しを受けて音声ファイルの作成までしたが、バグが再生ボタンをホールドする。
 既に砂漠にまで立ち入っていて、ピンチベックの装甲を砂粒と陽光がノックしたが、処理不足のせいでどちらにもカドルは気付かなかった。
 後方でジャンヌと戦うピンチベック達との電子的リンクはもう切り離されており、CPUの処理速度はもうピンチベック十七機分しか残されちゃいない。
 その十七機分の処理速度を全部使っても、通信回線と音声ファイルの維持が精一杯だった。通常ありえない数のバグが飛び交って、それの排除が最優先にされているために機体の制御もおぼつかない。
 ピンチベックの一機が少し減速して隣のピンチベックと肩をぶつけた。
「カドル? ……言いにくい事か?」
 非常に言いづらい。が、カドルは言う事も困難な状態にある。処理速度はかろうじてバグの発生の上をいき、三歩進んで二歩下がるを繰り返して未編集音声の再生までこぎつけた。
『ajuojdsa』
「?」
『  』
 言葉で伝えるのを嫌がったプロセスが何度もメール送信プログラムを開いて、しかし一文字も書くことが出来ずに何通も空のメールがファシネイターに送られた。
 沈黙が場を貫いて、ジェネレーターの駆動音とブースターの噴射音だけが場を支配する。針で肌を刺すような痛い沈黙をカドルは必死になって、ジナイーダはただ黙ってすごし続ける。
 ジナイーダが口を割るよりも、カドルのバグの処理が終わるほうがわずかに早かった。もしも光が一秒に地球一周しか出来なかったら、多分ジナイーダのほうが早かっただろう。
『信じにくい話だけど最後まではだまって聞いて欲しい』
 唾を飲む音が響いて、カドルも自分自身がはっきり空気を吸ったように思った。通信ログに呼吸の音は一つしかなかったが、後のジナイーダはこのときカドルの呼吸の音を聞いたと言って聞かない。
『僕は、一体なんだと思う?』
 自分の言ってる事がいきなりおかしい。
「さっき最後まで黙って聞けって、」
『撤回。なんだと思う?』
 取らずにおれない揚げ足が何か懐かしい空気を作る。カドルは一体なんだったかを思い出そうとしたが、無用な防衛本能が宝物への進入を防いだ。
 結果的にそれはプラスに働く。今カドルが昔を思い出せば、ベニヤ板に穴が開く。ジャンヌ打倒の精神が揺らぐ。
「カドルは、カドルはカドルだろう。なぞなぞがしたくて、こうしてここにいるんじゃない」
 ジナイーダははぐらかされるような質問に、半年間抱いてきた思いを侮辱されたと勘違いして不明瞭な敵意を形作った。誰にも向けられない悪意が声の向こうに霧散する。
 その無邪気な悪意に気付いても、カドルはそれを無視した。動揺してはまずい。音声ファイルの中身を自分で四回確認してから改めて再生。
『僕は、人格プログラムCode-K-1、モリ=カドルじゃあ、ないんだ』
 ジナイーダは本能的なもので声の奥底にカドルを感じ、信じている。だからこの声も冗談にしか聞こえない。気持ち半分でからかわれた気がしていらついた。
 無意識にかさついた手のひらを握ったり開いたり、唇を噛んで腹の底の何かを堪えた。
『君が一ヶ月前ディルガンで殺したのは誰だった? そいつはなんと言っていた? ジナイーダには何が見えて何が聞こえた?』
 愚問を改めて問いただす。埃は吹けば飛ぶ。そうすればその下にあったものがあっという間に露になって、その身を守ろうとしないそれ自身は傷だらけになりかねない。
 飛んだ埃は宙に散り、澄んだ空気を汚してしまう。ぶれていたものは更に大きいぶれにより修正される。一ヶ月前からつい最近まで続いていた空虚な時の中で何回も反芻した炎に包まれていく人影の姿が風になる。
「……あれは、だって! あなたは今もそこにいるのならあれは!」
『あれがモリ=カドルだよ』
 やっとバグが増えなくなって、音声の再生が落ち着く。声を荒げて熱くなるジナイーダに事実を突きつけるのは多大な苦労を要するが、それでも鬼になった気でカドルは続けた。
『あそこでモリ=カドルと言う人間は死んだんだ。僕はその時に生まれた残りかすでしかない。
 僕はカドルの心を1と0だけに置き換えた、言うなれば劣化品だ』
 信じられないのだろう。ジナイーダはいやいやをするように首を振って光る塩水を散らした。散った水が床に転がった木彫りのワシに当たる。
 カドルは駄目押しをしなきゃならない。人が手に入れた知識を加工するのは生きていれば何時だって出来るけど、人に知識を与えるには送信するモノが必要になる。
 今全部伝えなきゃ永遠にジナイーダには誤解されたままになる。ジナイーダを傷つけるのは嫌だったけど、本当のことを知ってもらえないのはもっと嫌だ。
「あれは、私を卑怯者だと言ったのよ!? カドルのはずが無いじゃない!!」
 カドル自身の心に傷が生じた。矛盾はその名の通り矛と盾、つき合わせれば傷がつくのは当たり前だった。出来るだけ膨大な想いという名の情報を整理して
『訂正しなきゃならない言葉がある。……街を襲った試作型AMIDAの群れ、燃え盛る街、昔、僕とジナイーダとそして君の母さんが住んでいた街で僕は
 。
 僕は、君の母さんを殺した』
 罪を認めることは容易でなかった。自分でない何かのせいにするのは容易だったがそれをする事はカドルの全てが許さなかった。あの日あの時大きな何かを捻じ曲げたのはトリガーを握る右手そのもので、悲劇を作ったのは至らない自分と至らなくさせた自分。
 そしてそれを償う術をカドルは知っている。今カドルがわずかな償いのためにしている事の他に、伝えなきゃいけない言葉。この何ヶ月か、それだけを目指していた気さえした。カドルだけでなく、この世に住む誰もが知っている当たり前の言葉が必要なのだ。転がり始めた石ころは更にスピードを上げた。
『ごめんなさい。君を騙した僕に、僕を憎んだ君に、僕が殺した意識と生んだ業に』
 ジナイーダは言葉が受け入れきれずに青い空と黄色い砂を眺めた。まだからかっていると思いたい。目の前のカドルが自分が自分でないと言っている姿を認めたくない。
 誠意の言葉を蹴り飛ばした逃げの意識が涙を作った。今聞いている声は一体何なのか、今生じている意識は目の前のカドルに向けられているものの筈なのに、目の前のカドルは……
「一体何に謝っている、冗談ばかり言って一体私をどうしようって……お前は確かに私自身が感じたカドルで、それがもうここにいないなんてワケが分からないよ」
 口調が変な崩れ方をして動揺を空気に乗せた。言いたいことを手短に言って、カドルは化学変化を待つだけ。
 伝えるべき核心はもう言ったつもりで、細かい事を話す気は起きなかった。
 泥のような妙なものの海に心をつからせながら、カドルは十七の体を意識する。


 ウ・シャブデヴ、マイム、ヴェ・サソン、ミ・マイネイ、ハ・イェシェア。そしてあなた達は救いの井戸から水をくみ上げる。ヘヴライの歌詞。旧約聖書のイザヤ書十二章三節。マイムマイムは砂漠の踊り。砂漠に飲まれるTheGlobeに信じられないほどぴったりの砂漠の……
 鳥達は地におらぬが故に水をくみ上げる術を持たぬが、それでも祈りの踊りを踊る事は出来る。
 ヘヴライの水龍レビヤタン、ヘヴライの水の踊りマイムマイム。水の集うところに現れる龍、そして砂漠に染み込む水の歌に龍は寄ってくる。空を舞う鳥達は無意識の内に水を呼び、そして龍を呼ぶ。
 ロケットは鳥を追えぬ。第二宇宙速度では戦闘機を追うことなどできない。ジャンヌが駆る水龍は砂漠を舞う鳥を追い、減速して複雑な軌跡を描いてエゴ丸出しの鳥を狩る。
 百八十度回転、東を向いて加速しながらプラズマランチャーをFCS任せのランダム補正で八発連射。
 光の奔流が空を切り裂き、静を割りながら群れを散らす。
 空を舞うカトンボは超高速の光の流れをたやすく避け、グレネードとライフルを雨あられと浴びせてくる。
 最初に弾丸が到達する時刻を見計らい、2ピコセカンドの誤計測でシールド展開。弾丸を蒸発させる程度に出力を調整して、できるだけ弾にぶつからぬよう軌道修正。
 広角視界の一番端にヘヴンズレイの姿を認めて、右のレーザー砲を動かす。球形の発射ボールが回転しながら多少の無駄のある動きでしっかりとヘヴンズレイを捉え、補充されたエネルギーが鋭利な暴力に姿を変える。
『私が戦争を止めてやろうと言う!』
「感情も知らないくせに傲慢なんですよ!」
 ヘヴンズレイはスラッグガンを構え、ジャンヌのレーザーが四門ヘヴンズレイの足元に狙いをつける。
 光の刃が四つほぼ平行に撃ち出され、空気を切り裂く。上昇を含む回避動作を計算、ジャンヌは照準を固定したままでいる。
 ヘヴンズレイを下から両断するはずの光はしかし空を切る。体を傾けたままスラッグガンを発射したヘヴンズレイは軸線をずらしてかろうじて光を避ける。スラッグガンの照準は完全にずれ、広がった弾丸の一つが青い膜にぶつかってウン万度の高熱で解ける。
 ピンチベックの群れは最早電波を受け取りながらカドル直々の指示を受けて動いているわけではない。カドルが自分に強く禁じてきたカドル自身の複製がピンチベックの指揮を執っている。
 何時の間にそういう処理があったのか、カドル意外にそれを知る人間は居ないし、いたところでどうにもならない。
 重要なのはカドルの意思がこの戦場に存在するという事だ。
『第三者が手を出していいものじゃないんです!』
 一機がライフルを投げ捨てた。グレネード一本しか持っていないものまでいて、できる限りの軽量化を施された戦闘集団がたった一機の過去よりの異物にわらわらと追いすがる。
 青いバリアーにぎりぎりまで接近してグレネード。爆発の衝撃に自らがバランスを崩すが、それも一瞬の事で、その機体を狙った横薙ぎの光は目標を失って迷走する。
 リムファイヤーは他のACから離れ、多少の距離をとってジャンヌを見据える。
 進行方向に向かって一気に飛び立ち、ピンチベックの群れに指令の発行信号をおこす。
 ――エンゴシロ、トツゲキスル。
 意思を伝えるだけならば普通の通信でも構わない。どうせ接触通信で無い限り盗聴は必ずされるのだ。
 発行信号を使った理由は光によってジャンヌの気を引くためだ。
 チカチカと、荒野に強く光る点は空からならよく目立つ。もともとマークされているリムファイヤーならなおさらだ。
 ジャンヌは行動の気配に警戒する。他への射撃がわずかに減り、ピンチベックとジャウザーにはわずかな余裕が与えられる。
 リムは通信を飛ばす。今度は通常回線。
「俺たちの争いごとに割り込むなと言っているんだ!」
 とんでもない軽量化による超高速化。バレットライフは大量の弾丸を積んでいるとは思えぬ速さで一気に突撃、レンジ内にジャンヌを捕らえることも無くトリガーを引き絞って回避行動に集中した。
 無数の火線が向かう先からは、無数の光線が襲い掛かる。ジャンヌの持つ砲門の実に五十パーセントがバレットライフ一機を片付けるためにのみ働き、他の機体はその分の猶予を有効に使うべく最大限慎重に狙いをつける。
 斜め二十度、上昇気味に攻撃を仕掛けるバレットライフは、空を走るように飛び、無数の人工の光をものともしない。一撃でも食らえばあの世へまっさかさま、間違いなく昇天するだけの威力を持った攻撃が雨と降り注ぐ中、リムはランナーズハイを得て本物の鳥の気持ちを知る。
 タイミングをカンで合わせたジャウザーが引き金を引き、それと寸分の差すら無く無数のグレネードとライフルが火を噴く。
 ジャンヌが危険を感知した時は既に遅く、上から横から真下から襲い掛かる弾丸を避けるのに無我夢中。落書きみたいな機動はバカのようにENを喰う。FCSはまわしてもらえる電力の少なさに任務放棄し、ジャンヌ自身は正面から迫るバレットライフのプレッシャーに機動を阻害される。
『争いを自ら望む生き物なんて無いだろ!』
「考え無しに武器は要らないんだよ!」
 シールドが消えたのを確認して、更に押し迫る。
 ジャンヌの攻撃が少なくなるが、それでも撃ち出されるレーザーは地を薙ぎ、火を噴かせ沸騰させて地獄を形作る。
 十どころじゃない身も震え、大地も身震いする量の弾薬が牙を剥く。その全てが角度を計算された追い込むための弾丸で、本命はジャウザーのENマシンガンだ。
 バグを大量発生させることが出来るENマシンガン「シルキー」。腰部バッテリー連続使用による射撃でジャンヌの動きを鈍らせる事が出来たらもうけもの。
 一ミリの希望でも暗闇の中なら朝を照らし出す陽光も同然、追い込まれ、止んだ弾丸に安堵をつくように軌道をおとなしくするジャンヌに青い光が襲い掛かる。
 ノーガードの巨体に光が馴染むように染みる。
 そして一秒、一見何も変わらないように見えるが、その実ジャンヌは心底焦っている。通常稼動ではあり得ないバグの数にてんてこ舞いになって、ブースターの出力調整がおざなりになる。
 それを見逃すバレットライフでなく、一気にカタをつけるべく急接近。
 その姿を省エネレーダーで確認したジャンヌには最強の兵器としてのプライドがある。
 負けるはず無い。負けてはならない。バグの処理をおっぽり出して、あくまで抑制にとどめてバランス調整。相手と同じスピードで反対方向に移動しながら使い捨て電池を一本起動した。
 使い捨て電池は全部で二本しかなく、今使った電池で二本目。ジャンヌはもう背水の陣にも近い気持ちになりながら加速、六門のレーザーを後方に撃って一時離脱。
 追い込んだと思って最後の弾丸を放つつもりだったリムは虚を突かれて回避行動が遅れる。
 全てが最後の追っ手であるバレットライフを狙っていて、定点で交差するように撃たれた光はやがて束となって四本足に襲い掛かる。
 さすがに避けきれずに脚をもがれ、今度こそ完全にバランスを崩したバレットライフが落下を始め、ジャウザー含む十五機がフォローに入る。
 冷却が終わったばかりのいくつもの砲身が無理をして弾丸を吐き出してジャンヌの眼からバレットライフを覆い隠す。
「っ」
 通常のレイヴンなら四本あるうちの一本の足を失った時点で死亡は決まったようなものだ。しかしリムファイヤーは大破壊を生き延び、一日戦争までかいくぐってきた五人の曲者の内の一人だ。その程度で死ぬ器じゃない。
 四本足は実に安定していると見られるが、この世の物理法則に照らし合わせれば三本が最もバランスがよく、こけにくいらしい。
 子供の頃のリムは学校で習った事を鼻で笑ったものだが、今のリムは三本のバランスは印象で思われているよりもずっとよいことを十分知っている。
 バレットライフの腰から下が回転して、一本の脚を前方に、二本の脚を後方に、できるだけ正三角形に近いように配置する。
 もちろん、正三角形なんて無理に決まっている。四角形の点を一個取り除けば九十度の角を一個と四十五度の角をニ個持つ三角形が出来る。
 それでも、機体を前方に倒して、リムはバランス計算をする。着地の時の衝撃と脚の強度を視野に入れた計算を三秒で終わらせて、地に向かって落ちていく。
 弾丸のフォローに感謝しつつ、最低限の回避行動をしつつ落下速度を和らげながら地に近づく。
 ジャンヌはそれを見逃したいワケではないが、けん制とはいえ弾丸の雨を突っ切る気になれずに後退する。
 狂ったように火を噴射するピンチベックが微速で後退するジャンヌに追いすがり左手を振り上げる。
 左手を振り上げたピンチベックは両肩には何もぶら下げていない。どうやらグレネードをパージした後のようで、その上ライフルだって握ってはいなかった。
 最軽量化され、無理な加速で一気に迫るピンチベックの機動は単純。正面から一直線に突っ込んでくる。
 そんな攻撃にもジャンヌは必要以上のおびえを示す。電池を失ったことによるプレッシャーに圧迫されて、確実な判断を下せていない。
 冷静な部分が遅ればせながらに無理矢理な判断を出す。懐に突っ込んでブレードを使うべし、とのことだが、レーザー砲を起動させたいと思う部分がジャンヌの中にはあった。
 迷う事になれていないジャンヌは流されるままに左中腕を前方に突き出して加速。ピンチベックはブレードを起動した左腕を振り下ろす暇も無く、ボディーブロウを食らって赤い腕に引っかかる。
 そのままジャンヌはブレードに一瞬、最低限のENを回す。青い光が瞬きする間にピンチベックの胴体を貫き、そして消える。
 ピンチベックは制御中枢を失って落下、それを見つめるジャンヌの眼の端に無事に地に脚をつけるバレットライフが映った。
 満身創痍に見えるその機体からは妙な自身があふれ出していて、ジャンヌにはそれは恐怖すべき対象のように思えた。
 グルリ回転したレーザー発射口が三本脚を睨んで閃く。五本の一万度の視線が自重で地を割ったバレットライフに襲い掛かる。
 でたらめな曲線で動かないバレットライフを取り囲み、止めを刺そうと収束し始めた時にバレットライフのブースターが火を吹いた。
 揺れる揺れる揺れる炎が象よりもはるかに重い鋼の機体を持ち上げる。
 少々の浮遊と膨大な推進力は脚が一本減った事を感じさせないバランス感覚で疾走。蚊帳の隙間を縫う様にわずかな一点をめがけてブーストオン。
 天文学的な確率を引き当ててそのまま加速、包囲を抜かれた五本の視線が後を追って走り出す。
 ブーストに巻き上げられた埃は視線に焼かれ散り、大地を貫きバレットライフを追って天変地異が退き起こる。
 切り裂かれた地がブロックになって持ち上がり、バレットライフのわずか後ろを異変が付け狙い、やがて追いつかれたバレットライフは盛り上がった地面に驚きよろめき前一本の足を持ち上げて馬のようにジェネレーターでいななく。
 ワーニングワーニング、限界突破した熱はコクピットに漏れて、温度は人であれば耐え切れずに灰になってしまうほどまで上昇。
 しかしそこにいるのは人で無く魔物であるからして決してその程度では身を焼かれることが無いのだ。
 高温の視線が大地を割り割り切り裂いて、いななく馬に迫りわめく。
 バレットライフのラジエーターそのものが火を吹いてまで機体を永久凍土に押し込めようとしてジェネレーターがそれに抗し、実の温度と共に感情の温度が沸点を超えている事にリムはようやく気付く。
 逆境が心をざわめかせ血を沸騰させて全身が吼えて、リムはアクセルをキック。ブレーキは既に壊れて、誰にも減速させることは出来ない。
 そこにしかない何かを見つけたリムの心がバレットライフのケツをひっぱたいて、止まった時間も一瞬だけで、盛り上がり空を見上げる斜面となった大地を駆け上っていく。
 気迫が機体のあらゆる部分から噴射して、計算できないパラメーターがそれを見つめるジャンヌを威嚇する。
 気が狂いそうになりながらジャンヌはレーザーの照射を止めてNOE。さっきまでのEN減少の脅威すらも忘れて泣きながらブレード六本。隠し腕だけは何とか押し留めて突撃。
 地と接触すればあまりの相対速度に機体がバラバラになる。今出せる最高速度で一瞬でバレットライフとの距離を詰めて一撃必殺必中必壊、六のブレードを最大出力で坂から飛び出してくるバレットライフも坂も地も空気も一気になぎ払う。
 それでも逃げる事の出来ないはずの超音速をリムはあっさり知覚、ずいぶんとのろまな敵を見据えて三秒数える、振り下ろされた光の剣を見もせずに前足が大地を蹴、続後足。
 心の中の一秒は宇宙の一秒、即ち心の中の一秒は世界の七十五分の一秒でしかなく、それを知らずに舐めてかかったジャンヌがドアホウだった。
 バレットライフは雲を引いて巨大な赤を飛び越え、赤は超音速のままその身で盛り上がった地面を押しつぶしながら上昇、飛び散る破片が装甲を打ってジャンヌを囃し立てる。
 ジャンヌは音速に音速をかけて急旋回、ピンチベックの群れを振り返る。振り回された高熱がまた新たな波を作り、呻きながら上っていく。
 群れは整列してジャンヌを睨みつけており、その先頭に立つヘヴンズレイ、ジャウザーがメンチを切った。
「ヤンキーゴーホーム!」
 ヘヴンズレイが振り上げた腕で大仰に敵を指し示し、示された紅を赤熱の十三の弾丸が狙い打つ。
 一斉の弾丸は壁となってジャンヌの前に立ちふさがり、大回りでの回避を余儀なくさせる。
 ジャンヌは高度を目一杯に上げ、アラームはなりっぱなしで機体にかかる負荷を誰もいないコクピットに響かせ続けた。
 必然的にピンチベック達に向けられた長大な腹をジャウザーが見逃すはずも無く、八つのミサイルが放たれる。
 同時にヘヴンズレイのOBが点火、両翼からジャンヌに追いすがるミサイルを横目にジャンヌに接触する前からスラッグガンを構える。
「ガキはお家でネンネしな!」
 いつもの口調がどっかへぶっ飛んで、すでに言葉は言うものでなく吐き出すものに変わった。
 OBを起動したままスラッグガンを発射して、板ばさみになった機体が悲鳴を上げて、それでも上昇する。
 拡散する鉄甲弾がジャンヌのブースター下部をクレーターだらけにして、ジャンヌが通り過ぎた後の空をヘヴンズレイが横切った。
 八つのミサイルはジャンヌとの交差軌道を選んで飛び、風の壁を打ち破って爆発。ジャンヌを上へと持ち上げる。
 ヘヴンズレイは体を捻って一気に旋回、旋回用ブースターよりは遅いが十分な速さでジャンヌを振り返り、もう一度OBを起動する。


 その四終了。その五に続く。



 注釈:NOE(Nap On The Earth)。地上追随飛行の事。ヘリがレーダーを誤魔化すためによく使う。

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